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お気に入りミステリー海外編

Yの悲劇」  エラリー・クイーン                  創元推理文庫

論理的推理の古典的名作です。内容はニューヨークの名家に起こった連続殺人。

一見、非常に綿密に計算された連続殺人事件に見えるのだが、そこには不可解謎が累積していた。その謎を1つ1つ解いていくと浮かんできたのはあまりにも意外な犯人と、想像もつかない犯罪の実行方法だった・・・。

推理と謎解きに圧倒されてしまう結末です。「本当にこの解決しかないのか?」と、ちょっと疑いたくなるほど見事に説明されてます(^^)
様々な作家さんがその論理性を突き崩そうと挑戦していますが、気持ちはわかる!



グリーン家殺人事件」   ヴァン・ダイン         創元推理文庫

ミステリーとして2番目に読んだ作品。(1番は「黄色い部屋の謎」。3番目が「りら荘事件」)

雪に閉ざされたニューヨークの旧家で起こる連続殺人。厳密には閉ざされた空間物ではないのですが、広大な屋敷の中で住人が次々に殺されていくので、被害者も容疑者も特定されるという意味では閉ざされた空間です。

暗い屋敷と謎めいた一族、夜中に徘徊する影・・・。古き良き探偵小説です。
トリックは今読めば見当のついてしまうものですが、まだ2作目だったので驚かされました。



九尾の猫」  エラリー・クイーン           ハヤカワミステリ文庫

文庫版の後書きによると日本では人気の無い作品らしい。でもミステリー作家として、素晴らしいテクニックを披露しています。

事件はマンハッタンで起こった連続絞殺事件。9人の被害者を出しながら、犯人像はもちろんのこと、被害者間のつながりすら見えてこない。

この様な展開でありながら登場人物が極端に少ない。にもかかわらず、最後まで事件の背景が想像もつかないところはさすがです。



僧正殺人事件」   ヴァン・ダイン             創元推理文庫

・・・コック・ロビンを殺したのはだあれ? 「わたし」って雀が言った。・・・

ミステリーファンにはおなじみの、このマザーグースの1節から始まる見立て殺人です。

数学者のディラード教授の屋敷、その中にある弓術練習場で、コクレーン・ロビン、つまり"クック・ロビン"という名を持つ弓術の選手が矢を胸に突き刺されて殺されていた。そして「僧正」を名乗る犯人から挑戦状が届く。さらにその後もマザーグースの童謡に見立てた殺人事件は続いていった。

小説の中では、ほとんどディラード教授の屋敷に出入りする人間しか出てこないので、限られた容疑者の中での連続殺人事件ということになります。事件が進んでいくうちに被害者が増えて容疑者が減っていくという、孤島ものと同じような設定になっています。

最初に読んだ時には、全く予想もつかない展開で、意外な犯人に驚いた記憶があるのですが、今回再読したら、思ったより推理しやすい展開になってると感じました。ただ数学者の屋敷で起る事件ということで、ややこしい数学論に惑わされるんですよね。でも他のヴァンダインの作品に比べると暗くはないです。

ネタばれ→【  アリバイを丹念にチェックしていくと、犯人に行き着くことが出来ますね。ラストは今の時代では認められないでしょう。その前にあれだけ自殺論を話しているので、てっきり覚悟の自殺かと思ってしまいました  】



時の娘」  ジョセフィン・テイ            ハヤカワミステリ文庫

論理的ミステリーのNo.1という説もある歴史ミステリー。入院中の警部が歴史資料だけを元に歴史の通説を覆すという作品です。

悪名高いリチャード三世。そのリチャード三世が実は良識ある君主であり、後世彼が行ったとされている悪行はすべて作られたものであると言う事を、同時代資料によってのみ論証しようとする内容。イギリス史の中でも特にややこしい薔薇戦争の時代の話なので、頭の中がごちゃごちゃになりますが、それでも読むだけの価値はあります。

「事件の前後、誰がどこで何をしていたか?」。人の動きを追いながら事件の真相を探るという方法は、日本史でも永井路子さんの実朝暗殺の真犯人を探る方法とも同じですね。もっと応用したら面白そうです。 「歴史は勝者が作る」という事が良く判ります。



そして誰もいなくなった」 アガサ・クリスティ ハヤカワミステリ文庫

孤島に招待された10人の男女が次々に殺されていき、最後には誰も残らなかった・・・という、孤島もののバイブル的作品。

10人しかいないのだから、殺人が続いていくうちに容疑者は減っていく。
当然最後には2人だけが残って、どちらかが犯人ということになるはず。
そのあたりをどう解決するか? 

最初に読んだ時は、実を言うとちょっと不満でした。あらすじだけを聞いていたので期待が大きかったんですよね。もっとすごいトリックを期待していました。でも再読して、結末がわかっていても面白く読めたので、あらためて見直しました。小説としてよく出来ています。

「どんどん橋、落ちた」のような本格定義からは外れるけど、見事な構成です。
さらに細かく読むと、解決に至るヒントが書かれているのも発見。

【 判事が射殺されてるシーンで銃声が聞こえなかったと言う発言。最後の章で、10人の遺体が発見された時、銃が判事の部屋にあったという記述。 

ちゃんと押さえるところは押さえてます。
現在はいろいろな小説に使われているトリックだから、最近読んだ方は驚かないと思いますが、最初に考えたのはやっぱり素晴らしいですよね。

 

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