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明治印判の世界 (印判概史)

骨董的にはあまり注目されていない明治以降の印判製品ではあるが、日本の陶磁史においては一時代を画す重要な位置づけの製品群である。極端に言えば現代のやきもの産業に直結する窯業技術革新の曙なのである。

古伊万里をはじめとする骨董磁器に興味を持つ人間なら誰しも、明治期以降の印判製品のことは知っている。 しかし、もう緒から興味の対象外としていて注目することは稀である。私もそんな一人であったのだが、フッと染付の印判というのはどんな風に作られたのかなと考えた時、漠然と 「型で印刷してるんだろうな」 としか思い浮かばなかった。染付を専らとして磁器を眺めてきた私にとってまことに遺憾な状況でありました。そこで改めて注目して概要を得るところまで調べましたのでここに纏めてみたわけであります。
簡単に 「印判とは?」が把握できるものにしたつもりです。印判を専門になさっている方から見れば稚拙なものかと思いますが、簡便に概要を知るためのもので、これをきっかけに興味を持って研究なさる方があればなお結構なことであります。


1、印判技法の必然性

明治時代になると従来のやきもの生産の制約が廃止され、自由にそれらの生産が可能になりました。これにより窯の数は急激に増え、その生産量は飛躍的に増加しました。日常用器として国内の需要の裾野も益々広がり、これに対応するため大量生産への技術革新の要求が高まって行きました。ここで最大のネックとなっていたのは生産量の増加に伴う絵描き職人の絶対数不足でありました。手間のかかる絵付け工程の改善をめざして多くの地域で絵付け技法の模索が積極的に行われていたわけであります。こうした背景のなかから、同一の文様を簡単に繰り返し描くことのできる印判技法が開発されていったのです。


2、印判の種類

印判と呼ばれる作品群は、大きくは 「摺絵」 と 「転写」 の2つの技法があります。
その他 「吹墨」 「ゴム印」 も印判に総称されておりますが技法的にイメージできますのでここでは省略します。

摺 絵

転 写
まず「摺絵」と呼ばれる技法が肥前ではじめられました。
これは型紙摺りとか型絵、型画染付ともいわれ、文様を彫った型紙を器面にあてて、その上から刷毛などで絵具を刷り込んで絵付けしたものである。

 特徴は、型紙に文様を彫り明けることから、連続した線で文様を書くことが出来ない。型紙がばらばらにならないように紙の部分は必ずどこかで繋がっていなければならないからである。したがって文様を形作っている一つ一つの染付部分(穴部)は不連続の穴にしなければならず、文様線には必ず切れ目が出来てしまって、繊細な表現が難しい。

続いて「転写」と呼ばれる銅版印刷法が用いられるようになったわけですが、これは銅板面にエッチングの技法で絵柄を刻み凹版をつくります。この版を用い顔料を特殊な紙に印刷、これを生地に転写することで絵付けを行う方法であります。
文様が鉄筆の細い線で構成されるため、細密な表現が可能で、全体としてシャープな感じをあたえます。

この「印刷」という技術の根幹は多様な変遷発達をとげながら、現代窯業において汎用製品のほとんどの絵付けを行うものとなっております。

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参 考 図 録 (早花苑コレクション所蔵)

銅版転写 草花鶉図大皿 30.2cm

銅版転写 区割風景 鯉竜図大皿 29.5cm

摺絵 唐草唐獅子牡丹図角皿 30.5cm

銅版転写 鳳凰麒麟図大皿 31.7cm

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