恋愛近未来小説 「Rose Water

(Violet Girl 蕾編)

★別サイトで、成長していく主人公達の18才の姿を書いた小説「VioletGirl」も平行して進めてます。

この小説のコンセプト      関連携帯恋愛小説はこちら

この恋愛小説は主に、早川武(はやかわ・たける)の心理描写を中心に描かれていますが、ところどろこに
飯田瞳(いいだ・ひとみ)の心理描写が挿入されていきす。

この小説の読み方で注意点

早川武(はやかわ・たける)の視点での文章は・・・この色
飯田瞳(いいだ・ひとみ)の視点での文章は・・・この色■
メールの文章は・・・この色■
歌・・・この色■
詩的な文章は・・・この色■

第一章「普通の恋の始まり  2006年」

プロローグ

1話  「
出会い」

2話 「初めてのデート」
                 
3話 「瞳の父」

4話 「ほんとうの出会い」


5話 「デートの後」

6話 「月星道子との出会い」

7話 「バンド結成」

8話 「メール」  

9話 「秘密の扉」

10話 「勇輝と優香」

11話 「皆で決めたこと」

12話 「優香から武に伝えたかった事」

第二章 「瞳の決意」

第1話 「二人を引き裂く出来事」

第2話 「瞳の決意」

第3の1話 「.洋子の願い」

第3の2話 「武の気持」

第3の3話 「瞳からのメール」

第三章「哲」

第1話 勇輝と武

第2の1話 「置手紙」

第2の2話「瞳の登校拒否」

第2の3話 「本当のこと」

第2の4話 「哲の生い立ち」

第2の5話 「DreamBoxsで」

第2の6話「ステージ」

第2の7話 「瞳の真実を知る・男」

 「瞳と哲の関係」

「哲からの手紙」

 

プロローグ

人生には「もしもあの時という言葉は通用しないかもしれない・・・・
どんなに泣き叫んでも費やした時間は取り戻せない。

せめて・・・書き残すことが自分の使命だと思う

第一章「普通の恋の始まり」

1話 「
出会い」

(2006年9月21日木曜日・・それは澄んだ、そよ風が肌に優しい日)

俺の名前は早川武

俺には高校一年の時の学園祭が、きっかけで交際していた女がいた。

彼女も俺も同じ学園祭の飾りつけ係だった。

初めての学園祭も無事に終わり、係り全員が出席して反省会をした。

気が付いたことや来年への懸案事項などを一人一人発表して総括して流れ解散となった。

腕時計を見るともう8時過ぎになっている。

部室にはもう誰も残っていない。

急いで廊下を走って帰ろうしていた時
出口の近くの暗がりで
運命の女神は、そこに未来の全ての優しさと刹那さを封じ込めて

女を立たせていた。

いったい誰だろう・・・と思い緊張で生唾を飲み込んだ。

女は伏せ目がちに顔を隠しながら近寄って来た。

商店街の看板の明かりが、窓から差込み女の顔を浮き上がらせた。

「早川君、お疲れ様」

そこには、隣りの二組の学級委員長で今回のミス学園祭になった飯田瞳がいた。
「あー飯田さん」

「なんで帰らなかったの」

「これ・・・・早川君のじゃない」

瞳が差し出したものは、俺が高校の入学祝いで九歳年上の兄から貰った万年筆だ。

「いっけね・・・・今日は、ばたばたしていたから、落としたの気づかなかったよ」

「だよね・・・・はいどうぞ」

「あ、あ・・・・有難う
助かったよ
これ凄く気にっていて大事にしていたんだ。」

「早川君の日ごろの行いがいいから、神様にかわって私が無事にかえしてあげれたのかもよ」

「どういう意味」

「だって毎日遅くまで残って一人で学園祭の飾りつけ準備していたじゃない」

「あ・・・なるほどね・・・
君には、そんなふうに見えていたかもしれないね・・・
本当は、分けありなんだ・・・」

「へー、」

俺は、また息を呑んで、目の前の瞳を見つめた。

艶やかな長い髪に、澄んだ瞳が綺麗な女子高校生と
・・・ 俺は夜中の校舎で今二人きりでいる。

「俺・・・・両親がいないだ」

「えー」

「生活費は東京にいる兄から毎月仕送りしてもらっているんだ。
だから
この万年筆とても、とても大事にしていたんだ。
家に帰ってもずーと一人だし」

「そうなの・・・」

「兄とは俺が高校卒業するまで生活費面倒見るて、親父が死んだ時、約束したんだ。

けどね・・・生活費全部兄に負担して貰うの心苦しいし
コンビニでバイトしていんだ。

学園祭の準備が終わって家に帰るとバイト間に合わなくなるわけ
そんなんで・・・・俺時間調整してた訳」

瞳は少しだけ気落ちしたような顔して
頭を二三回軽く振ってから、わざと明るい声で
「そーそうなの・・・やっと理由がわかったわ」

「とにかく有難う、本当に有難う」

「そんなに有り難がられると・・・なんだか照れくさいわ」 

その時突然稲光が、窓から差し込んで、ゴロゴロという地響き音が校舎を伝わった。

そのうち、校庭の周りに密生している松の木の小枝がサワサワと小刻みに
微かに揺れて音を発している

にわか雨だ

「いやー、私傘持ってきてない」

「君たしか電車通学だろ」

「よく分かるわね」

・・・・・

俺は実は飯田瞳ことが、新高校一年生の歓迎会の出来事以来ずーと気になっていた。

この前の期末試験も学年上位10名の張り出しで、一番に名前が載っていた。

お嬢様ぽい話し方と他の女とツルんで行動しない瞳は、特別な雰囲気を持った女性だと
俺は、感じて密かに彼女の情報をチェックしていた。

「とろいなー・・・君が電車通学してるのは、本校の常識だよ」

俺は冗談が言いたかったのだが・・・彼女はキレた。

「何にーそれー・・・まじー?超MM」
「驚いたなーエレガントな君が、ギャル語使うなんてホワイトキックだよ」
「ほんの、お返しよ」
しばらく顔見合わせ・・・
二人は誰もいなくなった校舎で、堪えていものを吐き出すように、大声で笑った。

「俺携帯の傘持っているから・・・駅まで送るよ」

「うん」

小さな携帯傘に瞳を入れて、自然に肩をそっと抱いて
雨に濡れない様に、引き寄せた。

禁断の青春領域に無断侵入した雨たちが、瞳のブラウスを濡らし
ローズベージュな肌を半透明に浮き上がらせた。

薔薇の花の甘い香りがした

私が武の胸のに身を寄せたのは、これが初めてじゃない
そのことは武は覚えいてるだろうか?

私はその事の記憶せいで、

小さな傘で防ぎきれない雨が

腕を濡らしても、その冷たさを感じ取れないくらい

体の芯が熱くなっていた

私の高鳴る鼓動が

武にきずかれないようにするには

あまりにも武は近くにいた

武はワイシャツのボタンを三つまで外し

下に濃紺の薄手のTシャツを着ていた

眉は父のように太い

髪が襟足を軽く隠す程度に伸びている

身長は175センチくらいだろうか中肉中背いった感じだ

待ち伏せしていたのは、私の希望からだ

なぜこんな大胆な行動が男には小心な私にできたのか?

理由はたぶん入学式の事件意外思い当たらない

私は固く決意していた

武と交際しようと

少し不安だ・・・けれど勇気を出せた自分が誇らしいと思える


駅近くの商店街まで来ると、もう雨はあがっていた。

「昼間だったら、多分綺麗な虹が見れたかもね」

「発想が意外とロマンチックなのね、
武君!!
ねえー、一つ聞いていい、赤の補色は何色か知っている 」

「もちろん、緑だよ・・・でも何で」

「どうして・・・すーと答えるの
普通は補色てなにとか、多分赤の反対で白とか答えると期待したのに」

「わけは、簡単、簡単・・・・・俺イラストレイターに成りたくて今色彩学勉強しているんだ」

「あーそうだったわね・・・納得ヨ」

「 君は・・・なぜそんな質問できるの・・・
もっとも・・・君頭いいもんな」

「私の方はね・・・ファションデザイナーに成りたくて色彩学勉強していたわけ!」

俺は二人が目指しているものに共通点は見つけ出せても
なぜか...将来はやがて遠ざかる運命を感じ
瞳を自分に近づけたくて 、思わず言った。

「ほんと・・・俺達さ・・・リズムが合っていると思わない♯♪」
「そうだといいね・・たぶん・・波長があう予感が・・共鳴したのかも
それとも・・・私が一方的に望んだと感じている??

「えー・・・・・!?」
瞳が俺のことじーと見つめ返している。
なんか、どう言ったらいいか、わからなくなってしまう
それなのに、夢のような時間はもう終わろうとしている
俺は決意をした。
「今度の日曜日の夜さ・・・・会わなか?」
「また私のギャル語聞きたい?」
「へへー・・・それもあるけど・・・バイト先から貰った映画の招待券が二枚あるんだ。
いっしょに観ないぃ〜」
「どんな映画」

「タイヨウのうた」て言うんだけど
絶対観て損しないよ

映画通の俺のダチ「滝やん」もお勧めの映画だよ
何でもん、・・今世紀最高の邦画・・だって・・
オーバーに言っていたくらいの傑作らしいよ」

「えー私知っているわ、その映画
テレビで特集やっていたもの」

「じゃ・・・OK?」


瞳はちょっと視線を地面にずらすと
考え込んでから

「今のところOKよ」

俺はつま先だってバレリーナのように一回転して
ガッツポーズをとり

「よしゃー・・・地下商店街ローサのイルカの噴水の前のベンチで、7時に待っているからね」


「武君・・イルカの噴水て何??

今その場所は、噴水が撤去されて、「出会いの広場」になっているわ

武君が言ったのは、そうとう前の話よ」

「へーそうなんだ、俺行ったのは、そういえば、小学生の頃だったよ
クリスマスコンサート聞きに行ったんだ

じゃー改めて・・・・・・・・・「出会いの広場」で待ってるから、俺とデートしてください!! 」


「ええ・・・・」

瞳は微笑んで、直ぐに視線をそらした

俺は 、瞳を駅の改札口まで見送り

「じゃ・・・来週の日曜日ね!」

と別れ際に、瞳は・・指をたてながら、囁いた。

俺は放課後の男達だけの立ち話の中で
憧れの的である瞳と・・
デートできる驚愕の事実にその時有頂天になっていた。



2話「初めてのデート」

((2006 年9月 24日 日曜日)

・・・やがて待ちに待った日曜日がやってきた。


俺は約束の時間の10分前に・・

出会いの広場」に到着するように、家を出てバスに乗った。

ところが、バス路線の途中まで来て、バスが交通事故による交通渋滞にひかかってしまった。

のろのろ運転のバスは、10分以上停滞していた

結局バスが目的の停留所に着いたのは、ぎりぎりの7時だった。

陸上短距離選手のように

走りまくり地下街に入る階段を二段づつ転がるように降りた。

地下商店街 に入って「出会い広場」まで
アクション映画の追跡シーンのように人を掻き分け
息せき切ってたどり着いた。

地下商店街の大きな時計はもう7時11分を指していた。

ベンチに恐る恐る視線を向けると・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・人ごみの中、にこやかに微笑んで手を振っている瞳が居た。
瞳は、ブルーとホワイトのストラプTシャツの上に

鮮やかで上品なウルトラマリンブルーを思わせる色のヘンリーネックパーカーと
下は、レディースカジュアルスニーカーと
たぶん自作であろう
足元の裾に薔薇の刺繍入りブルージーンズを着ている。

そして、驚いた事に
学園祭の準備の時に使った飾りつけ係りの黄色いニコニコバッチを
胸にさり気なく付けている。

それが、妙におしゃれだと思えた。

学生服の瞳しか知らない俺は、彼女の個性を再認識した。

「ごめん、ごめん・・・交通渋滞で・・・ごめん」

「額の汗すごいわ・・・」

瞳は怒りもせず、そう言うとハンカチを取り出し、汗を拭ってくれた。

優しさで何も言えなくなった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人は、小走りで映画館のあるビルまで歩行者天国経由で目指した。

映画館の扉を開けると制動なモノトーンが、周りを覆い

中央だけが何万色もの色の光が交錯して躍動の別世界を作っていた。



やがて映画のラスト近くになり俺は自分の目が潤んでいるのに気が付き

  隠そうとしたが、止まらない

   となりの瞳を見ると頬が光っていた・・・

    前より重く感じられる映画館の扉を開け

深夜の町に二人は戻った。



言葉が見つからない、見詰め合って、うなずき、互いを信じた

求めた温もりが二人の手を絡ませ、無言で歩いた。

魂を共鳴しあった映画の余韻が、握っている瞳の手から俺の頭の中心に響き渡った時

俺は、瞳の手を引っ張り

待ち合わせの地下商店街へと引っ張り込んだ。



私をローサに連れ込んで

何をしたいの・・・武

時折振り返り、微笑む無邪気な武の顔を見ると

なぜか逆に不安が薄らいでいく

日曜日真夜中の地下街は店のシャッターがほとんど降りて

無人の三国トンネルのようだ。

すべてのものが、動き出す月曜に備えて休息している

薄暗い舗装路を歩くと足音だけが

コンコンと響いた。

ここは別世界だ


俺達を見つめているのは

シッターを閉め忘れたショーウィンドのマネキンだけだ。

昼間にぎわったはずの中華料理屋はその匂いさえ消えうせている

静寂だけがスポットライトを浴びている。

二人は足音のエコーを楽しむかのように

唇を開かずに、手を握り合ってしばらくゆっくりと歩いた

照明が薄暗いせいもあり、少し重い空気が流れそうだと感じた

このままでは、いけないと気づいた

俺は地面を思いっきり蹴ってタップダンサーのまねをして見せた

エコーで

「タタッッタタッッタンタン 」

とリズミカルな足音が反響してまるで、舞台の上で踊っているようだ

瞳が、微笑みながら手を顔の前までもってきて手拍子を取ってくれた

「ふふーん」

俺は体が温まってきた、今度は

おどけてマイケルジャクスのムーンウォークをやって見せた

瞳は俺の体の動きに合わせて、手拍子のリズムを変えた


「それって全盛期のマイケル」

「そうそう」

「今は?」

俺は最初杖をつきながらゆっくりとムーンウォークしようとするマイケルを演じた


「面白いけど、かなりやばくない」

「かなりね!」

「ふふーいつもそんなパフォーマンスやるの」

「ないない・・・・・・
「ねー喉乾いてない?
ジュースでも飲もうよ」

「賛成!」

「ねー瞳・・足速い方」

「どうして?」

出会い広場までかけっこしょうよ
負けた方がジュース代おごりだよ」

「私こうみえても結構足速いのよ」

「ほんとかなー」

「言ったわね・・・・よおーし
武、私についてらっしゃい 」

「じゃースタートラインについて
いい・・・
よーいどん!」

ダッシュは俺が早かったが、瞳が追いついてきて


出会い広場までくる手前で、とうとう追い越されてしまった

「ふー・・・びっくりだよ
瞳の勝ちだ
あの自販で買ってくるよ
瞳何を・・飲む?」


ライチ


「俺を困らせたいな・・・・悪い子だ
それなかったら二番目のリクエストは」

「そうね・・普通のオレンジジュースお願いね」

二人は買って来たジュースを片手に、もう片方はまた手を繋いで
噴水の端にあるベンチに腰掛けた
俺は呼吸を整えてからオレンジジュースを一気に飲み干し
空き缶を高々と頭の上に放り投げた
弧を描いて落ちてくる空き缶を瞳は横からさっと手をだして奪い取った

「瞳て運動神経いいんだね」


「私さっきはもっと早く走れたわ」

「へーえ」

俺は思わす゛瞳の体を下から上になめる様にじーと見つめてしまった

股下がずいぶん長くて足がスラリとしている

胸は恐らくBカップ以上あるかもしれない

形のいい柔らかそうな胸がきゅと締まったウエストと絶妙のバランスを保っている

瞳は俺の視線に気がつき

うつむいた

俺は「まずい」と思い

話題を変えたくて

腕時計を見ながら


「映画オールナイトなんで、終わるのがずいぶん遅くなっちゃったね
ああーそれにしても・・・心に優しい映画だったね」

俺の上ずった声が、エコーした。



「!!・・・うん」
瞳はベンチからすーと立ち上がると

背中に手を組んで、俺に背を向け二三歩遠ざかって、振り向き

凛々しく両手を広げ
  そして祈るように手をあわせて・・・・・・・・・・・・

「映画を作った監督とスタッフそしてYUIの歌からの大切なメッセージを私は
けして忘れたくない、自分なりの行動で伝承していきたいの」


「ひとみ・・・相変わらず難しいこと言うけど・・・ いかしているよ」


俺の拍手が、エコーした。

「たける・・・・・ありがとう
ねー覚えている、赤の補色の話 」

「・・・・もちろんだよ!」

「じゃー知っているかしら
補色には
物理補色と心理補色があって

物理補色は相対する二つの色を強引にかき混ぜると

互いの個性を打ち消しあって色みのない灰色になってしまうの・・・


心理補色は相対する二つの色を適当な距離に近づけた時だけ
互いの個性を尊重しあってより引き立たせるの


つまり・・・・皿に盛った赤肉とパセリの関係みたいなもの」

「あ・・・・・・ 赤マグロとわさびの関係だね」

俺は少し間瞳の視線を避けて、考えこんでから

「何が言いたいのか、ほのかにわかったよ

僕達のこれからの関係の事だね」


瞳は今回の学園祭の準備でも先頭に立って動き回り
三年生から指示でも、自分が正しいと思えば
最後まで自分の主張を貫くき
結局は三年の学園祭運営本部長が折れて
瞳のやり方で学園祭の準備が始められた。

その一方で、俺や滝やんが、飾りつけをしていると、
夜食のお握りを作ってきてくれた。

瞳は他人に対しては強さと優しさを見せるが・・・

こと自分自身の人間関係の事となると、曖昧となり本音が読めないと思えた。

適当な距離の心理補色の関係になるには、どうしたらいいのか

俺は即答しなければならない立場に陥った。

「瞳・・・俺ね
前にも君に話したけど
両親いないだ・・・・そんな生活がもう三年も続いているんだ。

バイトから帰って一人きりで
広々した八畳の部屋で夕食を食べて
テレビも消して何もせずポケーとしていると
寂しさが
胸からしみでて動けなくなるとこがあるんだ。
温もりが欲しい
とたまらなく願う自分に気が付くんだ

・・・

そんな時は、ため息ばかりさ

俺にはもしかして、
家族の愛情関係が一生理解できないのかもしれない

ましてやガールフレンドなんてできっこないと思っていたんだ

・・・

君とこうしてここに居ることが、信じられないよ・・・

瞳・・・・二人で歌を作らないか・・・

俺はスリーコードぐらいしか、ギターが弾けないけど、頑張るよ」


すてき・・

瞳が子供のように可愛らしく笑った。
「俺が詩と大まかなコードを決めるから
君はメロディーを作れよ」
「はい・・・」
おもいきり素直な返事に俺は驚いた。
「まいったな・・・・想定外の返事だよ
そんなこと無理だと思いながら
言ったけど・・・・・
瞳ギターとか弾けるわけ」
「大丈夫・・・私クラシック習っていたことあるから」
「でも・・・簡単にできないよ・・・・・多分」
「まあね・・・私もそう思うけど
ここはやるきゃないでしょ
雨音薫に成り切るしかないわ 」
「そうだね・・・・うーーと・・・まずわ曲のテーマとメジャーかマイナー
決めるからね
ね・・ね・・・この青春万歳ハレルヤ大作戦を成功に導くには
君の・・・つまり、あのっ、ぁぁ・・アドレスがわからないとね」

「たける君・・・・とてもタイミングのいい
突っ込み・・・・」

瞳の顔を見ると、学級委員長の顔に戻っている

「しまった・・・ふざけた言い方だったかな・・・・」と内心俺は悔やんだが

瞳は、カンガルーポケットから携帯を取り出すと

また子供の顔で微笑みながら


「たけるの教えて」

俺はあわてて手帳にアドレスを書き、手帳を引き裂いて
瞳に手渡した。

瞳は手馴れた手つきで、打ち込みした。

俺のお尻に格納された携帯から「太陽の下」の着信音が聞こえた

「データ送信作戦は完了よ」

瞳はピースマークを出して、ウインクしている

「了解」

俺は、得意の一回転してガッツポーズしてピースマークをだした。

「武君のクラスはどんな雰囲気なの」

「ダークブルーだよ」

「えー吉田先生いい先生みたいじゃない
クラスをまとめていける人だと思うけど 」

「そんな単純なもんじゃないよ
柔道の担任で、体がっちりしているし
生徒指導も熱血というかじなんだけど
なんか・・・まとまんないだな 」

「委員長が役不足じゃない・・・たしか木山君だったけ」

「そうかなー木山も頑張ってるように見えるけどね・・・・
瞳ほど統率力ないのかも 」

「ほんとうのこと言うと私ね
女学級委員長なんてやりたくないの」

「まじで・・・」

その時だ。


3話 「瞳の父」

俺の腕時計が夢の時を断ち切ることに躊躇しながら悲鳴をあげた。
「お嬢様・・・・・・シンデレラタイムだよ・・・・・
コギャルから学級委員長に戻らないと・・・・ 」
眉きつく上げて瞳は囁いた
「そんな悲しい言い方しないで・・・・今ここに居るのも有りのままの飯田瞳よ」
「そうだね・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「どうしても聞いておきたい事があるだ。
なぜあの日君は万年筆を届けるために、誰もいなくなった廊下で待ち伏せしていたの?
君と俺では、今まで学園祭の飾りつけ係で同じ意外に接点がなかったのに

やはり武はあの日を忘れている
いいえ思い出せないでいる

俺この前の期末テストで赤点二科目もだしちゃったしさ
追試で、やっと生き延び ている落ちこぼれだよ
それに言ったけど・・・・おれ両親いないし・・・・・貧乏だし
君の親父さんは、ブテックのチェーン店オーナーで商店街会長でこの学校のPTA会長でもあるし
・・・・ようするに大物だし・・・・
君と俺じゃぜんぜん生活環境が違いすぎるし
君から近づいた本当の理由は?」
「小さいこと言わないで・・・・・・・
武君のいいところは多分・・・・・細かい事に拘らず自分の流儀で生きるところよ
私ね・・・そう私ね・・・・・武君のイラストとても好きよ・・・・そうそうなの・・・ 」
瞳が慌てている姿を初めて見た。
「学園祭で、金賞とった・・・「追跡」とてもいいわ
色彩のセンスもいいけど、作品のテーマに感心したわ
今では珍しくなった命がけで女を地の果てまで追いかける男・・・は、早川君が
投稿連載中の同人誌のファンタジー劇画「冬のライオン」の主人候じゃない?
私・・・毎月続きが、同人誌の載るのを楽しみに待っているの
物語の発想のユニークさが、武の才能を感じさせるわ」
「驚いた・・・・俺が人から誉められるなんて・・・・・
瞳・・・・・怒るなよ・・・・・君も少し変わっているね」
「そうかしら・・・・でも・・・・そうなのかも・・・・・・・・・
私ね・・・武似ているところ・・・・・もしかして、あるかも
私も母がいないの
私が三歳の時にね・・・・・母は・・・・・ガンで死んでしまったの
成り上がりの父が、土下座して結婚を申し込んだくらいの女性だったしいの
結婚してからは父の事業拡張を影で支え
家庭では寸暇を惜しんで家事に専念した
良妻賢母の母だったらしいの
私に似て頑固な父は、再婚の道を選ばなかったの
父はそれから、寂しさを吹っ切りたかったのでしょけど
私の英才教育に没頭したの
ピアノ、クラシックバレー、英会話と四歳頃から習わせられたの
おまけに小学生の六年からは家庭教師まで付けさせられて
私の日常生活は父の期待の壁で、塗り固められたの
だから・・・・心を通わせる友達ほんとうに少ないの
でも・・・・・私は父に負けたくなかった・・・・・家庭料理は小学生になってからは
ほとんど自分で作ったし・・・・・・・・・・
そんな私に父はまたもや試練を与えたの
門限よ・・・習い事を含めて夜8時までの帰宅よ
高校に入ってやっと10時に延長してもらえたわ」
「やばい・・・・どうするんだよ・・・・お嬢様
とっくに門限過ぎちゃったよ・・・・・・・・・・」
「大丈夫よ・・・・平気平気
私は目覚めたのよ
もう父ばなれよ」
俺は胸に手あてながら
「えーやっと乳ばなれなんだ」
「武君・・・・お尻蹴るわよ」
二人ともまたまた大笑いした
「でも・・・・ほんとうに父には気お付けてね
連絡は携帯必ず使って
私の友人関係を父は密かにチェクしているの・・・
自分が気にらなければ、交際拒絶宣告を言い渡す人なの
お陰で私には片手で余る程の友人しかいないわ
今日は私が許される嘘をつくから・・・心配しないで」
俺は涙が込み上げてくるのを必至で抑えて
笑っているのか泣いているのかわけのわからない中途半端な顔で呟いた
「心に留めておくよ」
俺は腕時計をまた確認してから、瞳の正面に立って全力で気持を込めて
手をさしだした。
「送るから・・・・・」
瞳は俺の手を握り返して
うん」と呟いた。

父のとを話すべきだろうか?
私には決断ができない
どうしたらいいのだろう

来た時と同じように、瞳の手を引っ張って地下商店街の出口に向かう
階段を駆け上ると
最初に
澄んだ夜風が、茜色の香りとともに二人を包み
俺は駆け上がる足を止め
コバルトブルーな夜空と瞬く星を見つめた
たぶんこれはペガサス座じゃないだろうか
どうにも自信が無い
頭のいい瞳が星座のことも
もしかして俺より詳しくて
「違うよ」と言われたら悲劇だ

「綺麗だね」

とだけ呟いた
瞳は夜空の中心を指差して

「見て・・・最高ね」
と明るく言った
指先の遥かかなたには
甘酸っぱく光るウォームイエローの満月が
優しく二人を讃えていた



それから俺は、瞳といっしょに一番近くの白山公園まで行き
茂み隠してあった自転車を取り出し
瞳を後ろに乗せた
緊張のせいかぺダルを回してもなかなか前に進まず
バランスを崩して
倒れかけた 。

「映画みたいには上手くいかないね」

「そうね・・貴方は藤代孝治ではなく現実の高校生の早川武よ
それに私は雨音薫よりも・・・・・・ 」

瞳は続けて何か言おうしたが、目そらして悲しげな顔して黙り込んだ。
俺はそれ以上彼女の心に立ち入れなかった
瞳の家の近くの照明が明るい歩道で、下ろして、囁くような小声で

「ごめん・・・12時過ぎちゃったね
あまり帰りが遅いんで、親父さんきっと怒っているぞ
俺直接親父さん合って謝ってこようか」

「いいえ・・・そんなことしたらかえって逆効果よ」

「そうか・・・・君その件は頼るしかないのか・・・・・・・
・・・・・・・・・ 歌の詩がまとまったらメールするよ・・・・
メロディーよろしくね」

「頑張るわ」

「できあがったらまたローサで合いたいね」

「そうね・・「出会いの広場」でね・・・
メイルでまた・・・・あー・・・もしメイルもやばくなったら
学校で休み時間に武のクラスの月星道子ちゃんに手紙を届けて
郵便はだめよ
父は平気で、私宛の手紙を開封する非常識な人なの 」

「月星て・・・・ああ、あの元気な女の子か
知らなかったよ・・・彼女が君の友達だなんて 」

「彼女は幼稚園からの幼なじみよ・・・・・・
だから信じていいわ」
「武にさっき教えた携帯の番号ね
二台目の携帯なの
この携帯の銀行口座はね
私の名前じゃなく「月星道子」になっているの
どういことかわかる? 」

「そうか・・・君の使ったその携帯の請求書が君の家じゃなくて
月星道子ちゃんの家にいっているてわけ」

「そうそう・・・・電話局の毎月の請求書を見ただけでは
私の連絡先が父にはわからないようにしたの
その代わり毎月、月星道子ちゃんには手数料も含めて現金を手渡しているの
今日のデートも道子の家いることにしてあるの
道子ちゃんには父から聞かれたら自分の家いたと
口裏をあわてるようにお願いしてあるの
つまりアリバイ作りね」

「おどろいた・・・・なんでそうまでして親父さんに隠すの」

瞳は天国と地獄の境目で、こからの行く先を確かめたいような表情で
「武君・・・・迷っていたけど・・・・・・・
言うわ・・また父の話になってしまうけど・・・でもどうしても・・
父は私の男性交友関係を監視するために
親権に名を借りた、とんでもない私への人権侵害行為を強いているの
PTA会長の地位を利用して
承諾しそうな生徒にかなりの大金で情報屋にさせて
その生徒を密かに私の周りにはびこらせ
学校での私の自由時間の行動を報告させているの
中学時代に私に馴れ馴れしく言い寄ってきた男の子は
情報屋によって父知れ渡り、少しでも問題点が有る生徒なら
容赦なく交際破棄を迫るの」

「君にその事を教えてくれたのは、誰」

「月星道子ちゃんよ
彼女が、私に告げてくれなければ
瞳は世界で一番馬鹿で惨めなティーンなのかも
父のみさかえの無い願いは
病気としか思えないわ・・・
こんなに情けない親が世の中いったいいのる
知ったとき
私は・・・・もうこの親の子供であることが許せなくなたわ
悟ったの・・・失ったものが余りに大きいから

「青春を返して」
とはもう言えない人だから
取り返しがつかないなら
いっそ大喧嘩をして家出するより
気づかぬふりをして、そっと逃げることにしたの
偶然で私に近づいた唯一の男だけに
このことを告げようと
覚悟はできているけど・・・・・・・そんな話聞いたら・・もう私に会いたくなくなったでしょ」
瞳の切ない涙が、俺の視界をにじませた。


「ままってよ・・・瞳
偶然の男て・・・つまり俺のこと?
君のことは、ほんと言うとまだよくわからないけど  
瞳のお父さんに対する考え方は
少し違うと思う

青春は人から与えられるものではないよ

野花は闇夜でも

たとえ嵐でも

明日の朝日を待ち続けているはず

君が手を差し伸べて

光を手繰り寄せなければ

親父さんが、たとえまともに君を扱っても

蒼き時はただ君の横を振りかえりもせず

通り過ぎて行くだけだよ

方法はまだ残されていると思う
二人の問題として考えてみようよ
どうしたらよくれるか
ね・・・瞳

・・・俺は君ほど瀬戸際で生きてこなかったかもしれない

傷ついて泥だらけになった君など想像できなかったよ

それでも君は日々戦っていたんだね

君は上辺だけで俺を見つめなかった

すてきな女の子

なのに、親父さんのこととなると君は

ぜんぜん親父さんの気持を探ろうとしない

君の言うとおり病気だとしても


話し合いもせずに逃げ出すだけなのは
少しやはり違うじゃないだろうか?
考えが甘い面もはあけど・・・・・・・・」
「父に対してそんな見方あるのかもしれない
武は父のことが、わからないからよ!
武の言う事も間違いじゃないわ
・・・・・・今の私には結論なんて永遠に出せそうに無いみたい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
またメールで・・・・」

「・・・瞳
ねー・・・・俺のことどんな風に思っているのかわからないけど
俺は君に自分の軽率な部分も隠さず
できるだけ素の俺で接したつもりだよ
俺の両親がなくなってもう十年になる・・・
瞳・・・・俺こう思うんだ
話した長さが
人生の長さだって

親父さんのこと許せなくても
親父さんといる時間を
大事にしてあげて
たとえ演技でもかまわないから 」

「・・・・・・・・武・・・・・・・・・・・・」
「君らしくないよ」

「そうね」 涙を拭って
元気を取り戻そうと微笑んだ

瞳は手のひらを俺の顔に突き出して
「ハイタッチして・・・」
と先生に甘えるような目つきで言った。
「それっておかしくない
でも・・・・まあいいや
じゃ・・・・・・また」
俺は瞳の要求通りに頭の上で瞳の手に触れようとした
無防備になった俺に瞳は素早く近づき
頬にキスをした。
薔薇の甘い香りが俺の魂に爽やかな揺らめきを与えた


4話 「ほんとうの出会い」

その瞬間に頭の片隅で眠っていた
ときめきのカレンダーがフィードバックして
新高校一年生の歓迎会の時空を蘇らせていた。


(2006年4月)

広い体育館の前方の舞台には校長が・・祝辞の挨拶の真っ最中である

後方には合唱部員が横に広がって並んで

校長の挨拶の終わりを待ちかねて・・・新一年生に校歌を聞かせる準備をしていた。

俺達、新一年生は全員起立して、校歌を壇上の部員と一緒に歌う目的で

歌詞カードを持ってた。

ふと、顔を横に向けると2組の女子高校生の列に

孤独な黒光りする墨の中に陽気な黄色のカラーポスターを垂らしたように

目だって輝いて見える女がいた

肩まで伸びた黒髪に、引き込まれるように透きとおった大きな目

そして情熱的なショッキングレッドの

ちらりと俺の方へ視線を向けた

その表情は何かを訴えたいようにも見えた

次の瞬間には..


エジフプトの美人壁画が突然の地震で、ひび割れ足元に崩れ落ちるように

彼女は足をくの字に曲げ・・俺の膝もとまで倒れ込んできた

頭を地面にぶけそうになったので、反射的に彼女を抱きかかえた

あのあざやかな唇が紫色になっている

天使か悪魔かそのどちらが成せるわざなのか

彼女は目をつぶりながら
うあごとのように


私を守って・・・・」と唇を動かした気がした

もしかしたらそうでなかったかもしれない・・・たぶん..

危うい不確実のメッセージは

瞳のいったい何を守ればいいのか

悩ませたけれど

なのか

人生か

それとも、・・体なんだろうか

結論が出せない自分が、、・・とても悔しい


俺は、無意識の内に...彼女の手を握り締めていた

「おおーい・・・・・・・・・吉田せんせーーい
来てくれ、大変だ
「おー、君どうした・・早川君だったけ
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
よし、こまのの医務室に抱きかかえていく
お前足の方を持て 」
吉田先生と二人で、肩と足を持って医務室へそのまま駆け込んだ
それから二日たって吉田先生を通じて、お礼のハンカチと手紙が届けられた

「前略
早川武さん、先日はご迷惑を掛けました
原因は緊張によるただの貧血みたいです
翌日からすっかり体力も回復して元気でやっています
隣りクラスなのに直接お礼に伺えなくてごめんなさい
じつは少し込み入ったわけありなので
手紙にて失礼します
草々」

それから彼女からのこれ以上のアプローチは無かった
俺も入学したばかりで自分のクラスのこと方が、気になっていたし
それになにより第一印象で俺には相性の悪い女だと思いこみたかった。
相当な無理をして出来るだけ忘れるように勤めた
そして半年が過ぎた ・・・


瞳の肌の温もりが俺に命のエナジーを与えて
大切な時間を呼び起こした。

頭の中のカレンダーはまた今日に復帰た
ハイタッチでキスを仕掛けた
瞳は恥ずかしそうに伏し目がになり
それ以上何も言わず
家めがけて走り去っていった
父親が縛り付けた掟を振りほどいて
自分の道を歩こうとする勇敢な乙女の後ろ姿だったのだろうか。


5話 「デートの後」

私が玄関の門を開けることができたのは、二時過ぎだった
父に見つからないように、そーと忍び足で階段を上がり
急いでカーテンを少し開いた

カーテン越しに見える
武は、まだこちらを見守っている
この先いったいどうなるの
傷つくのはどっち

それとも私
始まったばかりなのに
弱虫な私
一点を無邪気に見つめる
武が
怖いのかしら

武が帰るのを見届けてから
着替えて、目覚ましミュージックをセットしベットに身を投げた
布団の中で丸くなって、朝の父への言い訳の言葉を止め処なく探していた

朝、父はいつもの通り朝日の差し込むテーブルの窓際の中央に座り
私が二階から降りてくるのを待っていた。
スポットライト照明でまだ薄暗い部屋のテーブルだけ反射光で輝いている
窓から降り注ぐ自然光で、父の顔は逆光となり四角い顔の輪郭だけで
よく表情が読み取りない
鬼のように眉を吊り上げて怒っているのだろうか?
朝の挨拶をするふりおして、恐る恐る接近する
「おはよう・・・ございます
お父さんごめんね!
道子ちゃんと話が弾んで、ついつい門限を忘れてしまったの」
意外にも父はいつものように新聞を右手に持ちながら
わりと穏やかな表情で
「おはよう
瞳・・・・・・いったいどうしたんだ
こんなことは、初めてだぞ」
嵐の前の静けさのような気もしたが、言葉を続けた
「だよね・・・・へへへへ・・・・・
ほんとごめん
朝ごはん冷蔵庫に用意してあるから・・・・
チーンして食べて
今熱々のコーヒー入れるからさ・・ね 」
「二度とやるなよ!・・・・掟やぶり」
「イェッサー」
私はまるで武のようにおどけて敬礼をした。
「なにやってんだ、おまえ
なにかあったのか」
「ほんと、なんでもないよ」
「夕食の時ゆっくり話そう、とにかくお前も早く朝飯食え、学校に遅れるぞ」


それから俺が家にたどり着いたのは、夜中の三時だった。
ところどころ散らかった伽藍とした部屋の柱に貼った、グラビアガールのポスターを
なぜか直視できない
いつもならポスターを眺めてほっとしてから寝る俺なのに
さっき会ったばかりの瞳の顔が脳裏にちらついて、その存在に苛立ちを覚えた
顔をそむけながらポスターを無理やり引き裂くように、はぎ取った。
そして大急ぎてベットに潜り込んだ。


6話 「月星道子との出会い」

翌朝は、瞳のことで飽和状態の頭を抱えて、三組の教室に滑り込み、吉田先生の数学1Bの授業を受けた。
「諸君、大学受験は2年制が山場でなくて忘れるな、一年生での勉強が勝負を決めるんだぞ!
よーしその事を踏まえたうえで、さっき説明した公式をつかって、この練習問題やっみよう 」
何を言ってんだと思う
いまから生徒をそんなに締め付けて、いったいどうするんだ
あーいやだ、いやだ
俺は、ふーと視線を窓際の前の席に座っている月星道子ちゃんのほうへ向けた
そこには、髪をみつあみにして、眼鏡を掛けた小太りのほちゃかわいい風の道子ちゃんが
吉田先生の方を見ず、窓の外をつまらなそうに眺めていた。


そういえば、彼女とは先週の金曜日に話したばかりだ。
俺が、誰もいないはずの軽音楽部で「太陽の下」をギターで練習していた時、道子ちゃんが、にこにこしながら
話し掛けてきた。
「よー武君頑張っているね
私もその曲好きよ」
俺はギターがまだ上手く弾けないので、恥ずかしさも手伝ったのか
この突然の会話の返事が、直ぐにできないでいた。
「???・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ あーびっくり・・・・」
「ごめんね、そんなに驚いた?
でもね・・なんで武君
部室でゲネプロ風でいるわけ??
たしか部員じゃないわよね?
帰宅部じゃないの 」
「んー、そうなんだけど、明日から途中入部しようと思ってさ」
道子ちゃんは、いたずらっぽく微笑みながら
「そんなのできるの・・軽音楽部の年間予算も
割り振られたしさ
新学期からもう半年近く過ぎているよ
活動計画も決まっているし 」
「まじですか?・・それともJK?」
「へへー、JKよ、軽音楽部は硬いことは関係なしよ
楽しけりゃ何でもありよ
それに部長はこの私なのよ
私さ、体育系ぜんぜんだめだし
勉強は並だし
いいところなんて音楽だけなの

「そうなんだ・・・・でも俺なんて譜面も苦手だし、ギターも簡単なコードしか弾けないし
ただ歌が好きだけなんだ」
「それて一番肝心なところよ・・・
好きなことに頑張らなくて、いったい何に頑張るの?
そう思わない?」
「たぶんね・・・・・

「でも、一年生の君がよく部長になったね 」
「三年生はこの時期もう受験モードだし、二年生は学園祭が始まる前までしか顔出さないし
この前軽音楽部解散させるかなんて話がでてしまったの
それで慌てて私が臨時部長にならされたの
と言ってもただの雑務係に近いけどね」
「へーそうなんだ
いろいろはあるんだね」
「・・・話変わるどギター音あわせている
いつ合わせた?」
「一ヶ月前かな」
「いつからギター弾いてるの」
「一ヶ月前から「太陽の下」歌いたくて中古ギター買って弾き始めたんだ」
「・・・甘すぎない
私さ細かい事言いたくないけど
ギターうまくならないよ」
「わかりました部長殿
「あー・・・部長殿、俺少し問題ありなんだけど
聞いてくれる?

「どうでもいいけど、その部長殿やめてくれる」
「なんて呼べばいいの?」

「普通に月星でいいよ」
「わかった道子ちゃん」
「だから違うでしょ!
まあ・・・いいか・・・じゃ道子にして
それで、何?問題て・・・・? 」
「俺、学校ひけてからバイト週三日やってんだ
それで週二日くらいしか顔だせないけど
いい?」
「よーし、働く青少年私が面倒みましょう!!
どうせ今の時期の部活なんて惰性の消化活動なのよ
ランニングマシーンズもこの前解散したばかりだし
軽音楽部は再スタートよ
私が残っている部員集めて、またバンド結成してやるからさ
顔出せる時、出して
お互い楽しく頑張ろうよ・・ね!」
「ん・・・」


そんな道子ちゃんが瞳の友達でほんとに良かった
なにかほっとした気持になった。
瞳のことがなくても、友達になりたい女の子だ。
少し眠たくなってきたが、我慢して何も考えずひたすら、黒板の式をノートに写す
終了のチャイムがなって、俺はさっそく道子ちゃんに
「 瞳とのことよろしく」と挨拶しようとしたところが
道子ちゃんは、チャイムと同時に席を立って逃げるように瞳のいる二組に行ってしまった。


7話 「バンド結成」

は、道子ちゃんの後を追いかけようと廊下に出た時
「太陽の下」鳴メールを知らせた  

 

「たける君へ〜♪
ひとみより

映画よかったね・・(^^・・V
ローサ楽しかったよ♪

あうりがとう

家に帰ったとき父に見つからずに、無事に自分の部屋に戻れたから
帰宅が遅い事で、怒られずにすんだの
心配しないでね
父は私の部屋には、絶対に無断では入らないの
父の私に対する唯一の掟ね

部屋にいる時は必ずノックして
戸は開けないの
おかしいね!
無断で手紙開封するくせに
言い忘れたけど
大事なお願いね
道子ちゃんに休み時間に会って話する時
私の話は絶対に出さないでね
用心してね
父の事だから道子ちゃんも
しっかりマークしているはずよ

そんじゃまたね・・・(^_^)/♪」

朝の現代国語の授業がおわると同じに、隣り組の道子ちゃんが教室に入ってきた
「ハーイ瞳」
「ハーイ・・・道子ちゃん」
両手を挙げて私は、道子ちゃんにハイタッチを求めてた
私の道子ちゃん限定の癖で、学校で会うといつも最初はこれからだ
周りの生徒が一瞬振り返る
私の立場としてはこんな目立つ事は良くないと思っているが、直らない
「ねね、いつものあそこ行こう」
「よっしゃ・・!」
残り時間後八分、駆け足で使ってない水泳部の更衣室に行く
「残り時間後五分くらいよ
瞳どうだったの、昨日は上手くいった?」
「大丈夫だったよ
父からもし聞かれたら
口裏合わせてね」
「任しといて
ねー聞いていい
何で武君なの?」
「それは道子ちゃんにも言いにくいよ
ただこれだけはわかって
最初は彼のぎこちなさが、少し不安に思えたの
でも、武の瞳をみながら
この・・・何と言うか・・・未完成なやわらかさ
武そのものなんだと気がついたの
武といると、心が落ち着くの
そして一瞬でも父を忘れられるの
今の武なら膝枕でいつでも居眠りができそう
そんな感じかな 」
「・・・・・そう・・・・・武君ね
先週の金曜日の放課後、軽音楽部に潜入してきてね
途中入部したいって言ってたよ
絶好のチャンスじゃない
瞳も入部してバンド再結成したら」
「だめよ・・・・そんなことしたら父にたちまちチックされてしまうから」
「そうだね・・・かわいそー」
「あーもう時間切れ」

俺は、道子ちゃんの後を追うことを諦めて、次の授業の準備をした
放課後になって二階の軽音楽部室に駆け上った
予想どおり広い部室にはビアノを弾いている道子ちゃんしかいなかった
「それZARDだね」
「うん」
俺は周り他に誰かいないか確認してから
「瞳から聞いたよ・・・・・・
これからは、瞳と俺のことでいろいろとお世話になると思う・・・
道子ちゃん・・・・よろしくね」
「そうとう厳しいけど・・何とか無理やりまとめて上げるわ
でも私って何んておしとよしなのかしら・・・もう・・・
乗りかかった船だから・・・もう進めるしかないか! 」
「・・・・・いろいろとありがとう
・・・・・・ 俺、明け方までベットの中で眠れずに、ずーと瞳と親父さんのこと考えていたんだ
年頃の女の子にとって只でさえ、親父にうるさく干渉されのを嫌うのに
父親を異性として感じて
精神的にも、生理的にも
避ける時なのに
瞳の心の牢獄のような家庭環境を考えると
放任で生きている俺なんか、とても耐えられないよ
あんなに綺麗で
勉強ができて
裕福な家なのに
瞳は毎日が自分の周りに近ずいて来る男に絶えず警戒しなければならいなんて
どうか・・・瞳を・・・・サポートしてあげて・・・・
道子ちゃん・・・・・・お願い 」
「武君・・あんまり思いつめない方がいいよ
その調子だと、ハートがもたないよ
偉そうなこと言える立場じゃないかもしれないけど
ひとまず、さーあ・・・・気持切り替えて
ね・・・・瞳のことは私も頑張ってあげるから
・・・・・忘れないで私も年頃の女の子なのよ
そんな目つきで瞳のこと話されると
私も動揺しちゃうから 」
「ごめん・・女の子てそうなのか?」
「ね・・バンドの再結成の準備しなくちゃ」
「二人で始めるわけ?
男はそういうの動揺しちうよ 」
「あーそうか
他に心当たりある?」
「滝やんなんかどうかな」
「いいね・・・でも彼楽器弾けるの?」
「知らなかった、滝やんねドラム超ベリグッドなんだ」
「そう、滝やんの交渉は武君に任せるとして
じゃベースは」
「俺やるよ・・・ギターまだ上手くないし
ところで、道子ちゃんは?」
「私はピアノかキーボードよ
これでも私将来は音楽の先生か保母さん目指しているんだから」
「よしよし、で・・・・要のボーカルとギターは?」
「瞳は公にはできないし・・・誰にしたらいいんだろう?」
「今何て言った・・・・・瞳は公の活動できない?
なんだよ・・・俺・・・本気で怒るぜ
唯一の信頼している友達の道子ちゃんが瞳の親父さんみたいな考え方で・・瞳はどうすればいいんだ」
「わー武君の怒った顔初めてよ
・・・・ごめんね、そうよね
・・・・・・・・・・・・・・・・・・瞳が武君に本気なわけやっとわかったわ」
「考えようよ、隠れて集まる方法と場所と
仲間探し」
「はい」
「今は方針だけでいいから」
「他に心当たりある?
信頼できそうな子? 」
「一人いるけど、歌が上手くてギター弾ける子
・・・・・でも・・・・その子ちょっとね・・・
ね・・ ボーカルは保留しておかない?
焦らない、焦らない
武君も、じっくり探しみてよ 」
「なんだよー・・・・半端すんなよ
その子・・どんな子 」
「五組の佐久間勇輝よ、その子ちっと、尖がっているところがあって
不良少年じゃゅないかもしれないけど、突っ張り一匹狼みたいな雰囲気なの
噂によると一人で曲作って土曜の夜に遊歩道で路上ライブもやっているみたい?
最近は、やっと単独行動がゆるやいで
ネットで仲間集めたりして音楽活動やっているみたいだしさ
頭さげても、「お前達かったるいぜ!」て言われそうな気がする」
「だめで元々じゃない・・・声かけてみたら」
「私ね・・・これでも女の子よ・・・彼の場合ちょっと辛いわ
武君誘ってみてよ 」
「俺でいいの??・・・・俺まだ部活やってないんだけど?」
「細かい事言わないの」
「いいけど・・・・道子ちゃんて案外そういうところ、いい加減なんだね
じゃ聞くけど部活の担任先生だれ?」
「白井和美先生よ」
「あーあの人のね」
「白井先生てとても軽音楽部にとっては都合のいい先生なの
活動報告と部費の資金管理さえ確りしていたら
「何やっても自由です・・君達で軽音楽部を作っていきなさい」
て、いつも言ってるの 」
「へー・・・・・・・・・・・・それで瞳のことは、どうするつもり
部員名簿に載せるの?載せないの??
瞳がいる時の活動の場所は? 」
「そうね、とりあえず・・・・部員としては秘密にしおいて
・・・・・・それで・・・瞳が入れる時の練習場所は
私のお母さんのビアノ教室するわ
あそこだったら、週のうち三回は自由に使えるし
防音で、鍵もかけられるし
とりあえず、それでなんとかなりそうな気がしない?」
「それいいじゃん、瞳の場所さえなんとかなれば、あとは俺も本気で部活するから」
俺は瞳のことで、光が見えてきたので、少しだけ調子にのったのかもしれない。
「じゃ、道子ちゃんの携帯教えてよ」
「たける君・・・勘違いしないでね・・・・」
道子ちゃんは怒ったような悲しいような複雑な顔で俺を見つめた。
「悪用しないでね」
道子ちゃんは無理した笑顔で、携帯の番号メモを手渡してくれた。

俺は感謝の気持で心が満たされ
友情の切なさが、心に染み込んだ


8話 「メール」

翌日瞳から二回目のメールが届いた


「たける君へ
瞳より

***********
元気してますか?

移動教室の時、廊下で会ったけど仕方なく・・知らんぷりしちゃた

ごめんね!!m(_ _)m

今度廊下で会ったら、胸に手をあてたら・・(おはよう)・・の合図に決めたから

よろしくね

YUIの「Good-byedays」シングルCDを買ったよ

「Good-bydays」改めて聞いて映画のラスト浮かんできて

涙ぽろり〜(T_T)

二曲めの「Skyline」とても好き

たける君は、どう思うか知りたい

道子ちゃんに、明日CD渡しておくから、もらってね

映画代のお返しね・・

私からのプレゼントよ

体に気お付けて、アルバイト頑張ってね!!」


折り返し、突き抜ける風の速さで、返事を送る


「瞳へ〜☆
武より
・・・・・・・・・・・・
CD・・ありがとう!!

チョウ感激 ウレシッス! ! !

毎日聞いているよ〜ん♪

Skyline」まじで好きだぜ・・\(^o^ )/

コピーしたいけど・・コードが難しそう..♭♪

でも頑張ってトライするぞ...♯♪


道子ちゃんから聞いたと思うけど、

俺軽音楽部に入部して活動始めるつもりだから

10月1日の日曜の夜、・・・
道子ちゃんの家に集まってYUIの曲三人で練習しようね〜♪♪



俺はバイト明けから自宅に直行して

大急ぎ夕飯を食べて、宿題をやり、寝るまでの貴重な一時間を

ギターの練習と前から少しずつやっていた、自作の歌作りに専念した。

真夜中なのでフォークギターはちょっと抵抗ある

中古のストライトキャスターモデルでアンプに繋げずに、

集中して作ろうとしたが、最初はなかなか自在にはゆかない

それでも、一週間位にはなんとか

・・・ それらしい歌詞を・・「先にまとめた」

苦労したのは、歌いだしの言葉

インパクトあって、歌いやすい言葉

なるべく韻をふめるようにも、心がけた

問題はコード

まず自分が歌える キーを、闇の中を手探りで探すように

ゆっくりと、慎重に決めた

「D」で、作ってみよう!!..(ニ長調・・ドとファに♯)

覚えたての主要三和音・・・ D、G、Aを軸にして

ケーデンスを気にしながら、自分なりのコードを譜面に割り振った

それからコードの構成音を頭に入れながら

メロディー作りなのだが・・・歌詞のイメージにあっているのか...自信がない

俺の使命は..ここまでなのかなぁ〜;

でも、何かに付き動かされるように

「一番のメロディーを作って欲しい!!」と書いて

歌の録音と歌詞とコードだけの譜面を

・・瞳に、出来たてを修正もせず送ってしまった。。。

・・が・・少し慌てたと思い、後悔が・・・日を追うごとに・・・

そして、瞳からメールが届く

たける君へ〜☆
瞳より
============
歌見たよ〜ん♪

ウルトラウレシスね!!

メールにも書いてあったので一番は私が修正したよ

メロディーは任せてねと・・言いたいとこだけど

だめだょー! キツイ言葉だったら、ごめんm(_ _;)m

道子ちゃん程 ・・(^^ ;グーじゃないかもしれないけれど...;

Aメロだけ書いてあげるょ〜

その後のBメロや「さび」は・・自分の力でね!!

曲作りの素晴らしさ、やっぱり苦しまなきゃ・・わかんないよ〜☆

私の気持わかって「ほしい」

コード理論の本、武に貸すよ・・印つけたとこポイントね

そんでもって・・・約束の日に歌いたいと思うの

Aメロあんまり期待しないで、それでも心の隅で

なんとなく待ちどうしく思っててね?

今は、そんな気持ぃ〜

じゃまた・・・Bye-Bye☆☆


原因がよくわからないが、やたら瞳のメールが明るくなっている
こんな時いったいどうすればいいのか?
何度も自分に問い掛けても、答えは見つからない

いちお素直に受け止めることにした。


瞳・・・「ありかとう!!☆
武より

道子ちゃんから、「コード理論の本」受け取ったぞーっ

思いっきり、心に染みることするぜ、俺の歌姫様

一度で全部は理解できなくても、

意地でも・・何回も読み直すから

大切な本、汚すかも

Aメロはやく自分の物にしたい

「さび」は 俺が作るから

貰った真心は、必ず返したいから

俺、カッコつけずに「本音」生きたいよぅ〜。

歌うことが、好きになったけど...本気で「ひとみ」が、好きになったよ。



9話 「秘密の扉」

約束の日がやってきた。
(2006年10月1日 )

道子ちゃんと学校の帰り近くのコンビニで待ち合わせして
瞳が先に待っている道子ちゃんの家まで案内してもらった。
道子ちゃんは気のせいか、そわそわしている。
そういえば、
瞳と会うのもこれで、三回目だけど、
・・ 偶然なのか道子ちゃんと個室で会うのも三回目になる
そして三人が顔を逢わせるのは、初めてだ
そう考えると俺も緊張してきた。


見上げた空が茜色に染まっていた。
道子ちゃんのピアノ教室は、別棟に防音一軒屋だ。
そこまで、たどり着くには、車一台分くらいの
気持ちよくなる、庭が視界に入る
彩りが、まだそんなに鮮やかではないけれど

・・・なぜか懐かしささえ感じる
    咲きかけの淡いVioletColorのコスモス
     秋風に吹かれて、揺れていた              

俺を優しく出迎えた、この花は
いったい誰の為に咲いているの...

立ち止まって、心で問いかける俺に
道子ちゃんが、
生まれて見たことも無い笑顔で・・・大きな戸口を指差した


そこは...束縛から逃避できる、無敵の隠れ家なのか?

初めて、自分の意思で一人旅を決めた少年ように、
秘密の扉をそっと開けた

広い部屋の中央には
大きく黒く鏡のごとく光を反射するグランドピアノが遠慮なく居座っている
左脇に電子オルガンが、
中央よりの右奥にはドラムセットが置かれていた
きっとこれは電子オルガンのリズム感を養う為に置かれているのではないかと思う
道子ちゃんのお母さんが、生徒に教える為の楽器であることは間違いない


グランドピアノの奥から
「ハーイ」と言いながらギターを抱えたまま、瞳が飛び出してきた
ピアノの前にある椅子に座ってギターのチューニングを始めた
服装は最初のデートとまるで感じが違って
パステルな紫色のフリル付きのラインワンピース
その下は紺のデニムのスカートと
足にはブラックオーバーニーソックスを履いてとてもシックにまとめていた
右胸には、銀色の星のバッチをアクセントにしていた
よく見ると、腰まで届きそうなくらいの髪の毛を
少し切って肩に掛かる長さにしている

「まずは、JPOPの流れ変えた、先駆者YUIちゃんの歌から」

瞳はそう言って
天井をちっとだけ不安そうに見上げてから
ギターを弾きだした
アルペジオからだ
やはり、記念すべき瞳の第一声は「Skyline」だ
イントロ、に合わせて、少し短くなった艶やかな髪がリズミカルに揺れる
ストロークに入ると前髪が、顔を覆い表情が隠れてしまった
ちっとだけ一・・・・
と歌う頭の音はYUIより一音位高く入ってきた
瞳は自分の音域に合わせて澄んだ声で歌い出した
俺は部屋中に響き渡る瞳の歌に足元が揺れる錯覚を覚えた
曲の間奏になって瞳が、視線を俺に向けて微笑みかけて
合図した
すると脇にいた道子ちゃんが、突然ドラムを叩きだした
「俺も演奏しなきゃ」と思い
持って来たキターで「Skyline 」のうろ覚えのコードのルート音を中心としたベースを
思いつくままのリズムで弾いた
そして
瞳は椅子から立ちあがり、道子ちゃんと俺の近くで、歌い続ける
I want to fly
well I want to fly well」と三人でハーモった
瞳は歌いながらエリッククラプトンのようにギターリードをCDと同じリズムで弾いている
道子ちゃんも瞳の才能にびっくりした顔している

歌い終わった瞳は、得意のハイタッチを俺達に求めてきた。
三人が部屋の真ん中に集まり
「Yeahー」
と呼びかけあってハイタッチ
皆の手が、汗ばんでいた

私は皆の気分が盛り上がったているが確認できたので
武の作ってくれた歌詞とメロディーを
音符を五線紙にしたためて持ってきていた

「武、ねー聞いて

武が書いたメロディー私なりのアレンジしたの

気にってくれるか・・とても心配

ベストを尽くして練習したのよ」


武と歌いたかった

親という選択の余地を許さない人間のために

屈折した私の青春に

少しでも輝きを

与えてくれる人は

本当に武なのか

私の心はまだ疑っていいた・・・・けれどもう一つのいつも傍にいて離れない

選択の余地を許さない時の流れ

私を忘れさせるように、駆り立てていた

私は知っていた人の出会いの儚いさを

私は譜面を武の顔の真ん前に、わざと押し付けて

「よーし、私、武の歌・・・・歌っちゃうから・・・二番は武歌ってね・・・

道子ちゃん聞いてて・・・後で審査お願いネ」

 

mー Dream days (D G)

ざわめく校庭 群れの中一人抜け出して 澄んだ大空を 見上げる貴方がいた (D Bm7 G D Bm7 A)

渦巻く心宿さない言葉に 間切れて 貴方の柔らかな声が 聞き取れない (F#m Bm F#m Bm)

貴方に出会って 気づいたの (C#m F#m)

探していた行く先は 私と貴方で作るこの道なんだとOh my Dream maker

光り影が出会う交差点 譜面から溢れ出た貴方の歌は

教会で歌う賛美歌のように 私の胸に響き渡る

不器用な愛の願いが 私達を結びつけるよ OhーYOU YOU are My destiny

瞳をそっと閉じて 蒼き世界の秘めた扉を開けるの 

貴方の名前を呼びたくて 手探りで温もりを探す

Tell me Why こんなにも貴方を感じるのに

切ない明日を 描くのは どうして baby 話してよ夢の続きを

wanna get in your heart

蕾の野ばらを 胸の奥に抱き Oh baby 貴方の為に今生きたい only you


道子ちゃんの 手拍子で武が慌てて、ギターを抱えてマイクの前出て来た

mー Dream days

あてのないカレンダー 肘付いてぼんやりながめいてた

決められた場所に 駆け足で昇っていく仲間を 焦る気持で追っていたけれど

君に出会って 気が付いたのさ 

探していた行く先は 僕と君で作るこの道なんだと oh my Dream maker

光りと影が 絡み合う交差点 ノートから溢れ出た君のメロディーは

教会の鐘の音のように 僕の胸に響き渡るよ

不器用な愛の願いが 僕を変えていく OhーYOU YOU are My destiny

青い果実は愛の無い言葉で育たないよね だから ウウー my Dream maker

高く 強く 咲く 日車の花のように 光りに向かって花開け

積上げた夢を抱えきれずに 転がり落ちても 

描いた夢の形は 君の胸に残るはずさ


(瞳のリードギターの間奏)

 

ねー君 僕らの愛が 闇に吸い込まれ消えそうになっても

忘れないで 僕らは永遠にここに留まれないことを

認めて   僕らは変わることでしか進まない列車を 選んだことを

誓って   僕らは新しい朝に向かって飛び立つことを

oh If I can belive in your dream I ve got pure love

ウーmy sweet   ウウーBaby

大分音程を外して、でも・・・武はたどたどしく・・・初見で歌いきった
とても立派だと思う・・・ギターもよく弾けないのに・・・嬉しかった


歌っている束の間に、瞳の後ろ姿を見ながら
考えた
いったい彼女はこれから俺にどうしてほしいと思っているのだろう
冗談が言えればいいという仲じゃなくなった気がする


10話 「勇輝と優香」

私は楽しんでいる武を見て
ほっと一息ついた

するとグランドピアノの奥の仕切りカーテンから
「決まっていたじゃないか」と太い男の声が聞こえた
緊張が途切れた時に、想定外のサプライズに、私は寝床に突然ネズミが入ってきたように驚いた
声の方向に視線を合わせると
背の高い長髪の男と少女そして・・・・親友の滝やんがカーテンの奥から出てきた
よく見ると滝やんと少し距離を空けて近づいてきた二人組は
佐久間勇輝君と少年のようなあどけなさの残る見知らぬ少女だ
「びっくりした・・・・いったい何処から入ってきたの?」
「ごめん瞳・・・裏にもう一つの入り口があるの教えてなかったけ」
「あーそうなの・・・・・ねーたしか道子ちゃん、前に、佐久間君は苦手だっていってたじゃないの?
どういうことなの・・これ?」
「そうなんだけど・・滝矢一君から連絡先を教えてもらって交渉したの
それで「見学だけならいいよ」て言う話に進んだの
瞳と武君にないしょで、進めてと少し気がとがめたけど・・これは私の責任でやりたかったの」
「道子ちゃん・・・もしかして佐久間君のこと・・・・」
「なによ・・・突然変なこと言わないで」
「そうね・・・それで隣りの人は?」
すると今まで一番端でおとなしくしていた
黒いGパンと黒のTシャツの上にブルーブラックのジャケットを羽織った少女が、口を開いた
「始めまして・・佐久間勇輝の姉の優香です」
さっきカーテン越しから出て来た時は暗がりでよくわからなかったが
中央の照明が明るい場所だと、別人のように目鼻立ちのはっきりした美形だ
微笑んだその横顔は夢の中かそれとも遠い昔に
一度あったことのあるような懐かしい顔している
「私の名前は飯田瞳それから・・・・あそーか?・・・・武や道子ちゃん滝やんのことは、もう来る前に紹介しれてたの?」
優香は、少し機嫌が悪いのか?
迷惑そうな顔つきで視線を尖がらせながら、でも素直に一言答えた
「はい」
でもわかった言葉の温かい響きで、不機嫌うに見えるその表情は、思い過ごしであることを
でもなぜ私は武のことそっちのけで、初対面のこの少女の気持まで探っているのだう
どうかしていると、自分の頬を抓りたくなった
それでも、何も感じなかったような顔して話続けた
「今日は、もしかして軽音に入部にきたの?????・・・・・そんなわけないよね
優香ちゃんいくつなの?」
「十八歳です
現在高校三年生で、時々学生やってます」
「えー・・・十八歳・・・・・・・・・・・・・・・・時々・・・・・?」
わからなかったその言葉の意味は、それから後で直ぐに気がついた
脇にいた弟の勇輝君が、ようやく説明しはじめた。
「道子ちゃんから話きいて、皆バンド活動初めてみたいだから、俺よりキャリアの長い
姉の優香を今日一日限りの特別ゲストとして、つれてきてやったよ
姉は、これでも「ワイルドフラワーズ」のバンドリーダーなんだ
おい、優香説明くどくどするの俺にがてだから
自己紹介がわりに、一曲歌ったやれよ」
「うんー」
優香さんはカーテンの奥から自分の身長の半分もありそうなギターケースを
大事そうに抱えて
そっと床に置き、ハードケースの蓋を宝石箱を覗き込むように
ゆっくりと開けた
ストラップを肩にかけると
「すみませんけど・・・Aください」
と・・・さっきとはまたまた違う凛とした顔で、道子ちゃんにチューニングを求めた
五弦とハーモニックスの音が、部屋に響く
その姿は束ねていた髪をときはなして表情かくし神秘的空間作り出している
全員が注目する中
ギターを持った弟の勇輝と寄り添いながら
「私・・・・・歌います・・・・・
手の中で」
大人のハスキーな声で喋り出すのに気が付かされた
彼女の魔法が、皆を優しく包み込んだ
時間が刹那に止りかけている瞬間だった

 

浅い眠りから覚める 忘れられない笑顔の君がいた (A F#m7 A7 Bm7 A)

近づいた期待どおりの奇跡 引き止められた肩に残る 言葉が痛い (Dm7 A E Dsus4 A)

選んだ道に 迷いは無いはず (Dm7 FM7 Am Dm7 Asus4)

切なる思いは いつも逆光線で 照らしだされていくヨ

新しい部屋 新しい町 居場所を探せないギター

君へのあこがれで 奏でてたのに 今日は手の中で泣いている

あー秘めた約束 胸に抱きしめ 歩き出すのよ

私の我がままが 無邪気な笑顔で きっと 言えるその日まで

忘れない 忘れたくない 君の手の温もり

時の狭間に 紛れるて見失いそうでも

凍えそうな心 懐かしい温かさで包みたい

あー もう一度 瞳の奥で眠っている君を 呼び起こすよ

あの時 広い世界でただ一人 わかってほしいかった君に合うために  うー

                                 (弟の勇輝が優香の後ろに 回り込んでバックコーラスを入れる)

You have just been in my glory days

Don't you know how much I miss you

 

瞳が優香を 食い入るように見つめていた
優香のリードキターがハーモニックスの音色で始まった
話し掛けられているようなメロディーラインのリードが 部屋の隅まで響き渡った
またハーモニックスでメロディーを結ぶと
「この歌に二番はありません」
と言って直ぐに、指を二本立てて、二曲を歌い始めた
Lucky Girl歌います

 

「中途半端に 宙ぶらりん 宇宙の果てまで (D Bm F#m)

揺らぐ心で 彷徨っているよ」 (Bm A)

なんて言いたそうな気持を 今日は感じちゃうよネーー君 (F Em Am Em F)

「崖淵だよあいつの夢は 笑っている場合じゃないだろうにネ 」 (F G)

と誰かが 言いふらすけど  慌てることないよ 私がいるから (F G F G)

沈み込むよな空気 吐き捨てたなら 新しいTシャツに着替えて (Em Am Em Am)

ギターに合わせて 思いつくまま口ずさんで聞かせてよ (F C G7)

あいつの口癖の「常識」ほどに 人は優しく無いかもしれないけれと゛ネ

う う わかっているから いいのよ いいの 私がいるから

う う 心を乱さず進でネ いいのよ いいの 私がいるから


ねーお願いだから 成りたいのよ君だけのLucky Girl

恋のかけ引きなんて 私のがらじゃないから  

心を温めてね       うーHeart of red

ちょっと迷った日もあったけど あいつのことは忘れた

やわらかなときめきで歌って 

だから Maybe Maybe I wanna be your Lucky Girl

ohーoh baby baby  be my boy

Maybe Maybe I like you  with all my heart


(優香を押しのけて勇輝
のリードキターが鳴り出す)

中途半端に 宙ぶらりん 海の底まで 

巻き込まれて 消えそうな灯火

挫けた気持で 落ち込んでいるよ

なんて叫んでいる君の歌 今日は身につまされるよーネ

崖淵なのかな 私の強り

張り詰めた心は 横風に弱いなんて

君の震えている心 温めてあげたいのに

今日は 弱気で愚痴る私がいる 中であいつの影法師がよぎるから

う う どうでもいいのよ いいの 

う う うそみたいそんなの私のがらじゃないから いいの

たとえ明日は 北風に夢が震えたとしても

やわらかんなときめきで歌ってね

だから Maybe Maybe I wanna be your Lucky Girl

ohーoh baby baby be my boy

Maybe Maybe I like you  with all my heart



優香が隅で黙って見ていた滝やんを手招きする
自分がコピーしてきた譜面をステップを踏みながら渡した
すると全員が譜面のあるマイクの前に集合して歌い出した

だから Maybe Maybe I wanna be your Lucky Girl

ohーoh baby baby be my boy

Maybe Maybe I like you  with all my heart

曲が終わって
しばらく全員言葉を掛け合わないで
見つめ合った
一番最初に口を開いたのは
握手を求めに行った瞳だった
「とても、輝いていました
どうしたらそんなに、ハートフルに歌えるのですか?」
「歌っている時は自分のことが、わからなくなるわ
上手く言えないけど、歌う前に自分に言い聞かすの

は、この歌の中に溶け込むことができる・・・とネ
歌は歌いたい気持が
何より大事
歌いたい 歌いたい 願うほど
歌は 大きく成長するの
だから
歌い続けようと努力することを
いつも期待される
逃げ足の速い
生き物

そんなふうに思えるの



瞳は優香
のアドバイスに、我を忘れて聞き入っているふうだ

俺は瞳には、絶対に気がつかれたくなかったけれど
ほんの少し不安だった
何にがって、このまま音楽一色にのめり込んで行くことが
瞳の心をつかみたいから、夢中で詩を書いた
気が付くと
夢中になっているのは
俺じゃなくて
瞳だった
瞳に直接、告げるべき、淡い思いも
無理に譜面のせて
かっこつけた照れ隠しになりはしないか?
正しさなんて誰も示せないことに
憂慮している自分は臆病な愚かさに引き込まれているのだろうか?
今、やっとわかった、もう引き返せないと
それでいいのかもしれにない
俺にしては、上出来かもしれない
覚悟さえすれば
このささやかな不安は
道を進むエナジーに換えられると
切に願った


11話 「皆で決めたこと」

今まで、沈黙を守っていた滝やんが、中央に駆け寄ってきて
俺に向かって、ボクシングの対戦相手を睨むような目線で
話し始めた

「武それに瞳ちゃん、ちょっと待ってだよ
バンド活動を始める前に、どうしても話し合っておかなければ成らない

大切な事を忘れていませんか?」
「滝やん・・急になんなんだよ」

「何にて ・・馬鹿だなお前も・・決まっているじゃないか
瞳ちゃんの親父さんことだよ
お前さー本気で、親父さんに隠れて
瞳ちゃんとバンド活動するつもり
一回や二回できたとしても、そんなの意味無いよ
やっはり正面から瞳ちゃんの親父さんと対決しなきゃ
瞳ちゃんがかわいそうだよ」
「あー俺も真っ先にそれを考えたよ
でも今回はそれは俺にはできないって思うんだ
聞いてくれ・・・・・・話をそらすつもりは無いが
亡くなった俺の母さんの話を

俺が物心つき始めた頃、散らかった部屋で一人母は
焼酎のビンを手の届く所にいつも置いて
まるで輸血をするがごとく自分の体内に取り入れていた
母に話し掛けると
決まって母は
「武・・・う
・・・・す・好きな事する前に、勉強しなきゃだめよ」
と微笑みながら言う


俺はそれがとても悲しかった
子供が親を選べないという自然界の掟が俺には
切なく進路に立ちふさがっていた
サクラが散っているのに
俺は心にカーテンを掛けの歌を
口ずさみながら眠っりつづけていたかった
偽りの愛情の毒が
何が正しい事なのか! 何が大切な事なのかを
歪めていた

「おい・・・武・・・お前後半の言葉はなんなの?
突然なぜ詩を朗読しているんだ?」
道子ちゃんが滝やんのお腹を軽く突付いて
「滝やん・・鈍感力すごいね・・・あきれるわね
最低限のイマジネーションが貴方には欠けているみたい
わからないの・・・武君の優しさが・・・お母さんのことリアルに表現するのを躊躇ったのよ」
「あー・・・そうか・・・それで瞳ちゃんも泣いているんだ
それわそうと、武君話が見えないけど
いったい何がいいたいわけ?
よくわからないけど」
「そうか・・・滝やんにもっとわかるように言うと
俺達は、親がたとえ間違った言動をしたとしても
親そのももの存在を否定できないんだ
なぜら親にとって子は血を分けた自分
の分身なのだから
その逆も真であることになるよね
子供にとっても親は自分と同じものを共有していることになるよね
この逆が真の真は・・・100%以下だということが、とても大事な真理だと思うんだ
学識ないので遺伝については残念だけど断言できくないけど
直感でそう思うんだ
そのつまり 自分のを否定することは、想像できなくらい困難なことでしょ・・・
親とは・・・肯定できない部分もある存在だと意識するのが自然なんだと思う
でも瞳の親父さんと俺の母親の場合は
どうしても頭から一度親を否定してしまわないと
生きていけないくらいの混乱を招くことに繋がるんだ
そのことは・・・同時に悲しくて不安なことでもあるんだ ・・・滝やん・・・わかってくれ」
「ごめん・・・さっきよりわからないんだけど
ひとつだけ・・・わかったことは・・・武君も親のことで大分悩んだんだね」
二人の話を聞いていた勇輝が、突然俺の胸倉を掴んで

「武さ・・・お前・・・甘いだよ・・・
そんなんじゃ・・・何もできないぜ
瞳の親父なんか・・・気にしてたらバンドなんて絶対にできないて
瞳は親父と喧嘩してでもバンドやる覚悟あるかどうか・・・ここで今すぐ決めろ
そうじゃなきゃ・・・この話降りるからな」

武君が今まで見た事もないほどの、怒りの表情で佐久間勇輝君の胸倉を掴み返して
「勇輝・・お前・・瞳のこと俺の前で呼び捨てにするな
いいな・・・今度呼び捨てにしたらその鼻柱へし折るてやるからな・・・」
勇輝君は以外にもニヤ−と微笑んで

「武やっと本気だしたな
悪かった
よし・・・この話俺も人肌脱ぐよ」
「いやなやつだな・・・人の気持を両天秤に掛けやがって」
「そう言うな・・・瞳ちゃんの親父さんも人の子
かならず誠意をもってアタックすれば、折れると思うよ」
「そうだといいけど」
「なんだよ・・・お前まだ俺の気持わかんないのかよ」
勇輝はまた武の胸倉を掴んで喧嘩腰になっている
「何お・・・ 」
武もまた勇輝の胸倉を掴み出した
私は思わず二人の仲に割って入った
「二人とも・・もういい加減にして・・
どうして・・そう野蛮人なの
言葉で自分の運命を変えられるのは人間だけよ
武はきょとんとした顔して
「いい事言うな、さすがだよ」

武は他のメンバーを部屋の中央に来るよう手招きして
「どうすれば、瞳の親父さんの異性交際に対する間違った考え方を
変えてもらえるか?それともそれは可能なとなのか
集まった皆で、知恵を出し合おうよ
問題点を整理しょう
瞳の親父さんは、瞳こと以外でも無茶な要求を押し付ける事があるの?
もしもそうだとしたら、話し合いで解決するのは、望み薄だと思けど」
「いいえ・・・他のことはほとんど普通の対応しはていると思うわ」
「じゃー親父さんが、そうなったのはいったい何が原因だと瞳は考える?」
「確信に近い思いがあるの、きっと母のことが原因よ
母は普段は大人しい女(ひと)だったらしいけど
細かい所に気が付く繊細な感性と
いざとなると一旦決めたことは命がけで守り抜く頑固な面も持ち合わせた女だったみたい
へんな言い方だけどヤクザの女将みたいな感じかな
周りがいくら反対しても父が決めたことは、たとえ間違いだとわかってても一緒に戦ったみたい
良家の子女だった母が、夜逃げして駆け落ちして結ばれた仲なの
そんな母にたいする父の思いは子供の私でも想像しがたいほど深いものがあったの
母が病で亡くなった日は、一晩中大粒の涙を流しながら泣き崩れていたの
ところが翌日になると、別人のように冷静になって涙一つみせず、喪主役をつとめていたわ
そして・・・私に近寄って来て私の両肩を両手で掴みながら」
「瞳・・・お前は母さんの分身だ・・・どんなことがあっても守り抜くからな」
と思いつめた表情で話し掛けたわ
父のこの時の決意は固く
前にも武に話したように再婚もせずいままでずーと片親で私を育ててくれたの
これだけは、わかって父の愛情がなければ、武と、ともに同じ目線で歩きたいと願う私はいないわ
父を私のことで
傷つけたくない
けれど・・・これ以上間違った愛情には耐えられそうもないの

話を聞いていた勇輝君が
「道子ちゃんて世話好きそうな顔しているよね
・・・話聞いてて思ったんだけど
瞳ちゃんの親父さんに、相性のいい女性を俺達の力で紹介する
・・・というのはどうだろうね?」
「いいえー・・・ショックどうして私そんなふうに、いつも見られるのかしら」
武君が話に割り込んできた
「待て、待て・・・いいよ・・・そのアイデア決まりだよ
道子部長殿・・あのさー軽音楽部の担任の白石和美先生て
確かまだ独身だよね?」
「うん・・そうなのよね・・・あんなにゲロマブなのにね
どうして一人なのかわけわかんない・・よね 」

勇輝君が左の手のひらに右のこぶしで叩きながら
「武・・和美ちゃんなら・・まじ・・いいよ」
道子ちゃんが、不機嫌そうな顔して
「勇輝君・・ちっと白石先生のこと「和美ちゃん」なんて呼ぶの止めてくれる」
「なんでだよ、そんなのお前に関係ねーだろ」
「ビックバーン頭にくる
私のだいじなクラブ担任の先生よ 」

俺は勇輝と道子ちゃんが話しをそらして、言い争いしだしたので
二人の仲に割って入ろうとした時
瞳が、撫子色に頬を染めながら
ウインクして俺のシャツの裾を後ろから引っ張って止めた
俺の耳もとに泣きホクロが見えるくらい唇を寄せて

「武君・・やぼてんよ
ほら・・二人はほっといてね・・・ 」
「あー・・・・・・そうか、そうか」
二人は部屋の片隅にいって二三分言い争っていたが
すっきりした表情でまた中央の輪の中に戻ってきた
道子ちゃんが胸に手をあてながら
「この話・・・私に任せてくれる」

すると花火大会のラストの仕掛花火が一斉に打ち上がったように
道子ちゃんを中心して輪組んで、拍手して
「せーの
」でハイタッチした
俺はいつもの悪い癖ここで出てしまった
「おいーだいぶ和んできたし・・・
時間も時間だし皆の写真でも撮って、締めようよ」
道子ちゃんが・・・
ちょっと・・・・その前に全員で何か歌える歌を来週練習日といっしょに相談して決めようよ
それから記念スナップよね・・・武君!!
私達は今・・許された時間にいないのよ

皆・・・・でしょ・・・・・?」


道子ちゃんは、ふところを広くして自分一人でなんでもかんでも
抱え込む
けな気だけど
どんな気持でそんなに頑張れるか
ときどき足を止めて考え込みたくなる
それなのに、自分の悩みなど
忙しさのせいにして人にすきを見せないふうだ
強い人なのだろうか?
わからない??
俺はなぜか勇輝とうまくいってくれと密かに祈っていた

出番を待ちわびた役者ような顔して滝やんが、また道子ちゃんに話し掛けた。
「それじゃ道子先生、俺達いったい来週何に歌えばいいですか ?」
「今一番の話題性のある歌は、みんなの中で何
勇輝がすかさず
「映画NANAの中の挿入かでENDRESS STORY知らない?」

「知っているよ・・だけど、うろ覚えでさ・・・道子ちゃん譜面とかある?」
と滝やんが道子ちゃんに言い寄った
「いいこと聞いてくれたね滝やん・・・CDもあるからここで聞いて譜面見ながら
皆で練習しようよ」
黙っていた瞳が口を挟んだ
「最初からそんなに盛り込んじゃうと・・後が続かなくなるよ」

「そんなことないわよ ・・・鉄は熱い内に打てよ」
「 馬鹿は早く殴れってこと?」
「ひどい・・・ひど過ぎる言い方ね」

「ごめんね・・・道子ちゃんに気が付いてもらいたかったよ!
私は、ね・・武の最初の意見に賛成よ
確かに・・・バンドとして練習に打ち込むことは大切よ

でもね・・・熱中するあまり、それが全てになってしまって
何も見えなくなるってことないかしら
休符のない歌は・・・辛いわ・・・でしょ・・・道子ちゃん」
「瞳・・・馬鹿ね・・・自分の立場わかんないの?
親父さんに見つかったら明日から練習どころか好きな武とも逢えないのよ

わかっての・・お嬢さん」
「何よ・・・武・・・武君のこと持ち出さないでよ
少しぐらい音楽がわかるからったって・・・言いたい放題ならないで
満腹じゃ・・・重すぎてゴールインできないわよ」
「いいえ空腹じゃ・・・スタートラインに立てないよ」


息飲む二人の口喧嘩に誰も仲裁できないでいる。
たぶん仲が良いからできることなんだろう?

終わりそうも無い雰囲気だ。

「・・・えええ・・・そうね私は音楽のことになると先が見えなくなるからね
瞳は頭良いし・・・スタイルも良いいし・・・勉強・スポーツ何でも才能有るし

「そんな・・・私のこと・・・そんな目でしか・・・
そんなことないよ・・・わかってると思うけど・・・・・私には・・・
私には・・・・守らなければならない大切な時間なの・・・
音楽だけで終わっては後で後悔する気がしたの・・・許してね
・・・許してね・・・私は・・来週の予定より今を・・精一杯生きたいの・・わかって
こんなの初めてだから・・・男の人が三人もいる個室にいるの
武との記念写真ほしかったの・・・それだけなの・・・ほんとうに・・・それだけの」

瞳も道子ちゃんも口喧嘩はやめた
そして二人とも両手を肩に伸ばして
うつむいていた
それは二人とも謝っているかのようにも見えたし
うつむいて泣いているようにも見えた

武が私達に寄ってきてそっと微笑みながら二人の肩に手お回し囁いた
「今・写真撮ろうよ・・・その後また皆で練習やろう
・・・一晩寝なくても俺は大丈夫だよ
俺 ・・・見かけどうり単純だからね!
瞳・・・ありがとう・・・よくこんな俺を選んでくれたね」



12.優香から武に伝えたかった事

「道子ちゃん・・いいよね・・それで」
「う・・うん」
「ねー皆、聞いていた?
早く、ここ来て・・並んで・・写真撮るから」

後ろで見ていた勇輝と滝やんが、顔を見合わせて、うなずき
勇輝が今度は親指を立てると、姉の優香も駆け寄ってきた。
私が端に立とうとしたら道子ちゃんが、武と私の手をとって
中央に私達の腰を強引に引き寄せて
向かい合わせるように立たせた。
目の前に武の照れている顔が迫ってきた。
頬が接触しそうな距離だ。

 

吸い込まれそうな輝く瞳の中で
瞳の視線が、微かにぶれている
俺の心の底に何を隠しているのか?
知りたがるような・・探るような・・視線
やがて・・俺を覗くことを止めて
安心したかのように定まった

自然に瞳の腰に手そっと回した
瞳の中の瞳に映る自分に気が付いて

目を閉じて・・Kiss

柔らかさが、体を・・心を・・包んで離さない
かすかな光りが・・扉を叩いて・・・呼び戻された

目あけると、瞳は両手で顔を覆い
はずかしそうに??それとも少し怒っているのか
やがて、背中を向けた
俺はまた・・わからなくなった
人前では・・当然なのかも・・・
素直な気持は
小さなキャンドルライトを消したくないと
切に願った
嫌われても・・くいわない

「おーい武、瞳の親父さんに見せられない・・すごいスナップになったよ
・・・どうする?」
滝やんが、携帯をもって今を再現して見せた。
俺は余韻に・・降参して軽く二回うなずいた。
軽く深呼吸してから・・・
「すまないけど・・・hotじゃない
後でホットできる。
皆がcoolに決まったスナップお願いできないかな?」
和ませるのが得意の滝やんが・・ニコニコ笑いながら・・・
「お客様のご要望とあらば、何回でも御撮りします。
皆・・・はい・・・COOLにキメキメボーズ・・・」
瞳も皆もVサイン・・滝やんだけ・・
自分の指で豚さん顔を歪めて作り上げキメキメのポーズだ
またったく・・憎めない「相棒」だ!


俺はふと天井を見上げ・「ありがとう 」と呟きたくなった。
俺と瞳の境遇は普通なら廊下ですれ違っても
声をかけられずに過ぎてしまう
そんな関係でいただろう
偶然に俺の胸に貧血で倒れ掛かってきた・・あの日が無ければ
考えてみれば・・あの日以来・・ずーと
俺は胸の奥から湧き上がる
何か不思議な力に
突き動かされている気がする
この情熱
俺の根元を変えている・・そんな思いだ
時としてコントロールを失うくらいに
・・そして・・この大切な写真は
瞳を・・信頼し合あえる絆を培った友達をも
巻き込で・・混乱の嵐に陥れる・・黒雲を呼び寄せている事を
誰もまだ気がつかずにいた。

私にとって今日初めての事ばかり、続いた
さっきの道子ちゃんとの言い争いでも
気持は・・ぎすぎす・・していたのだろう
緊張の連続で、疲労が溜まって
私の中の優しさが、流れ落ちて
とげある薔薇は振り回せば
花でさえ人を傷つけることを忘れていた
ビニールハウス育ちなのだろうか??
それとも・・・・・・・・・・・・・・・・・
私はまだ知らなかった
社会の風にさらされた
人の愛しさは
心を温めることもできるが
苦しめることもできることを

皆が締めの歌の練習にCDステレオの前に集まってくるのに
武だけ、じーとギターのポジションマークをうつむいて見ている
いったい、どうしたのだろう
「武、早く練習始めないと
ほんとうに寝る時間なくなるよ」
「おー悪い・悪い」
心なしか足どりが重たく
うむきながら、恐る恐る近寄ってくる
道子ちゃんが、かってにそれぞれのパートのバンド譜面を
皆に配ると
CDが回りだした
ピアノとストリングスのイントロが部屋じゅう響きわたった。
皆、耳を澄ませて・・メロディーラインを追っている。
勇輝君はドラムを、滝やんはベースのルート音を
道子ちゃんはキーボードを弾くように指でなぞっている
私はピアノのポジションを思いながら、歌詞
武だけあいかわらず、うつむいてギターのポジションマークを見つめいる
CDからの曲が、終わって皆それぞれのパートの楽器の音を出し始めた
武だけ・・ぼーと・・している。
気の短い勇輝君が
「お前さー、ほんとうに、やるきあるの?」
「いま集中モードにはまるとこだ、気が散ること言うなよ」
「そうか?」
二三回全員でCDに合わせてパートの音だしをした。
武の手が、気のせいか微かに震えていたような気がする
「武を除いて・・いい感じなってきたから
軽くゲネプロぶちかまそうぜ」
そう言って勇輝君がドラムに座り、ステックを持って
「カチ・カチ」と
カウントした。
エレクトーンのストリングスとドラムとベース
そして私のピアノとボーカルそれから
リズム刻むギターで盛り上がるはずたったが
武はリズムが、はずして戻れないでいる
「やめ、やめ」
勇輝君が、いらいらした顔で
「お前、やっぱ、やるきないみてだな」
「できないよ・・違う曲にしてくれ」

私はこの言葉に衝撃を受けた
「武・・どうしたの?・・・勇輝君の言うとおりよ
皆で決めたことじゃない
間違えるのは・・・慣れてないから仕方ないけど
やるきだけは見せて
皆・・真剣なのよ」
「瞳・・ひどい言い方だな・・俺はただ・・」

勇輝君が
「だめだ、お前一人のせいで皆が迷惑している
バンド活動なんかお前に向いてないぜ」

今まで端で、見守っていた優香さんが、武のそばに来て
「弟を・・許して武君
弟はまだ未熟で、武君の動揺を見抜けないでいるわ
この曲は貴方にとって・・わけあり・・なのね」

滝やんが、私の耳元で
「言わないと心に決めていたけど
武の名誉の為に、瞳ちゃんに告げるよ
きっと武は昔の思い出を呼び戻したんだよ」
「昔・・・思い出・・・?」
私は・・やっと気が付いた・・私と武は別の地区中学から
この公立高校に進学して来たんだ
一年前の武の胸の奥に隠された
願いや求めていたものなど知らないのに!
こんなに夢中なのに!
微妙な顔色の変わりようで、気持を読み取る
術が必要だったはず・・それなのに・・・
目の前の武がすべてだと思い込んでいた。

「大丈夫だよ、瞳ちゃん・・武のただの
一方的なメロメロの片思いの話だよ
その時この曲をよく聞いていたみたい
なぜって・・ 」
「やめろよ・・お前って最低の友達だな・・」
「片思い・・今も思っているの?・・・武」
「いや・・その子は親父さんの仕事の関係で
神戸に転向して居ないよ」
「よせ、無理するな・・・ヘロヘロじゃなきゃ
あんなボロボロの演奏できないよ」
「その言い方やめろ・・お前なんか・・なんにも知らないくせに」
武は・・切れて・・頭から滝やんの胸に飛び掛って
突き飛ばした。
そばにあった譜面台が、倒れて・・思い出が・・飛び散っていた。
道子ちゃんが、こめかみに両手を当てて
大声で叫び出した。
「ここは私の大事な家で・・仕事場よ
喧嘩なら・・・気の済むまで外でやって
二人と・・いいえ・・皆・・・情けないわ」

私は怒る事も、泣く事も、できず・・呆然と立ち尽くしていた。

私は愛情という名の偽名のシェルターで
父の歪んだ感情の虜にさせられて
人の大地に吹きすさぶ
愛しさの葛藤と彷徨いの、見ることできない強風を
その厚い壁の窓から感じずいた
父の無くなった母への愛情が
その分身である私に向けられていた・・という意識が
父のしうちを許していた
その父を今やっと・・憎いと思う。

優香さんは俺の左肩の上に
手をそっと添えて・・
話し続けた

「さっき歌った武君の歌は、言葉に表せない何かを語りかけるセンスが
芽生えていると思うの
誰でも最初は、にせ者から始まるものね
願い続ければ、真実がとなりに寄ってくる日が
必ず訪れるは
その時、立ち止まって思うのよ

喜びの陰には・・悲しみが潜んでいるかもしれないね
成功の時・・・・貴方は大切な何かと引き換えに
それを手にいれるかもしれない?
簡単に与えられたものは
簡単に失うでしょう?
大切なもの・・・・失って・・やっと気が付くのよ!
貴方は何かを犠牲にして成長するかもしれない
探し求める心・・・夢中になれる心・・・
失ってはだめよ!
進むにしても・・止めるにしても
簡単に怯まないで・・勇気だけが貴方の味方よ」
・・手が肩から離れて遠ざかっていく。

俺は言葉を探したが
見つけられなかった
大きくうなずくだけだった。
散らばった譜面を拾って
譜面台に静かに戻した。

優香さんの投げかけられた言葉が
胸に突き刺さって
染みていた
刺さった言葉を抜いて
返事がしたかった
無意識のうちに、足が優香さんを追って動き出す
少しだけ立ち止まって
何か考えている、ふりをする。
そしてまた、吸い寄せられる。

私は今、武の心にあると信じていた・・私・・が消えかかっている
という思いが、胸を締め付けている。
さっきの・・恥ずかしい「戒めの罠」を再現したくない。

ブラックより苦い思いが・・胸から・・脳幹に伝達され

ドーパミンを生み

切なく、熱く
・・体中を駆け巡る

私はそっと・・脳幹で囁いた

「武・・見つめて

今・・ヤバイの」

俺と優香さんの間に
瞳が突然、駆け足で
割り込んで
立ちはだかった


息せききって・・荒い

たるんだロングソックスを・・

大胆にスカートのサイドジッパーまでこ突き上げようと・・

見せ付けるように、たぐり寄せる

Sexty・・という言葉の意味を・・今・・感じた

ドカの「踊り子」のような

その仕草の中に少女ではない「女」が宿っていた

ラビットの目から獲物を狙うイーグルの目の光りに変わって

「武・・許してあげるから

早く家に帰えんな

明日はバイトよね

武に

徹夜でも付き合えるのは・・この私だけだからね! 」

「そんなはずないだろ・・瞳?」

目線が眩しくて
自分のポジションが揺らいで
何をしていいか
わからなくった
また・・うつむいて・・俺は僅かな素直さを取り戻し
誰に・・何と言われようと・・家に帰る決意をした。

道子ちゃんが、やるせない表情で
「私、もー疲れちゃった
皆・・どおお?
お開きにしようよ
簡単でいいから、あとかたずけだけやっていって
お願い
これからの事は
メールでね・ね」

この部屋の秘密の扉を 最初に開け入った時は
皆ときめいて
好奇心は、果てしなく
胸に期待が溢れていた
なのに俺達のハンドは
ぶつかり合い
譲ることを忘れかけた
それでも・・大切な・・今・・だった

俺は・・背中を向けて腕組みしている
瞳に・・勇気を出して

手を差し伸べた
気づいた瞳は・・振り返り
出会いの時の笑顔を取り戻していた
手が絡み合い
瞳はかるく・・うなずいた
その瞬間
光りが視界を覆った・・・・・・・・・・・・・・・・


第二章 「瞳の決意」

第一話 「洋子との出会い」

(2006年10月2日 月曜日)

初めて道子ちゃん家の音楽室で顔合した日の翌日だった。
夕暮れ時・・すべてが茜色からモノトーンに変わろうとしていた。
俺は下校するのが、少し遅くなり
近道を選んでバイト先に向かって、自転車を走らせていた。

カトリック教会が脇にある、急な下り坂の・・ヘアピンカーブ
曲がりきって、視界が安心を誘ったその・・瞬間
目の前の道路に、・・ひらひらと・・紙きれが・・そよ風に・・舞い上がって
その紙きれを追って・・バス亭に居た、女子高校生が・・
行くてを遮った。
俺は・・衝突避けるために・・
急ブレーキを掛けたが、遠心力を抑えきれず
歩道に乗り上げて、自転車ごと横転した。

「OhーMy God・・・」


景色が90度傾斜した。

柔道を少しだけ習ったことがあるので、受身をして転び
頭は強く打たなかった。

紙きれの一枚が舞い戻って
俺の目の前にふわふわと渦巻きながら落ちた

先ほど彼女が、目の色を変えて追っていた・・その紙を
拾いもせず・・踏みつけて・・
俺の前で・・ひざまずいて・祈るように
腰をまげ
顔を近ずけた
声を震わせて

「ごめんなさい・・
だいじょうぶ・・・ですか?」


「瞳・・どうして・・こんな所にいるんだ!」

「me?・・・
No No My name is Youko.」


よく顔みると・・瞳に似ているが、その雰囲気は・・
別世界の人だと・・野性の本能が悟らせた。

それに、よく見ると胸に付けているバッチは
別の公立高校のものだ
でも、大きな瞳の輝きには、陰りは無く
潤んで、光りの反射が星を宿らせていた。

これが、アメリカからの帰国子女の洋子との出会いだった。

「ごめんなさい、・・ごめんなさい・・怪我は有りませんか?」


「びっくり・したよ・・行き成り飛び出して来るんだから
足を少し擦りむいたぐらいで・・今のところ
大きな怪我は無いよ・・自転車も壊れなかったみたい
気お付けてくれよなー
いったい何を追って、道路に飛び出したんだい?」


「譜面です・・すいません・・立ち読みしてたら
風で飛んじゃって、作りかけの曲だったので
夢中になってしまって・・あー・・それと
ごめんなさい
私・・興奮すると・・つい・・英語で話しちゃって」


「曲作ってたんだ」
作り出すと、何もかも忘れて・・夢中になる
気持・・痛いほどよくわかる
「認めるよ・・その気持・・俺もそうだから」

腕時計みると、バイトの時間15分前だ。
俺は、事故に遭遇した場合のマニュアル通りの言葉を
並べ立てた。

「もうバイトの時間なんで、今日はこでいいから
なんかあった場合の君の連絡先、教えてもらえないか?
俺の名前は早川武といいます。 」

「all right あー、ごめん、わかりました。
今度は、ちゃんと・・日本語で
中島洋子といいます。それで・・連絡さきは・・ えーとー」

洋子が携帯を取り出して、連絡先を教えようとて
表示した画面を俺の顔先に
突きつけた。

自分の携帯に、なぜか急いで打ち込み
コールした。


洋子の携帯に着メロ「三日月」流れでた。
さっきバス亭に洋子の隣りで並んで待っていた男が
駆け寄ってきた。

「洋子・・何しているの?」
動揺していた・・せいなのか
その男は、俺を見て
何回も逢っているように
軽く
うなずいた・・気がした
「君・・誰?」
「あー私の大切なboyfriendの哲です。
私がアメリカから日本に帰国したばかりの時から
日本のこと右も左もわからない・・
そんな、ぎこちない私のことを
彼が黙って見てられなかったのか?
一つ一つ親切にいろいろと・・教えてもらい
面倒みてくれたの! 」
「加藤哲です。
どうか・・洋子を許してやってください」
肌が女の子のように白いその青年は

左手に
「UNIX&インターネットセキュリティー」という
表題の大きな本を抱き込み

草むらに、身分証明書を落としたような・・顔つきで
話し掛けた。
彼が話すその瞬間も・・自然に洋子は手を絡めて
そばにいた。
俺は、彼の中で薄紅色に頬を染めた
洋子の可憐な美しさに
これ以上は何も聞けなかった。
「やっぱー急ぐから・・なんでもないから
気にしなくていいよ」
俺は、少し痛い左足をかばいながら
ペダルを回してバイト先へ向かった。

この時まだ俺は・・哲が瞳の人生に大きく関わるなど
夢にも思っていなかった。

翌日の夜、俺は洋子には二度と電話しない事を
心に誓って・・「体は何とも無い」

安心して欲しい・・と言うことだけを告げようと
洋子に電話した。

「もしもし中島さんですか?
早川です。」
「Yes・・・・洋子です」
「昨日の件ですが、一晩たっても体は
何とも無いので、もう気にしないで下さい。」

「 Really・・・よかったです。
あーあの時は慌てまして
ごめんなさい
あーAnd・・言い忘れた心配な事が
一つ有ります。」

「何でしょうか?」
「My boyfriend哲のことです。
彼はとてもシャイで、
普段は自分の家に閉じこもり
一日中コンピューターのソフト開発をしている青年です。
そのせいか・・とても変なことに拘り・・
最近わかったのですが
とても嫉妬心が強いみたいです。」
「へーえ」
「貴方に、また迷惑が掛からないように願っています。
どうか・・
大切なデータ管理に
注意してください。 」
「如何いうことて゜すか?」
「彼は、ソフトの事と・・・・・
私の・・・私の事・・・・・・・以外は何も・・・・」
「もしもし・・・」
「私の・・日本語の発音だいじょうぶかしら?」
「問題ないよ」
「よかった・・私は・・

Papaの仕事で、ニューユークに住んでいたの
半年前に
私の教育の為に、帰国したの
Mamaは日本人だけど、向こうの三世で
Papaと学生の時
アメリカで 知り合ったの
Mamaも日本語が少しだけなの
結婚した時は日本住むなんて、思ってもいなかったらしいの
そそっかしいけど
優しくて尊敬しているのMamaのこと
私の友達のように、いつも話し掛けるの
日本語の勉強も、Mamaと笑いながらなんだよ
私ね
日本語上手に成る為に
好きな歌ばかり歌ってたの
そんな私に・・
英語の授業で、逆にpronunciation(はつおん)の先生なってくれと
頼まれて、哲の教室で教壇に立ったのが
哲と知り合ったきっかけ
彼は今まで、友達のいない青年

でも・・付ききりで・・日本語を教えてくれた
そう、そうなの・・    

OH・・・How deep he love me!
only me・・・・
私は・・・何て・・ひどい女でしょう・・・今わかりました。」
電話口で彼女が大声で泣き出した。
・・なぜ・・彼の過去を許せないのでしょう
なぜ・・信じてあげられないの・・・
すみません・・これ以上は言えません」
「よくわかりません」
「そうですね・・今の言葉、取消です。
あーできないですね・・
あー・・・・・・・・・わさわざ電話いただきまして
ありがとう゛ざいました。 」
可憐な笑顔の彼女が
大粒の涙を流してる様子を想像して
俺は追及できなかった


翌日の夜、不審なメールが一通届いた。
差出人はRoseWater
件名が「瞳さんを知る男より」となっている。
当然、気になり削除できなかった。
開くと
GIFアニメのプログラムなのだろうか
真っ赤な薔薇の花が咲き
中からメール文字浮かび上がるという
凝ったメールだ。

「君は
僕の庭に大切に育てた
一本の薔薇を
見つめ
その花びらを自分に向けた」

意味がよくわからない
ただそれだけの、文面だけだったが
なぜか・・胸の奥で引っかかっていた


第2話 「二人を引き裂く出来事」

(2006年10月1日 日曜日)

「SkyLine」・・だ
CDプレーヤーからモーニングミュージックが流れ出した。
もう7時だ
「いけねー学校いかなきゃ・・
そうそう・・今日は日曜日だ・・行かなくていいんだ。
その代わり・・昼間のバイトだ。
そして、夜は、道子ちゃんの家で、二回目のバンド練習の予定日」
俺は、メールで連絡し合った課題曲を
鼻歌で歌いながら
用意して置いた朝食をレンジに放り込んだ。

・・日が暮れて・・約束の時間が、近づいた。
その日は時折、強風が夕方から吹き荒れ
低気圧が、接近してくる様子だ。
防犯カメラで、遅番の人が、
時間を気にしながら正面の入り口から
慌てて、 出勤してきたのを確認できたので
食料棚の片隅に置いてあったギターと携帯傘をもって
引継ぎをしてから、裏口から出た。
風は止んで・・辺りは薄暗くなっていた。


大きな松の木が茂る、道子ちゃんの別棟のピアノ教室に


自転車でたどり着いた時、日は落ち、星の見えない夜に包まれていた。

大きな扉の脇の呼び鈴を二回押した。

しばらく待ったが・・返事がない
もう一回呼び鈴を押そうとした時

中から
・・誰ですか?」
男の声だ。

「おー、武か・・・・入れよ」

滝やんが、扉を開けた・・が・・少し様子がおかしい。

いつも陽気な、やつが、伏し目がちに沈んだ声をだして、向かい入れた。
中に入ると勇輝が握りこぶしで仁王立ちしている。
部屋の中央で、道子ちゃんが、膝まずいて
ハンカチで顔を覆い泣いていた。
「何か・・あったのか?」
肩にかついでいたギターを壁に立てかけようとして、
異変に気が付いた。
この前に来た時に、あった備え付けのフォークギターのナットの一つ取れて
チューニングできそうにない状態になっている
それにエレキギターとベースが
コードが、差し込まれたまま、裏側のパネルが空いている 。
「滝やん・・ギターのピックアップでも交換したのか?」
「そんなわけ・・ないだろ・・練習前なのに
ギターとベースの二本とも、音が出ないだ
念のために・・
エレキギターに詳しい勇輝に
ピックアップを調べてもらったんだ
そしたらコイルがシュートしているみたいだ。
それにマイクが音拾わないだ。
・・バスドラの裏側見てみろよ
綺麗に切れているぜ・・まったく。」
「いったい、どういう事なんだ・・・滝・・言えよ・・」
「説明なんか俺に、できるわけないだろ!
音が出せるのはピアノと電子オルガンだけだ。」
勇輝がギターを指差しながら
「これは・・偶然なんかじゃないぜ
ギターの六弦だけ切れている
お前にはまだわかんないかもしれないが
一弦は切れても・・六弦は意志の力がなけりゃ
切れないぜ。」
「誰かがこのピアノ室に侵入して
俺達のバンド活動を妨害したとでも、言いたいのか?」
道子ちゃんが、やっと顔を上げて
「そんなこと出来ないわよ・・
扉の鍵は最新式の電子キーよ
気がついたと思うけど・・鍵穴なかったでしょ
ICカードが無い限りは内側からしか開かないんだよ
楽器が盗まれたわけじゃいんだよ
ママの教室に通う子供達の悪戯じゃないよ・・絶対に!
誰が・・どんな目的で・・どうしてこんなこと出来るって言うの?
あー神様・・私は何か悪い事したでしょうか?
教えてください・・」
道子ちゃんは、またハンカチに顔を沈めた。
「瞳は、まだ来いないみたいだけど?
何かあったのかな?」
勇輝が
「瞳ちゃんから、なにも連絡きてないぜ
なーあ・・武・・悪いんだけど
瞳ちゃんの言ってる事・・少しおかしくないか?


俺さー先週の日曜日の夜・・ここを出てから
姉貴の優香と今後のことについて話し合ったんだ。
優香がさー言ってたけど

「瞳ちゃんの言う・・親父さんのやっていることは
冷静に考えると、どうしても信じがたいよ
勇輝・・・どう思う?」
「さーね、年頃の女の気持なんて
わかんねよ・・俺・・正直姉貴の気持も
わかんね時あるもんね 」
「私ね・・瞳ちゃんは本気の嘘をついてると思うの
あれだけの才能があるなら、私だったら親元を離れるか
そのことを信頼できる人に相談するはずよ
絶対に困難でも自立を願うはずよ
私だったら・・即・・何もかも捨てて家出よ」
「かもね」
「彼女は自分の親を批判しながら受け入れているのが
とても不自然だと思わない?」
「えー、もしもそうだとすれば
何のために・・そんな嘘を付くんだよ」
「虚栄心よ、とても激しい虚栄心
何もかも予想できる企画通りの自分の未来より
アウトサイダーの予測不可能な・・ほんろうする生活に
もしかしたら・・憧れている・・みたいな理由じゃないかしら」

「そんなこと・・姉貴と話し合ったんだ
そんな話に納得したわけじゃないけど
普通・・家出すると言う部分では、同感だよ
武は、姉貴の話どう思う? 」
「絶対に無い・・お前は何もわかんないんだよ
自分の親が信じられなくなる
真空の宇宙に一人で放り込まれるような
苦しみも不安も
始業式に、意識を失って俺の胸に
倒れ込んで来た時・・感じたんだ
瞳は・・信頼できる人を探し求めていると 」
「そう言うと思ったぜ・・お前なら当然かもな
滝は、どうなんだ。」
「俺は、わかんねよ、ぜんぜん
そんな話苦手だし」
「道子ちゃんは?」
「・・・・・私は瞳を信じているは、
彼女は気が強い面もあるけど、
私みたいに臨機応変に嘘がつけない、もろさもあると思うの
・・でも・・余りにも説明できない出来事がこのところ
起きているので、誰のせいなのか・・考えてしまうの 」

不用意に開けっ放しにしていた扉を拡げて
瞳が入ってきた。
降り出した小雨に黒髪が濡れて
顔から
滴が、したたり落ちている。
背中に赤い小さなリックを担いでいる。
「瞳・・今の話し立ち聞きしていたのか?」
「 ・・・・私・・き・・・嫌われている?
皆と・・・同じ・・じゃない?
たける・・教えて・・・たける 」
瞳は、顔をそむけなが
写真を二枚両手に持って
俺の胸に突き出した。
「 父に、先週のバンド練習のことバレたわ」
写真は、俺が瞳にKissした写真と滝やん以外のメンバーのものだ。
俺は、写真を握り締めたまま、両手を肩に回し
瞳を引き寄せ、きつく抱きしめた
涙色に濡れたTシャツの温もりが・・切なかった
「なんだ・・そんなことか・・・予想していたよ
俺達は、そんなことで壊れないよな・・瞳」
「・・・・・」
「いいから・・顔ふけよ・・風引くぞ」
「・・・・・うん」
俺は、ポケットからハンカチを取り出し
頬の滴をふき取った
右肩まで手を回し、明るい場所まで導いた。
道子ちゃんが、瞳の顔色を気にしながら
「大丈夫・・・どうして・・写真・・瞳のお父さんに渡ったのかしら?
滝やんの撮った写真データは、私のパソコンにストックして
今日プリントアウトして手渡す予定だつたのよ 」
「・・・・」
「今日は練習できないみたい。
ピアノと電子オルガン以外の楽器は・・死んじゃっているの」
「・・・聞いたわ」
「どういうことか・・私わからなくなったわ」
「・・・Unfair・・・」
「何て言ったの?」
「こんなやりかた・・できるのは
たぶん父が絡んでいる・・そんな気がする
昨日の夜、私ね
夕食の後だったけれど
父が私を呼び止めて・・ね」

(昨夜、瞳の家で)
「瞳・・父さんに隠し事してないか?」
「えー・・何の事かしら?」

「 父さんは、前から瞳に言ってたけど
友達は沢山作っていい
けど・・どこの馬の骨ともわからないような
不良連中と付き合うなと・・言ったよな」
そう言いながら・・写真を二枚テーブルの上に置いて
「この写真は何だ・・」
「やー・・・どうして・・・お父さんが持っているの?
あ・・あの・・言うの遅くなったけど新しい友達
今度バンド作って皆で曲作りやってるの
皆・・・気のいい連中だよ 」
「何に言ってんだ
この勇輝君は二回も補導された事があるし
滝君は喫煙で呼び出された事があるし
瞳を抱きしめている・・この青年は両親がいない
校則違反のアルバイトをしているじゃないか」
「校則違反?」
「なんだ・・・知らないのか
アルバイトは17才からだぞ
星明道子さん以外は
こんな連中と付き合うことを・・父さん認めたくないぞ・・ 」
「お父さん・・実際に話し合って決めた、わけなの
私の人生を左右する問題に
お父さん・・誠意を示して・・お願い 」
「お前は・・まだ未成年だから
父さんは忠告する義務があるんだぞ
その青年はまだ責任の取れない立場だ 」
「好きに・・なるなっこと?」
「そうは言えないが・・交際しないでくれ」
「あー・・どうして・・・
そんなに簡単に・・決め付けるの
間違っているのは誰?
その資料はどうやって入手したの?
お父さん・・仕事では、いつも尊敬しています。
私の
異性交際になると・・何も見えなくなるの
いいえ、見ようとしないわ
私の気持さえ探らない」
「世間は、瞳が考えている程・・甘くないぞ」
「私は、お父さんの
亡くなった母さんの分身役として
生きているわけでわないのよ 」
「そんな言い方はないだろう」
「それなら・・私をお父さんの娘である前に
一人の16才の女として尊重して」
「私は、お前を大切に育てたつもりだが?」
「違うの・・大切って・・違うの
私は、絵に描いた花なんかじゃない
風に吹かれて・・冷たさを感じる花よ
私も・・お父さんの気持を探らなかったかもしれない
でも・・少し変わったの・・早川武という青年に出会えて
どうか・・上辺だけで結論ださないでほしい」
「・・この話はこの場では
決められない・・それほど本気なら時間が必要だ
今回のことで気になる別の問題が
起きたかもしれない・・瞳にはまだ言えないが 」
「どうして・・そんなに・・そわそわしているの
私のことより気になる問題って・・何?
・・・それに・・どうしても聞きたいの
この写真どうやって手にいれたの?」
「だから・・今話せないんだ・・わかってくれ」
「ねー、お父さん、それはFairじゃないわ
武じゃなくて、・・私のことを馬鹿にしているの!」
「いいから、今日はこれまでにしてくれ
今混乱して気持の整理がつかないんだ。
あ・・私の人選ミスで
とんでもない、ことになるかもしれない 」
「人選ミス?
・・もしかして・・それって情報屋のこと 」
「瞳ー知っていたのか」
「ええーずーと前からよ」
「何ということ・・
なぜ・・怒って、つめよらなかった。」
「この質問・・とっておいたのはね
私が、決心がつくまでにしたの 」
「決心?」
「譲れない・・お父さん
たけるだけは」
「・・ん・・
瞳・・冷静になってよく考えてくれ 」
「もー知らない・・お父さん」

(道子ちゃんの家のシークエンスに戻り)
「そうか
瞳、温かいコーヒー飲みたくないか?
俺、買ってくるから

「?・・う・・うん」
「皆、お茶しようぜー」
道子ちゃんが
「賛成
武君、私が皆の分の美味しいコーヒー沸かすわよ
ちっと待ってて」
俺は、何も喋らず
瞳の右肩まで手を回し
並んで床に腰を下ろし
二人うつむいて
道子ちゃんを待っていた。
瞳は、いつもの温もりを取り戻していた。

コーヒーできあがると
勇輝と滝やんが、駆け寄って
カップを手にした。
俺が、最後にカップを手にして
口をつけるまで、瞳はじーと待ていた。
二人同時に口をつけると
瞳が、囁いた。
「道子ちゃん、ありがとう
たける
温かくて、美味しいね」
「ひとみ・・・・・・・・つらかった」
「・・もう・・いつもの瞳に復帰だよ」

「瞳・・指先つるつるだね」
「あのね・・やっぱり、秘密」
「雨の水滴の残りが、爪に薄く乗っかって
小さく星型に反射して見えるよ」
「HAーYAー・・なぜ
口つけただけで、コーヒー飲まないの?」
「俺のこと?
へへー俺ほんとは、少しにがてなんだ
飲めるけど 」
そう言ってコーヒーを半分まで飲むと
いつもの様に、咳き込んでしまつた。
コーヒーを飲み干した勇輝が
瞳の前まで歩み寄って

「 瞳ちゃん、さつきはごめんな
武と話している姿、普通の16才しているよ
いろいろあるけど・・皆、お互い様かも」
「勇輝君・・こうして見上げると身長高いね」
「うわーお、感激・・初めて俺の目にて、話してくれたね
瞳ちゃん名前のとおりだね
瞳が、いかすよ」
「うそー、誰でもそんなこと言ってるの
バレバレだよ 」
「俺のことチェックしてくれたわけ?」
「なんとなくよ
君、目立ちすぎだよ」
「へへーまいたね」
「お姉さん、元気?」
「あー、姉貴は、あいかわらずだよ
・・瞳ちゃん、親父さんにバレて
かえってよかったも」
「え」
「勇輝の言うとおりだよ
ものは考えようだよ
ピンチはチャンスだよ・・瞳 」
「でも・・お父さんに・・交際・・あー
私って・・ニブイかも
武、・・・・・後で」

「う・・ん
話し戻すようで悪いけど・・ところで、練習どうする
楽器の壊れ方、半端で
出来るようで、できないみたいな感じだと思わない?」
「 武君、出来るよ
いくらでも、ピアノとアカペラでいいじゃない
でも、今日はできれば、中止して
お願い
武と道子ちゃんにだけ相談したいの」
「皆、どうだう・・いいかな
せっかく都合つけて集まってもらったけど
瞳の人生かかった問題みたいだし」
「あーいいよ、瞳ちゃんじっくり相談して
あとで武から連絡くれよ」
滝やんも、大きくうなずいて、勇輝と滝は部屋を出た。


第3の1話 「瞳の決意」

「武、私ね、決めたの
・・・家を出る事に、決めたの」


「家を出るって、いったって
どうするつもり 、将来のこととか...?」

安心して、すぐじゃないよ
そこまで、無茶やらないよ
聞いて・・鎌倉に愛子という名の私のいとこが居て
親が、旅館経営しているの
毎年夏になると、お父さんと一週間ぐらい泊りがけで
遊びにいっていたんだ。
それでね・・去年の夏、遊びに行った時
お父さんに内緒で、愛子と愛子の両親にね
お父さんの、おかしな異性交際のしつけについて
半日掛けて相談したの
そしたらね、最初の内は
「 そんな馬鹿らしい話ない」って
信用されなかったけど、道子ちゃんに電話して証言してもらったの
担任の先生に相談したらって言われたけど
父が先回りして、担任の先生に
「瞳は異性交際でトラブル起こしやすい子なんで
注意してやってください・・
なんて全然デタラメ言いくるめての」って言って
必至でわかってもらったの
それで、・・どうしても家出したくなったら
「迷わずに家を訪ねなさい 」って言ってくれたの

私・・17才の夏休の終りまでは、父の家に居るつもり

でも自分の進路を決める18才になる前に
父の影から抜け出して
自分の求めた道を行きたいの
もしも、父の援助がないとしても
できたら、働きながらでも、服装デザインをもっと勉強したい
武君、道子さん、どうするの?」


不安と期待の交差するその顔は、少し大人に見える

「私はもう決まっているわ
わかるでしょ瞳、私には音楽しかないの」


「武君は?」

「 うー、困ったな、18才になったら兄からの援助は
打ち切りて約束なんだ
だから進学できないよ、俺は地元で働くつもりだ。
何になりたいとか、まだはっきりしてないよ。」
「そー、じゃー決めた
ミッチー悪いけど
外してくれる」
道子ちゃんは、軽く手を振ってすばやく立ち去った


「武、これを受け取って・・」

瞳は、リックの中からリボン付きの赤い化粧紙に包まれた箱を取り出して。

「武、よく聞いて
先のことだから自分も不安で揺らぐけど・・
17才の夏休みまで、この箱は開けないで
開ける時は、どんなことしても私から連絡するから
中に手紙も入っているよ
私はその時までずーと武の女で
出来れば・・いたいと
今は願っているよ
父に止められて逢えなくても
武を思い続けたいよ
武はたぶん他の子が、気になりだすと思うけど
いいよ・・思ったとおりで
17才の夏に呼び出したら
邪魔されないでね


潤んだ瞳で
微笑みながら、指し出した小さな箱が、揺れていた
「約束は守るよ
たぶん・・質問は無しだろ・瞳」
瞳はぎこちなく微笑んだ

親父さんの話しの続き聞かせてくれよ」

「父は、結局どうしても、学校以外で秘密に逢って
交際をこれ以上深めるのは早いと言ってるの・・
私もう・・お父さんの同意さえあれば、結婚さえ出来る年齢だよって
言ったけど
わからずや・・頑固・・の父さん、もうー
Kissしただけで、武はもしかしたら
不良ということで不純異性交遊学生としてリストアップされかもしれない」

「そんなこと有り得ないよ・・考えすぎだよ」

「わかんないよ、武
父は目的の為に手段選ばないから
将来のある、武の経歴に傷つけたら・・私どうにかなりそう」

「不良ぐらい、いいよ」

「だめ、だめよ、人はレッテルでしか評価しないよ
一度、張られたレッテルは
一生は自分の手では、はがしにくい物だと思う
違う・・武?」

「ああー・・確かにね・
・」

「ごめんね・・たける、
こんな話し、白ける
よね
直ぐ私の前から逃げ出したくなるよね
・・私は武に・・ごめん・・もうだめ 」

「瞳・・今日は心が疲れているよ、瞳・・」


武の表情は・・どしゃぶりの雨に打たれて

前が見えない小犬のようだった


こんな事しか話せない自分が・・うっとう
しい

叶いもしない夢を微笑みながら

聞いていられる私であったなら

どんなに自分を女だと・・酔いしれていられただろう

二人で、初めて歩いた駅までの・・希望への時間

記憶の溝に埋もれて沈んでいく

私はほんとうにどうしたいいか・・結論もだせない
できるだけ、明るく振舞うしかないのかも・・

気持を入換えたくなった〜。

「武の言うとおり、私ーぃ・・今日は疲れちゃった
話しまとまんなくても、いいやー
将来のことなんて・・神様しかわかんないよね・・
おなかすいてない・・ラーメン食べに行こうよ」

「いいよ・・でも急にどうしたの
まあ・・でも、いいか・・ 俺おごるから」


「だめよ 、無理するなって

これが逢えるの、最後かもょー

今日は、私におごらせて
奥の部屋に引っ込んだ道子ちゃんも
呼び出して
皆で行こうよ」


 

第3の2話 「.洋子の願い」

 

(2006年10月12日  木曜日)

瞳と心の目の高さを同じにしてから
ずいぶんと俺の気持のありかたも・・変わったのかもしれない
悩みは・・瞳程ではないにしても、将来の道筋に、立ちふさがっていた。
そんな日々の真っ只中に、心の扉を叩く人が・・再び現れた。

二回目のバンドの集まりから、一週間近くなるのに、瞳から連絡がこない
どうしても、わからない「元気?」だけでもいいのに
俺の方から何回も携帯に掛けたが、瞳個人の携帯の電源はOFFで
虚しい圏外表示だ
校内で、見かけた時は、にこやかに微笑んでサインを俺に送ってくれるけど・・
道子ちゃんにも、連絡してこない
きっと結論が出せず、迷っているのだろうけど・・
割り切れない気持が、胸をつめ付ける

授業が終わって、バイトがないから家に帰るまでに1 時間ばかり
教室に一人残って宿題をかたずけていた。
それから・・道子ちゃんに連絡つけて、瞳に逢う方法を見つけようと思っていた
自転車に乗りへダルに足を掛けた時
携帯の「太陽の下」が鳴り出した。
もしかして、瞳からではと思い、慌てて携帯を開いた
発信人は瞳ではない
「もしもし・・武です」

「洋子です
突然ごめんなさい
今、授業は全て終わりましたか? 」


「はい」

「ちょっとだけ、逢ってもらえませんか?」

「いいよ」

「私、門の近くの歩道に居ます」
よかったと思う・・彼に逢える日望んでいる自分に気がつく

俺は自転車に乗らず、門まで走っていった。
門の外に出と、学生服姿の洋子が、後ろ向きで待っていた
「武です・・何か?」
振り返って洋子は、両手にピンクの箱を抱えていた。

「この前は、ほんとうにごめんなさい・・です
もう本当に、本当にどこも痛くないですか?」


「君、心配しょう?」

「ええーそうかもー」

その照れた笑顔が、表現できない爽やかさだった

「私、自分の気持隠したことがないくらい
毎日感じたまま生きてる、慌てもの女の子です
そのせいで、迷惑かけました。
あの日も、作りかけの曲のことで頭いっぱいになっちゃって
回り見えなくなってたの
なんとして、迷惑かけた分の気持の整理したかったので
これ作りました。」


そう言って洋子は、その箱を武に指し出した。
「なんだろー」

「できたら・・今・・開けて、気にってもらえると
嬉しいです。」


箱の中からは、何やらと動物の縫いぐるみらしきものが
でてきた。
ありがとう・・でも・・これ何?」

「ひどーいー、わかんない」

「シマウマじゃないよね・・色からして
ああーそうかーもしかしてキリン?」

「ピンポーン・・立たせる為に重心低くして
首を短くしたら、首長馬・・みたいになちゃった」


「ははーあ、君て面白いね」

「誉めているの?」

「たぶん・・ね」

「もー、気にってくれた」

「早速、机の上に飾るよ・・ユニークでいい感じだよ」

「嬉しい・・気になってたこと解決
これで、一安心」


そう言って大きな紙袋を差し出して
中にキリンと箱を収納してくれた。
「一つ質問していい」

「どうぞ」

「なぜキリンにしたわけ?
好きな動物だから 」

「えーと、そうなんだけど
ねーえ、武さん
キリンの首が長い理由は知っている?」


「うーん、ダーウィンの自然淘汰よりれば
長いキリンだけが、環境に適応できたからだろ」

「硬いよ・・キリンの身になって答えてみて」
私は彼がどんな答え方をするのか
ある願いを込めて見守っていた

「キリンの身になって・・えーと
背の高い木の葉っぱが・・どうしても食べたいので
首が長くなりたいと・・思い続けたキリンいたから」

「Fantastic、気持いい答え・・でも半分正解だよ
私の答えは

首が長くなりたいと願っているキリンを
愛したキリンがいたから」


彼女の話し声が、とてもハスキーなことに今、気が付いた
それは優香さんのとは、違っていた
「ロマンチックな答えだね
洋子ちゃんの答えが、俺も好きだよ
もう一つ質問していいかな 」

「何ーに?」

「洋子ちゃんが、あの時作っていた曲で
どんな感じの」

「JPOP風の感じ
本当の事言うと、あまり・・えーと・・少ししか聞いてないの
だから純粋のこっちの曲と・・ちっと違う感じ」


「今度、 機会があれば聞きたいな
実は俺もバンド活動始めたばっかりだったんだけど
うまくいかなくなったんだ。」

「All right あー 完成したら
是非、聞いて
私、デモテープ持ってくるから
ふふーよかた、私ね
まるっきり音楽しているの
ビチョビチョにつかってる感じ
You know? 」

「何と言うか・・雰囲気は少し
I feel You have music of unknown world.」

「really ?私達、話し合うかも」

「でも俺には、瞳という微妙な問題を抱えている
付き合い始めた子がいて・・」

「どうしたの・・その子に了解してもらえなければ
他の友達作れないの?」

「違うよ・・全然そんなふーじゃないよ」

「私も・・彼氏いるけど・・あーバス停で逢ったよね
哲・・口に出さないけど凄くjealousy強いみたい

この前の電話で知ってるよね 」

「うん」

俺は、洋子の顔を見て、人通りが気になった
とっさの判断で
勇気を振り絞って、洋子の手を強く握って
「ごめん・・場所換えて話そう」

洋子の手を引きながら・・学校の門を逆戻りた

冬の足音を感じさせる11月の冷ややかなそよ風が

洋子の長く肩まで伸びた黒髪を撫で・・舞い上がる

その視界を妨げていた

時折右手で、髪を手繰り寄せ

視界を広げようとするその可憐な姿は・・あまりにも瞳と似て重なって見えた

俺は今・・いったい何をしているのだろう

なぜ力ずくで瞳を連れ出してやれないのだろう

この人の輝く光が、自分の気づかなかった

黒く・・くすんで歪んだ心を映し出しているのか?それとも真逆なのか?

自分にはわからない力に突き動かされている気がする

誰もいないグランドを焦りながら・・二人で付きぬけて
シーズンオフで閑散となっているはずの・・プールの更衣室まで、連れ込んだ。
たどり着くまで、ずーと洋子は不安そうな顔色を隠さなかった

息を整えて話し掛けたかったが・・緊張した洋子の顔が
それを許さなかった
「ごめん、驚いた」

「It's a little bit exciting!」

俺は小走りしたせいか
胸の鼓動の高鳴りを収めきれないまま
「話途中だったよね 」

「・・うん・・今になって迷うわ」
何を話すつもりだたのか、わからなくなった

「もう話したくなくなった!?」

どれくらい時間なのか

沈黙が続いてた

ほんの数秒かもしれない・・2.3分だったかもしれない

洋子はさっきとは違って

ぼーと雲を眺めるような目で俺を見つめていた

悪戯な、そよ風が、艶やかな髪を柔らかく踊らせていた

二人が中に入ることを拒否するかのように・・更衣室のドアのノブに寄りかかり・・
 
走ったせいか・・外れた第一ボタンの

内側に見える胸には・・汗がにじみ
・・呼吸を整えるたびに揺れていた

野原の片隅に咲く・・「すみれ」の香りが

コンクリートに染み付いた塩素の匂いを・・遠く押しのけ・・伝わってくる

「ごめん、洋子ちゃん、俺どうかしちゃったかもしれない!」

「・・いいの・・」

「君があんまり瞳に似ているんで・・かなぁー」

「ぁー・・さっきの人ね」

「瞳のことは・・内緒にしなけりゃいけなかったんだけど
君には、話さなければならないように思うんだ
事情を知っている友達にも、相談できなくて
苦しくなっきている自分に・・君を見て・・今・・気が付いたのかなぁー!?」

「待って・・私も・・今・・気がついたのかも・・哲のこと
電話してくれた時、話せなかったけど・・
私から話させて・・
あれから私・・逃げないで悩んだの
16才の今の私にとって・・必要なことは何かを
結論は・・もがきながらも出せたと思う
後悔しない時間を過ごしたい!
今しか感じられない気持あるんだって
私がここまで付いてきたのは・・
哲が武君のようだったらって・・願っているからだと思う 」


「気持・・無理して・・ない」

「違うよ、シテナイ、シテナイ
きっと私達・・同じ罪の意識で悩んじゃってるのじゃない?
深く思われているのに、自分が付いていけない状態なのかなぁーって思う」

「たぶん・・・そうだよ
悲しいね
神様なんていないじゃないかと思ってしまう
・・そうじゃないと思いたいょ
瞳は俺に本当のこと言えないでいるじゃないかって」

「微妙な感じなのね
私、もしかして・・・また迷惑かけにきたかも?」

この時・・洋子の顔から清々しさが、消えた
「そんな言い方しないでくれ
俺・・苦しいんだ
瞳の前では、いつも動揺しない物分りのいい男役を続けたけど
そんなの俺の素じゃないんだ
俺だって、悩みいっぱい抱えて・・どうしょうもないのに
切つないんだ。
瞳は、半年後の俺を好きでいてくれるって言ったけど
俺自信なくなってきた・・煮え切らない話さ・・」

「辛いの・・感じれる!!
上手くは言えないけど・・・!?
私、ほとんど感情で生きたいー
なんて・・・ お馬鹿さんみたいなこと時々思うの!?
それは無くても・・
半年後の思いを浮かべて生きるより
今・・を感じたい 」

「首長キリンを愛した、キリンは
君のようだ・・・!?
明日の俺は心配なんだ
けど・・・君をもっと知りたい・・・ 」
洋子は俺を見つめ返して
更衣室のドアのノブから体を外した。

「友達だったら・・ぁー・・成ってあげれる!?
それとも・・・私をこの部屋に?本当に連れ込みいの??」

無言のまま・・武は半歩だけ近づいた
そして目線を私と同じして・・見つめている

「変なこと、言うけど・・・
もしも俺が、少女漫画の主人公なら
ここは、カッコよく洋子ちゃんを誘惑したかも!!
でも俺、読んだことないだ・・HaHa
現実は冴えない三枚目だけど
君が友達なら・・・生きていることがきっと夢のようだよ」

武は頬の滴を払いながら笑った

「気のせいかもしれないけど・・洋子ちゃん
瞳の色が、naturalDarkBrown の中にGreenが混じっている気がする」

「残念でした・・・たぶん私ハーフじゃないよ
でも少しだったら、わかんない
ふふーぅ~
期待は混じっていて欲しいと思ってるの」
「ぁーどうしてー」
「Mamaが、家の家系はずーと・・・LoveFighterだって
幼いころから言われてたの

人は愛された分だけ

人を愛せる・・ってねぇ・・

だから、Mamaが洋子を沢山・沢山・愛した分
洋子も頑張って人を愛しなさいって
言われるたびに、わくわくしてたの
わかるー」


「??・・・じゃー誰でも愛しちゃうわけ!・・HaHa」


「いゃーね・・ばかぁーん ・・・
わかってる癖にぃー」

「君と友達になると、苦しくても笑って過ごせるかな!? 」

「ねー座って話そう!」

「OK」
二人は更衣室の前の草の生えているところに、腰を降ろした

洋子はさっき手を引かれながらも、持ってきてあげたキリンの縫いぐるみを
武との距離の間に置いて・・箱を軽く二回叩いて


「忘れないで・・持って帰って、ちっと苦労したのよ!!」

「うん・・大事にするよ、世界中探しても・・もちろんコンビニにも無いからね」

「???・・・武君、バイト先コンビニだったよね!?」

洋子は、なぜか微笑みながら

「武君、瞳さん以外のことで話したいことある?」

武が膝を抱え込むように空を見上げると
私も同じ空を見上げながら
風の勢いで・・♪武の夢の行方を追った


「えーそうだなぁー、やっぱりバンドのことかな
俺、譜面と仲良くないんだ
孤独な夜の友達は、イラストだったのに
いきなりJUMPして、誰もいない野原に舞い降りた・感じさ
心ぼそくて・・・シンナリなんだ
作詞はとても楽しいのにね・・メロディーが、なかなかさ」

「・・・もしかして、好きなんだけど・・苦手?
それって、切ないね」

「俺の人生・すべてそんな感じかも」

「君と出会えたバス停・・・俺の家の前まで持ち込めたらね!?」

「??・・・わかんない・・でも武君はポエムが好きなのね
そんな話し方するの・・不思議ね、哲みたい 」

「へーやっぱりね・・」

「何・・?」

「べつに・・なんでも・・・」

「ねーバンドのことは、私も始めたばかりで、わからないけど
ドラマーと仲良くなりなよ
リズム外さなく済むよ・・そしたら皆の心が、近くなるよ
そんでね・・リーダーの気持キャッチできれば・・大丈夫だよ
たぶんね
後は・・間違っても楽しじゃえば無敵だよ
ふふーぅ 」

「なんだか・テンション上がってきちゃうね!
君のバンドのこと・・少し聞かせて貰えないか?」

「嬉しいーぃ・・・
話し出すと・・止まらなくなるから・・さわりだけだょ 」

「いいょ、女の子の取り留めの無い話
聞き役になれるなんて・・男の幸せだよ」

「ふふぅー、のせるの上手いね
名前は、レモンスカッシュ四人組のガールズバンド

そんでね・・・
リードーギターとボーカルは私で、それで私の一番の仲良しが
ドラムの秋子、ベースが啓子
キーボードが利
香・・私もやるけどね、・・・時々交代やるんだ。
そんでね・・・練習日には・・・外で遊ばない・・哲が、聞きにきてくれるの!!
私が、リード−弾くと、微笑まない哲が・・・ニコってするの
たまんないの・・・幸せあげれて、幸せなの・・私」

「どうしたの?」

「何て言おうか、わかんなくなった
・・いかしているよ・・・かなぁ 」

「Coolと言ってよ」

「・・・いやだ!・・・聞いていいかな・・・哲君とは友達以上なの」

「お願い・・・」

「わかった聞かない」
・・・
出会いが・・もう少し・・・早ければと思う!!」

「・・・」

「まただ・・・俺って・・・どうしょうもない・・・??」

「No・・・だいじょうぶMy Friend
君一人じゃないよ!
私達、まだ16よ、・・・話しているの・・・必要な時間だと思う 」

(Break) ♪・・・If
・・・「 ah,ah ah You re so good to me・・・ baby baby♪」
you know this song?

!!・・Yes, I wonder ,
「Now you're in,and you can't get out
You so make me hot
make me wanna drop♪」

「・・私も・・きっと・・同じ
探っている?・・・わかるけど・・・
こんな時間・・・見つけられないのも・・・
お互い・・短過ぎると・・・感じたら
その時だけ・・・メールしていいょ・・・
今より・・・望まないことが起こってもいいー!? 」


「そんなの・・・ずるい言い方だ
でも・・・嫌な事が起こっても
友達でいようなー 」

「お願い・・・何でも言える友達になって !
私、・・そうなの・・・哲のこと好きだし、尊敬もしているの・・でも
本当は哲といても、なんだか心細いの 」

そう言って洋子は微笑みながら・・・愛くるしくウィンクした

抱きしめてやりたい・・・という感情を抑え切れなくて


体を熱くしたけど・・・ぎりぎりで・・・見つめていた

なぜなら・・・哲の事を話す、一途な洋子のその表情は

瞳が父親の話をしている時の直向な表情と驚くほど・・重なっていたから


第3の2話 「武の気持」

「ねー話してぇー〜・・・今一番伝えたい事!
武君の番だよ〜♪」

「また質問していい?
哲やバンドの連中の他に
友達いる? 」

「あぁ
〜・・・うん・・・いるよ・・・ニューヨークにボーイフレンドが」

「だよね・・・当然だよね 」

「・・・それで?」

「いや・・・いいんだその話は・・・ありがとう
俺・・・気がついたんだ・・・
瞳に自分の小さな感情さえ伝えられず
付き合ってたかも 」

私の瞳の奥を見つめるような顔で

・・・今・・・この一瞬は

些細な事でも・・・ときめくような


素直な気持を捜し求めて・・・生きていたいんだ

人から「お前は、所詮負け犬さー」って言われたて

譲れないんだ

こんなの・・・だめだよね・・・わかってるけど、わかりたくないよ

二度無いかもしれない・・・この時間は

・・・君の小さな話が

聞きたい

言葉が無い世界に迷い込んでも

・・手話で話したいくらいさ

「私の感は的中しちゃったーぁ」

「何?」

「いいの・・・・聞かないで
武君・・・書きかけの詩や歌があったら
当然あると思うけど
ね〜Day Dreamer君
私にも・・・見せて・・・お願い


「どうしてそんなに自信ありげに言い切れるだ」


ふふーわ・た・しぃ確信しちゃったーぁ
それはね・・・理屈じゃなくて・・・女の感
私の中の血が騒ぐの」

「血?、、、ぃい〜よ
ぜんぜん、自信ないけど
思いつくままのが、、、めちゃくちゃあるょ
いっぱー・・・自分の中では
完成してるんだけど・・・
詩先行で作ってるから・・・コードだけのばっかり
さっき話したように・・・メロディーに自信ないんだ
、、
どうせ俺の歌なんて誰も聞きたがらないから

「だめよ・・・思い切りやって
私に見せてぇー
絶対に、いいえ・・・たぶん・・・君に向いてることだよ
ね〜ね〜なんなら、メロディー書いてあげてもょいいょ」

ほんとに?でも

自分が楽しめれば・・・それでいいゃーぁって感じの詩だから
結局・・・現実から逃げるだけの独りよがりの詩かも!?
きっと、いやになっちゃうょ、、、それでよければ」

しぁわせ

「間違いじゃなかった、、、君みたいな人は、ぁー
あぁ〜俺・・・死んでもいい

「Why・・ェ・・えー聞こえない・・・??

ね〜武君・・もぅいゃ
ゃぁi am still in Youko.

TAKERU
Noー、武君、約束、、破らせないでぇ」

「ごめん、今の感じ・・・俺との約束のことじゃないよね

いったい誰??」

突然、小枝を揺らして小鳥が一羽

沈みかけている夕日目指して飛び立った

立ち聞きしていたのは、小鳥だけ・・・?

気が付けば...洋子の顔も茜色に彩られ


その穏やかなarchaic smile...一緒に・・・飛び去った

闇が近づいて、心まで覆い尽くされそう

「・・・」

うつむいている洋子

またモノトーンに戻っていいだろうか?

「...訳ありみたいだけど

いいゃー、また今度

作られた事実を知るより...

知らない方が真実に近いことって有るよね!

Youko本当の自分を知られるようで

不安だけど...

それじゃー



書きかけ歌詞があるんだ、それに

頭から8小節目まで

メロディーを付けてくれないか?」

「All right my Friend 」

「何と言っていいか?

anyway!・・・ありがとう

そして諦めかけてた夢を

見るchanceを与えくまれた君にもう一度

感謝したいょ

洋子ちゃん、残念だけど・・・君の笑顔がわからないほど暗くなった

お別れの時間だ

勢いで、ここまで連れて来たと思ってたけど

大切なmyfriendになった今

・・・感情に流されたんじゃなくて

必要な人だと感じたからなんだ

「そんなふうに言ってくれて嬉しい

私もそんなに強いわけじゃないから 、もっといろんなこと話せそうで

明日の予定が、気持の中心から脱けでるの

でも...そうー時間ね

 

一つだけ・・・わかってくれる!

YOUKOが歌に夢中なわけ

それは・・・

途方もない、夢の中の夢があるから

ニューヨークのBoyFriend

「Rick」もアマチュアバンド組んでるの

私の歌が・・・もしも超有名になって・・・彼の基に届く、くらいに

・・・そして彼がJealousy感じるくらいに注目の歌姫になりたいの

そうすれば、彼がいつも遠く離れていても

Youkoのこと気にしてくれそうな気がして

あー 武君、聞きたくなかったけ?・・・この話」

「・・・・ 確かにね、複雑になる、..

・・・でも覚悟してたんだ

君を放っておく程の鈍さでは・・・男は生き残れないからね

きっと切ない別れが、あったんだね

「もぅー、いじわる、言い当てないで

私、一人、
Day Dreamerじゃん...ここは笑って調子合わせてぇー」


私だってrealな夢も見るのよ

美容師になりたいの、どーお?

前向きでしょ、ははぁーっ」

「哲のことは、気にならない?」

「そうね、わかんない、・・・・武君

どうしたらいい

笑えなくて、困るの

ごめんなさい・・言えない話、私、、なぜ、、、話すの!?

なぜ、、、、わかってもいたいの!!

私、わかんない、わかんないのよ」

「洋子ちゃん、洋子ちゃん・・

落ち着いて

切なそう

君が、そんな悲しい顔するなんて

・・・・君がここに来た訳が

やっとわかったような気がする・・・・


「Don't worry for me...I am OK while you are mine,my friend...」

気が付くと洋子の表情がPastel Violetに包まれて

ぼやけて見える


俺は、もう一度洋子の愛らしい顔を

はっきり脳裏に焼き付けたかった

右手を洋子の真ん前に差し伸べて

「友達として、よろしく」

11月の 気まぐれな風が、洋子の髪を、舞い上がらせてた

時折右手で髪に触り振り分けていた、、、その手が

止まる...



洋子も手を俺に向けて

「 やきもき、させるかもしれないけど...よろしく」

手を握って連れて来た時よりも、温かくて柔らかい手を感じる

どちらも先に離そうとしなかった。

いつまでも握っていると...理性が崩れて

情熱だけが、、、むきだしになりそう

自分から手を離すつもりだった、、、力を緩めると

洋子が...握り返して離さない

切なくて...思いっきり抱き寄せた

洋子の柔らかさが俺を包み込んだ

「約束違反かな?」

「知らないぃ」

・・・

「Bye-bye Youko...!」

「Not so long. Takeru...!!」


第3の3話 「瞳からのメール」

(2006年11月18日 土曜日)

あぁ〜また...今日も眠れそうない

・・・寂しさが、血のように、胸から床に流れ落ちる

気だるい感覚に誘惑される。

CDに手を伸ばそうとした瞬間に、携帯が鳴り出した。

いったい誰??

「おい、武、寝てないか? 俺だ!!」

「その声は、勇輝・・・なんなんだょ、突然?」

「瞳ちゃん・・のことで、話がある」

「えー」

勇輝の声は少し上ずって、荒々しく聞こえる

「何だよー、話せよ」

「馬鹿やろう!!ーお前の家の玄関まで、来てんだ。
上がるぞー」

玄関のドアを蹴るような勢いで、勇輝が家の中に雪崩込んで来た。
廊下で、出会ったその瞬間
視線より先に、勇輝の高揚とした怒りの声が、俺の耳に、飛び込んで来た。

「てめえ−、瞳ちゃんを放り投げて、他校の女子学生といちゃいゃしてるそうだな」

「何おー
お前なんか、何にもわかってないくせに 」


「誰が、お前にそんなこと言ったんだ
俺は、あれから何回も
毎日瞳に電話かけたんだ
一回も
電話に出てくれなかったんだ
、、、それでも、俺は校門の近くで、瞳の下校を待ち伏せしてたんだ
そして、話し掛けようとすると、
首を横に振って、
言葉を忘れたかのように無言で、
俺を振り切って、逃げて行ってしまうんだ。

「甘い、そんなんじゃ甘過ぎる、お前、、本気じゃないんだろ?」

「頼むから
話を最後まで聞いてくれ、
それで 、道子ちゃんに、お願いして
瞳との接触を試みたんだ

そしたら、とんでもないことに、瞳はなっていたんだ

(2006年10月16日 瞳と道子の会話・道子から見た瞳の様子)

「ねー瞳、

マジでおせっかい、、かもしれないけど、、、

最近、武君と連絡取り合ってないないみたいだね〜っ!」

「ごねん・・・・・私、私ね、声が、出せないの!」

「そういえば、その声、いつもの瞳ちゃんよりハスキーで、トーンが揺れるね
風邪でもひいたの?」

「違うわぁ〜」

「そう・・・それに、数学の宿題忘れてきて先生に叱られたり
ぜんぜん、
瞳ちゃんらしく・・・ないよ、どしたの? 」

「うーん、ちっと訳ありなんだ〜ぁ」

「私にも言えない事って、何??
それは、仕方ないとしても・・・武君どうするつもり

何回電話しても出ないじゃ・・・私だったら交際止めちゃうわよ」

「ごめんなさ〜ぃ・・・これ以上話せない・・・」

(2006年11月18日土曜日武と勇輝の会話に戻る)

「俺は、道子ちゃんの話から俺のことが嫌いになった訳じゃないと確信したんだ。
俺、考えに考えた末
星が囁く夜に、、、ついに瞳の家まで行って、瞳と話し合うことにしたんだ
瞳の親父さんに、見つかれば警察に補導されることを覚悟して
瞳の居る、二階の窓辺目指して
ロッククライマーのように、壁をよじ登りたかったんだ。

俺は 、いくら監視の目を厳しくしても、
娘の部屋までは監視しないだろうと
信じたかった・・・

実際に瞳の家に着くと、頭の中で考えていたより、二階の窓ではとても高くて、

登り付く足場がない、だが幸いなことに、大きな松の木が

人の高さほどある塀と窓の間にある

松を利用して、滝やんから無理やり借りたロッククライミングの道具で

窓辺まで、たどり着けるかも!?

でも、、、それは結局最後の手段にしたんだ。」

「・・・なんだよ〜、じゃーどうしたんだ?」

「正面玄関から入って
どんな結果になろうとも
瞳の親父さんと合うことが
悔いが残らないと、思ったんだ」

気持を落ち着かせようと、目を閉じる... (一瞬の夢の中へ)

瞳の親父さんって、いったどんな感じの人なのかなぁ〜考え始めると

イメージが頭の中で何枚もスナップ写真のように、映し出されて

足が、すくむ

ここで、怯んだら俺は、一生立ち直れない

俺の脳裏に

瞳の笑顔が、フラッシュのように一瞬浮かび、そして直ぐ消え去る

消えなくなったかと思えば、、、艶やかな髪が目元を覆い

今・・・の表情を読み取れない...

懐かしいその笑顔にもう一度逢いたいと願い・・近づくと

地面が揺れ出す!

回りを見渡せば、自分は、、、、緑が溢れる・・・澄んだ空気の自然の中

落ちたら生きて帰れない・・・谷間に掛かった・・・つり橋の真ん中に居る

つり橋の先の・・・日差しが照りつける崖には、少女が・・・手招きする

焦って近づくと・・あどけない少女の顔は・・・距離が短くなるにつれて

大人の顔に変わっていく...

そこに居るのは、瞳ではなく...

洋子だ

躊躇いながら、振り返ると

反対側の崖には、瞳が膝を地面に落として泣き崩れている

呆然と立ち竦んでいると、つり橋が突風で揺れる

その人の「名」を叫ぼうとした時...(現実に戻る・武と勇輝の会話の中へ)

俺は飯田・・・の表札が見える位置まで立っていた

突然の訪問は、いやだ

ぼやけて曖昧になってしまった焦燥感が、、

無断で作り上げた、人間関係のイメージを

薔薇の刺のごとく、触れるたびに、、、傷つける


明日を描けない心のキャンバスに、不安が傷口を拡げ

滴り落ちる赤が、滲む

わさわざ教えてもらった家の固定電話の番号・・・

目の前で、携帯を掛ける

(武と瞳の父の会話)
「もしもし・・・飯田さんのお宅でしょうか?
夜分遅くすみません。
あぁーの、、、早川と申します
瞳さんとは、同じ高校の同学年で
それで〜その〜〜何と言うか!!〜〜〜瞳さんのこで... 」

「何ぃー」

「あぁー、やっぱりかー
悔しい誤解をされないために
隠さず、言います
ほんとうは、連絡がつかなくて
瞳さんのことが、心配で心配でしょうがないんです。 」

「あー武君だね
君からの連絡を・・どれほど待っていたことか?」

「えーぇっ 俺を待っていたいたーぁって!?・・・・
じゃー今、玄関に居ますけど、
お邪魔していいですか??〜 」

「武君...話したいことがある
君には・・辛い話になるが、電話を切って、玄関を開けてくれ」

言われるとおりに玄関の重い戸を、ゆっくり開けると
廊下の真ん中に、ガッシリとした体格の男が、仁王立ちしている。
二の腕の太さが、俺の倍以上もある。
その顔は・・玄関の照明が小さなスポット一つの為か、ディテールがぼやけて
まるで、ステージに立つ柔道選手のようだ。

男が、俺に話し掛けて、テリトリーの中に引きずり込まれる前に
自分で感じた「真実」を・・僅かな時間の中で、見つけ出さなければならない
廊下は綺麗に磨かれている、けど何か変だ
16才の女の子が、いっしょに生活している空間にしては
余りにも、飾り気がない、そこには最小限の光りと廊下しかない

瞳は花が好きで、Gパンに花の刺繍するくらいだ

・・・近づくと、いつも、野に咲く花の匂いを感じた

それは香水なのか??・・・それとも瞳自身の匂いか,,,わからないまま

「お父さん、瞳さんは・・今、部屋にいるのですか?」

「残念ながら、今は居ないんだよ、武君」

「坂道を登って、飯田さんの家に近づいた時
二階の瞳さんの部屋明かりが、灯ってましけど?」

「どうして瞳の部屋が、わかんだね!?」

「もうー正直に言わなければと思います。
瞳さんとは、お父さんに内緒で、交際を約束しています

最初のデートの家まで見送って、その時
暫く瞳さんが,お父さんに見つからずに家に入れたか?
見守っていたら
二階の明かりが灯って...
瞳さんの顔をカーテン越しに見れたからです」

「・・何てことだ!
君は想像以上に瞳に本気でいる
聞いてくれ!・・15才の瞳のことを

「1年前の瞳ですか?」

「そうだ、
親の期待を受けて、、
英才教育にあけくれる15才の少女が、、、
親の掟を破って、
クラスメイトの青年と恋に落ちたんだ。」

青年は学級委員長、少女は副委員長で
二人は勉強でも良きライバルで・・「一番」を競い合っていいた

学年委員長会議に・・そろって、出席した後
デートするはずだった。
親の門限を気にした少女は
学校祭のことで残った青年を後にして・・一旦帰宅した

「同じ高校に進学して欲しい」という
告白の手紙を渡さないまま
約束のコンビニの裏の従業員駐車で、青年を待っていた
いくら待っても..青年は来なかった

青年はその日を最後に二度と少女に逢えなくなった・・・・

翌朝、青年が不整脈急性心不全で、帰らぬ人なったことを聞き

少女は

「昨日を返して・・」 と叫びながら倒れてた

三日間眠り続けた

そして

眠りからさめると..少女は青年の事を

何も覚えていない・・

いつものように、元気に学校に行ったのだ。」

(2006年10月28日土曜日 現在 武と瞳の父の会話に戻る)

「・・・・今も、その青年のことは何も覚えてないのですか?」

「わからない・・二度とそのことは話さないんだ」

「武君、わかってくれ
その日を境に、瞳が、変わったのだ

・・・私が、決めた門限の9時になると
家を飛び出して
〜彷徨・・・うようになったんだ。
そしてその夜の記憶なくしたまま
朝帰りする娘の変化に

しばらく気が付かなかったんだ」

「それは、毎夜?何を求めてですか?」

「いや・・・
月の中で、青年が亡くなった日だけだ」

「父さん
こんなに悲しい話が、瞳の..

あぁ〜瞳さんの過去に
隠されていたなんって〜〜
ほんとうの瞳を知らないまま
俺は..あぁ俺は.何て奴だ
自分が..

「すまんな、武君
瞳は、君にどんな?嘘ついたか
想像できるよ
わかってくれ! ・・あの子は・・・

「・・・嘘をついた??
なんて冷たい言葉ですね・・お父さん
話が本当なら、何も記憶がないのに
瞳の気持からすれば・・・それは嘘にならないはずだと、思いませんか?
それに、変です、月の内に一日だけなら
今日がその日なる。
俺と逢うよりも 、瞳のことが心配にならないんですか???」

「何を言っているんだ
私が、逆に嘘を言ってるとでも、言いたいのか!」

・・とその時、俺の携帯が鳴り出した。

「お父さん、失礼します、瞳からの携帯です!」

「何をおかしなことを言ってるんだ
どうして、瞳からだとわかる」

「その訳は、お父さんの話が確信できるまで
絶対に教えられない!・・・
失礼します」

「武 、武
瞳よ、ごめんね、電話じゃなくて、メールで
でも私は間違いなく瞳よ
今、父と居るのはわかてるの
なぜ、わかるかって武の持っている
私専用の携帯をGPSしているから
なぜGPSできるのかって
私は今「哲」というプログラマーに、囚われているの
私を、信じられる
無理よね、連絡できたのに、しなかったものね
でも、身勝手だけど
信じて欲しい
父の話、丸ごと信じちゃだめ。お願い。お願い。」

「お父さん 貴方の大切な娘さんが
両親もいなくて、身元も確りしてない僕に
助けを求めてきてますよ
なぜですか?」

「残念だぁー
君には、この私が、
瞳の気持を少しも考えない
最悪の親であるかのごとく
映っているみたいだなぁ」

「違います・・お父さん
貴方は、世界でたった一人しかいない・・瞳の・・お父さん
瞳さんに対する愛情が無いなんて・
思っていません・・
気が付いて下さい・・・

ただ..愛情の方向が違うんじゃないかと・・・・;

「もう・・いいょ
これ以上話しても、私への信頼が無いなら
無駄だと思わないか??、武君 」

そう思いません・・お父さん
隠さないで 、ありままの瞳さんを
俺にも、わかるように・・話してください

そして、哲という男のこと....


飯田さんは...もしかしたら....知りませんか!」

 

 

「哲」という男の名前を聞いた・・瞳の父は

いままで、自信に溢れて・・威圧感さえ感じられたのに

一瞬で・・遊園地で迷子になった子供のように

おどおどした態度を俺の前で・・さらけ出した。

皮肉な事に、この時から・・・

瞳に対する混乱、不信の念から解放されていった

それは絡み合った運命の糸を・・一本一本解すように

そして「哲」という男の混乱が・・

俺達を巻き込んでいく事も・・知ら無いまま。

 

「わかった・・武君
どうか、瞳を・・娘を・・助けてやっていくれ

私の嘘を見破った・・君の真摯な情熱と勇気を信じようと思う!」

瞳の父は、やっと真夜中の尋ね人を 自分の城へと案内した。


勇輝と武

(2006年12月17日 日曜日 武と勇気の会話に戻る
・・・ここからは、佐久間勇輝の視点で、書く)

武は、肝心なところなのに・・・拳を握り締めて、俯いている
こいつ・・どこまで俺を焦らすんだ!

「おぅー、タ ケ ルなんで続き話なさねんだょ」

「ここからは、18才未満お断りだぁー!」

「この野郎ー。ふざけた事抜かしやがって! !」

俺はマジ切れになってしまった。
武の胸倉を掴んで、壁まで体を押し付けた。

家が、その反動で揺れ・・脇の小さな押し花の額縁が
外れて廊下に落ちた。

「話せよ・・・瞳ちゃんのこと!」

「瞳ちゃん? ?
お前、まさか・・まだ、俺の立場、気にしてんのかよ」

「よけいなこと言うな」

「実は・・・・瞳は病気になった」

「え」

「難病の・・・・恋の病ってやつだ。」

「もうー、許せねー冗談言うなって、言ったろ!」

俺は、武の右の頬を殴りつけた。
武は、大木が、倒れるように・・ゆっくりと
廊下に腰を抜かした。

「武、なぜ少しも避けなかった!
わざと殴られたな!!」

「もう少し殴ってくれ・・・ははは

俺は..瞳を守れなかった

最低だぜ、俺なんか・・・もう・・

・・・

やっと ・・・お前を信じて話すぜ。」

だけど、その前にこれだけは・・・お前に知って欲しい!!」

武はそう言うと...ポケットの中から携帯を取り出して
何やら、操作しだした。

「勇輝、この写真が・・・洋子ちゃんだ。

連絡さきを聞いた時

内緒で撮ったものだ、見てくれ!」

「なにいぃーっ・・・・・・

マジかよ、

神様は、何て・・・矛盾が、好きなんだ

この顔は、この姿は、ひとみだ。

馬鹿やろーぅ、

殴られる前に、、

どうしてこの写真みせなかった、、、」

俺は、奴がどんなに・・この洋子という女の巡りあわせで
人知れず苦しんでいたか気が付いた。
俺らしくないことに、言葉に詰まってしまう..
いったい・・何て言えばいぃんだ!

「武、また俺一人・・きどって・・余計なおせっかいだったかなぁ」

「いや、そういうとろが、お前の憎めないところだ!
勇輝ー、瞳のために、ここまで来てくれた事・・無駄にしないぞ!

「お前さぁー・・・まあいい・・・」
俺はまた人がよ過ぎる武に、いらつき出した。

「それで、瞳はどうなちまったんだ。??」

「あぁー、瞳の親父さんの話で、
15才の時、同級生と恋に落て
そいつの急死で 、倒れてから、
様子が変わったのはホンとらしいぃ。
でも、夜中に家を飛び出す話は、嘘だったんだ。


また、拳を握り締めると...話を続けた。

「それで、お前にわかって貰いたいのは、瞳の親父さんと哲という青年の関係だ」

武は血が滲み出すほど・・硬く拳を握っていた。

(瞳の父が話す2005年の瞳の様子
・・・武の視点に戻る )

居間に、上がることを許された俺は、途中・・廊下の片隅に・・一瞬・・
やっと「瞳の足跡」を見つけた。
それは、控えめな大きさの花の写真だった。
以外にも、それは薔薇ではなく、清楚で淡いPastelViolet色の花だ

「お父さん..この写真は、誰がいつ撮ったのですか?」

「それは最近、瞳が...」
言いかけて口を濁した。

瞳の父は、手をソファーの方に、かざして

「さぁーここに、座ってくれたまえ、武君
話さなければならないことが、山のようにあるが...

どうしたも 、「哲」という男の話から、聞いて貰いたい。」

(2005年 哲と瞳の父の出会い)

君に詳しくは、言えないが・・・
教育機関の情報セキュリティー監視団体役員と、
「 更生保護を目的とする」民間団体の役員、、
を兼任をしている私に、会長を通じて、、、

「是非とも、面談して・・素行に問題のある青年「哲」を
補導したらいいか、どうか判断してほしい」

との公的な・・・あるネットセキュリティー監視団体から依頼が、あったんだ。
彼は・・若くして一流のプログラマーであり
斬新なコンピューターウィルス対策ソフトや新種のファイル共有ソフト

開発している、優秀なSE候補なんだ。

だが彼の人格の中で、同世代の友人との交流という感情は影を潜めていた。
いつも孤独を好み、ソフト開発を続ける毎日だったらしい。
彼にとって例外が、一つだけあった。

それは「音葉」という名の大学院生の家庭教師で

彼女が大学一年の時から

6年間ずぅーとプログラム開発を指導していたんだ。

実は音葉さんとその父親とは・・・私も面識があるんだ。

なぜなら、彼女の父は


教育機関の情報セキュリティー監視団体役員
の一人だつからだ。

そして・・・音葉さんは、私の娘

つまり・・・瞳の「家庭教師」でもあるんだ。

音葉さんと瞳は年こそ6才も違うが

気の合う無二の友達でもあったんだ。

そのことが縁で...哲君と瞳は、顔を逢わせることになったんだ。

だから音葉さんも、哲君も家に一度だけ・・・遊びにきたことがある。



彼女は滅多に微笑まないが・・エクボの可愛い人だった

 彼女の趣味はピアノを弾くこと・・それと花の写真を撮ること♪
 
   そして...「武君、わかるかな・・・我校の軽音楽部の担任

     白井美和さんは、大学の先輩で、交流があるんだ。


その影響かもしれないが、哲はプログラム開発以外に

    一つだけ音楽に興味を持っていたみたいだ。


  
彼女は損得はあまり考えない女性で

講師料金など請求しなくても無償で

真夜中まで、哲のプログラム開発の手伝いしてあげることがよくあった。

その彼女も卒業と同時に恋人とアメリカへ行ってしまったんだ。


鉄の心の彼も・・さすがにこの時ばかりは動揺したらしい

運命の女神は、

時々とんでもない悪戯をするものなのかもしれない



そんな「哲」青年の下に...

まるで、入れ替わるごとく一年後にアメリカから帰国子女の同級生の「洋子」が

彼の前に姿を見せたんだ。

洋子の母は三世で、洋子もアメリカ生まれ

なので、親子で日本語が上手く話せない。

父親は一年だけ仕事の都合で、アメリカに残らなければならなかった

学校生活にも困っていた洋子に

奇蹟が起きて・・哲が自分から心を開いて

「友達になってくれ」と願い出たらしい。

その理由は未だに、わからない...

やがて、二人は回りの同級生が羨むくらいの仲になっていったんだ。

そして、同級生達は、いつしか「哲」の「洋子」に対する真摯な姿に

「哲」へ信頼が芽生え、友達も一目おきながら増えていったんだ


注意するの次の事実だ

音葉が、アメリカに行き、洋子が日本来るまでに

一年のタイムラグが生じたんだが

その間の哲は、様子が変で、

家でのソフト開発はまったくやめて

深夜、夜遊び出て、札付きの不良少年達に近づき

学校内の個人情報等を手渡し、見返りに

自分が出来ないことを頼んでいたみたいなだ。

 

それから、音葉の大学へ行って、音葉の恋人が居た総合情報センターの

人事部長に「大学研究員生の適正人事配置」なる抗議分つきつけたりして

問題になり、私の所にも...その連絡が届いたくらいなんだ。

そして、ついに、人事部長宅の花壇が、荒らされたり

生卵が玄関に投げつけられる事件が起きて

真っ先に、哲が生活指導の教師に呼び出されたんだ

 

そして、また一年前・・・ 瞳が同級生との恋愛関係にあった彼氏の

突然死のショックで倒れてしまった頃

時を同じくして..

三回程、瞳も深夜に家飛び出している

 

私の勘だけだが

   恐らく恋人を無くした二人は、顔見知りで

      引き合うものが、あったはず

もしかしたら、運命の女神が、引き合わせたかもれない??



その後 一か月して、哲は大人しくなり、元に戻ったかに見てたんだ。


そから(一年後 2006年10月)

つい最近の話だが

学園内に不可解な事件が起きている。

それは、期末試験の記述式問題のが、12人の生徒が

模範解答例と一字一句まったく同じ、というありえない事が発覚したんだ。

しかも12人の学生全員が
以前から日常生活の素行に問題を抱えた
いわゆる札付きの不良少年だった。

問題と模範答案を作成した教師は
情報処理科担当で
試験の前々日に、ファイルロックしてから保存して教室を後にした。

だが、この教師は自分で開発したファイルロックシステムを使って

二重ロックを掛けて成りすましオーナーに対して

の並列化を防ぐ為に

ロックシステム解析ログを仕掛けていたんだ。

試験の前日にそのことで、
何者かがロック解除したログを発見したんだ。

その時点で、犯人を割り出せなかったが
追跡調査は、密かに続けていた。

試験の前日、オンデマンド高速印刷開始時間まで
教師は犯人を探したが、見つけられなかった。

教師は試験が終わって
採点の段階で、12人の生徒を呼びつけたが
口裏を合わせて
「証拠が無い」との主張で、難を逃れてしまったんだ。

私は、この事件の12人の生徒達の黒幕で、何者かが導いていると感じた

一年前の哲君のことが、即・・・頭に思い浮かんだで

哲君の所に電話を掛けたんだ

そしたら、待ち構えていたような返事

『ナイスタイミングですよ、瞳のお父さん

一年前に瞳さんが、恋人の突然死で、様子がおかしくなった時

瞳さんのことを・・・本人が気がつかない内に、監視する手立ては無いか??

僕に相談してきましたね!

まだそのこと、覚えていますよね?』

 

「ああー確かに、君の開発したソフトを使って娘を遠隔管理できないか?

相談したよ」

それでは、そのことを含めて、話したことがあります』

と逆に呼び出し要求してきたんだ。

 

しかし、私はこの呼び出しに応じなかった。

なんて、「生意気な青年だ」と怒って、電話を会話の途中できってしまったんだ。

 

それから、大変ことが、日を追うごとに、持ち上がってきた。

何者かが、私の経営するブテックのチェーン店のシッターに深夜の内に

ペンキで髑髏マークの悪戯書きをしたり

土曜日の晩に、気持がイライラしてたんで、馴染みの居酒屋で

ついつい酒を飲みすぎて、道端で大の字になって眠っているところを

誰かが盗撮して、PTA役員の家庭に、メールしたりとか

とても単独犯ではできない嫌がらせを受けるようになったんだ。

私は哲の手下の12人の不良少年の仕業だと、直ぐに気がついた。

集団で暴走する狼達には、一人では始めから勝機が無い

かといって「一年前の瞳」のことで、私は「哲と12人仲間」との間に公にできない

違法行為を黙認する密約を交わしてしまっている。

私はまた、悪の契約を重ねることが、予想されても

哲の要求に応じるしかないと思いつめてしまった。

それは・・・間違いの連鎖の引き金となってしまった。

君のような

瞳の気持を良くわかってあげる

青年に先に相談すれば、こんなことにはならないかったと...。」

 

「武君!、すまん・・・夜更けに、この切ない話をよく黙って聞いてくれた

君が一番知りたいのは、今の瞳の行方だね。

瞳の書置きした、この手紙を読んでくれ」

と瞳は父は、手を少し震わせながら、俺に手紙を突き出した。

「えー、メールじゃないんですか?」

「いや確かに、手紙だ」

受け取った手紙を開いた瞬間...ほのかに瞳の甘い匂いが、俺を包んだ・・

かのよう思えた。

わざわざ手書き綴られた手紙はの文字は

学園祭の飾り付け係りで、手伝ってくれた

あの時の・・・懐かしい柔らかな文字がそこにあった


第2の1話 「置手紙」

 

「瞳です...。

『お父さん、本当にごめんなさい。』

理も無く、突然家出したような事になってしまいましたが...

実は、そうではありません

私は、今、哲の家に囚われています。。。

あぁーっ、いいえ...自ら進んで哲の家に身を置いています。

なぜかを書く前に

思い出してください!

一年前に、私は大切な人との突然別れに耐えられなくて

流れ星を追うように、あてどなく夜の繁華街を・・・彷徨いました。

そして、行き着いた所は

ガラスのドアにコスモスの花が印象的な歌声喫茶「Dream Boxs」でした

そして偶然にも

私の家庭教師の音葉さんといっしょに

唯一私の家に遊びに来た・・・哲 に、出会ったんです。

哲も音葉さんとの別れを受け入れられずに

喫茶店の片隅で、目を閉じて、同世代のシンガーソングライター達の叫びに

腕組みをしながら聞き込んでいました。

哲は、ソフト開発以外は、世の中の感動に、

感心がない男とばかり思っていた私は

思わす゛

「哲君、いったいどうしたの?」と声を掛けてしまったのです

何をする為に、ここに来たのか・・・を忘れて

私は、哲が、これから話してくれであろう

未知のストーリーに

自分の彷徨う魂の救いを・・・期待したのかもしれません。

別人のように弱々しいくなってうずくまっている哲を

その時は、曖昧な問いかけの「答えなんだ」...と...

無理やりに思いたかったのです。

「瞳ちゃん。どうして、ここにいるの?

君には今、 何を求めて掟を破ったの?」

と虚ろなヒトミの哲が、近づいたのです。

それから二人は

同世代の学生や、透明な情熱を発信したい仲間が集う

この「DreamBoxs」さえ...避けて

繁華街の片隅に隠れるように、存在する

小さな、小さな、緑の公園で

ベンチに腰掛ながら、お互いの心の傷を

打ち明けたのです。

それ以来..ずーと哲には

お父さんに内緒で、心を許す仲でいました。



それで.........。

今の私、、、

哲が、一年前の...あの時にような、悲壮なヒトミに戻って

私に会いに来ました。

「 瞳ちゃん、君と交際している武君だが

僕の心の庭に無断で侵入するように、

洋子に近づいている

僕が、どうしても許せない気持になるのは

君のような強さと優しさを兼ね備えた

交際相手が、有りながら、僕の洋子も

狙っていることだ。」

と思い込んだように、告げるのです。

武は、そんなことは最初から考えない男だと

教えても、聞き入れようとしません。

思い込んだら、何をするのかわからない..哲の気性

私は、武の人生を・・・自分の感情の為に

めちゃくちゃにするかもしれない

私の予感は、確実な予測になりました。

私は、決意しました。

哲から武を守れるのは、私しかいない

私は、、、私は、、、良く考えたすえに

洋子さんに連絡を撮り

二人で、信じられないような事を計画しました。

哲に知れたら、この命がけの計画は水の泡です

どうか、武が私の家まで、訪ねてくれる「勇気の人」なら

この手紙と

もう一通の武宛の手紙を

見せて、武の手で

その場で、焼き捨ててください。

絶対に、保管しないで

お父さん

最後に、哲は物理的な危害は

私には加えられない人です..それだけはわかってあげて

お願い.........

 

瞳の父は、手紙を読み終わったのを確認すると

二通目の俺宛の手紙を手渡した。

「武、武、

ごめんね、心配させてばかり

あぁーなんてことだろう、いやになっちゃうよね!!

でも、泣いてばかりじゃ生きられない

私そんなに弱くないから・・・

大丈夫だよ。。。

洋子さんの携帯使って、連絡するかもしれないけど?

お父さん宛の手紙読んでくれたと思うから

私の家に訪ねてくれて

ありがとう

今の私の気持・・・手紙で、わかってもらえるかもしれないね

付きあってまだ、日も浅いし

正直、不安も少し...

後悔はしてないよ。

でも、あー、どうか、私を信じて欲しいぃ。

絶対に全部話せる日が、きっと来るよ。

それじゃーね」

 

俺は、手紙を胸に抱きしめたまま

床に土下座して、泣き崩れた。

数分が、にわか雨のように、通り過ぎ

立ち上がって...心の中のファイテングポーズをとり
また瞳の父と
嘘の探りあいのような会話を始めた。

「この手紙から想像する、瞳は哲の家いるのでしょうか?」

「いや、それはないと私は思う、

哲は偏見に満ちた母親の躾けで

長時間女性と一緒にることが、出来ない男なんだ

例外は、母親が認めた家庭教師の音葉さんと

一年前の瞳

それとおそらく洋子さんしか居ないと思う」

 

「何ですって、もう一度聞きたいくらいだ

偏見に満ちた躾けって...

よくそんなこと言えますね

瞳が、苦しんでいたのは

貴方のその偏見に満ちた躾けじゃないんですか???」

 

「武、よく言ってくれた、

君を待っていたのは、その誤解を釈明したかったのもあるんだ。

確かに私は、門限に厳しく躾けたが

それは年頃の娘を持つ親なら誰しものぞむ程度の願いで

門限を破っても叱ることは、稀だった

信じてくれないか?」

 

「どういうことですか?」

「問題だったのは、瞳の考え方にあったと思う

瞳は幼くして亡くなった母親のことを とても慕っていて

亡くなってからは、母親の代わりをしなければと決意し

私が食事の支度をすると言ってもききいれなかった。

友達と遊ぶことも自らさけて、家を支えていたんだ。

瞳は自分の中に、私の娘と私の妻を宿していたんだ。

そんな瞳が、一年前の同級生の唯一の恋人を突然死で

亡くした時、最後のデートを門限を気にし

葛藤して苦しみ、それを私に転化して

回りの人間には最後のデートができなかったのは

私の躾けのせいだ・・と言いふらすようになったんだ。

嘘かホントかわからない話は、数十分聞かされた。

結局、瞳の父からは
明確な今現在の瞳の所在は掴めなかった
哲の家に居るらしいか゛
もちろん哲に聞く訳にはいかない
頼りは、さっきの洋子ちゃんの電話を使って
俺にくれた瞳のメールだけだ
メール返信で連絡をつけよう

瞳の親父さんが、あれほど瞳を監視していても、瞳の部屋には

入ることが出来なかったという言葉を思い出した

哲も心を許した洋子ちゃんのことは

もしかしたら、断りなしには踏み込めない

かもしれない...

男の勘がそう囁いた。

俺は、瞳の願いの通り手紙を焼き捨て
飯田家を後にした。
そして家でメールを必至で打ち込んだ。

武より

Hitomi宛のメール

「瞳、いったいどうなってしまったの?

今、何をしているの?

何処にいるの?

あぁー俺は、何をすれば君は救われるの??

混乱が土砂降りの雨のように、心を濡らしているよ

瞳、なんと言って謝ればいいか

心の何処を探しても見つける事ができない

君一人に、俺の不本意な行動の責任を取らせてしまったね

あの日の偶然の事故に、

俺は油断していた。

哲という男の存在を知りながら

俺が洋子ちゃんに、気をとられて、電話しなければ

もしかしたら、君をこんなに、苦しめずに済んだかもしれない

信じて欲しい、、、

あの時は、哲は何処にでもいる、勉強好きの学生のように

感じていたんだ。

俺は、上辺だけしか、人を見ていなかった

君に対しても同じなんだうかと...

考えると自分がつくづくいやになる

今度の事件でわかったことだけど

君の生き方を見ていて


「人を好きになる」ということは...「生きる」ということと


同じなんだと


けど、、、「生きる」ということは、、、


「人を好きになる」と同じじゃ無いね


俺が、洋子ちゃんに示そうとした・・一握りの優しさは

哲にとっては耐えがたい・・

いじわるな予期せぬ出来事だったのかもしれない

・・・・・残念だよ

それが俺達を取り巻く現実なんだね

君に出会わなければ、たぶんそうは

思わないで、平気で生きていたかもしれない。

(また・・・2006年11月18日 土曜日 武と勇気の会話に戻る
・・・ここからは、武の視点で、書く)

そんな訳で、俺は瞳の現在の状況とともに、哲について
いろいろと調べているんだ。」

「なぁーなんか、お前カッタルイよ
哲の家に、押入って
瞳ちゃんを救い出さないか?」

「おいっ、よせよ、そんなことしたら、
哲が何をするかわからない
・・・また大変な事態になるかもしれない
。」

「じゃーさぁー、お前に聞くけど、何か
他に いい手が有るのかい、 
気取って
ずいぶん落ち着いているけど
悲劇の・・・ヒーロー君!
どうなんだい

「何...ちきしょう!!
気取っているって、言ったか?
勇輝・・・俺が、どんな気持で
瞳を心配してたか
お前に、わかんのか?

いや、幸せな家庭のお坊ちゃま
のお前に
わかるわけないぜっ

「なにぃっ、俺が幸せな家庭のお坊ちゃまだ?
そんなこと初めて言われたぜ
それじゃ、何か?、お前の家って
めちゃくちゃ最悪みていだなぁ〜!!」

「あーあ、そうさぁ」

「・・・........。」

「・・・」

「そうかぁー

武、俺でよかっら、マジで力になりたいぜ?
よく考えたら...
どうすることも、思うように、できずに悩む
お前が
一番つらい時も
ある...
かもなぁー
洋子ちゃんに気を取られるのは
当然なのかもしれないなっ

わ る か っ た。

なぁー、何とかして

瞳ちゃんを

俺も助けたいんだ

・・踏み込んで、しまうかもしれねーが

許せよ! 」

「・・・・・お前らしくないな!!」

「?・・・あー」


それから、、、

瞳の救出作戦を二人で、練った。

まず、

瞳の今の居場所を正確に

突き止めるために

洋子ちゃんに極秘の連絡取る・・・ ことから、考えてたが...

それは、やはり哲に気づかれずに、決行することは

あまりにも「危険」であるこを思い知った。

哲をよく知る、人(女)

音葉さんに連絡つけるしかない、という結論に達した。

 

アメリカに行ってしまった音葉さんに、連絡をつけるには

やはり、道子ちゃんを通して

音葉さんの大学の先輩である軽音楽部の担任白井和美先生に

お願いするのが、一番いいように、思えた

「勇輝、俺が動くと目立つから

お前、道子ちゃんのとこ行って、

一緒に白井先生から、音葉さんの連絡さきを

聞き出してくれないか?」

「俺、、さぁーわりんだけど

道子ちゃん、苦手なんだぁ〜。」

「おいおい、如何したんだ、急にソワソワして」

「・・・頼む」

「何・・・意識してるんだ

...なるほどるね、瞳とは正反対の性格

の道子ちゃんが、だめなのか??

ようしゃー、こうなったら三人で、明後日の放課後、白井先生とこ

お願いに行こうぜ!!

そのかわり、今のことは、お前が先に、説明しておけよ

知っているんだろ?」

「ああー電話でなら、いいぜ」

 


第2の2話 瞳の登校拒否

(2006年11月20日月曜日)

俺は、よく寝れなかったので

吉田先生の数学の授業が、全然身に入らない

ふっと、窓の外の丸い・・・だるまのような雲を眺めた

「なんだか、全て放り投げて

見知らぬ町で

見知らぬ人と

無邪気な夢物語がしたい...」

腿から振動がつたわり。

机の下で、携帯を開いた。

「道子より

武君、大変よ、


ついに、瞳が 、無断欠席したわ!!」

「わかった、道子ちゃん

それなら、何があっても予定通り

白井先生から、哲についての詳しい

情報を聞き出さなきゃ」

 

放課後...俺は

軽音楽部のドアを前に

駆け込んだ。

教室の中からは、ピアノの音色が
野の花に、触れた時に気づく...「蜜の甘い匂い」のごとく
流れていた。

そのメロディー
聞いた事もない...けど...
血が、懐かしさを呼び起こしていた。

そっとドアを開く
ピアノの直ぐ傍に

眼鏡を外し
三つ網も解いて
髪を長くした
最近、痩せて
スタイルが男心をドキドキさせるようになった
道子ちゃんが...

並んで
学生服のボタンを全部外して
紺色地に真紅で八分音符を模ったTシャツを
ラフに着こなしてキメている
長身の絵なる五組の勇輝が...

ピアノに座っているのは
濃紺のブレザーに
胸元がフリル付きの白シャツが清楚な女性
前髪が、目元を隠して誰か
よくわからないが
二人の視線を独り占めしていた。


第2の3話 「本当のこと」

「武君、

大変ね...!?

今、とても不安でしょ...違う

二人から、瞳ちゃんの話

聞きましたよ

そうね、

何から話したら

いいかと悩むくらいだけど...

まず

一番大切な事から

武君・・武君と瞳で作った歌の譜面

道子ちゃんから見せて貰いました。

歌は、ね、

その人の心の中が見えちゃうの...

君達の話

信じてあげる。

音葉さんの話をする前に

君達三人に、言っておきたいことが、あります。

君達が、今しなければならないことは

勉強です...それは紛れもない「事実」

けれど、ね、

「本当のこと」は

多感な感性の子羊の君達が

気づかなければ、ならないのは

「人の気持」

かわってほしい、

「事実」と「本当のこと」は

違う時もあることを...


瞳ちゃんは、賢い子ね

何がって

勉強が、出来ると言う意味じゃないんだよ

人の気持のわかる子という意味

多分、その事で人知れず悩んだからね

ね、武君

瞳ちゃんは、ね

武君に内緒で、私に逢いに来て

作曲について教えて欲しいと

学級委員長の時には、けして見せない顔で

頼み込んで来たわ

とても透き通った目の輝きが

今も忘れられない
...
これは君達が知らなければならない

「本当のこと」の一つよ

 

ピアノに座って
この優しい助言をした

その人の名は、白石和美

肌が、白くて頬が、ふっくらした、

平安時代の紫式部の人物画を

少しだけ連想したなる風貌で


学生達がつけた

あだ名は・・・音楽の先生なのに、なぜか「絵本作家の和ちゃん」

今の話で、

その由来が、人柄から滲み出たものからだと...

妙に納得できる。

 

 

「それでね、ねえ、

とても迷うけど

君達が、もっとも知らなければならない

「本当のこと」のことで

哲君について、話すことにしたわ

この手紙に書いてあるは、

誰が書いたか、君達ならもうわかるわね

そう・・私の大学の後輩「緑木音葉さん」からの手紙よ

音葉さんは、アメリカに発つ時

とても哲君のことを気にとめていたの

そして、哲君の性格から

こんな事態に陥ることを予想して

この手紙を私に預けたの

「和美先生、絶対に・・・ぎりぎりまで、

この手紙を

必要とする人にだけしか見せないで」と言い残してね...

白石先生はゆっくと、、、

さっきまで弾いていた黒さで光沢のあるピアノの上に

水色の便箋に書かれた手紙を

三人がどの角度からも

読めるように拡げた、

 

「和美さん

音葉より

ここに、哲から、、、いいえ、哲君から

届けられた手紙を同封します。

私がどうのこうの書くより

哲君のことをわかるのには

自分で書いた、この手紙が、最善であると、信じます。

ただ一言、私から言わなければならない事は

てつは、、、

とても純粋な青年です。

わかってあげてください。」


第6話 「哲の生い立ち」

「音葉さんへ

前から、どうしてもわかってもらいたいことを

ここに、書きます。

それは、俺の生い立ちについてです。

子供の頃の俺の両親はとても仲がよく、

喧嘩をしている姿など見たこともなかった。

誰にでも自慢できる、理想的な夫婦だった。

俺が小学校に入学する頃に、

あんなに母を愛していた親父が、突然愛人を作ったんだ。

その事実を知った母は、内側から少しずつ壊れ出したんだ。

ある日俺に、こう宣言したんだ。

「哲ちゃん、今一番やりたい好きな事は何?」

ゲームに夢中だった僕は、迷わずその時

「プログラムの勉強がしたい。」

と答えたんだ。

その翌週から、俺の...

望みを叶えるプロジェクトが、母の主導のもとに動き出したんだ。

「哲ちゃん今日から、プログラムの勉強ができるように

の家庭教師に毎日きてもらいますよ。

貴方は、好きなだけ勉強できるし、

必要な本や資料は全部そろえて上げます。

その代わり、他の事に興味を持ってはいけません

友達と遊んでもいけません。

いいこと、好きな事があったらとことん突き詰めるよ

途中で投げ出す事は、お母さんが許しません。

約束できますよね」

母の真意が読み取れなかった俺は

勉強部屋に鍵が掛けられるようになっことを気にしながらも

「はい」と答えたんだ。

後で解ったのだが、

この時すでにおかしくなっていて、

親父の血を引き継いだ俺を憎んでいたんだ。

約束どうり月曜から

大学のコンピューター情報処理部門選抜の家庭教師がやってきた。

それが、音葉さん

貴方です。

出会いは、最悪の理由からだったけれど...

貴方は、俺にとって運命の人であることに

気が付くのに

そんなに、時間は必要なったね

勉強は真剣なだった...でも、

一時間に11分の休憩を必ずとって

俺に、いろんな話をしてくれた。

ピサの斜塔は一年にどれくらい傾くのかとか、

いきなり、

ニューヨークのピザが美味しい屋台の話とか、

雪の結晶の話とか

株券の買い方とか

そして、忘れられないのは、

夜空に煌く星座の物語だ

母親から絵本さえ、読んでもらった記憶も無い俺は

11分が短すぎたよ。

貴方が、夢中で話し掛けている時に、

俺は、貴方の黒髪が揺れる度に、ほのかな甘い香りを感じていたんだ。

そんなこと、別れの日にも言えなかったけど...

貴方が、アメリカに行っしまうことが

決まった今

とても、言葉で言い尽せぬほど
寂しい。

貴方は、俺にとって有能な教育者であり

育ての母であり、

心を許せる友人であり

そして、そして

  ごめんなさい・・愛しき人よ
幸せになってください。


さようなら...

 

「・・・後半の文は、俺と同じ普通の

ただの男だと思う、

そう感じない? 白石先生!!」

「その通りね、武君

私が直接、音葉さんから、

聞いた話では、」

 

(音葉の話)

哲君は、自分の信念の為なら

燃え盛る炎の中でさえ、

最善の策を尽くして、突進む男だ・・・ !

と周りの人間から、思われているけど

本当は、そんな意志の強さ

覗かせるようなことろは、

私には

殆ど見せなかったわ

勉強の時は・・といより

彼が考えたプログラムで

アルゴリズムの決定の段階と

設計での矛盾点について

私とデスカッションすることに、

ほとんどの時間を割いたわ

そう...二人で

「RoseWater」というソフトをcoding開発したの

哲について、言いたいのは、残念ながらそのことでは無いの

休憩時間に、彼は、

夏には・・・林檎ジュースにフルーツを浮かせ

冬には・・・耐熱ガラスのコップにホットレモネードを

作ってくれ

それを丸いテーブルに膝をつき合わせて

たわいも無い話を...自由に話し合ったの

その時の彼の瞳は、澄んで窓辺からの木漏れ日を

跳ね返す程輝いていたわ。」

少なくとも、音葉さんといる時の

哲君は、賢い勉強好きの普通の高校生

優しさも、ちゃんと心得ているのが、

わかるでしょ!!

本当のことが、わかっていても、どうにもならない、

はがゆい気持ちの哲君の横顔が浮かんでこない??

ねー、だから、今度のことは...

先生にとっても、気の許せる友人である音葉さんのことでもあるし...

とても心配しているの

変な言い方かもしれないけど

哲君の為にも

最善を尽くして、瞳ちゃんを救ってあげて

そうじゃなきゃ・・・皆が傷つくことになるかもしれないわ

哲君は今、いったい何を望んでいると思う」


「決まっているよ・・洋子ちゃんの気持を取り戻したいだけだと思う」

「本当かしら?? 彼は合理的な判断で、きっと自分の意志を貫いてくるはず。

今度の瞳ちゃんの行方が、わからなくなった原因には

哲君以外の影の黒幕の意志が、存在するようなきがするの」

「えーー

具体的はわかるように、ずばーっと言ってください」

白石先生は、哲の手紙のほかに、B4の用紙に印刷された
リストをピアノの上に置いた。

「わかったような気がする・・もしかして、、、これは

哲君の12人の手下でしょ

何か関係しているのかなぁ!?」

と頼りになると感じている白井先生の意見を

引き出そうと、ピアノに寄りいっそう近づいた時

背中で、人が近づいてくる、僅かな気配を、感じた。

 

「よおーっ、皆集まったじゃないか〜♪」

明るく屈託の無い笑顔で、滝やんが、音楽室のドアを

無神経に音を立てながら開きいた。

「滝、お前っ、どうして、ここがわかった?」

「おーっ、武、そう・・・とんがった顔するなっての

決まってんじゃねいかよ

道子ちゃんからの連絡さ」

「そんなことより・・・瞳の居場所が、わかりそうだぞ

Good newsだろが、武」

「本当かよー!?」

「どうやら、Dream Boxsでアルバイトしているらしい」

「Dream Boxs〜あぁ、あの、歌声喫茶のDreamか?

あそこは、夕方から8時までは、

学生が自分達で自由に、ステージを企画することが許されて

自作の歌を発表したりして、ソングライターの集いの場になっているけど

8時を過ぎると、たちまちステージの雰囲気も変わって

生バンドのステージ付の、スナックになちゃうだよな」

 

「ああっ、武、お前、

行ったことあるのか?」

「まあなっ、前半のほうだけどな

経営者が、ユニークな人で

Jpop大好き人間で、若者に創作の発表の場を与えたいと

低料金で、ドリンク付イベントで始めたらしいけど

企画力はあっても、経営の方は、あんまり...みたいで

なくなく8時からはスナックにしたらしいね」

「武君、注意し」

「何を?先生...」

「さっきの話しの続きよ

その場所は・・・音葉さんも言ってたけど

哲が親の言いつけに背いて、唯一自分の意思で

自由に出入りしていた場所よ

彼は、時々12人の仲間を連れて行くこともあるそうよ

12人不良仲間の中には、空手家やボクシング部員もいて

補導部の先生が、目を光らせて監視している

危険なアウトサイダーばかりのはずよ

それにね、もう一つ音葉さんから聞いている

大事な哲君についての、話があるの・・・」

 

「何ですか、先生?」

(と勇輝が、割り込んできた。)

「哲君のお母さんの話よ

音葉さんが、アメリカに旅立つと同じ頃

哲君のお母さんが、亡くなったらしいの?

何で亡くなったかは、はっきりしていないみたい。

哲君にしてみれば、その時が

人生の中で、一番心が揺れた時期かも...

生みの親と育ての親?が、同時に別の世界にいってしまったのよ

君達...意味・・・通じている??」(白石)

「なんとなく....辛かっただろうなって.........」(武)

「そうね、皮肉よね、瞳ちゃんが、彷徨っていたのも同じ時だったし

今また再現されようとしているなんて!」(白石)

「ねー先生、彼は今どうやって生活しているのなぁ?」(武)

「離婚した親父さんからの、仕送りじゃねいか?

そう思わない、白井さん!」(勇輝)

「そんなこと、わかるわけないじゃない...馬鹿ぁ〜」(道子)
と道子ちゃんは、勇輝の肩を軽く突付いた。

勇輝は、思わず道子ちゃんを睨み付けたが
すぐに、道子ちゃんは、瞬間...微笑んだ

そして、直ぐに 、そっぽを向いて
つんとした表情で

背中を勇輝に見せた
がしかし、横顔は薄紅に染まっていた 。

「・・・でも、哲君の家は資産家で、親父さんは婿取り、らしわよ」(白石)

「さすが、和美先生

情報収集がすばやい!」(滝)

髪を七三にピッチリ分けて
学生服の下に着こなした
ラガーシャツが清潔なイメージの滝が
今日は積極的話し中心には加わってきた。


第2の5話「DreamBoxsで」

「なぁー皆、ここでどうのこうの考えても

話が見えないじゃね

瞳ちゃんを 救いに皆で、今・・・

DreamBoxsいこうぜ〜」(滝)

「待てよ、滝やん

俺もそうしたいけど、瞳の気持ちもわからないまま

君たちを巻き込みたくないよ

俺一人で行かせてくれ

これは、俺と瞳の問題だ」(武)

「あのなぁー 武よー、

そんなんじゃだめだって...

俺とお前は、付き長いよな〜

今までに、一度でもお前の、恋愛について

口だしたことあるか!?・・・無いよなぁー

一年前のお前の苦しい片思いの時も、俺は黙っていたよな。

お前も、誰にも言わなかったけど

周りのやじうまは、皆お前のこと気づいて

噂してたぜ、わかるか?」(滝)

「ああー」

「でも今回は、そういう訳にはいかないぜ

お前一人の人生の問題じゃなくなったんだ。

良く聞けよ、友として忠告してやる

お前が、洋子ちゃんという人に一瞬でも心引かれたことは

間違いじゃないぜ、

気にする必要は無いさ、でも............

瞳ちゃんの言葉どおりに、瞳ちゃんを思うのは

悲し過ぎるぜ...

お前、自分が、わかってないぜ、目を覚ませ

馬鹿野郎!!」

「何だと」

「忘れたのか?お前の母親はアル中で亡くなった事を

お前は、人の心の裏側を読むことが、出来ずに育てられたんだ

許してくれよ・・酷い言葉かもしれない

精一杯の俺の友情なんだ。」

「滝本君...ありがとう」(道子)

 

「武、残念ながら

滝やんの言う事が、まともだぜ

これは、お前一人に手に負える問題じゃなさそうだ。」(勇輝)

「ちっと、皆、冷静になって...

今度のことは、一人の家出、登校拒否少女の話とは、

全然違うと思わない

腑に落ちない点ばかりあるわ

誰か、から瞳ちやんも、哲君も・・・その立場の弱い「生い立ち」のことで

操られているのうな、気がしてならないの・・・」(白石)

「いったい誰...のこと??」(武)

「私には自分なりの予想あるけど

ただの根拠のない推論だから

教師としての立場では、とても言えないわ

その前に、まず

ねぇー想像してみてよ、

武君...瞳ちゃんの、今の気持ち

武君と二人で作った歌...それにバンドの友達もできて

これから・・・いろんなこと皆で相談しながら

自分達の道を切り開いていこうという時に

なぜ、なぜなの

全て捨てて、姿を消そうとする理由は?

自分の為に、そうしているとは

とても思えない」(白石)

「和美先生、それ言ってほしくなかった、

バイトから帰って、ホッと一息ついて

バラエティー番組みるけど、頭は休まらない

番組が盛り上がれば、盛り上がるほど

テレビから流れる笑い声が

虚しく響くんだ

とても「一人笑い」する気持ちなれない

瞳は、今...何しているんだろうって!

寝る前までギリギリ、いつもそのこと考えて

悩むんで

なかなか寝付けないんだ」(武)

「武・・瞳ちゃんが考えてること

決まってんじゃないか

男らしく早く、私を迎えにきてって

思っているのさ」(勇輝)

「何、聞いたような事いうな、!」(武)
俺は、本音を言い当てられたような,焦りを覚えて

勇気を睨んだ 。

「勇輝君...今のは、君が悪いよ

もう少し相手の気持ちを考えて喋って」(白石)

 

「あ、、、あのね、瞳ちゃんのことで

皆に話そうと思って、躊躇っていたことが

ひとつあるの」(道子)

皆一斉に、眼鏡をはずした、長い睫毛が、かわいらしい道子の方を
振り向いた

「瞳ちゃんは
二回目のバンド練習で、18才になったら

お父さんから、逃れて
「鎌倉」で、自立して自分の道を探したいと
決意を打ち明けてくれたよね..武君」(道子)

俺は二回大きくうなずいた。

「あの晩..その話の続きを
私だけに、してくれたの
具体的に、どうするかまでね
武君には、自分で言える時まで
内緒にしていてと言われたので
約束は、私守るは!!

それでね、その話の最後に
瞳が、いきなり私の血液型聞いてきたの?」

(2006年10月8日 日曜日 夜 瞳と道子の会話)..回想

道子ちゃん、ね、道子ちゃんの血液型って、
Bだったっけ・・?」(瞳)

「はい、はい、あたり〜ぃよ
でも、どうしてっ...?」(道子)

「私は何型に見える!?」

「そうね・・A型ぽいとこあるけど
違う?」

「へへぇー、残念でしたぁ〜
私これでも、B型なのよ」

「えー嘘っ!
私と同じB型
マイペースの自由人なの

「そうよねっ、自分でも変だと感じてる
家庭環境のせいかも...
やはり、 道子ちゃんだけには話しておくわ、


私の父親はA型なの・・
つい最近わかったのだけれど
父の書斎で、偶然に亡くなった母の血液手帳を見つけたの
そこには、O型と書いてあった。」

「勉強不足かなぁー
それってありえないんじゃない? 」

瞳ちゃんは、思いつめた顔で
「私のどちらかの親が、生みの親じゃないってことに
なっちゃうよね!」

「うん....つまり、その、どちらかが、その、、、
B型の異性と認められない愛を貫いたってこと。」

「・・・・・」

「・・・ごめんなさい、私、いつの間にか、
無神経な大人に成りかかってるのかなぁー
時々、自分で自分のことがわからなくなるの
私...造花のように、
 折れたことない心で
   無敵に逞しく進みたいのかしら
体は、最近どんどん大人になっちゃうのにね

心は歪のままみたい 」(道子)

「そんな、そんなことないよー
道子ちゃん
私だけかと...思ってた
・・・自分が回りと違うじゃないかって...

私、貴方が、いなかったら、きっと
誰にも相談しないで
めちゃくちゃやっていると思う

道子ちゃんに、聞いてもらいたいことあるの
でも、話せない
今日、二回のハンド練習が、出来なくなった理由
話せば、道子ちゃんも、武も
大変なことになる
もうーいや、
どうしていいか、ほんとにわかんない

私、もう、自分のためだけに生きようとするような
子供じゃないつもり... 」 (瞳)

「なんて、こと言うの...
悲し過ぎるよ....;
あまりにも、人の本音のドロドロした裏側を知らな過ぎる

私、瞳のお父さんが、本気で、憎くなってきた
大切な青春の日々を
いったい何の権利があって
鎖で心を縛り付けるの!!

瞳ちゃん、言わせてもらうは

絶対に、天地が、ひっくり返っても 、

瞳ちゃんと、今のお父さんは、血が繋がっていないよ

それに、お父さんは、瞳ちゃんのこと...鬼のように憎んでいるよ」
(道子)

 

「私...自信なかった。

認めたくなかった。

でも、今日から意識を変えることにする

絶対に逃げてやる!

途中で、足を折られても

四つんばいになって、少しでも遠く逃げてやる

私ね、ね 聞いてる...」
(瞳)

私は声を出さずに、泣いていた
「大丈夫...確り聞いてるよ...瞳」
(道子)

「私には、脱出計画があるの、
だから、武にはこのこと言わないでね」
(瞳)

(2006年11月20日月曜日)...現在に戻り

「よせよー.... 道子ちゃん
それで、マジで瞳の言うとおり
そんな大事なこと言わなかったのか?」(武)

「試したの・・・武君が本気で
いるかどうか....
一途な勇気を
待っていたのよ」 (道子)

「・・・」(武)

「武...:問題が複雑になったけど

元気出せよ

瞳ちゃんの計画など予想もつかないけど

今の話でやっと、小さな光が、見えてきたと自分に言い聞かせた方が

気がらくになるぜ

・・・なー・・・

これで、お前も少しは前向きに、生きれると思わないか!

瞳ちゃんの心には、 まだ間違いなくお前を強く意識しての考えがあると思う

少し自信もてよー 」(滝)



「そうか...

・・・よし!

わずか一言で、気持ちが、こんなに・・・楽になるものなら

皆、話が見えてこないけど、

瞳は今、たった一人で、何とかしようと思っているらしい

そんなこと、させる訳にいかない

放っておけないよ

俺は一人でも、瞳の話が、デタラメだったとしても、

会いに行って、支えてやりたい

とんでもない嵐に巻き込まれるかもしれない

いっしょに行ってくれるか?」(武)

 

「いまさら、聞くなよ

ここに集まったってことは、

皆、面倒な問題に巻き込まれることを

覚悟してるのさ」(勇輝)

 

「和美先生は!?・・・微妙な立場だけど・・・」(武)

「ごめんなさい! わかってもらえるかしら・・いっしょに行きたいけど

今は行けない

・・・いろんな人が

・・・いろんな考えで

今日を生きているけど

中には、わからずやの先生達に

理解して貰えず反感をかう・・なんてことも...もしかして.....

どう言ったら、いいの...

本当にごめんなさい、

実は・・・

最初に話さなければならかった最も大切なことがあります ・・・・あ...ぁ

・・・・・・でも、鬼になって、君達の為に、話さないでおくわ!!」

「・・・・・?・・・・・」


「いいこと、私を困らせているのは、、、

大人の正義といものなのよ、きっとね

極端に強調された悪意の事実は

スポットライトの光のように、表面だけを照らし出すわ

明暗をわけて、光の影になった、寄り添っていた

小さな、小さな優しさは、その姿が見えなくなる

君達に、今必要なのは、湧き上がる願いから萌えだした

炎のはずよ・・たとえそれが弱々しい未熟な光であっても

時に...傍観者達は、曖昧な光を嫌うかもしりない...」

「和美先生、何をいっているのかよくわからないよ」(武)

 

「そうでしょうね...

私は瞳ちゃんのお父さんから、娘の捜索願いが出ていれば

悲しいことに、瞳ちゃんのお父さんの味方にならなければならない立場

それが、社会のルールという名の「束縛」なのよ...残念ね!」(白石)

「和美先生、・・・言いたくないんだね

わかったから無理しないでいいよ!」(武)



「慌てないで、慎重にね

私の気持ちは、君達といっしょ

正体の見えない相手に口実を与えてはいけないわ

瞳ちゃんのお父さんの親権を逸脱した行為が証明できれば

瞳ちゃんに、「自由への旅立ち」が約束される、チャンスでもあるのよ」(和美)


「和美さん、いけてるぜ!」 (滝本)

「お前・・・それが、言いたくて、お洒落してきたのか?」(勇輝)

「お前なんかに、言われたくないね、

今日の道子ちゃんの 顔よく見ろ!!

二本の足で、もっとしっかり自分の重心を支えてから

人に意見すれよー・・・鈍感ボーイ
」(滝本)

「二人とも、頼む、喧嘩はやめてくれないか、

話の腰を折らないでくれっよ〜

じゃー和美先生は、どうするの?」(武)

 

「私は、ここに残って、君たちからの連絡を待つわ

私は後で、責任を問われるかもしれない、覚悟はあるのよ

綺麗ごとは、言わないから、もしもの時は、自分達で何とかするのよ

自分の目で、何が本当のことなのか、見てきなさい

武君、人の話より

君が感じた通りの、瞳ちゃんを探すのよ

どんなに、傷ついているか

変わってしまっているかも知れない

何をしたらいいか?

言えないわ

自分で決めなさい

皆・・・想ったとおり生きるのよ

私の願いは、今それだけ

立場を超えて君達を 信じているよ 」(和美)


第2の6話「ステージ」

和美先生一人を校舎に残して、下校した四人を
待ち構えていたものは、

オレンジとローズレッドの光を残して
 ビルの谷間に沈かけた
  太陽
   霞む雲の切れ間から、顔を覗かせ
    輝くことを待ちきれない
     星達のメッセージを
      不安定に、引き寄せていた。

  夜の色達は、暖かい光を受け止めるように
  溶け合って、その姿を紫色に変えていた

四人は、DreamBoxsの発光する看板が見える通りの

向かい側の細い路地で、肩を寄せて円陣を組んだ

右肩に回した手から、初めて・・・

道子ちゃんの柔らかな温もりが伝わってくる

左肩に回した手から、

さっきまで、和美先生の別れた時の

励ましと不安な混じった・・その顔

気にして、何度も振り返っていた滝本の

体温が、不安までが

伝わってくる

真迎えの勇輝も、この瞬間は素直な少年のような眼差しで

道子ちゃんの肩に手を回し、見つめていた

「今から、瞳救出作戦開始だ、、、

バレナイように、二組に分かれて、なにげない入場客になっていこう!

皆ーっ、、、気合入れていこうぜ!!」(武)

「おーっ」(全員)

「勇輝、お前さ、道子ちゃんとカップルになって最初にDreamBoxs

入ってくれないか!?

俺は、目立つから、ステージが始まって

スポットライトの照明だけになったら滝本と

つるんで、入りたいんだ! 」(武)

 

「道子ちゃん、俺でいいのか?」(勇輝)

道子ちゃんは、軽くうなずいた。

勇輝は、道子ちゃんに照れたように微笑むと

俺が道子ちゃんに、話しかける間も与えず

その手を握って、引っ張り

活きよい良く駆け出して、DreamBoxsの中に消えていった。

その後ろ姿に、

なぜか・・・流れ落ちる血を見つめるような寂しさを

感じるが

これで、いいんだと...言い聞かせる

街路樹の木の葉が、ひらひらと落ち

吹き出した北風と暗闇は、ステージ待ちの数分間を

長くさせた。


時が来て..願い込めて扉をふっと開く

瞬間・・・熱気が渦巻いて、

たぶん少し冷えている「はず」の体を包み込む

室内は狭い空間に情熱の数だけの

折りたたみ式の小さなテーブルが、

一番後ろにたたまれて、小さな椅子だけが、

隙間を許さず敷き詰められていたが、

入場者の半分以上は立って、手を叩いてステージの開演を促していた。

滝やんと二人で、暗くなった壁側の通路をステージ最前列まで、進んだ

反対がわには、先に行った道子ちゃんと勇輝が肩を寄せて座っていた。

俺の入るステージの裾影から司会が、小走りに中央に上がり、

「皆〜 いい夢みてるかいぃーYeah!!

We are all right now

Everybody!

say YEAHー」

「YEAHー」

「聞こえない、聞こえないよ

Come on Baby

say YEAHー again」

あおって雰囲気を盛り上げるの、懸命だ

自分の耳を大きく・・集った歌好き達に、傾けて、、、

呼びかけた魂の返信を待ち受けている

 

「おーぃ、皆、いいのかい??

なぜ?ありったけの声を張り上げない

君達に不満はないのかい?

出来ない夢は、追わないのか?

いいよ、それも立派なことだ

でも、君達が夢を見なくなったら、

誰が、夢を追えばいいんだ、

簡単なことしばゃないか、情熱だよ、情熱・・

ここでは、どんなガラガラ声でも

大きな声を 出した者が勝利者だ

Say YEAH

Everybody!!

ここじゃースケジュールなんて存在しないんだ

歌いたいやつが、ステージで歌えばいい

詩の朗読でもOKだぜ!!

好きな人の名前を叫ぶだけも在りだ

想ったとおりやってくれ」(司会の男)

あーさっき言われた言葉と同じゃないか!(武)

 

Well〜.EveryBody

君達に与えられた自由の時間は、

想うほど多くないぜ..気づいてくれっー

今、今だよ声をださなきゃ

俺が声がつぶれる程叫んでやるから

声が出なくなってもかまわないから

皆続けよ、、、

YEAH〜!!!

司会の男は、話し方からして、どうやらこの店のオーナーらしい

マイクを床に叩きつけて、大きく息を吸い込んでから

体を二つに折り曲げて、血反吐がでるくらいの大声をだした。

唖然として、集った入場者達は、圧倒的な迫力に引いたが・・

やがて、熱気が「こだま」するように、

YEAH〜(全員)

「ありがとう! 皆の輝き・・受け止めたぜ

今夜の主役は君達だ・・楽しんでくれ

 

そこの隅に隠れている君

浮かない顔してるぜ,,,」(司会)

 

突然、司会の男は俺を指さして、話しかけてきた。

俺は、周りを左右首を振って誰のことかと...確認したが、、、

やはり俺らしい

目立ちたくないのに、何てことだー

これじゃ瞳を監視している連中に、気づかれる。

どうしたいいー。

「君だよ、なーぁ、俺の悩み多き季節の頃と同じような顔してるぜ、、

後で自由な時間やるから、ステージに上がってパフォーマンスやってみないか!?」(司会)

 

堂々と正面から瞳を捜しに来たと宣言したい気持ちと...

 瞳が自分の意思で「今を生きる」とこに懸命になって用意している

  「羽ばたきの滑走路 」に

   無断で立ち尽くすような思いと...

    矛盾が、激しく交差して

     頭の中でくるくる巡る・・・曖昧な意識を生んだ

糸で操られたように

男の問いかけに誘導されて 自信なく首を動かしてしまった、、、

突然の展開に、

気を取られて瞳を見つけられなくなってしまったら・・どうしょう!

だが、食い入るように瞳をこらして、捜しても

このマイクなしで、後ろの席まで、声が通る広さのホールには

瞳の姿は「見当たらない」と、直ぐにわかってしまった。

司会の男は、俺の戸惑いなど、無視するかのに

自分の手で、演出できる予定を呼び寄せている。

「お待たせ〜

もの想う年頃の皆の感性を・・・優しく伝える

仲間達の登場だ!!

Lemon Squash・・・を紹介するよ」(司会)

 

司会の男が、手を大きく振ってガールズバンドを

ステージの中央に招いた。

 

レモンスカッシュって・・あーそうだ。

洋子ちゃんの作ったバンドだ

まさか・・??滝本の話の瞳とは、

本当は、洋子ちゃんのことでは........

                  

祈るような気持ちで、ヒロイン達の登場を待ち受けた。

ステージ以外の関心を遮る、強い光のスポットライトが、

向かってステージ右の袖口から出てきた女の子を捕らえた

・・・光のCircleの中に映った、その姿は

セミロングのストレートヘアーで目元の表情を隠し

上はライトパープル色Aラインワンピースに黒袖

下は紺のデニムレギンスに赤いスニーカー

手にスティックを持って、

カチ・カチ〜♪

とリズムを目線の高さで、刻んで

中央のスタンドマイクに近づき

「秋子で〜す!!」

と挨拶してから、急いで奥のドラムセットの所にいって

今度は、ドラムに座りながら

また・・・カチ・カチ〜♪とリズムを刻む

「Everybody Come on !」と叫びながら

ファースト・タムからスネア・ドラムまで

タンタンタカタカ♪,,,と連打してから

8ビートを刻み

ドンチャト・ドドチャト・ドンチャト・ドドチャトと

バスドラを印象的に、響かせながらドラムを体、全体で叩く

続いて、、、

 

またステージ袖から・・・最初は

恥ずかしそうに顔だけ突き出して、

ブラックブラウンのマテリアルCカールが愛らしいヘアーで

二コリと微笑む

後から見え出した

黒地に赤色のチェック柄のスカート

背中の真ん中で、後ろ手に組んで

見つめる群れに、向かってもう一度、微笑みながら手を振って

「啓子です。」

と話し掛けた後、悲しむような?不思議な表情で

間を空けてから・・・・・・・

ドラムの方の方を振り返り,,,

ステージ奥にセットされた大きなベースを

抱きかかえるように持つと、ストラップを肩に回し

ドラムのリズムに合わせて少しづつ体を揺らす

手が弦に触れた瞬間...

人が変わったように激しく

頭を上下に大きく振りながら

リズムを、奏でる。
 
Cカールが一つ一つ生き物のように揺れる

顔は似てないけれど...それは

近くて遠い野外映画を見るように

イメージを広がらせ

  秘密の扉を開いて

   初めての土地に足を一歩踏み入れた時の緊張感のままで
  
    部屋の中央で、佇んでいた時に

     カーテンの裾から抜け出てきた時の瞳のしぐさを

      思い出させた。

最前線のファッションショーのようにステージには

次のヒロインの登場を用意していた。

洋子ちやんの言葉を仕舞い込んだ記憶の金庫をこじ開けて

懐かしいく、少し頼りないイントネーションの日本語を思い出す

・・・「レモンスカッシュの残りのメンバーは、、、えーと

梨香、そう梨香だ。

確かぁー、とても印象に残る名前だったけ。」

ビートに乗って

紺と空色のチャック柄のスカートの裾を持って

軽やかに、スキップしながら、中央のマイクスタンドまで来て

首を20度くらい右に傾けながら

「梨香です」と涼やかに、挨拶

上はライトグリーンのワンピースでフリル付

そしてキーボードを弾き始めると、三人の中で一番大きなアクションで

リズムを刻む...

いよいよボーカルの登場だーと想うと..なんだか少し不安が走る!


出会いの時の「洋子ちゃんの顔」を思い浮かべる余裕を与えず・・・

続いて即、

その人は、RoseWood色のレスポールを引きながら、飛び出して来た。

そのギターの音色が、不思議だ、、、

エフェクターを幾つも使っているに違いないが、厚みのあるシンセサウンドだ。


・・・楽器店で、一度視聴したことがある,,,♪

ディストーション系の音色とコーラス系の音色が分岐エフェクターによって

二つのスピーカーから同時に流れてくる,,,感じだ〜・・・

三人の演奏をリードして、話しかけるような、メロディーラインでギターを弾く

マイクに近づくまでに、二三回、回転しながらロングヘアーを歌舞伎の連獅子のように

振り回し顔が、完全に見えなくなる。

客席から手拍子が、沸き起こり

それに合わせて、アドリブを弾く

飛び散る汗が、、、熱気が、、、ここまで届きそうだ。

会場全体がその人に、引き寄せられて、ステージに竜巻が、起きそうだ。

「洋子で〜す!OK OKっ

皆、ありがとう〜ほんとに、ほんとに、これから楽しい時を

作れそう、

あぁー始まる前は、a little bit 不安だったけど、もう大丈夫!

そうよねー」

そう言って後ろの三人のメンバーに、話しかける

「いぇーぃ」(三人)

洋子ちゃんは、

上は紺色のTシャツには胸に「Wild Flower」とVioletColorで書かれている

その上から濃紺の無地のジャケットを腕まくりしている。

下は赤と黒線のチャック柄ミニ

紺のくしゅうくしゅうロングソックスと緑のスニーカー

演奏のイメージとは裏腹に、一番teenagerらしい感じだ。

「そんなわけで...今夜は、皆をHappyにしたくて、歌ちゃいます。

ねー皆、、、

輝きが強ければ、強いほど,,,影は鮮明に映し出されるね

良いことの裏側には、気に入らないことがつきもの、

なかなか青春って楽しくならないね。

いろんなことが、次々に遠慮なく

迫ってくるものかもね、

立ち止まって考え込むことも許されない時もある

違うかしら!?

せめて今夜だけは、私は皆の影に成れるよう頑張る!」

「・・;?」

洋子ちゃんって、、、こんなに真っ直ぐが、綺麗な女(ひと)だったんだぁ...;

瞳を救いに、ここまで来たのに..何て男だろうと想うけど...

それは、それで素直な俺の認めてあげたい・・・青く切ない二面性なのかなぁぁ;

洋子ちゃんは、冷たい夜の海で、心細く小船に漂いながら

やっと見つけた灯台の灯りのように、

首をゆっくりと振って

端から端までの視線が

我が身に注がれていることを、受け止めながら...

客席を見つめている。

ステージの上から俺達一人一人の心模様さえ感じてなのか

それは・・・ひどく晴れやかな瞳の輝きだ

だが、、、

その動きは、俺の居る方角までくると、

正確な秒針が突然

緩んで震えながら

僅かな時間だけ留まった..!?

気がした。

視線を次に放り投げて、無理やり動き出す

息を吸い込む時間だけ、俯いて

やがて・・・

右手を真上に上げながら、人差し指を天に向かって突き刺して..
.
天井まで届きそうなくらいJumpして

「Yeahー」と叫びながら

一回転してする

・・・やがて、瞳を閉じたまま

重厚な音色のギターを弾き出す

ンタタッツッ..ンタタッツッ..ンタタッツッ..ンタタッツッ..

                   
 ・♪♪.・.    ・♪♪.・.   ・♪♪.・.   ・♪♪.・. 

ただの音の塊が、生き物のようにリズムに変身していく

Break!・・・期間限定のイラストです。物語のイメージに合ったものをまた造り直しますHiko・★より)

洋子は、弾きながら、

瞳をもう一度開き

髪を振り、

喋る    
 

Heyーaudienceの皆さん、それじゃ...海の向こうからの熱いMessageを届けちゃうね〜」

 

(洋子ちゃんの歌うAvril Lavigneの「Hot」)

ah ーahー

you're so good to me, baby baby

I wanna lock you up in my closet Where no one's around

I wanna put your hand in my pocket Because you're allowed

I wanna drive you into the corner

and kiss you without a sound

I wanna stay this way forever

I 'll say it loud

Now you're in and you can't get out

You make me so hot, make me wanna drop

You're so ridiculous, I can barely stop

I can hardly breathe, you make me wanna scream

You're so fabulous, you're so good to me,baby baby

You're so good to me, baby baby

Kiss me gently

always I know

Hold me, love me

Don't ever go, yeah


・・・・・・・

 

あぁー、あぁ〜


貴方は こんなにも私を夢中に気持よくしている 愛しい人よ..

私は貴方を誰も近づけない秘密の場所に閉じ込めてしまいたい。

そして私はボケットの中にまで...貴方を誘い込みたい、


なぜってその場で貴方を受け入れたいから

 

そこの片隅まで連れ込んで、何も言わずに、いきなりキスして

叫びたい、「永遠に、貴方とこのままでいたい」と...

 

今...まさに貴方は私のもの、よそ見できないくらい私の中にいる!!

 

貴方は、私をそんなにも熱くさせ、気絶するほどよ

どうしていいかわからないのよ、気持の高ぶりは抑えられない

その想いに息苦しく、金切り声を上げたいの

 

貴方は私好みに「いけてるのよ」、うっとり

 

気持いいのよ baby baby

優しくキスして!

 

わかつているわ!いつまでも包み込むように抱きしめて、愛してくれるはず

お願いずーと側にいて...


・・・・・・・


歌が終わった、洋子ちゃんは、肩で小刻みに息をしながら、、、

それでも懸命に、スタンドマイクを握り締め..

「ありがとう〜っ」

と首を10度傾げて微笑む

突然に、見つめている大勢の盛り上がった

熱い視線を無視して

まるで幼子のように、俺の方だけを凝視した。

その表情を見た瞬間..呼吸を忘れた。

数秒・・・会場全体の呼吸も止まったかのような「静の空気」が流れる。

皆が客席の俺の方を振り向いた気がした。

「いったい何だろう..........。

あぁーっ;

想い出したぁ

何かを無言で、、、訴え掛けた表情

新一年生の歓迎会で、

俺の胸の中で、意識を失くした時のままの..瞳だ。

まさか、有り得ないぃ

声も、少し違うし

身のこなしが、全然違う

でも...

どんなに似てても、俺だけ分かることが一つある

確かめることは、とても今できない」

尽き刺さる痛さで

鮮明に蘇った「瞳への想い」に、

モトクロスバイクの車輪が砂の落とし穴にはまった衝撃と

焦燥感で心が空回り続ける感覚だ

もがけば、もがく程

深みに落ちる


「すべて、俺のせいだった・・・

 瞳

 なぜ、あの時 自分から打ち明ける事が

 不可能な運命に締め付けられた

 隷属的な心の内側を

 俺だけが、開放させてあげれたかもしれないのに


 黙って....聞いてあげることすらしなかった」

 もしも、ステージに立つ洋子ちゃんが、瞳でないなら
 
 いったい瞳は、どこで

 何を・・・今、想っているの!!

 いやだ、いやだ、自分が憎い........。

 
 涙で

 視界が滲んで、洋子ちゃんの顔が、ぼやける


ステージの洋子ちゃんは、

まだ、じっと立ち竦んでいる。

梨香さんが、たまらず洋子ちゃんを呼ぶ

 

「洋子、Youko もうー Youkoたっら

目で追加するように、洋子ちゃんを睨んで、意識を

俺から逸らせるすことを促した。

数秒前の自分を取り戻した洋子ちゃん...

顔を蜂の羽のように、微かに振動させて、

喋りはじめる。

「あぁうっ!、、みっ、みっんな!

ねぇ、皆は、どんな時、

どんなふうに自分の事

想われているか気になり始める?

そうよね、どうしょうもなく「人を好きになった時」よね、、、。

それって神様が、心に仕掛けた

手鏡

覗き見入ると、ぼんやりとしか映らない時もある

想いの分だけ、自分が不安で

鏡の中の自分を変えたくなる

......私は、私はぁ........;」

洋子は、語り掛けてた瞳を伏せて

また黙ってしまったが、

思い直したように!

天井を見上げてから、直ぐに

「ごめん・・私は、アメリカ育ちだけど

私も皆と多分同じかなぁ

恋する気持ちに、国境は無いよね!

元気のでる私の作った歌、聞いて Day Dream Boy...♪

 

 

Sweet boy OhーOh my baby

Day by day,let me set your dream.

More and more I wanna close to you. Uーuuー

You are my Day Dream Boy.


雨上がりの滲んだ あぁーっ マリンブルーの海辺ぇー

貴方の隠れが あぁーっ 心が飛び跳ねるぅーうー

貴方からの着信 頭の中でぇー 響けばぁー

あぁーっ 七色に映っるぅーうー 

青空の架け橋 描き出すよ Uーuuー

デジタルじゃ感じられない 世界に連れて行ってぇーよ

弾け飛びたいのよ 貴方の胸の広さでぇ Uーuuー

恋する蕾はぁ

貴方の無邪気な胸で咲くぅー Yeahー Ohーoh

貴方は私のDay Dream Boy


ねじ伏せられても 消えないこの想い Uーuuー

 

Take Take

Take me to your dream. Uーuuー


tu,tu,tuー

Take Take

Wanna take me to your DayDream.Uーuuー

恋するの蕾はぁ

貴方の無邪気な胸で咲くぅー Yeahー Ohーoh


貴方は私のDay Dream Boy

 

突然、歌っている途中で...

ステージに向かって

俺と、反対側で密かに今まで姿を隠していた

痩せ型の学生と体格のいい謎の男が、席から立ち上がり洋子に向かっていった!

痩せ型の男は・・・暗くて断言しにくいが、

野生の感が、叫ぶ!

哲だ

一緒に立ち上がった隣の男は、どうやら・・その哲を引き止めたいらしい。

やがて、哲は止める男を振り払って

ステージの真ん中の「かぶりつき」まで来て

洋子の歌を邪魔しないように

丸く小さくなって

その歌を全身で受け止めるように見える


洋子は哲の存在に気づいてしまっても

少しも慌てる様子が無い

それどころか、歌うその表情がさっきより華やいで

生き生きと、瞳の輝きを強めた。

歌の間奏までくると・・・

哲は、待ちかねたように隠し持ってきた

愛らしい「犬のぬいぐるみ」を

ステージの洋子に手渡そうとした。

 

「いったい...どういうことなんだ!!」

太古の祖先が、生き抜いた届けてくれた野性の感性は

何の説明は無くても・・

二人が、今友達以上の特別な関係であるという

シグナルを鮮明に、、、俺に諭している。

「何がどうなっているのか??」

頭の奥で、混乱の嵐を吹き荒れる

あの日、キリンのぬいぐるみを届けに来てくれた

洋子は....誰なんだ

真実の湖に張り巡らされた氷が

振り返りたくない棘のある言葉で

真っ二つに、割られ冬の冷たい湖に

淡い想い出が・沈んでいく


俺は、命乞いをする哀れな罪びとのように

ステージに向かって叫んだ

「瞳・       」


洋子の表情が、影の無いピンクから憂いと歓喜が混在する菫に戻る

次の瞬間

運命はまたしても知りたくない真実を

傷口から無理やりに・こじ開けて押し込んきた。

花弁が・血の涙に染まり落ちるように

洋子は

あんなに憧れていた歌を

そしてマイクから手を緩め

その場で、気絶した。


第2の7話 「瞳の真実を知る・男」

俺は、

何が何でも、ただただ我武者羅に

哲より先にステージに駆け上がりたかった。

ならず者のように前の人垣を押しのけ

中央スタンドマイクまでたどり着くと

横から飛び出してきた大男が

視界を塞いだ。

「よせ!・・・どうする、つもりだ?」

哲の後ろに居た男は、その大きな手のひらと

寺の鐘を突く勢いで

俺の肩を力まかせに

後ずさりさせた。

後ろ頭を打ちそうなくらい、自分のpositionが揺らぐ

「瞳は・・・俺の女だ」

自分の言葉に

野パラを そっと抱きしめた時のような

「香りと柔らかさに」もう一度触れたいという

欲望がめ眠りから覚め活火山のごとく燃え出す

「寝ぼけたこと言うな、洋子ってさっき言ってたろ

聞いてる、坊や・・・良い子は寝る時間だ

早く消えろ」

「喧嘩したいのか」

「ピンポン」

俺は冷静さを失い「男の罠」に落ちた。

男は喧嘩する理由も告げずに

洋子が倒れているステージの前で、俺の右手をペンチのように

その強靭な力で握りつぶそうとした。

指の小骨が鈍い音を発して

歪んだ。

「わぁ〜あぁ〜」

次の瞬間、自分の悲鳴と同時に、信じられない激痛が

俺の感覚神経を襲った。

周りにいた観客から見れば、俺たちはただ握手しているように、

見えたのかもしれない。

誰かは、定かではないが

こう囁いた

「ちょっと、そこに立っているお二人さん、

何、突然悲鳴あげているんた?

そんなにステージの側に居るなら

早く、あの子を助けてあげなよ!」

その男は、囁いた人に向かって

「すみません・・こいつがいきなり喧嘩を売ってきたもので」

と全く逆の言い訳をし出した。

とんでもない、、、やりとりの隙に哲は

あっという間にステージに上がり・・洋子を抱きかかえた。

「洋子!・・洋子!」

洋子は蒟蒻のように、ぐにゃぐにゃなって

意識を戻さないまま・・哲を許していた。

 

洋子と哲の二人の様子が、混乱の渦が潜在意識の底で、

平常心をえぐりだし・・・・

男が俺の右手に仕掛けた「激痛の時限爆弾」が炸裂して

怒りを加速させ

気がつくと、俺は男の膝を

無意識に「滑り止めの金具の付いた靴底」で、混乱の分だけ....蹴っていた

男の膝から、少し間をおいて、鮮血が流れ出し

床の暗がりに、赤黒く点を作った。

男は、その血を確認すると、俺にだけわかる様に、

薄気味の悪く微笑んで、呟いた。

「ざまー見ろ、兎ちゃん

罠にハマって、狼に食われろ!

お前は、もうりっぱな不良だ。」

そして、観客に向かってアピールするように叫んだ

「痛いぃー、何んでだ」

周りの客達も、ざわめき俺に非難の罵声を浴びせた。

絶望のレッテルが俺の人生に張り付いた気がしたが。

客の中に紛れていた

つばの広い黒とグレーの帽子を被った

一人の少女が、立ち上がり

奇蹟を起こした。

照明に映し出された、少女は余りにも「あどけないその顔」で、

「先に暴力をふったのは、そっちの大きい人だよ!

正当防衛だよ・・その人は」

男の顔色が、変わり・・本性を露にした。

「ちきしょー、運のいいやつだ」

男は、少女の言葉にヤケクソになったのか?

雇い主の命令を忘れたのか?

素の不良になって、俺に襲い掛かった。

男の握り拳が、腹に一発入り;

俺はくの字で倒れ込んだ。

男が、今度は顔めがけて、拳を上げた瞬間

その手首を後ろから、捕まえて止める者が現れた。

男より背の高い、勇輝が駆けつけてきた

側には、滝本が道子ちゃんを確り守っている


「勇輝、手を出すなぁ〜

これは罠だ!

お前は、前歴があるから、今度補導された立ち直れないぞ!」

遅せんだょー たけっー:」そう言いながらも,,,

勇輝は、振りかざした手で、予定の行動を果たすことを

諦めて、男の体を俺から引き離して・・・思いっ切り・ステージから遠ざけた。

.....あんなに、喧嘩ぱやい勇輝が、人の忠告で躊躇うなんて!

誰のために...?と

弾丸が、飛び交う戦場で、ふっと恋の歌を考えるがごとく「不つりあい」な

瞬間を過ぎらせた。

それを現実に引き戻したのは、はやり当然のごとく

この店のオーナーだった。

彼は、ステージの裾から、今までジーと見守っていたに違いない!

勇輝が男と喧嘩しだしたら、集中豪雨のダムの水路の勢いで、

飛び出してきた。

「君達・・・困るなぁ〜っ。

ここは、夢追い人が輝く、渋谷の109じゃないけどさぁ

金も人脈も無い若者が「手作りの・・創作活動をする」、青春実験基地なんだ。

手作りの詩

手作りの歌

手作りのライト・ノーベル

手作りのムービー

を持ち寄って、触れ合い・・融合して、発信できる場にしたいんだ。

君達は・・この雰囲気に

悲しいほど鈍感な野蛮人だぜ!!」(オーナー)

「そんなぁ〜っ;」(武)

「あー君か、後で披露する言っていた

パフォーマンスって、この騒ぎのことなのかい!?」

ごめんなさいっ・・Hiちゃん

その人は、私の友達なの!」(洋子)


洋子は、ステージの上から、眠りから覚めた白雪姫の眼差しでオーナーに呼びかけた。

「武君..どうしたの、」(洋子)


「ひ..ぁあっ    よう..洋子ちゃ〜ん、大丈夫!」(武)


えぇ、ちっと目眩が、でももうOKよ」(洋子)

「なら、いいけど...あっ、ごめん、大事なステージを」(武)

洋子は首を横に大きく振って

・・・いいの(洋子)

側に付き添っていた哲が

「いいわけないよ、控え室で、横になりなよ」(哲)

「・・うん、梨香っー

ステージ頼むね!」(洋子)

「もち〜ぃ ギガント・ガンバよ♪

・・任せてっ」(梨香)

梨香は、洋子を包み込む

わざとらしく繕った、明るい微笑みで、うなずいて、残りのメンバーに

演奏を合図した。


ステージが再開すると同時に、

哲は洋子の肩にそっと手を回し

気遣いながら、歩幅を合わせるように、連れ立って

控え室に消えていった。

どうしたんだろう、あの時の洋子と、哲に対する態度がまるで違う

俺は、追跡レーダーを洋子にロックして発射した情熱追尾ミサイルの進路で

控え室のドアに激突した。


ドアの右片隅には張り紙が

「関係者以外、立ち入り禁止!」と書かれてある

その意味を理解する間もなく、力いっぱいドアを開いた。

二畳半ぐらいしかないその神秘性を保つ為の密閉された空間には

大きな化粧鏡が有り

その棚の上には、鮮やかなキップの口紅が

二三本・・無造作に、散らばっていた。

他には、何も見つけられない

それから、目に入ってきた光景を

注意してその奥を見渡すと

唇だけ潤んで見えるくらい厚塗りして

後は、ほとんどスッピン状態の洋子と

哲と

そして、すこし距離を置いて

見慣れない雰囲気の女子高校生が居た

武君、もうー ノックもしないで、入らないで

貼り紙見えなかった!?

武君の人間性の評価も、これでだいぶ下がったわよ

私には、人を嫌いになる権利も有るのよ」

と躊躇いなく早口で流暢に言った。

「ごめん・もう大丈夫とわかっても..

湧き上がる不安を抑えられなくなって

と口先だけの言い訳しながら、俺は


洋子の雰囲気の変化に

自分だけわかる驚嘆で頭が満たされてしまった。

出逢った時の洋子とは異次元の世界の洋子を感じる

ドアの前までの気持ちの高ぶりが


急降下して記憶の割れ目の深淵に、吸い込まれそうだ。

足が僅か一歩先に進まない

いったい何を 狼狽えて狭い部屋の洋子に接近できないのか


あの時の洋子のため

違う、それは断じて違う

やっと、悲しくも、己の気持ちが、わかる

そこに居て欲しい

 瞳を    失くした・からだ。

 

もしも瞳なら、話し出す時に一息の間を置いて

相手が話し終わる間を 真面目に待ち受けるように

柔らかく気持ちの・・・裏側を心配している眼差しで、話かけてくれただろう。

そこには、

彼女独特の未知なる世界への純真な憧れ

想いの強さだけ傷心することへの訝しさが、

不規則に、見え隠れする表情があった。

逢っている時、気づけないで

今・・感じる瞳の切ない気持ちの後姿

「こんな俺・・今の君に必要ないかなぁ?」

えっ、


「・・今の言葉、忘れて


.....歌良かったよ、.....いきなり・なんだけど

君に前話した

瞳という子?

知らない?」

Wowー、ついに言ってくれたね

待ってたわ........

   ・瞳ちゃんね

逢った哲の紹介で、

彼女は 今・鎌倉のいとこの愛子さんの家に居るはずよ!

予定を変更して旅立ったの、武君のことだけ気がかりと言っていたわ

信じて、必ず瞳ちゃんからメールが届くよ!

「洋子ちゃんと瞳は

どこで、

どんな風に会って、

何を話したの」

俺は、生きよいよく溜まっていた質問を

一度に、吐き出した。

「それはね!」

洋子は、初めて哲を気にしながら、

「瞳ちゃんからのメールでわかるはず

言うなて約束したの」

「なんだよ、

結局なにからなにまで、瞳のことは判らずじまいじゃないか!」

その言い方は、もしかすると

子供が母親の前で、欲しい玩具を強請って

泣き出すような、

一人で解決できない欲求に対する

依頼心に満ちたものだったかもしれない。

だが俺にとっては、それは確信できない永遠の想像でもあった。


俺には、家族愛のなんたるかを、推理することはできても

直結して本能で肌に感じ取ることは出来ない..だから

いつもその場で、その人が持っている愛情を返してあげれなかった。

逆から思えば、いかに出逢った時の瞳が

俺を必要としていたのか、電流のような速さで後悔した。

そして、洋子の姿が情けなさで、曇った。


だが、次の瞬間、目飛び込んできたシーンは

感情の方向を洋子に、引き戻した。

それは、くるりと椅子を180度回転させて、後ろ向きになった洋子の

大きな化粧鏡に映し出された・「ひとすじの涙」だった。

溜まらず、ついに洋子の肩まで距離を縮めた。

なにか、経験したことのない匂いがする

厚くぬられた口紅匂いなのだろうか?

 

・・それを確かめることができそうな

さらさらと煌く髪とあの柔らかい肩の境まで

右手を伸ばし掛けた時

 

空気を切る速さで、

哲の手がそれを遮り

ステージの前で、襲い掛かってきた男が、痛めつけていった

青チョコレート色に変色した・・・親指と人指し指の付け根あたりを

ターゲットして鷲づかみされた。

激痛が先か

謎解きが先か

迷うことなく、肩に触れた。

柔らかさと記憶が

洋子を振り返らせた。

哲は、携帯のボタンをすばやく押してから

想いっきり俺を跳ね除けた。

つかのまの沈黙を

けたたましく破って

ドアを蹴って

待ち構えていたであろう

デカイ男とその手下らしい男が一人乱入して来た

後を追って・・連なるように勇輝と滝本も加わり

異常な熱気が狭い空間を埋め

予想通り

勇気が男の胸倉を掴んだことで

その場は戦場となった。

 

....目覚めると、俺は右手を包帯でぐるぐる巻きにされて

ベットの上に居た。

 

「お目覚めの気分は いかがですか?・・だんな様」

と勇輝が

路上の大道芸のパントマイムのように首を傾げ

おどけた表情で話しかける

左頬の側面と眉の上が・・殴られて青く膨れてあざになって

気持ち悪いくらい滑稽だ。

「バッカャ〜 野郎ぅー

似合わないこと言うなぁ...! 勇輝」

「それは無いぜ、

壁の飛ばされて、顔から激突して失神したお前を担いで

武の家まで、無事に寝かしつけてやったんだぜ!?」

「どのくらい寝てた?」

「気絶したのは二三分くらいだと思う

一旦目が、覚めかかったけど、DreamBoxsのオーナーが助けてくれたんだぜ

機転でオーナーのワゴン車に寝かせてもらって

それから、一時間くらい安静にしてもらったってことだ。」

「手の包帯は、・・まさかお前じゃないよなー」

「あぁ、この人が看護婦さんみたいに、手早く手当てしてくたんだぜ

お礼を お前から言えよ」

勇輝が、指差した方向には ・ ・ 道子ちゃんの後ろで

時間を惜しむように携帯を打ちながら

器用に・・こちらにも視線を配り並列処理の才能を見せ付けている

その人は ・ ・ 洋子の控え室で、出逢った女子高校生だ。

「は 早川、武と言います

手の手当て・・どうもありがとう」

「どういたしまして、真夢子っていうの

よろしくね. .. ...」

「  ・あの その..まあぃぃや..

よろしく

で、洋子ちゃんとは、友達?」

「えぇ、DreamBoxの同じアルバイト仲間で、友達なの」

「武この人は、命の恩人だぜ

真夢子さんが、携帯警報機を鳴らして

注意を逸らして間に、オーナーが駆けつけて来て

停戦モードになれたんだ。

哲とあの男と手下どもは、慌てて洋子ちゃんを連れて逃げたって訳・・

そうじゃなかったら、今頃は、ずーとボコボコにされてたぞ」

「そうかぁー ......

..なぁ〜俺達、どうなるのかなぁ?」

真夢子さんは、携帯をポッケに急いでしまい込んでから

「オーナーは絶対にこの事件を報告しないよ

そういう人よ

問題は、哲君が、どうするかね!」

一番後ろに居た滝本が

「心配しても、仕方ないぜ

あんまり考え込み過ぎるな!」

いつもの軽い調子で、沈んだ空気を和らげた。

それから、

滝本は携帯で賺さず白井和美先生に

少し大人ぶった話し方で今までのことを告げていた。

 


翌日、俺は教務室に呼ばれ
吉田先生にどやされ・・説教で、こってり油を絞られて
次の週から
勇輝といっしょに一週間の停学と謹慎処分

白井先生は、俺と勇輝に瞳の父親からの要請で
監視の依頼がきていたにもかかわらず、DreamBoxsに行かせたことで
責任を取って辞職届け提出したが
校長は受け取らず
結局、音楽部の担任から外されただけだった


今から考えれば
全部が哲の仕組んだ罠だったのかもしれない....。

お陰で、俺は瞳にも洋子に近づけなくなった
そのかわり、謹慎中に真夢子さんから、突然のメールが
届き

ゆくっりと洋子のストーリが解き明かにされていった。


 

「哲からの手紙」


謹慎中に、俺はこれまでに無いほど
瞳が登場する夢を見た。

それは・・無邪気な微熱風が

渦巻きながら

麗らかな春の日差しにもとに

微笑み掛け

何かを告げようと

話している

その人は瞳・・絶対に洋子じゃない

その根拠は何

「ぶれる」と

意識が夕日色に沈む

プライドを蹴りつけて、

唇の近くまで寄る

が..

聞き取れない

微熱風が

強く顔に吹きつけて

視界を阻み

瞳をとじる


そこで、決まって夢から目覚めた。

謹慎中に朝に、一番にすることは
吉田先生への反省リポートでも
一週間分の各教科の宿題でもなく
毎日のように送信される
勇輝からのメールのチェックだった。

「武..

元気かよ

凹んでんなよ!

薄暗い保護室のじめじめした畳で
寝るより
自宅謹慎の方が
よっぽどましなんだぜっー(~_~)/」

こんなメールを読むと
励まされるというよりは
余計に....惨めなイマジネーションの世界に落ち込んで
将来が不安になる
気持ちどんどん滅入るけど
しかし、返事は直ぐ返した。

「勇輝よ

朝から重すぎるから

お前の少年院の時の話は書くなっ

もっと軽い話題↑

頼むぜ!」

こんな調子で、生まれて初めての自宅謹慎の一週間は無事?
終えることができた。
右手の怪我もよくなり
パソコンを使わなくても、
右手だけで、字が書けるまでに回復した。
一番嬉しかったのは、
ギターでEmがまた弾けたことだったかもしれない。

謹慎明けの登校日は
綿雪が、歩道に降りて
一瞬でその姿を消す朝
緊張と不安が
・・その温度さえ・・感覚を鈍くさせて
足元を重くした。
なるべく、通行人の顔見ないように
ふしめがちに・・歩き
学校の門まで、やっとの思い出でたどり着いた。

すると。。;
有り得ない光景が、視界に飛び込んできた

そこには、目元を隠すくらいの長髪の勇輝が丸坊主になり
道子ちゃんと滝本と三人で
マスクを付けながら
玄関の掃除をしている。

自分を少し疑いながら勇輝に近づいた

「どうしたんだ 勇輝!」

「待ってたぜ、
ちょっと・・耳貸せ」

と信じられないくらい小さな声で囁いた

「お前が気絶した後からの

あの日の洋子ちゃんからの伝言だ

胸に刻みつけろ

『敵を騙すには、味方からよ』

解かったか?

了解なら・・俺に合図しろ」

俺は生まれて初めて
男にWinkすると

この言葉で、全ての謎の解き方を知った気がした
あの時の洋子は
瞳だったか
洋子だったか
結局は、確信できなかったけど
俺達・・四人は、この言葉を信じて
硬い絆で結ばれ
目立たないように
音楽活動を続けることを決意したと想う..

次はどんな生まれて初めてが起きるのか??

と用心しながら緩やかな期待をしていたが

暫くは、時間だけが平凡に流れる日々が続いた〜。

その間・・ずーと俺は

家で宿題も見たいTVも・・もちろんアルバイトのことも

気にしなくても..いい、、自由な時間を

ギターの練習と作詞に費やしたが

その日は、それをやる気がなかった

書きかけの譜面をファイルケースに仕舞い込んで

ギターを弾かずに

ただ抱きしめて

瞳のことを・・考え続けた

瞳と洋子の関係

洋子と哲の関係

瞳と血の繋がらない父親の関係

頭の奥で

人間関係の色違いの糸が織り重なって

抽象絵画のようなイメージが描かれていく

なぜ、瞳はあれから、一回も連絡をしてこないのか?

きっと深い訳があることは、わかるが

それでもやはり、不安だ

このまま、この煮え切らない状態が続くのか???

着メロの鳴らない充電中の携帯を

躍動を忘れて固まった意識で・・・見つめた。

その時、玄関から微かな人の息遣いと

呼び鈴が数秒のタイミングで

狭い部屋はっぱいに鳴り響いた。

幼い期待で...いきよい良く玄関の戸を開けたが

すでに人影は消え

残ったのは12月の冷気だけたった。

うな垂れて、部屋に引き返そうとした時

新聞用の差込口に

小さな・・・切手の貼られてない手紙を発見した。

手書きで「武君へ」とだけ、書かれいる

裏を捲ると...「真夢子」になっていた

 

玄関まで飛び出した時より

早く自分の部屋に戻り

ゴミ置き場で、夜中に見つけた

見捨てられた..生まれたての愛らしい赤ちゃん猫を

当ても無いのに、拾ってくるような

そんな・・罪悪感が手紙を開くまで

胸を締め付けていたが...

真夢子さんの文面が、目から感情線に伝わったとたん

罪悪という文字だけが弾き飛ばされて

白い吐息のように、沈黙の冷気の中に消えていった。

「こんばんわ、たける君

突然の置手紙を許してね

Dream Boxsで逢った洋子の友達、真夢子です

そう、少しはわかってもらえるかしら?・・・こんな方法しかなかったのは

「哲」君のせいだという事も

洋子の友達ならきっと、素直に了承してくれると思い込んでます?

それで、誤解が広がらない内に

明日、海岸通のカトリック教会の坂道を左に曲がって3キロぐらいの所

海の見える「灯台」という小さな喫茶店ができたの

そこで、明日のPM5:00に逢って貰えませんか?

たしか明日はバイト休みのはずよね

じゃよろしくねっ!」

 

翌日の俺は、どこか変な感覚になってしまって

もしかしたら、「瞳の失踪の謎」が解けるかもしれないという

淡い期待が

・・・集中力が衰退させて

吉田先生の数学1Bの授業など、ひど過ぎて

授業の内容が、全然頭に入らず

昨日の手紙のことばかり考え込んで

ふっとノートを見ると

証明法の帰納的推論の基本定理を1行書き写しただけで

黒板に書かれた残りの例題は、

?マクークの幾何学模様・・のイラストになってしまっていた。


そんな不埒な授業態度を見抜かれたのか

吉田先生が、順番をスキップさせて


「おい、タケル・・この問題を解いてみろ」


と、いきなり指名してきた。

「すみません、先生ちょっと....今、気分が悪くなって」


「ほんとか?
おいー、そのノート見せてみろ
なんだぁー、この漫画は
ジャンプのヒロインか??」


「いゃ..その...あの..つまり、その
帰納法..じゃなくてっ、昨日のことが.....」


「ふざけるなぁー
お前なー、さっきから「ぼーと」して、
授業以外のこと考えてたろ!
真っすぐ前を向いて歩け
最近、生活面で転んでばっかりじゃないか」


「えっ、、、」


「また自宅謹慎になりたいのか?」


「先生、巴投げって・・・どんな感じなんですか??」


「? 何っ まだ迷想してんのか!!」


「先生さぁ、柔道の担任でしょ!」


「確かに、けどなぁ数学に関係ない質問するなぁ

相手の重心を前に崩して・・
仰向けになって投げる技だ
わかったか?」


「あっ、技じゃなくて
心構えです
自ら転ぶことで・・相手を呼び込み
捨て身で勝負する
自滅する危険があるから
勇気のいることでしょ?


「....あぁ、
そのその通りだ
....無理もない..
瞳のこと・・考えていたのか!?

確か?・・お前一人暮らしだったよ
な....;
人を想うのは大事なことだが
忘れるな、ここにいるクラスメイトの人生のことも考えろ
今日は許してやる、家でよく復習しておけ

それから、放課後
帰る前に・・俺のとこに来い」


放課後、教務室に行くと
個室の応接室に通されて


「瞳の件だが
瞳の親父さんから、連絡があって
お前の監視要請は取り下げられた

それと親父さんは、PTAの役員を辞任したそうだ。
まだ、このことはお前に教え無いつもりだったが
また、問題を起こしそうなので...

それは、余りにお前が・・無邪気で純粋なんでなぁ
勘違いするなよ
俺は、お前を完全に信用したわけじゃないが
瞳の件に関しては、お前の味方になってやる

それから、
和美先生からも面倒見てくれと
頼まれてな
もう一つ......俺は人をスキになる権利まで奪うつもりは無いからな
どんな人をスキになるかは
自分で選択すべき
これからの人生で大切なことだぞ」

吉田先生の背負い投げを教わった時の・・あの真剣な眼差しに

なんだか気持ちにゆとりが持てて

もやもやが、薄れていった。

真夢子さんとの約束の時間が近づいたので、

自転車に乗って海岸通りの喫茶店まで直行した。

 

喫茶店は直ぐ見つけることが出来た

それというのも、海岸通りの右側から5〜6メートルの所に

賃貸アパート1棟分くらいささやかな大きさで

真っ白なコンクリート建ての

大きなガラス張りの窓が海と対面していて

他には建物が見当たらなかったからだ。

中に入ると・・意外と概観で見るより広く感じた

もちろん俺は、窓際の海が一番綺麗に見渡せる右側の席に座って

暫く景色を見つめた後

周りの様子を伺った

奥の日の光が届きにくい所に

アベックが一組と

窓際の左側には近くの高校の女子学生のグループが

残りの席を全部陣取って

にぎやかな笑い声でパフェを食べながら

美談していた

恐らくクラブ活動の打ち合わせか?

顔合わせのような感じだ。

 

・・念のため愛しい人の顔が、その中にあるのでわと

彼女達を観察したが

それは予想通り、裏切られた。

日が暮れ始めたので、

潮が引くように、カバンを抱えながら

彼女達は屈託の無い笑顔で、この喫茶店を出て行った。

やがて、、、約束の時間が、5分10分と過ぎたが

真夢子さんの姿は見えない

不安もだんだん膨れてきた。

そのうち奥のカップルが、なにやら大きな声を出して

喧嘩し始めた。

聞きたくないのに、無理やりその重苦しい会話が

耳に進入する

「俺達もう...終わりなのかなぁ!」

「わかっているでしょ」

「頼むよ、もう一度チャンスを...」

「もうー、いゃーっ」

女の方が、泣きながら席を立ち

自分の飲食代をテーブルの上に投げつけるに、ばら撒き

ハンドバック肩に掛けると

早足で出て行った。

男も、追いかけるように慌ててレジを済ませて消えた。

なんとなく気分が、滅入って

待つのが辛くなってきた

腕時計は、もう約束の時間を30分も過ぎている

もう10分待って来なかったら帰ろうと決意

それから、その10分も過ぎようとした時

息咳きって真夢子さんが、飛び込んで来た

「ごめん、ごめん、お待たせ

洋子と話してて遅くなったの

怒って帰ってしまったかなぁと思っちゃった。」

俺はその名前を聞いた途端に

今の気持ちと逆のことを口走った。

「別に、いいのさぁ〜;

気にしなくても

今日は時間あるし

それに、窓からの景色が綺麗なんで...;」

と指さした延長には

沈んでしまった日の光の残った・・・ほんの僅かな赤みが

海岸を子犬を連れて散歩する人の姿を

紫の輪郭のシルエットにしていた。

真夢子さんは、大切な携帯をポッケにしまい込んでから

おでこの「うぶげ」が見える距離ので顔を近づけて

「遅れて来たのに

いきなり、いやなこと言うけど

ここに武君を呼んだのは

貴方に・・特別の好感を感じた訳じゃないのよ

ごめんなさい、ほんとうにっ...;

私には、今、想いを寄せる大切な人がいます。

武君の人生の一部ですら、、、

知ったわけじゃないし

まだ、私は貴方の恋人役には成れないわ

私のことを・・何時も男に対して

こんな積極的な女だと思わないで欲しいの!!」


「....そうなんだぁ...;

そりゃそうだよね、

ok

それで、話って何?」

ある意味で、これはとても「優しい言葉」なのかもしれない
俺は、少しの痛みと・・大きなリラックスをもらった

「ねぇ〜え、タケル君

何飲んでるの?

・・もしかして、その白いの・・牛乳ーっ

ポジディブと言うかっ

健康的というか??;」

「もーぉ...違うよ

ホット カルピスさ・・・」

「うぁおー、メロウな飲み物ね」

「そうだー真夢子さん何か飲む??!」

「そうねー、じゃ、・・ココア頼もうかしら」

「へぇーっ・・珈琲じゃぁ、ないの?

スキなんだ!?」

「うん、冬は珈琲よりもね、好きっ・・〜

心が暖まるんだょ 」

「そうなのかー!」

それから、真夢子さんは、

ココアが運ばれてくるまでの時間も惜しむように

勝手に自の己紹介を

まるで洋子のような・・身ぶり手ぶりのオーバーアクションを交えて始めた。

「私ねっ、どっちかというと根暗派なのかも

気のあった限られた人しか、心を開けないの

洋子ちゃんみたいに、物怖じせず自己主張することが出来なくて

そんな私が見つけた秘密兵器はね

携帯小説なの」

「そういえば、君って器用に携帯使えるよね」

「私には、どうしても書き残さなければならい事あって

それ以来ずーと

最初はヨチヨチ歩きだったけど

使命感のように、寝ている以外は僅かな時間も携帯小説書いているの」

俺はこの人が、此処にいる理由がやっとわかってきた

興味があるのは・・俺そのものじゃなくて

瞳の数奇な人生や

洋子の誰にでも臆せず心を開いて接しられる人柄や

二人への俺の絡み方・・なんだと

「タケル君、

私は、貴方にとって

無断で人の庭を覗く

おせっかいな女かしら?」

「全然っ

そんふうに、・ ・ 感じてないよ

とても自分に素直で、

なんと、言うか、、、

...いい感じだよ!

俺には君ほどの勇気がなくてっ

今、自分が悔しくなってきたよ

何言ってるかわかんないよね........。」

「いいえっ」

 

真夢子さんは、柔らかそうな胸の内ポッケから二通の手紙

を取り出して

桜色の手紙の方から俺に手渡した。

「この手紙を読む前に、私の話を

もう少し聞いてくれる?」

俺は、平静に軽く頷いたが

内心・・その言葉にデリケートに緊張した

「洋子ちゃんは、 DreamBoxsでアルバイトどうしという仲だけなのに

逢って直ぐに・・あの気性でせいか

気があって仲良くなれたの

そして、私の何処を信用したのか

今も見当がつかないけど、

哲の紹介で瞳さんと友達になったこと

タケル君のこと

自分の生い立ち全部、話してくれたの

そんなこと、普通・・絶対にしないよね

そうとう仲よくなっても秘密にするものよね!

洋子ちゃんと、瞳さんと、哲君の三人は、

DreamBoxsの控え室で、私を締め出して

少しの休憩時間を利用して

よく話合ってってたわ

そんなことが、一週間ぐらい続いたかしら」

「瞳と洋子ちゃんが.逢っていたぁ〜

そして友達になったって・・

マジで??

それに哲が、いっしょだったなんて

とっても、、、信じられないぃ.......。」

「そうよねっー

誰も思いつかないことよね

それでね、私に三人の会合の様子をそれとなく見せ付けたのも

BreamBoxsにタケル君を呼びつけたような形にしたのも

聡明な瞳さんと哲君の作戦のような気がする

それに洋子ちゃんが協力したのかもね!!

これは、あくまでも私の大胆な推論だけど..!」

「なんかぁーすごい筋書きだね

その話し」

「ふぅふぅ〜」

「あれっ 何が可笑しいの?」

「だって、タケル君

人ごとみたいに、驚くけど・・この物語のヒーローは貴方でしょ!」

「そうじゃないよ・・俺が求めているヒロインは瞳だよ

確かに洋子ちゃんとは友達なってほしいけど..」

「ほんとうにっ?? 無理してない!

自分はそんなに生くさくないんだ・・って自分に言い聞かせてないっ?」

「頭にくるな〜、そんなんじゃないよ絶対に俺っ、、、」

「そぅ、本当の自分の気持ちは、関係ない第三者の方が

感じ取れる場合もあると想わない?」

「そういうことも

ありだけど...俺は今は瞳のことが」

 

「・・よしっ、大丈夫」

「えっ」

「この手紙の差出人は洋子ちゃんと哲君よ

私は絶対に中身を読んでないけど

洋子ちゃんも物語の中に入れないといけないじゃない?」

「・・言葉が見つからない」

「じゃ〜読んだ方が、いいんじゃないっ!?」

「君、、いゃっ、その、、、真夢子さん

読んでる間、大丈夫?」

「私が見つめていると

大切な手紙が読みずらい?」

「いゃーそういう意味じゃないけど..」

真夢子さんは、俺の口を塞ぐように、

手を俺の顔に突き出して

会話を制して、接客係が持ってきたココアを

受け取り

両手で、カップを包み込むように

持って・・その温もりを感じとってから

一口、ココアを

その桜色した唇に運んだ

「私は、これがあるから

大丈夫ょ」

「でも...」

「・・・そんなに、気になるなら

私、ケタル君の代わりに

丁寧に読んであげてもいいのょ!?・・ふぅふぅ」

「えっ〜真、マジっすか?

あのぅ、、、それは、、少し」

「あのね、真っ直ぐ過ぎるぅ

冗談よ、冗談・・はぁぁ、はぁ」

「だよねっ」

真夢子さんは、髪を軽く掻き揚げながら

悪戯っぽい目で、微笑み

またココアを一口飲んだ

ココアの暖かさが、伝わってくる和むその表情

いままでに経験したことのない「場面」作ってくれるこの人の雰囲気に

引き込まれそうだ。

真夢子さんの前では、愛情の隠し事は通用しない

そんな気がした。

・・真夢子さんを気にしながらも

もちろん、洋子ちゃんの手紙から開いた

 

 

「私は今、この手紙を

真夜中の、あのDream Boxsの控え室

ほらっ、大きな化粧鏡の前で

書いてるの、ちっと変ね ふふ

もちろん内側から鍵をかけてね

オーナーから店のマスターキー任されているの

あっ、なぜって、そんな所でと思うでしょ

ここが今の私にとって

一番安全な場所だと思えたからなの

あーのね、ここには心の自由があるように想える

ねー聞いてよ 私はね

鏡の中のもう一人の私に向かって

『洋子、武君に謝らなきゃ』て話しかけながら

まるで、瞳ちゃんになったような気分でね 、とても変よね

だから、言うわ ごめんなさい、武君

たぶん、不安の中 ずいぶんと待たせてしまったと想うわ

そしてぇ〜また、また ごめんなさい

Dream Boxsでの私の態度を どうか、許して欲しい

あの時はどうしょうもなく、やるせない気持ちになってしまったでしょ

I 'm sorry but

でも、私も、同じくらい切なかったのよ

信じて すべてのことは

瞳ちゃんと武君を救う為に用意した試練なのだと

想って欲しいの わかって、わかってっね

瞳ちゃんと哲君には、ありふれた、ささやかな、ことをする自由が

そして、武君にも、愛情と勇気を育む家族愛が 必要なはずよね

その必要なことを勝ち取る為の「術」を 話し合って決めたの

そうよ 私と瞳ちゃんと哲君で肩を付き合わせ

 

焦点が「ぼけまくり」、の手紙にならない内に

大切なことを書きます

私、こう想ってる  今、一番大事なことは

瞳ちゃんのお父さんが、 瞳ちゃんに

見た目だけのLibertyじゃなくて

曇りの無い、マジなFreedomを認めてあげることだとね

そして、真に問題なのは、瞳ちゃんが

日に日に蝶のように苦しみながら、成長していること

私と顔、形は区別できなくらい似てても

想像もつかないくらい、深刻に自分の人生を見つめているわ

そのことを 瞳ちゃんのお父さんが認めようとしないこと

だから、彼女は戦略的な偽り

私にお願いしてきたの、それは

武君に話してある「鎌倉のいとこの愛子ちゃん」のもとに

将来はお世話になって 旅館で働きながら服装デザインの勉強して

自立したいって打ち明けられたよね

それは、今じゃないって言ったけど よく考えると

まぁーね 時間稼ぎの戦略だったのかなぁ

本当はもう、瞳ちゃんは、隠れて、鎌倉で働いているはずよ

それでね、よく聞いてよね

You know !

その間、私は洋子なのか瞳ちゃんなのか

疑わしい態度で芝居するように女優なるとこをお願いされたの

始めは、そんなこと、私はとても出来ないって

断ったけどね、頭いい瞳ちゃんは、なんかぁ、私の泣き所、確り抑えてて

『貴方の、夢は何』

『美容師になることでも、マジなのは絶対歌手なの』

ってバラしたの そしたら ここよ

つまりー、DreamBoxsとオーナーを紹介されてね

ステージにも上がれるし、楽器も触れるし

Audienceの投票で、参加アマチュアバンドの中からの人気も集められるし

バイトすることにしたの 私としても夢の道なんで、ルンルンなの

Could you understand?

借りできたし、結局ぅー、その瞳ちゃん役ぅ、引き受けたの

そして瞳ちゃんのお父さんは、私のことばかり調べていて

瞳ちゃんは、蝶のように、ひらひらと逃げ出せたの

でも、最終的にはまた、鎌倉も見つかるかもね

私から言いたいのは、今のところ、そんな感じだよ

いろいろごめん、

See you next.」

 

長い手紙を読み終えて、現実の世界に息継ぎしたくなった

以外にも視界には・・真夢子さんが頬杖を両手でしらがら

ソフクリームみたいな緩やかな笑顔で、見つめながら待ち受けていた!

 

「タケル君、言って良いかなぁ?

手紙の内容わかんないし・・私の無責任な個人的な意見だけど

私はティーンの人間観察が使命なんで、おせっかいな忠告するよ

洋子ちゃんは、嘘の無い素直で純真な、そのままんまの人

瞳ちゃんは、その洋子ちゃんを巧みに操りたいみたな気がするの..!?

そのことを頭の隅において瞳ちゃんに接した方がいいかもょ」

 

持って来た二通の手紙の内の
残りの一通
つまり、

「哲」からの手紙
真夢子さんは、表

情を曇らせ、眉を八の字にしてその手紙を手渡した


 「瞳と哲の関係」

「たける君、読みたくない手紙って

世の中には、沢山あるけど

君は その中の一つに、この僕からの手紙を加えたいはずだ

だから、要点をしぼって書けど

僕はたぶん、君の記憶の中では、危うい人物とてインプットされているはずだ

事実、僕の過去は、ネット犯罪至上最悪のハッカーであったかもしれない

音葉さんが、僕のもとから去った日から、瞳と区別できないくらい似た洋子

に逢うまで、過ちは繰り返されたさ

公立高校のホストコンピューターに侵入して試験問題と回答を入手したことで

補導され・・瞳の親父さんに、呼び出されてしまったのさ

そこで、こってり油をしぼられると思ったら、

驚いたことに、実の娘の行動を監視してほしいと頼まれた

この時、瞳の親父さんは、「僕と瞳が隠れた母方のいとこ」の関係にある

ことを気づいてなかったんだ

そうなんだ、一年前、瞳と僕は、Dream Boxsで偶然にも出逢って

その事を知ったのさ

その時、瞳は同級生の恋人の突然死で動揺して家出を繰り返し

僕は音葉さんとの別れで、彷徨い

二人は当然の如く、Dream Boxsで心情を語り


残念なことに血縁関係であることも判明したのさ

そこで、瞳の味方になるには、僕の監視役の12人を

自分の手下として使い、瞳の親父さんを騙す必要があったのさ

僕のこの言葉を信じてもらうには

これしかないと思う

「敵を騙すなら、味方から」

僕のだいだいの立ち位置がわかってもらえたかなぁ

最後に、Dream Boxsで武君に喧嘩を仕掛けてきた大男は

12人の手下の中のリーダーで有能なクラッカーなんだ

名前はマリオ・フランシス・轟という日系ブラジル人なんだ

彼には注意してくれ。


真夢子さんは、焦点の定まらない視線で、
その言葉を躊躇いがちに、吐き出すように
話しかけてきた

「ね、武君一つ、また聞いていいかなぁーっ」

「なんだろう、? 真夢子さん」

「武君と瞳ちゃんの

どっちが先に声を掛けたい来たの?」

「どっちでもないよ、なぜそんなこと興味あるの」

「えっ?」

「わかっているよ、俺と瞳じゃ
全然・・性格も、考え方も、違いすぎるって言いたいんだろ!?
このことを人前で話すのは
もう、三回目くらいになるかもしれないが
また゛、誰にも言ってないことを、話すよ
本人の瞳にもしもあっても、秘密にしてくれ、、、
約束してくれるかい??」

「ええー」

「ほんとの、最初は、偶然さ
瞳が、新一年生の歓迎会の時、
俺の直ぐ側で、起立して、校歌を合唱していて、
二人は偶然に目が逢ったんだ。
わかるかな、俺が横を向くと、
瞳もこっちを見つめていた。
旨く、言えないけど
そん時、なんか、カチッンって電気が体に流れたような気がした
直ぐに瞳は、正面を向きなおしたけど...
それから30秒も経たない内に、
瞳は、意識が遠退き、俺の胸で失神したのさ

このさいだから、言うけど・・
瞳、鼻から鮮血が、一筋流れてた。
それはまるで、純白の舞台に薔薇の花びらが
何枚も風に揺れて舞い落ちるようだった。
それが、破れた堤防のように下って
白のブラウスに付きそうだった
手を、口元にかざすと息していない
鼻血で呼吸路を断たれた、せいなのか?

俺は一時的な気絶ではないと感じ
原付自動車免許を取ったときの講習で
「レスキューは最初の3分間が勝負
という言葉とっさに頭に浮かんで
俺は、無意識に自分のテッシュで、さっと拭き取って
瞳の口元に息を吹き込んだ
まるで、経験の無いことを無断でね・・
血の匂いと塩辛さが、
容赦なく...極限の不安へと案内したのさ


その状況をカバーしてくれたのが
俺の反対側の列にいた、同じ組の女子さ
その人は、俺と同時くらいに駆け寄って
俺のレスキューを見守り、
その人は俺と瞳にまるでキスできるくらい顔を近づけ
自分の頭に大きなハンカチを被せ
側に居た連中から・・二人が瞳に対して
何をしているか、わからないように隠したのさ
直ぐに、
「瞳は蘇生して・・『私を守って...』と呟いたのさ
その人はウィンクして立ち去ったけど

後でわかったことだけど、
その人が瞳の無二の幼なじみの道子ちゃんだったのさ
俺は、その後音楽室で初めて、彼女と話しできたけどね!」

この時の俺は、恋という名の戦場の

しんまい救護師だった

無意識に求めた救いは

己の無残なモノクロームの世界

に溶け込む鮮烈な色合だった

「とんでもない偶然ね・・
女の勘だけど、その出逢いで、瞳ちゃんは
武君に運命的なものを感じたと想うわぁ」

「そうかなぁー、気絶して何も覚えてないはずだよ」

「甘いね、道子ちゃんが側にいたんでしょ?」

「そっ、そぅだったね

君は道子ちゃんみたいに、瞳と僕のメッセンジャー役になりたいの?」

「いいえ、私はそんなことしないわ

私は洋子ちゃんの友達なのよ、わかるでしょ!?」

「真夢子さん、強い人なの?」

「??いいえ、私は...

呆れるほど・・弱虫よ

でも人間関係には

周りの評価より自分の筋を一本通すわ

縁あって絡んだ人のために

生きたいの

わかってもらえる・・・」

 

 


 

 

Hikoからの作品へのコメント

物語はどんどん進んでいくのに、
ヒロインの瞳の気持ちは、ほとんど出てきませんね
それは意図的に武や道子、真夢子の言葉の中から探るように書いています
そのせいか、洋子の気持ちは、あからさまに前面でてしまいます

それでは、いったいどうして瞳は武に近づいたのでしょうか?
そう、わかりますね、生い立ちで同じような悩みを抱えていたからでしょ?


だとするならば、瞳は新一年生の歓迎会の席で
武の胸の中で気絶した日から
武のことを探っていたことになります
武も、そのことを想定して、変な言い訳のアプローチを信用しているふりをしているのです

どうすることもできない、血縁の問題に、
勇敢にも一人で 瞳が自分の英知を信じて立ち向かっている
姿が浮かんできませんか??

無邪気な微熱風の出会いとは、裏腹に二人の恋心は暗雲がたちこめ
言葉に表れない、男女の微妙なかけひきが、繰り広げられていきます

 

 


心を込めて、ここまでの「荒筋」を読者の皆様方に〜☆


新一年生の入学歓迎会の席で、起立して武は校長の話を聞いていた。
傍にいた瞳は、突然、よろめいて武の腕の中で意識を失う。
それがきっかけで、瞳は武を意識しだし、学園祭の反省会の夜
瞳は誰も居なくなった校舎で、武に話し掛ける
二人は帰り道でデートの約束を交わし、不思議な運命の物語が始まる
「出会いの広場」での待ち合わせ、そして映画を見た帰りに、誰も居なくなった
その場所で、瞳は父親が異常に男女交際を制限していることを告げる
そんな障壁を乗り越えて、武はバンド活動をする事を約束する。
瞳の無二の親友の月星道子の家の離れの音楽教室で、約束の日集まった。
「秘密の扉」を開けたのは、三人の他に、サプライズで佐久間勇輝と姉の優香だった。
この場でも、瞳の父はのことが問題になり、武と勇輝は喧嘩する
その翌日、武には、瞳とそっくりのアメリカからの帰国子女の中島洋子とそのBoyFriendの「哲」との衝撃の出会いが待っていた。

翌日の夜、なにげなく「洋子」に二回目の電話をかける。
それは、心配していた洋子を安心させるだけのものただったが...
その日を境に、次々と説明できないようなアクシデントが武達を苦しめる。
結局、二回目のバンド練習は、メンバーが集まったものの
原因不明の楽器の不良で中止となりる。
遅れて「秘密の扉」開いた瞳は、雨に打たれ、ずぶ濡れ
少し様子が変だった。
瞳は、武に「約束の箱」を
「来年の夏まで開けないて゛」と切なる願いととに手渡す
この日を最後に、瞳との連絡が、途絶えてしまう。
瞳の気持を探る、不安な日々が続いた・・ある日
洋子が、下校時間に突然、武に逢いに来る
そして武に、手作りのプレゼントを手渡す。
まるで、瞳と話している錯覚を覚えた武は、洋子の手を取り
誰も居ない、プールの更衣室に連れ込む
そこで二人は、お互い本音で、今の自分の気持を話し合う。
その後もメールのやり取りは、続く

そんな武の姿に、瞳に密かに好意を抱いていた勇輝は
もどかしいさで、怒りを武にぶつけるのだが...



※物語の中に出てくる、実在するJpopアーチストの皆さんや団体等と物語の内容とは
 直接 関係ありません。

(届けられた歌・・心の深きより・・感謝の意を込めて〜☆)

執筆中

今を生きる作者Hikoの...とりとめの無い日記〜♪ 

 

 

(2009年3月5日 ここまで読んでくれて
ありがとう〜★2008.9.3
・・・その貴方に、ときめきの小さな灯りが、悪戯な風に惑わされて、消えないように願っています・・・続く)


 



 



 

 

 

 



 

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