その2=「メモ情報」と「デジタル情報」の接点

 


僕の場合、情報管理の部屋その1で述べた、「源始メモ」と名づけている「メモ情報」を重視している。この「メモ情報」には、「五感が含まれている」。メモを書いた時の自分の精神状態、文字の乱れ、メモ用紙の素材や汚れ。それだけではない。他の人の筆跡など、様々なデータが含まれている。また、書かれた紙にも情報が含まれている。これらは、いわばアナログなデータといえると思う。僕は、このアナログなデータをパソコンを活用してデジタルに変換して管理してる。といっても、アナログなデータをすべてデジタル化できない。そこで僕なりの工夫をしている。この方法を、ここでご紹介しようと思う。


 

1、「業務日誌のデジタル化」            
                   
  ■「業務日誌」の5つの効果              
                         
  書籍のコーナーでご紹介した「はじめてのパソコン書斎整理術」のソフト(Wakfind3)を使って、僕は、大まかな「業務日誌(日記)」をつけている。僕の「業務日誌」(私生活や発想等も当然、記録している)は、1年間でおよそ2000行のデータとなっている。このソフトは検索ソフトであり、極めて自由度の高いソフト(特に「○○しなけれがならないという規則」はなく、例え「いいかげん」でも、「あいまい」でも、「なんとかなる」というイメージ)である。しかも、データの基本は「テキスト・ファイル」である。一見、エクセルに似ているが、エクセルではない。
                   
  「業務日誌」をつけるには、このソフトの検索能力を生かすこと(逆にいえば、「ソフトの限界」)を念頭にいれて、データを整理することが肝心だと思う。僕の方法は、合理的かどうか知らないが、現在のところ、際立った不都合はなく、効果てきめんである。この方法は、実は、日本語ワープロ専用機のMS・DOS領域でも行っていた。
                   
      ★「ソフトの限界」
どんなソフトであろうとも「限界」があると僕は思う。「限界がない」ということは「なんでもできる」ことになる理屈だが、こんなソフトは、結局は「なんにもできない(使いこなせない)」のだと思う。だって、人間もそうだろう。「何でもできる」ように思っている人間に限って「何にもできない」ことが多い。どんな分野でもいいから、「ここだけは誰にも負けないぞ」という部分を持っている人物は、結局、おのれの「限界」を知っているのであり、これほど強いことはない。おのれの限界に来たとき、本当に謙虚になるからだ。ソフトも同じだ。
                         
  ★その効果は、第1に、人物のデータ・ベースとして活用できる。
       第2に、特定のイベント(仕事)の流れを把握できる。
       第3に、自分の行動を確認できる。
       第4に、様々な切り口で情報を切り込み、自己判断の参考にすることができる。
       第5に、未来情報の管理(予定表)ができる。などなど。
                   
  ■「日時」管理=10桁数字、最初の行の下4桁「0000」              
                         
  僕の場合、各セルの項目には、日時・項目・人物・内容・備考の欄をつくる。重要なのは「日時」である。
                   
  まず、「日時」のデータの最初の行には、「2001年2月5日」の場合は、「0102050000とする。「項目」欄には「曜日」を書く。「人物」欄は、そのデータの人物名を書く(注意:フルネームが良い)。そして、最初の行の「内容」欄には、一日の主な行事や出来事を簡潔に記入する(要するにその日の「見出し」となる)。ここでのポイントは、下4桁「0000」とすることである。こうすれば、「0000」を検索すれば、毎日の大まかな日記帳が瞬時に現れる。このデータ行の内容は、一日が終わってから再度記入しなおすことになる。
                   
  ■「日時管理」=「上6桁は日、下4桁は大雑把な時間」              
                         
  それ以後は、たとえば、「20001年2月5日午前7時起床」ならば、「日時欄」は「0102050700」と入力し、「項目欄」には「起床」となる。ここでのポイントは、上6桁を面倒がらずに打ち込むことであり、時間は大雑把でも下4桁に記録する。こうすれば、あるキーワードで検索した場合、そのキーワードを含む行が、ずらずら出てくるが、そのデータには日時が含まれることになり、特定しやすい(この意義は「メモ」に戻れることにある)時間情報は、一行の先頭に常に存在するからである。今度は上6桁で検索すれば、「その日」の日記が出てくることになる。
                   
  この「日時」データは、簡単にソート(並び替え)できる。古い日時順にも、新しい順にも自由自在。僕は、新しい順(降順)に管理している。ソフトを起動し、ファイルを開いたら、すぐに、データを打ち込めるからだ。また、基本的に、バッティング(ダブルこと)はしない。「2001年2月8日13時30分」(0102081330)は、この一つしかない。ということは、検索で、「ある日時のデータ」を特定できることを意味している。
                   
  ■「日時」管理は=予定管理にも応用が可能              
                         
  この「日時」管理は、近い未来(予定)にも応用が利く。未来時間が特定されている場合は、下4桁に時間を記入、項目欄には「予定」、人物欄には、その予定に関連ある人物名、内容欄には、待ち合わせ場所、用件など具体的に記入する。また、未来時間が「日」しか決まっていない場合は、当然、下4桁が「0000」になり、以下は同じ。日時データは新しい順にソートされているのだから、今現在の日時以後のデータは予定になる理屈だ。
                   
  ■「項目」欄は=「内容」欄を補完するキーワード              
                         
  次に、「項目」には、「会議」「来客」「受信」「送信」など、いろんな文字が入るが、適当に思ったとおりに記入することがポイント。「項目」は「分類」ではないことに注意。分類できない場合があるから、あくまでも、次の「内容」欄を補完するキーワードだと思えばいい。「このようにしなければならないという規則」は、なるべく作らないほうが良いと思う。
                   
  ■「人物」欄は=フルネームが原則              
                         
  さらに「人物」の項目には、主な人物名を記録するのであるが、できるだけ「フルネーム」にするか、「○○の佐藤さん」という具合に、「佐藤さん」であっても、ある程度絞り込むことができるような工夫をしておくことがポイントである。人物データの重要性はいうまでもないことだ。
                   
  ■「内容」欄=「メモ情報の箇条書き」              
                         
  4つ目の「内容」は、「メモ情報」の箇条書きである。本当は、1つの独立した情報(一つの文に一つのテーマ)を別々に管理するのが理想であるが、ポイントの羅列だけで充分だと思う。詳細な情報は、「メモ情報」を見れば(戻ればよい)わけで、「デジタル化された情報」は、その「メモ情報の存在」を特定できれば良い
                   
      ★【最近の反省】「Wakfind3」の検索結果は、
「行単位でズラズラでる」が、その結果をファイル名をつけて保存しなければ、行単位のデータを全部みることができない。つまり、検索結果、は「仮の姿」なのであり、それを「○○ファイル」という名で「固定化」が必要なのだ。これは、最近、僕にとってストレスとなっている。なぜならば、「ある切り口(幾つかのキーワード)で検索した場合、それが「固定化する必要があるかどうか」を即座に判断できないからである。この問題は、パソコンの画面の問題であり、僕の場合「内容」の欄の文字数は「55」字前後となる。従って、「メモ情報」の内容を箇条書きする場合、画面の制約から「50文字」にする必要性があると考えている。「50文字」とは、「短歌(31)+俳句(17)=48」の文字数である。一般的だが「葉書の手書き文字数は200字前後、その4分の1である。そこで「工夫」を思いついた。まずは、箇条書きを、とにかく「打ち込む(デジタル化)」するのはいままでと同じだが、その後、「内容欄の行頭」に、「全体の内容」の「見出しを行頭に追加」するのである。朝日新聞の見出しは9文字である。人間が、文字列を「パッとみて、理解(暗記)できる文字数」は「7±2ルール」と言われている。この法則は、電話番号や商品名にまであてはまる法則だといわれている(認知心理学)。多くても「11文字」(携帯の電話番号)は、限界なのだ。すると「50文字」に「見出しが5本前後」は立てることができることになる。僕はいいことを思いついた。
                   
2、「メモ」の「デジタル情報化」は何を意味するのか?            
                   
  ■「デジタル業務日誌」=「日時」情報=「メモ情報の存在場所」              
                         
  電話を受けるとき、来客があるとき、ふと何かが浮かんだとき、常にメモをする。この場合、僕は最低でも日付は必ず記入し、できれば時間をメモる。「デジタル化」するには、リアルタイム(直ちに)に、パソコンにメモることが理想だが、いちいちパソコンを起動するのも馬鹿げたことだ。だから、僕は、通常は、紙ベースのメモを重視する。また、ある時間が経過して初めて「デジタル化」する必要を感じることもあるだろう。この「日付を記したメモ情報」が、その後、「業務日誌へとデジタル化」される。逆にいえば、僕の場合、「デジタル化された業務日誌」こそが、「メモ情報」の存在を特定する「メモ情報とデジタル情報の接点」となる。
                   
  たとえば、「メモ情報」には、相手の電話番号等連絡先情報、相談内容をはじめ、いろんな情報が含まれており、その段階では、そのうちのどの部分が重要な情報か、判断つかないことが多い。こんな場合、とにかく5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・どのように、どうした)を基本にデジタル化しておけば間違いがない。とくに重要なポイントは、僕の場合、デジタル化する基本は、「メモ情報の存在場所を示す」ことにあるので、「日時」情報が重要になるである。デジタル化は、即刻行う場合もあるが、じっくり時間をかけて行うこともできる。
                   
3、「デジタル化の必要性」とは?            
                   
  ■パソコンが得意なこと、人間が得意なことは、何か?              
                         
  今、僕は、紙ベースのメモ情報のうち、どれをデジタル化する必要性があるのか、判断がつかないことが多いといった。この「必要性」の問題こそ、パソコン活用の意味だと思う。この問に解答を出すには、「パソコンが得意とすることは何か?」「パソコンが苦手なことは何か?」を考えてみることだ。逆にいえば「人間が得意とするものは何か?」「人間が苦手なことはなにか?」を考えて見ることだと思う。
                   
  ■「人間」=「単純な作業の繰り返し」は不得手?              
                         
  「人間」は、いろんな情報を「統合」して、とんでもないことを思いつく(創造したり、判断する)。しかし、「単純な作業の繰り返し」は、とても苦手(根気さえあればできる。この類まれなる単純作業ができる人物こそ、非凡な人物?)である。たとえば、「繰り返すこと」「ある文字を探しだすこと」「計算すること」など、人間は、鉛筆をなめなめ根気よくやればできるが、何故か苦手である。その点、パソコンは、忠実に、しかも、根気よく、瞬時に、こなしてくれる。パソコンは、数字に強く、検索が得意なのである。従って、メモ情報の何をデジタル化するかは、ここに着眼すればいいのである。すなわち、日時情報と人物データが重要になる。
                   
  ■「デジタル化の必要性」=「5感を含むメモ情報への到達」              
                         
  自分の「メモ情報」には、デジタル化されていない、様々な「感情」(五感)が含まれている。「メモ情報」には、自分の筆跡の乱れや筆圧、様々な人の筆跡、メモされた用紙の素材や汚れ、使用された筆記用具の痕跡などがある。これらすべてをデジタル化できないだろう。だから、僕が、「メモ情報」を「デジタル化する必要性」は、「感情(五感)を含むメモ情報への到着」のためである。「メモ情報」を見ると、その「メモ」が生れた時間・空間に接近できるのである。この「接近時間」こそがポイントである。
                   
4、「情報への接近時間」とは?            
                   
  「情報への接近時間」は、一般的には、「短ければ短いほど良い」のは、誰も異存はないだろう。しかし、僕は、情報にもいろいろあり、その「接近時間」の価値を判断するには、「時間の長短」だけでは、判断できないのではないかと思っている。
                   
  「めったに必要でない情報」があるとする。ところが、それが、「是非とも必要」になることがある。この場合、時間をかけてでも探しださねばならない。探すだけの価値があるのである。一方、「今の今、必要な情報」もある。たとえば、電話番号が典型だろう。この場合、パソコンを起動して探し出す時間さえも、ない。ましてや、パソコンが、側にない場合は、なおさらのことである。探している間に「必要性」がなくなってしまう。この場合「瞬時」に必要になる。どうも「情報」には「質」がありそうである。つまり「質」に応じた「接近時間」があると思う
                   
      ★「情報への接近時間」
情報への接近時間の長短も重要な要素であるが、求める「情報の質」により、接近時間は異なると思う。問題は「質」の判断だ。結局は、その情報を求める人間(自分)にあるのではないか。そうなると、情報は、極めて「主観的なもの」なのかもしれない。マルチメディア時代、インターネット全盛期の今、情報は氾濫している。「情報化社会」というキーワードが、ちらほらマスコミに登場しはじめた1970年代初め頃は「誰も知らない情報を、誰よりも早く知りうること」が重視されていたと思う。しかし、今は「氾濫する情報の中から、いかにして『必要な情報』を見つけられるのか」に重点が移ったといえると思う。「肝心かなめの情報」が隠される危険もある時代ではないか。僕のパソコンには毎日毎日多くの情報が流れ込んでくるが、最近はとてもわずらわしくなってしまった。
                         
5、「デジタル情報」は成長する            
                   
  さて、次に、「メモ情報」に基づく「デジタル情報化」されたデータを、様々に活用すればするほど、僕の「デジタル・データ・ベース」は、次第に成長していく点についても述べたい。
                   
  僕の「デジタル業務日誌」を、様々な角度から検索をすると、その「日時情報」を頼りに、「メモ情報」に立ち戻ることも、しばしばでてくる。だから、僕は、「メモ情報」ファイルは、基本的には、捨てないのである。先ほど「メモ情報」には、デジタル化されていない情報が含まれていると述べたが、新たな視点からその「メモ」を眺めると、そのメモに、デジタル化しなければならないような、新たなデータの発見がある。これを追加するのである。僕の「デジタル業務日誌」は、使えば使うほど、成長するのである。何度も強調していることだが、アナログな「メモ情報」には、デジタル化できない豊富な情報が含まれているのである。
                   
      ★「新たなデータの発見」とは、具体的にどんなことかについて、質問があった。
まず、「新たな発見」の時期は、様々な角度から検索している「今」であり、そこには「ある問題意識や目的」があるはずだ。その目的に従って、出来事や名前、あるいは、仕事の中身をキーワードに検索するわけである。たとえば、「Aさんからの仕事のトラブル」の相談があったとしよう。その後、Aさんとのやり取りがデータ化されていたとする。ある程度たつと、データは蓄積されていく。そこで、Aさんの名前で検索してみると、「トラブル関連データ」ばかりではなく、今度は、「トラブル」以前のAさんのデータが、この「トラブル」と関連性があることを発見する場合がある。たとえば「トラブルの背景」が新たに発見できたり、またその中に「新たな人物」が登場していることを発見し、「トラブル」の直接の当事者以外の関連人物の発見につながるのである。僕の場合、この作業のなかから、「キーとなる源始メモ」を見つけ、ファイルから探し出し、当時のメモを再度読む。この時点では、あらたな発見のイメージでメモを読むわけだから、何気なく書いていた(当時はそれほど重要視していなかった)情報に目が留まるのである。新たな発見のイメージは、伝わったであろうか?ところで、新たな発見は、デジタル化されるのは当然だが、僕は、「今」の時点で記録する。【追記:2001・3・29】
                   
                   
                   
                   

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