Ⅴ 欲を貪る



                 欲に頂き無して
           欲心は其極る事を知らず
                 (米沢本沙石集)



前口上

世の中お金が一番と
誰もが思っているくせに
まじめにそれ言うと
品性疑わしい奴と煙たがられる。
お金より大事なもの何と尋ねて
「人の心」とか「人との和」を言う人に限って
ちゃっかり大金稼いでいる。
いずれにしても資本主義の世の中
自分がお金を稼ぐことで
社会や人のためになると思える人と
社会や人のために働くことで
金を稼ぐことになると思う人との
建前上の葛藤が繰り返されている。
「今」はそれで持ちこたえられているのである。



欲持ち金稼ぐことが
人の道に外れたことではないと
公認された世の中になって
いわゆる欲なく頭が切れた賢い人たちまで
欲満たすために才覚使い出した。
おかげで賢い人たちは
地位や名誉を得て権力者となったが
厄介なのは
彼らがいつも世の中、人のためと言いつつ
我欲満たす才覚まで身につけてしまったことだ。
賢い人が巧言令色の輩に成り下がり
清廉潔白の仮面の下で
貪欲のかけらもないふりして
金儲けすることほど見苦しいものはない。



株買うことで
企業の経営権を握るという
資本主義社会の当たり前のことが
日本でも殊更に取りざたされるようになった。
攻める側には攻める側の理屈あり
守る側には守る側の理屈あって
欲惚けしてないと言いたいのだろうが
元々商売して生きていくという才覚の
とんとない人間には
そんな理屈はどうでもよいこと。
企業をマネーゲームの対象にすると
これまで日本企業を支えてきた
従業員も家族とする古き良き習慣までも
切り捨てる経営者ますます増えていくだろう。



資本主義社会に住んではいても
何がどうなって
「ホリエモン事件」が起こったのか
部外者にはうかがい知れぬこと。
今回のこの問題
株なるものを一度も買ったことがない人だけは
ワイドショウを楽しんだが
裏でどうなっていたかはさっぱりわからない。
結局ホリエモンは負け
被告になり落ち着いたが
株買った人は損したと訴えた。
第三者は検察やマスコミの言うことを鵜呑みにした。
そんな状態の続く中で
資本主義社会とは何かを改めて考えさせられる。



株価が暴落し
今やバブル崩壊期以上の危機的状況とも。
みんながあまりに奨めるので
私もつい株買ったしまったが
半値以下の下落に茫然自失。
株とはそんなものとあきらめたのは
退職金の1割しか使わなかったからなのか。
それにしても相変わらず
自分に責任がないかのように言うのは
人間の、日本人のお偉方の、そして日本の下々の本質。
損得承知の資本主義の世の中でも
安全な日本の中の出来事だから
命の危険さえなければ
よしとしなければならないか。



かつて10年間預ければ
2倍近い資産になるという時代の人間にとれば
0%に近い金利しか生まない今を見れば
「こんなの、あり?」
この間に失われた金利はどこに行ったのか。
時代の所為とあきらめていいことなのか
無能な政治家の所為と咎めるべきなのか。
自己中と成り下がった役人に怒るべきなのか。
もはや現役でもない人間からすれば
とにかく日本という国は
何をされてもじっと我慢の庶民と
その庶民の納める税金を食い物にして
私欲満たす
そんなエリートに満ちあふれている。



かつていざなぎ景気を越える景気といわれた時
銀行を初め大企業の好調示す姿が
マスコミ通じて発表されていた。
しかし庶民の給料は前より減っていた。
なんか魔法にかかったみたいだった。
給料下がっていても
企業が儲かっておれば景気がよく
それが後々庶民に及んでいくのだと
経済や政治やマスコミで
いい目をしている人は
言っていたように記憶するが
それに理屈つけられ納得させられて
現状に慣れ親んでいったのも
日本の庶民のいつものパターンだった。



一部の企業の儲けぶりが喧伝され
いざなぎ以上の好景気と言われている。
だのに庶民にちっとも反映されていない実情を
一体全体どう見るか。
企業だけの好景気と言われるのも
経済成長著しい東南アジア諸国相手の
商売で儲けたからでしかない。
戦前には満州、朝鮮、台湾の各地域で儲け
戦後しばらくは先進国相手の商売で儲け
今は発展途上国の経済成長のおかげで儲けている。
だのに庶民にはそのおこぼれわずかでしかない。
そしてそのつけだけは後で大いに払わせられる。
それは無為無策の政治家と称する人たちのせいなのか。
それとも庶民の不徳のいたすところなのか。



申し訳ありませんと
例によって数人が並んで頭を下げる企業責任者は
その実ちっとも謝っていない。
ゆとり教育を推進し
日本の教育レベルを低下させた文科省のお役人は
小理屈並べて謝り認めようとはしない。
口では天下国家を論じる議員さん達は
自分たちが最も既得権の恩恵を受けていることに
ちっとも恥や罪の意識を感じようとはしない。
それを事実として報道するメディアも
のぞき趣味の域を出ない。
結局それは日本の常識なんだからと
つい許してしまう癖ある国民の姿勢に
すべての原因があるような気がする。



企業は大いに儲かっていたという数年前
庶民の生活それでよくなったとは感じられなかった。
遙か昔の労働組合員の感覚からは
儲かった分を労働者にも回せと厳しく迫るところ。
が、今の労働組合はそれほど文句を言わなかった。
そして起こったのがアメリカが原因の世界経済不況。
企業は生き残るためとして非正規雇用者の首切った。
非正規雇用者の存在は企業が儲かった要因の一つ。
非正規雇用者は諸権利を持たない労働者。
その上正規雇用者からも差別されていた。
百年に一度という不景気に
非正規雇用者は大量首切られた。
この時も今の労働組合はわが身の保身に走った。
日本の企業のよき古き伝統はこれでなくなった。



多数に隠れて利を得たがるのは日本人の性。
「便乗」という言葉にそれが一番示された。
その言葉は次第に多様化され悪質化した。
「便乗値上げ」は商売人のやりたがる悪しき行為。
「便乗リストラ」は働く人の首切りに都合よく使われ
日本的的経営の良さをも否定する背徳行為となった。
たっぶり内部留保した一流企業までもがやりだしたからだ。
少なくとも彼らが日本を経済大国にしてきたのは事実だ。
同時に働く人を家族のように思い
経営的に困ればまず働く人を守ろうとしたのも事実だ。
「便乗リストラ」したなら
彼らのいう「社会的貢献」の美辞麗句は
所詮メッキの剥げた物言いでしかない。
グローバリズムの悪しき洗礼を受けた報いである。



今や第四の権力と言われるマスコミ。
権力持って増長したか
やることなすこと何か杜撰でいい加減。
松本サリン事件で反省したのかと思ったが
権力側の言うこと鵜呑みにし精査もせずに
正義者振っては情報垂れ流す癖は直っていない。
間違っても誤らないない今の公僕まがいに
誤りに対する訂正記事は
ほんの2,3行ですませるし
テレビの画面でも事を仰々しく伝えながら
直ぐ後で「お詫びして訂正します」とこともなげに言う
その回数も多くなってきている。
戦後教育受けた今の現役のごく普通の所作と思うが
リタイヤ組には何かしっくり来ない思いである。



昔お年寄りの医療費が無料であった時期があった。
現役の勤め人も無料だった。
だから日本では安心して年がとれると思っていた。
いつしか一割とられ三割とられるようになった。
無料だと病院は年寄りのたまり場になり
肝心の病人が迷惑被るようになるとか
健保も赤字になるとか言うのが
今の厚労省の言い分だった。
その間国民が積み立てた金を無駄使いするは
年金管理では犯罪的なまでにずさんだったりで
安心して年がとれなくなった。
経済大国を自慢する割には
福祉三流国であるを恥じないのは
欲惚け自己中はびこる日本に住んでいるからだろう。



お盆の季節がすんで考えてみた。
母親が亡くなっての初盆と言うことで
村人の行う盂蘭盆会の催しに喪主として参加した。
まだ都会人の心残し事情わからぬまま右往左往したが
おかげで村人の心も少しはわかってきた。
この盂蘭盆会の催しには色々考えさせられた。
村の非合理とも言える伝統文化を守ることと
すべてを損得勘定で考えていくことを
合理的と考えることとの奇妙な葛藤のある中で
仏事は葬式仏教の弊害いちじるしくなり
祭事はイベント化し仏教の心から離れていく。
定年迎え欲の世界から解放されて
過疎化著しい故郷で第二の人生始めても
別な欲貪らわねば生きていけないわが日本であった。

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