◆リストへ戻る

お気に入りミステリー国内編

出雲伝説7/8の殺人」 島田荘司 カッパノベルズ

米子と境港を結ぶローカル線の境線、その中途にある大篠津駅に午前7時28分ここを終点とする電車が到着した。車掌が忘れ物を点検していると、網棚に紙袋が置き忘れられていた。不審に思った車掌が開けてみると、中から出てきたのは膝から切断された女の右足であった。この後、各終着駅に到着した列車から次々に切断された死体が発見される。

無駄な描写のない緊張感のある文章と、1作で使ってしまうのは勿体無いと思われるほどに積めこまれたトリックで、最後まで息つく隙なく読ませます。

列車トリックというと、「先行する列車にどう追いつくか?」というのが多いですが、これはまったく別の、盲点をついたトリック。トリックがわかってから前半の列車シーンを思い出すと、ぞっとする怖さがありますよ。

最後に犯人が行動する場面の描写は悲しいものがあって、しみじみした読後感がありました。砂丘と言い、最後の謎解きのきっかけと言い、鮎川哲也ファンならニヤリとするところもあります。



消える水晶特急」    島田荘司               カドカワノベル

疾走する特急列車が線路上から忽然と消えるという壮大なトリック。たぶん島田荘司ファンには評価されない作品でしょうが、鉄道好きにはたまらない〜(≧∇≦)

1985年4月1日、全面ガラス張りの展望車を持つ〈クリスタル・エク スプレス〉は、各界の著名人を乗せ酒田へ向かって上野駅を出発した。今回は新型特急の宣伝と、大物代議士加灘耕平のPRを兼ねた試乗会だった。

しかし列車が大宮を出発してすぐ、銃を持った一人の男によってトレインジャックされてしまう。犯人の要求は加灘耕平の悪事を暴き、謝罪を求めるものだった。

取材のために乗り合わせていた女性誌の記者蓬田夜片子は、犯人によって連絡係りに指名され、途中の駅から加灘を糾弾する記事を送ることになった。しかし、列車は酒田駅に到着する寸前に姿を消してしまう。マスコミもヘリを出して列車の行方を追うが、ついに特急を発見することは出来なかった。

閉鎖された展望車内と、駅に到着するごとに列車を下りて記事を送る蓬田夜片子の様子。刻々と移り変わる状況。刑事とのやり取りなどが、緊迫していてスリリング。

後半は、夜片子の同僚で親友でもある島丘弓芙子が吉敷刑事に付きまとって、消えた親友を探しながら事件の謎を追っていきます。単純なトレインジャックと思われた事件の裏には、意外な真相が・・・

ラストの仕掛けがまた大掛かり、そこまでやるか?(^^;)



奇想、天を動かす」   島田荘司              カッパノベル

吹雪の中をひた走る夜汽車。寝静まった車両の中で踊るピエロ。
だがそのピエロはトイレで自殺し、死体は一瞬で消えた。
ミステリアスな道具立てと列車トリック。いかにも島田荘司という充実した1作です。



華麗なる誘拐」 西村京太郎                   徳間文庫

1978年の作品。新宿の喫茶店でカップルが毒殺される。毒はシュガーポットに入れられたもので、無差別殺人を狙ったものだった。実はその3日前、首相公邸に脅迫電話が入っていた。内容は「日本人すべてを誘拐した。身代金として五千億円を支払え。払わなければ人質を殺す」というもの。カップルは人質として殺されたと思われた。そしてその後も殺人は続き、やがては・・・。

まずは日本人すべてを誘拐するという発想がすごい。普通に考えれば、誘拐された人質はどこかに監禁されているわけだから、日本人全部を監禁する事は出来ないと思ってしまいますよね。

でも逆に殺人予告として考えれば、犯人側は人質は誰でもいいのだから殺すのは簡単。守る方は日本人全体を守らなくてはならないわけだから、これは難しいということになってしまいます。

さらに身代金の受け渡しはどうなるのか? どう考えても不可能なことが多いので展開が予測できないんですよね。物語が進んでいくに連れて、警察側、犯人側、共に予想外の出来事が起こってくる。まったく先の予測ができないので、かなり面白く読めました。

またこの中の犯人像は、ある意味予言になってますね。



特急さくら殺人事件」 西村京太郎 講談社文庫

1982年発表の十津川警部もの。
捜査一課の刑事日下は兄の葬儀に出席した帰り、上り特急さくらの中で女性の死体を発見する。しかしその直後、日下は殴られ意識を失ってしまった。気がついた時には死体は消えていたが、その間特急は停車していなかった。

やがて新宿のマンションで飛び降り自殺が起こるが、その死体こそ日下が「さくら」の中で目撃したものだった。やがて第2の殺人が起こる。 

失踪する特急から消える死体、容疑者の身辺で起こる誘拐事件、やっと絞られた容疑者にはアリバイがあった。

トラベルミステリー第一弾と言われていますが、最近のトラベルミステリーのつもりで読むと歯応えがありますよ。私としては時刻表ミステリーの王道を行く作品と言いたいですね。私は九州旅行の帰りに、わざわざ「さくら」に乗ってしまいました(^^)v

ネタバレ注意!!→私の記憶が確かならば
上りの特急をつかまえるのに、下りから乗り換えると言う方法を使ったのは、この作品が最初ではないでしょうか?】



殺しの双曲線」 西村京太郎 講談社文庫

雪の山荘に閉じ込められた6人の人物が次々に殺されていく。
すべての手掛かりを明らかにして、100%フェアに読者に挑戦した作品。
西村作品のNo.1だと思います。


天河伝説殺人事件」 内田康夫 角川文庫

新宿の高層ビルの前で男が毒殺された。大阪へ出張に出掛けたはずのサラリーマンが何故東京で殺されたのか? さらに彼は吉野天河神社のご神体を模した五十鈴を持ってた。男と天河神社をつなぐものは何なのか?

一方、能の水上流宗家の後継者が舞台で謎の死を遂げる。それに続いて宗家が吉野の山の中に消えていった・・・
宗家を最後に見たのが浅見光彦だったことから、事件の謎に関わる事になった。

能の歴史と吉野の歴史、神気に満ちた山奥の神社。
宗家に隠された秘密、華やかな道具立てのミステリーです。


◆リストへ戻る