SBRレース最終ゴール地点『トリニティ教会』地下に設造されたシェルターに『遺体』が、トップでゴールしたDioにより置かれた。
『鍵(ロック)』をするだけでよい
『シェルター』は一度だけ降下して行くエレベーターとなっており…
『施錠(ロック)』すると二度と『開錠(ロック・アウト)』はできない |
『遺体』は地下深く納骨されることになる
破壊する意志を持つ者が現れたとしても…70年はかかるだろう
この世の全ての幸福はおまえから始まる事になる |
大統領の遺言により今まさに『遺体』を納骨しようとするDio。
ブルックリン橋でDioに敗れしゃがみこんでいるジョニィ。
『だめだ…自分の『無限の回転』…もうどうする事も出来ない…』
『この橋の上で…この場所で…終る…』
『僕は『粉々の塵』となってどこかへ消える…』
『…きっと魂さえも残らないのだろう』
この『遺体』のあるニューヨーク・シティと…Dio…
おまえがこの地球の中心となるのだ…
指でダイヤルを回すだけで『施錠(ロック)』される |
「いいだろう…大統領」「あんたを信じるよ」
ダイヤルに指を伸ばすDio。その時!
背後の階段に人の気配を察するDio。
ルーシーである。ルーシーがこの教会地下に現れた。
ガシィッ
ザ・ワールドが左手でルーシーの喉を掴み壁に押さえつける。
そして辺りを伺うDio。
「『ルーシー・スティール』……」
「何だ…おまえは…?どういう事だ?ここへひとりで来たのか?」
「外に『スティール』のやつもいないようだが?」
「何しに来た?」
訊ねるDio。
「し…幸せになるために…」
「あたしは『幸せ』になるために大陸を渡り…ここへ来た」
答えるルーシー。
「フン!なるほど…」
「スティーブン・スティールはこの『シェルターの建設』と『遺体の存在』をすでに知っている。知りすぎている」
「生かしてはおけないのは確かだ。全てが終わったら…スティールの口は封じておかなくてはならない」
「だがルーシー…こんなに若くて可愛過ぎるルーシー」
「君をどうするかな?」
「君は幸せにはまずなれないと思うが…」
全てを知るのは頂点だけでいい、知りすぎた者は抹殺される。
「あたしは『ジョニィ』が…『遺体』を取り戻せなかった時のためにここへ来た…」
「このゴール地点の教会であなたが来るのを早朝から待っていた」
「『遺体』はあなたのものではないわ」
ジョニィが敗れた時のために待っていたというルーシー…何のために。
しかし合点がいったという顔をするDio。
「そういう事か」
「可愛い声で言っても無駄だな…ルーシー」
「今、事情があって片脚を怪我してしまった。とても痛むんだ」
「この色仕掛けを使ってオレの同情をひこうって気なら脚の治療が済んでから思いっきり遊んでやるぜ」
「女として落ちる所まで落としてやりながら殺してやる」
ドサァッ!!
Dioの手にルーシーが持っていた包みが渡される。
「…………」
気のせいか…血で濡れていないか?
「何だ?この『包み』は…?」
「『プレゼント』というよりは…『落し物』…」
舞台は前日、大統領との決着後にDioを追いかけジョニィが去った後である。
「待て!…ルーシー」「待つんだ…やめなさい…何をする気だ……?ルーシー」
ルーシーに問いかけているのはスティール氏。
「確かこの辺りのはずそんなに遠くない…」
「このままジョニィとDioがマンハッタンに到着してゴールするのは明日の朝」
「今から列車で向かえばレースを追い越せて先に到着できるわ」
「その前に『あれ』を探すの。『あれ』を『探して』先に向かえば…」
手にぶっそうな物を持っているルーシー。(左手に持ってる…左利きか?)
「やめるんだルーシー…その刃物を捨てなさい。なぜそんなおぞましい事をおまえがする必要があるのだ?」
スティールの質問に小考するルーシー。
「……」
「『幸せ』になるためよ。もしジョニィが敗北して失敗したなら…わたしたちも必ず殺されるわ」
「同じ『2つ』のものが出会えば『消滅する』とヴァレンタイン大統領が言っていたのをあたしは列車で聞いたわ」
「『違う世界から来たもの』と『この世界のもの』。同じもの『2つ』が出会えば…」
ルーシーの手で輝きを放っているのは鉈である。
舞台は戻り…Dioが今まさに包みを開ける。
中身を認識したDioの顔面が蒼白と化し、脂汗が流れだす。
「『THE WORLD』離れろッ!時を止めるんだあぁぁぁぁああー――ッ!!!」
時間を止め、包みから離れようとするDio。そう…包みの中は『この世界のDioの首』であった。
「は…離れろ!『THE WORLD』…遠くへ…」
離れようとするがタスクAct.4との闘いでの脚の負傷が邪魔をする。
「遠くへ離れなければッ!!遠くへッ!」
必死に這うがやはり身体が動かない。
「あああっああっ…脚が…」
「よくもッ!…よくも…おまえごときが…ルーシー・スティール」
「オレを誰だと思っているのだ」
「このオレに向かってこんな事を…勝利者はこのDioだ!!オレが世界の頂点なんだ…」
「薄っぺらなたかがカスの小娘のくせに!!」
「よくもこんな事をしてくれたなッ!生かしておかないッ!」
もはや逃れることができないと悟ったDioはルーシーを殺害すべくザ・ワールドの右拳を放つが…それさえも遅かったのである。
スパァァァアン
「WRYYYYYYYYYYYYYYY」
Dioの頭部は砕ける…そして消滅する。
「わたしだジョニィッ!掴まれッ!」
「SBRレースにおいては失格となるが一瞬でもこの走る馬にのれば君にはチャンスがあるのではないかね?」
ブルックリン橋の上においてしゃがみ込むジョニィの元へ馬を駆けて腕を掴むスティール氏!
『回転には『逆の回転』!!馬の力を利用する…『無限の逆回転』を…『自ら』へ…』
自分にタスクを撃つジョニィ!果たして『無限の回転』の呪縛は解除されたのであろうか…?
――これは『再生の物語』――
文字通り僕が再び歩き始める事になったいきさつ…… |
そして思い返せば旅の間はずっと『祈り』続け……
この馬による大陸横断レースは『祈り』の旅でもあったのだ |
明日の天気を『祈り』
朝 起きたら目の前の大地に道がある事を『祈る』
眠る場所とと食料がある事を『祈り』
たき火に火がつく事を『祈る』
このあたりまえのことをくり返しながら
――友と馬の無事を『祈る』
そして ひとつひとつの河を渡る |
SBR大陸横断レースは結局のところ完走者39名
ポコロコ騎手が総合優勝を果たし60億円を手にした
最終ステージ特別賞はスループ・ジョン・B騎手 賞金10億円 |
ディエゴ・ブランドーの『鼻紋』一致の馬シルバー・バレットがニュージャージの線路そばで発見されたからだ
しかも本人行方不明のため弁明なしのディエゴ・ブランドー『失格』…… |
全世界のSBRファンたちはヴァレンタイン合衆国大統領の到着と閉幕式スピーチを大期待で待ったが
警備上の都合という事で代わりにNY市長がスピーチした(大統領は現れなかった) |
しかしながらヴァレンタイン大統領に国民の賛辞の声はいつまでも止まず
新聞調査による大統領への支持率は91%に上った
各国首脳がヴァレンタイン大統領に勲章を贈ると発表した |
多数の死亡者が出て非人道的レースとの批判が各方面から上がりはしたが
レースによる経済効果が7兆円と発表され
またプロモーターのS・スティール氏が
個人的利益全額を各方面に寄付すると発表すると
批判はピタリと止んだ |
こうして4か月に渡って行われた『スティール・ボール・ラン・レース』は閉幕した |
再び舞台はトリニティ教会の地下に戻る。スティール氏が滔々(とうとう)と語り出す。
「大統領の欲しがった……『幸福の権利』――『ナプキン』の法則が『遺体』の中にあるとしても」
「これで良かったのだな…『遺体』はどこかへは保管しなくてはならないのだが、これで誰のものでもなくなった…」
「Dioによってこのシェルターは施錠されてしまったが…」
「施錠した『Dio』は消滅した」「これでいい」
「それを決めるのはやはり神の御意志だけなのだろう」
「結局のところ…『遺体』は誰のものでもあってはならない…ひとつの国家だとか…個人が所有してはならないものだ」
「誰のものでもなくなった…施錠して所有したものに『ナプキン』が与えられると恐れていたが…」
「Dioは所有者の『資格』がなかった…という事なのだろう」
ん…?施錠(ロック)されている…?
そしてルーシーが自分の手を見つめている。
「……」
「ええ…施錠されたわ…。『遺体』は地下深く納骨されてしまったのね」
そして階段を登るルーシー。
港…見た顔が「あれっ!」とジョニィを見つける。
左手に杖をつき、右肩から大きな荷物を引きずりながらジョニィが乗船してくる。
「おや」
「君は…元気か?何しているんだ?こんな船の上で…?」
「この船、ヨーロッパ行きだよね?」
ハンプティ・ダンプティみたいなSBRのスタッフが答える。
「何してるって…わたしの本職は税関職員ですから…SBRレースの係員は臨時で派遣されたものです…」
「ところでジョニィ・ジョースターさん、その積み荷は何ですか?」
その質問に答えるジョニィ。
「『遺体』だ」
鉄球を持った右手で軽く箱を叩く。
「友達の『遺体』。それと友人の愛馬・ヴァルキリー、彼の故郷へ連れて帰る」
「そして家族へ渡すんだ」
「馬は良いですが『遺体』の乗船許可は規則により出せません。誠に残念ですが火葬で遺灰になさるかこの国で埋葬してください」
「なるほど、じゃあ僕がいい解決策を教えてやろう。おまえが…乗船許可を取ってこい」
「絶対に友達は彼の祖国へ連れて帰る」
「ワイロが欲しいなら払うぜ」
すると大騒ぎが始まる。
「おいッ!みんな来てくれッ!」
「全員集めろッ!こっちだッ!」
「この積み荷を力ずくでおろせ!」
「ヤレェーッ」
次から次からへと5人のソックリのスタッフが出て来る。
積み荷に取り付くが、ドルルルルと回転してスタッフを吹っ飛ばす。
タスクAct.4の仕業である。
「どういうわけか…絶対に船から下ろせないんだな、これが…」
「必要ならおまえが乗船許可を取って来い!…いいな?」
「なんの問題ないだろ?」
そして甲板を歩くジョニィはノリスケ・ヒガシカタ夫婦を見つける。軽く挨拶をするジョニィとノリスケ。
出航前の海風にあたり、眼をつぶってこのSBRレースのことを思い出すジョニィ。
サンドマン……マウンテン・ティム……ポーック・パイ・ハット……ブンブーン一家……
ブラックモア……リンゴォ……ホット・パンツ……ウェカピポ……マジェント……
そして……ジャイロ………
「『祈って』おこうかな……航海の無事を…」
「この大西洋を渡って家に帰ろう……」
右手に収まっている鉄球。見つめて微笑むジョニィ…。
この数年後―
大西洋の向こう側―
『ネアポリス王国』は革命により王制を廃止し共和国の一属地方となった
死刑を宣告され投獄されていた少年Aは王制廃止とともに恩赦となり
自由の身となったがその後風邪が原因で死亡した |
中世から続く『ネアポリス王国』の王制の死刑執行官を
世襲的に務めていた『ツェペリ一族』は
他国へ移り住んだと伝えられるが
正確な情報を知る者はいない |
ジョジョの奇妙な冒険
第7部
『スティール・ボール・ラン』
完 |
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