円筒形コイル周辺の磁場の絵(その3) (球面形コイル周辺の磁場の絵)
5薄い球面コイル周辺の磁場、 6回転帯電球面周辺の磁場
5 薄い球面コイル周辺の磁場
円周方向の単位幅あたりid (A/m)の電流密度で電流が流れている薄い球面コイルにより作られる磁場について考えてみよう。(^^
絶縁体で地球儀のような球面体を作りその上に緯度線の方向に太さ一定の電線を巻き付けていくのであるが
赤道のあたりでは円筒コイルのようであるから巻きやすいが極に近くなるにつれて円板コイルのようになり
巻いても崩れるので接着剤で貼り付けながら巻いていくしかない。
そして円板コイルと同様に両極で物理的に破綻するが破綻している領域の体積が0であるから答えは出てくる。
球面の半径をaとする。
経度に相当する角度をここでは円柱座標も使うという事でθとしよう。
緯度に対応する角度を北極側から測ってχ(カイ)としよう。
r、zの位置に作られる磁場のベクトルポテンシャルA_のθ方向成分A_θはθ、χの位置にある
電流素片id a sinχdχa dθによって作られる微少なθ方向成分を加算したものであり
測定点と電流素片の間の距離lがl=√((z-a cosχ)^2+a^2 sin^2χ+r^2-2a r sinχcosθ) =√(a^2+z^2+r^2-2a (z cosχ+r sinχcosθ)であるから
A_θ=(μa^2 id /(2π))∫π_0 dχsinχ(∫π_0 dθcosθ/√(a^2+z^2+r^2-2a (z cosχ+r sinχcosθ)) (1)
=(μa^2 id /(2πW))∫π_0 dχsinχ (∫π_0 dθcosθ/√(1-(kz cosχ+kr sinχcosθ) (2)
(a^2+z^2+r^2=W^2; kz=2a z/W^2; kr=2a r/W^2と 略記)
5a級数展開による計算法
(2)の分母の根号の中の(kz cosχ+kr sinχcosθ)を展開公式により一気に分子に上げて級数展開を行う。
A_θ=(μa^2 id /(2πW))∫π_0 dθcosθ(∫π_0 sinχdχ(1+(1/2)(kz cosχ+kr sinχcosθ)+(1/2)(3/4) (kz cosχ+kr sinχcosθ)^2+…)
積分は全部0からπまでの定積分なのでその点は簡単である。
しかし球面の近くではkが1に近い第1種楕円積分の級数展開と同じ原理で収束の速度が極めて小さくなり誤差が集積して精度が悪くなるから
次の経度方向(θ方向)に積分し緯度方向(χ方向)に数値積分する方法の検算用にしかならない。
5b経度方向(θ方向)に積分し緯度方向(χ方向)に数値積分する方法
(1)式でθで積分する部分は
Iθ=∫π_0 dθcosθ/√((a^2+z^2+r^2-2a (z cosχ+r sinχcosθ)) =∫π_0 dθcosθ/√((a^2+z^2+r^2-2a (z cosχ+r sinχcosθ))
θ=π-2φと変数変換すると (dθ=-2 dφ; cosθ=2sin^2φ-1)
Iθ=2∫π/2_0 dφ(2sin^2φ-1)/√((a^2+z^2+r^2-2a z cosχ+2a r sinχ)-4a r sinχsin^2φ))
= 2/α∫π/2_0 dφ(2sin^2φ-1)/√(1-k^2 sin^2φ)
(√(a^2+r^2+z^2-2a z cosχ+2a r sinχ) =α; 4 a r sinχ/α^2 = k^2 と略記)
=2/α((2/k^2)(Z1(k)-Z2(k))-Z1(k))= (2/α)((2/k^2-1) Z1(k)-(2/k^2) Z2(k))
(Z1(k)は第1種完全楕円積分、Z2(k)は 第2種完全楕円積分です)
これから
A_θ=(μid /2π)∫π_0 dχsinχ(2/α)((2/k^2-1) Z1(k)-(2/k^2) Z2(k))
=(μid /2π) Iχ
χに関する積分部分Iχを実際に数値積分すると独立変数はχで下限でχ_0=0, 上限でχ_32=π であるから領域巾はπ、区間巾Δは Δ=π/32
被積分関数fの分割点での値は
f(χ)= sinχ(2/α)((2/k^2-1) Z1(k)-(2/k^2) Z2(k)))
にχ_0=0,χ_1=π/32,…,χ_32=πを代入した値を使用し
Iχ≒Δ((1/3)(f_0+f_32)+4(f_1+f_3+…+f_31)/3+2(f_2+ f_4+…+f_30)/3)
A_θ=(μid /(2π)) Iχ
円柱座標での流れ関数ψはrをかけて
ψ=(1/μ) r A_θ
となる。(^^
薄い球面コイル周辺の磁場の絵
電線の壁が極に近づくにつれて内側に曲がっているので球面の内部では磁力線も内側へ曲がっている(^^
6回転帯電球面周辺の磁場(半径に比例する電流密度の球面コイルによる磁場)
赤道付近では電線を目いっぱい密に巻き軸に近づくにつれて軸からの距離に比例する密度でまばらに巻いた球面コイルによって作られる磁場
について考えてみよう。(^^
これは周辺から絶縁した薄い金属球面に電荷を与えて帯電させ回転させた時出来る磁場と等価の磁場である。
球座標を使い測定点の座標を測定点から球面の中心までの距離をR,経度に相当する角度をθ,北極側から測った緯度に相当する角度をχとしよう。
球面の半径をaとする。赤道上での巾あたりの電流密度をidoとし角度χ0の場所での電流密度i d= ido sinχ0としょう
r、zの位置に作られる磁場のベクトルポテンシャルA_のθ方向成分A_θはθ、χ0の位置にある
電流素片ido sinχ0 a sinχ0 dχ0 a dθによって作られる微少なθ方向成分を加算したものであり
測定点と電流素片の間の距離lがl=√((z-a cosχ0)^2+a^2 sin^2χ0+r^2-2a r sinχ0 cosθ) =√(a^2+z^2+r^2-2a (z cosχ0+r sinχ0 cosθ)であるから
A_θ=( ido a^2 /(2π))∫π_0 dχ0 sin^2χ(∫π_0 dθcosθ/√(a^2+z^2+r^2-2a (z cosχ0+r sinχ0 cosθ))
実はこの積分を実行しなくても微分方程式的な考察から答えはわかってベクトルポテンシャルA_のθ方向成分A_θは球座標で表して
球面の内ではA_θ= μ ido R sin χ/3 (3)
球面の外ではA_θ= μ ido a^3 sinχ/(3R^2) (4)
となる。
なぜかと言うとH_=(1/μ) rot(A_)により磁場ベクトルH_を計算すると
H_R =(1/μ)rot(A_)_R=(1/μ)(∂A_θ/∂χ)/R +cotχA_θ/R; H_χ=(1/μ)rot(A_)_χ=(1/μ)(–∂A_θ/∂R–A_θ/R)
であるから
内では H_R = 2 ido cosχ/3; H_χ= –2 ido sinχ/3
外では H_R = 2 ido a^3 cosχ/(3R^3); H_χ= ido a^3 sinχ/(3R^3)
磁場にもう一回rotationをほどこし磁場の渦度を求めるとrot(H _)_θ=(∂H_χ/∂R)+ H_χ/R -(∂H_R/∂χ)/R であるから
内では rot(H_)_R= 0; rot(H_)_θ= –2 ido sinχ/3/R+2sinχ/3/R= 0; rot(H_)_χ=0
外では rot(H_)_R= 0; rot(H_)_θ= –2 ido sinχ/3/R+2sinχ/3/R= 0; rot(H_)_χ=0
となり電流が無いところでは磁場は渦なしであるという条件を満たしている。(∂D_/∂t=rot H_-i_で∂D_/∂t=0,i_=0)
次に境界条件を考えて見ると境界無限遠点で磁場が0であるという条件をもちろん満たしているし
内と外の境界であるコイルで作った球面の所R = aで考えて見ると
内では H_R = 2 ido cosχ/3; H_χ= –2 ido sinχ/3
外では H_R = 2 ido cosχ/3; H_χ= ido sinχ/3
となり磁場の球面に直交する成分H_Rが内と外で等しいという条件が満たされ
電流の存在する層の厚さ(≒電線の太さ)を凾ニすると磁場の球面に平行な成分H_χが
層の外でido sinχ/3、層の内で–2 ido sinχ/3であるから層内の磁場のθ方向の渦度は
rot(H_)_θ= ido(sinχ/3–(–2sinχ/3))/= ido sinχ/
θ方向の面積あたりの電流密度をi_θとすれば
i_θ=rot (H_)_θから
i_θ=ido sinχ/
となるから電流の存在する層の厚さ凾ノかかわらず
id= i_θ=ido sinχ
となって題意の巾あたりの電流密度と等しく(3),(4)が解である事がわかる。
従って円柱座標での流れ関数ψは(3),(4)にr= R sin χをかけて
ψ=(1/μ)R sin χ A_θ
内ではψ= ido R^2 sin^2 χ/3
外ではψ= ido a^3 sin^2 χ/(3R)
となる。(^^
例題で1A/mの電流密度を実現するためにはどの程度金属球面を帯電させる必要があるか考えて見よう。
アルミ合金等の金属板で半径1mの球面を作り球面の赤道での周速を憶えやすいように0℃での音速330 (m/s)で回転させるとする。
球面の赤道付近では1秒間に長さ330 m の金属板が通過するが巾1mで考えると面積は330 m^2となる。1Aは1(クーロン/s)であるから
この金属板の中に存在すべき電荷は1クーロン、したがって赤道付近では1/330 (クーロン/m^2)の電荷密度である必要がある。
球面では電荷は反発しあって球面上に一様に分布するという性質と半径1mの球面の面積は4π(m^2)である事から全体の電荷量Qは
Q=4π/330=0.038 (クーロン)
電荷Qを半径a(m)の球面に与えるとき電位φは真空の誘電率をε0として
φ=Q /(4πε0 a)で与えられるから
φ= (4π/330)/(4πε0 a)= 1/(8.854×10^-12×330×1)= 3.422×10^8 (V)
3億.4千万ボルトになり実現はむつかしい事がわかる。
それに対して直径1oの電線に1Aの電流を流す事は容易であるから球面に電線を巻いて電流を流す方法では1000 A/mの電流密度も
容易である。
回転帯電球面周辺の磁場の絵
きわめて簡単な関数で表わされる。(^^
円筒形コイル周辺の磁場の絵(その2) 3 薄い円板コイル、4厚みのある円筒コイルへ