除草剤の毒性、環境への影響等に関する文献調査報告書


除草剤の環境問題
 除草剤はなんらかのメカニズムによって植物を枯死させるものであり、河川や湖沼水中の藻類に大きな影響を持つことは容易に想像できるが、最近これが事実であることが示された。小貝川で5月の初旬頃からある種の緑藻の増殖が甚だしく阻害されその状態が5月中続き、6月の初旬から回復し出したが完全に回復するには6月の中旬まで要したというのである。その原因は河川水中で除草剤のシメトリン、ブタクロール、プレチラクロールの濃度が上昇したためとされている。水田由来の除草剤汚染は春〜初夏の一過性のものであるが、この期間は動物プランクトンから魚類まで多様多種な水生生物の新世代が発生する重要な時期であり、これら生物の餌となる藻類の増殖が阻害されるのは無視できない事である。

ザーク粒剤の安全性の調査(抜粋)

 花塚農場で田植え後、減農薬栽培で一回のみ使用した除草剤はザーク(1997〜2000年実績)

ザーク粒17 メフェナセット 3.5%、ベンスルフロンメチル 0.17%

ザーク粒25 メフェナセット 4.0%、ベンスルフロンメチル 0.25%

  メフェナセット ベンスルフロンメチル
急性毒性 魚毒性 B
特殊試験 メトヘモグロビン、スルフヘモグロビン形成作用あり  
一次刺激性 眼(−)?、皮膚(−) 眼(−)、皮膚(−)
皮膚感作性 (−) (−)
亜急性毒性 試験 Fischer系ラットに3ヶ月間飼料(0,50,200,800,3200ppm)

血液学的検査                       200ppm以上で用量相関的異常 貧血誘発

脾剖検                               200ppm以上で暗赤色化

800ppm以上で重量増加

最大無作用量 50ppm

陸上動物

鳥に対する急性、亜急性毒性 きわめて弱い

水棲生物

急性の危険は考えられない 

慢性毒性 試験 Fischer系ラットに24ヶ月間飼料(0,10,100,1000ppm)

血液学的検査、脾剖検           1000ppm以上で同上

催腫瘍性(−)

最大無作用量 100ppm

試験 ICR系ラットに24ヶ月間飼料(0,30,300,3000ppm)

血液学的検査、脾剖検            異常なし

催腫瘍性(−)

最大無作用量 300ppm

試験 ラット、マウス、イヌ(1年)主標的器官は肝 重量、対体重比増

催腫瘍性(−)

最大無作用量 ラット 750ppm、マウス 2500ppm、イヌ 750ppm(♂21.4mg/kg/日)

イヌのデータから安全係数1/100

一日摂取許容量 0.2mg/kg/日

2世代繁殖試験 試験 ウィスター系ラットに飼料(0,10,100,1000ppm)

F0〜F2 離乳後13週まで

F0、F1 2回交配、第2産仔で継代

F1 1000ppm以上で脾の褐色色素沈着

交尾率、妊娠率、妊娠期間1000ppm以上でも異常なし

一般毒性の無影響量 10ppm

最大無作用量 7500ppm
催奇形性試験 試験 ラット 妊娠6〜15日に(0,40,200,1000mg/kg)強制経口投与

妊娠21日目に剖検

母動物 1000mg/kgで脾の重量増、暗赤色化

200mg/kgで脾の重量増

胎仔 1000mg/kgで死亡率増、体重減、仙尾堆の化骨遅延、骨格内臓の奇形(−)

ウサギ 妊娠6〜18日に(0,50,200,800mg/kg)強制経口投与

妊娠28日目に剖検

母動物 一般症状(−)

胎仔 死亡数、生存数、性比、体重、胎盤重量、外表、骨格、内臓異常なし

ウサギ 

高投与群で呼吸、流産、母動物の死増

胎仔の最大無作用量300mg/kg/日

奇形 1500mg/kg/日で認められず

ラット 

胎仔の最大無作用量500mg/kg/日

奇形 2000mg/kg/日で認められず

変異原性試験 DNA損傷性(−)

変異原性(−)

枯草菌

DNA損傷(−)、変異誘発(−)

染色体異常誘発 チャイニーズハムスター肺由来細胞(−)

薬理試験 外徴、行動パターン、反応性、反射性、中枢神経系、直腸温、自発運動量、自律神経系、瞳孔、腸管輸送能、肝、腎機能、血液凝固系、呼吸、循環系異常なし

ラット 5000mg/kg投与後酸素運搬能低下

呼吸数、心拍数に影響なし

中枢神経系 鎮静作用あり

呼吸、循環器系 呼吸、血圧、心電図、影響なし

自律神経系、血液 血液凝固能、溶血作用 変化なし

メフェナセットの消長

ヘドロ状土壌水田にて

  散布量の11%が田面水に(散布当日)

  散布当日の土壌中濃度計算値

    1.07ppm(前年の残留0として)

    1.25ppm(前年冬の残留がそのままとして)

  半減期

    田面水中 4〜5日

    土壌 約2週間

ベンスルフロンメチルの消長

半減期

  1〜4日(全体で2日) ただし土壌への吸着で田面水から消失

米への残留

  ベンスルフロンメチルを最大 400g/haで散布、95日に収穫。
  玄米中ベンスルフロンメチルの含量を測定。不検出(0.02ppm以下)

結論

 メフェナセットは比較的安全

 ベンスルフロンメチルは比較的安全、魚の高度汚染の可能性少ない

BACK 花塚農場の栽培(減農薬栽培の除草剤散布)

 

*****  参考資料   *****


 1996年に花塚農場で田植え後、減農薬米で一回のみ使用した除草剤はカルショット。成分はピリプチカルブ、ベンスルフロンメチルであり、それらについて掲載します。

フロアブルタイプ除草剤の成分

  成分  市販製剤名-> アワード カルショト クサメッツ シーゼット ユニハーブ レトリー
イマゾスルフロン          
ダイムロン          
テニルクロウ          
ビフェノックス          
ピリプチカルブ    
プレチラクロール          
ブロモブチド        
ベンスルフロンメチル        
ベンゾフェナップ        



ピリプチカルブ
 1.毒性
  1.一次刺激性 眼:(−)
         皮膚:ほとんど(−)
  2.皮膚感作性 (−)
  3.慢性毒性、発癌性
    マウスにピリプチカルブを50、500,5000ppm含む飼料を18ヶ月投与
    5000ppm群 体重増加抑制、肝の絶対量と相対量が増加、肝の病変の発生頻度増加
    500ppm群 肝の病変の発生頻度増加
    最大無作用量 50ppm
  4.繁殖試験 
    ラットに対し3世代にわたりピリプチカルブを50、500,5000ppm含む飼料を投与
    5000ppm群pとF1:体重増加抑制
            p:摂餌量の減少
            F1:平均出生仔数の減少
            F2:体重増加抑制
            F1,F2:ほ乳仔の4日齢の生存率と21日齢のほ乳率には影響なし。
    ラットの繁殖及び後世代に対する最大無作用量は500ppm
  5.催奇形性試験 親動物:飼料摂取量と飲水量の減少、体重増加の軽度抑制傾向
            胎児:奇形及び異常なし
           催奇形なし。

    ラットにピリプチカルブを10,300,1000mg/kg体重/日を妊娠6〜15日の10日間毎日1回、強制経口投与、
    1000mg/kg体重/日投与群:親、摂餌量と飲水量の減少、体重増加の軽度抑制傾向
    10,300mg/kg体重/日投与群:親と胎仔に影響なし
    最大無作用量 300mg/kg体重/日、1000mg/kg体重/日でも催奇形性なし。
  6.変異原性試験
    a)復帰変異試験 復帰変異コロニー数の増加なし。突然異変誘起性認められず。
    b)染色体異常誘発試験 染色体異常を有する細胞の出現頻度は5%未満。成育阻止は認められず、染色体異常誘発性は陰性。
    c)DNA修復試験 成長阻止帯の誘起なし、DNA損傷の誘発性なし。


 2.環境への影響
  1.野生動物への影響 魚毒性:B類(魚毒性はA類が最も小さくB、C類となるにしたがい大きくなる)
  2.水中での挙動、物理的性質 比較的水に溶けにくい
  3.土壌半減期:13〜18日

 3.コメなどへの残留
  1.コメ オリザガートー粒剤(PBC 3.3%、ブロモブチド5%)40kg/haで散布、113日と119日に収穫。
    玄米中のPBC:不検出(0.005ppm以下)
  2.魚介類等 魚介類の汚染の実測値はないが、水の汚染が魚介類の汚染につながる可能性は大きい。

ベンスルフロンメチル
 1.毒性
  1.急性毒性 きわめて弱い
  2.一次刺激性 眼:(−)
         皮膚:(−)
  3.皮膚感作性 (−)
  4.慢性毒性、発癌性 
    ラットにベンスルフロンメチルを50,750,7500ppm含む飼料を24ヶ月投与。
    7500ppm投与群:投与後期に体重減少、飼料摂取量減少、軽度の貧血、小葉中心性細胞腫大。
    食餌効率、血液生化学的検査、尿検査、臓器重量、肉眼的病理検査において変化なし。
    最大無作用量750ppm
    腫瘍性病変の増加認められず
  5.繁殖試験
    ラットにベンスルフロンメチル50,750,7500ppmを含む飼料を2世代にわたって投与。
    母動物の交配能力及び繁殖能力は各世代全群とも変化なし。
    F2b世代の離乳で肉眼的病変、組織学的変化、臓器重量の差なし。
    最大無作用量は7500ppm
  6.催奇形性試験
    ラットにベンスルフロンメチル50,500,2000mg/kg体重を妊娠7〜16日の間妊娠ラットに毎日1回強制投与。
    妊娠21日に検査。
    母動物:いずれの群でも影響なし
    胎仔:2000mg/kg群で第一腰椎と胸骨文節において骨格変異の発生度上昇
    最大無作用量は500mg/kg体重/日
  7.変異原性試験 
    a)枯草菌 DNA損傷性(−)
    b)サルモネラ菌 変異誘発性(−)
    c)チャイニーズハムスター肺由来細胞 染色体異常誘発性(−)
  8.一日摂取許容量等
    ADI:0.2mg/kg体重/日
    登録保留基準:0.1ppm(コメ)

 2.環境への影響
  1.野生動物に対する毒性 鳥類に対する亜急性毒性もきわめて弱い。。水棲動物に対する急性の危険は考えがたい。魚毒性:A類
  2.水中での挙動、物理的性質 水によく溶ける。
  3.コメなどへの残留
   ベンスルフロンメチルを最大 400g/haで散布、95日に収穫。
   玄米中ベンスルフロンメチルの含量を測定。不検出(0.02ppm以下)

 

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