総距離約6000km、優勝賞金5000万ドル、前人未到北米大陸横断レースの幕が再び上がるッ!!

‘05 4月号 プロローグ編

 初めてSBRに接するウルトラジャンプ読者のためなのか今号はプロローグ編です。…というかSBRを知らないUJ読者はいないだろう(偏見です)。読みすすむとUJ読書に紹介というほどの親切なものでもなかったですけど(笑)。

 表紙、茶色を主としていやに地味だったのでビックリしてしまいました。ティムの後ろのヤツは誰だろう?と思っていたらどうやらディオのようです…若干、顔が変わっているような(笑)。


まず――主人公、ジャイロ・ツェペリの祖国から始めると――

 崖と絶壁に挟まれた細い道を疾駆するジャイロとジョニィ。オエコモバの能力により右足がグシャグシャに破壊されているジャイロ。一応止血はしてあるが、このまま放っておけば倒れるのは時間の問題である。

祖国の名は『ネアポリス王国』。ヨーロッパ・イタリア半島中央部に位置し建国は1302年
現国王の名はデローヴォIII世―――人口は約78万8000人、面積は800平方キロメートル
あまりの小国である

政治的には中立性を持つがキリスト教の総本山――ヴァチカンのある『教皇領』の
軍事的警備を役割として建国されている
1870年のイタリア統一でもその存続は認められたが敵は多い
『神』でさえ…あの大天使ルシファーはそむき天を堕ちたのだから……

 イタリア系の名前だし、ジェノバの港から旅立ったということからもイタリア…もしくはその周辺だと思っていましたが予想通りでした。

ジャイロ・ツェペリの父――グレゴリオ・ツェペリは『感傷』という心とは無縁に生きて来た男
彼は個人的な友人はいっさい作らない――――ペットも飼わない


近所の親睦会も結婚式も極力避け―――
夕食は家族とだけすごし―――
親戚さえも家に招いた事はなかった―――


手紙も書かないし日記も記さない
プレゼントをしたり受け取ったりもしない…


人間関係の『思い出』を作る事は『感傷』に通じると考えるからだ
それはあえて冷徹になるという彼なりの厳しい規律であった―――
『感傷』とは心の『スキ間』であり『弱さ』――――

ジャイロが学校を卒業した時も父はわが子の卒業式には出席しなかった…
剣をふりおろす手元が0.1ミリでもズレればこの『死刑執行』という任務は失敗に終わるだけでなく
その処刑に対し、この世にこれ以上ない苦痛と残酷さをもたらすことになる
それを引き起こす原因は『感傷』という心のスキ間が引き起こすほんのわずかな『動揺』だ…

 拝一刀を思わせるストイックさのツェペリ父。心のわずかな揺れさえ許さない、自分への厳しさ。
我々が理想とするサムライとはこういう人かもしれない。


父グレゴリオはそれを祖先からの教えと経験から学んでいた
いくら鬼畜同然の罪人・極悪人とはいえ処刑の失敗は
その『死の尊厳』を破壊し生命の『誇り』を地に落とす

そして刑罰は単なる暴力となり『国家』と『法』の威厳までも…


当然ツェペリ一族の任務を受け継ぐことになった『我が子』――ジャイロには
その事を厳格に伝えなくては…と父は考えていた矢先―――

スパア

看守仲間の指が2本吹っ飛ばされていた――――!

 黒髪のセミロングの美女が口から血を滴らせている。首錠と手錠が掛けられているから囚人には違いない。

その女は何人もの家族や子供たちを毒殺した死刑囚
だがとても小柄で青ざめていて―――そして美しかった

その女が護送中、狂犬のように動きそして看守仲間の指を喰いちぎったのだ…
ポンプのような力で…

「ジャイロ!鉄球だ!女の動きを止めろォオオオオ――ッ」
 見かけを裏切るパワーで2人の看守を弾き飛ばしてジャイロにつかみ掛かる。

バリバリバリバリ

 ジャイロの襟あてを破る程の勢いで襲い掛かっていたが鉄球術で鎮圧される女囚…。

この女囚の事態は――大事にいたらずに済んだ――
だが報告を耳に入れたジャイロの父は厳格なる怒りを若き息子に示した――
とはいっても、その物腰は静かでかつ丁寧な口調だった

「今回の出来事は……我が子よ……おまえが招いた不祥事だ。原因は全ておまえにある」
 父の言葉にジャイロはささやかな反論をした。
「わたしだけ?女を静めたのは……父上…わたしです。役に立てたと思います」

「そうかな?おまえはこう考えなかったか?『女は美人だ……しかもずいぶん小柄だ』と……」
 ジャイロがそんなこと考えているはずがない!何か言ってやれジャイロッ!
「…………………」
 考えていたんかい!!

「あるいは通路突きあたりの監房の中を見て…『あの囚人は老いた病人』だ……とでも思ったか?」
 ジャイロがそんな不注意を犯すわけない!何か言ってやれジャイロッ!
「…………………」
 思っていたんかい!!

「『失敗』をしたとか『油断』したという話ではない……『感傷』という心の話をしておるのだ……
「それをおまえの任務に持ち込んではならん!小柄な女だろうが2mの大男だろうが死刑囚だろうがコソ泥だろうが何も変らない」
「それがなければ女が看守仲間の指を噛み切る前、動き出す前に鎮圧できたはずだ…恥を知れ!
「名誉ある『紋章』のついた襟あてもやぶかれずに済んだ……!」
 ジャイロが自分の喉元を確認する。どうやら今まで気づいていなかったらしくショックを受けている。
「『感傷』という心は危険だぞ……おまえの未来を永遠に惨めなものにしかねない…!忘れるな…息子よ…」

これが『ツェペリ一族』――
先祖が代々たどって来た道―――

そして何日かして
朝が来てジャイロが任務に呼び出され――
監房に出向くと―――

またひとつの騒ぎが起こっていた―――

「絶対に吐かせてやるッ!これは「針」だな!!」「いつから持っているッ!」
「この「針」をどこから手に入れたァ――――ッ!?」
 マルコ……が看守に怒鳴られている…。そこに通りかかるジャイロ。
「我々は子供のおまえがなぜここに入れられ…何の罪なのかまだ聞いていないが」
「しゃべらないと容赦はせぬッ!」
「この「針」で何をしようとしていたァァァ―――ッ!?凶器には違いないッ!!」
「おまえに仲間がいるのかッ!?」
「これをどう使うつもりだったッ」
「見ろ!!ベッドの下にこんなものも隠し持っていたぞッ!」

 もう1人の看守が襟あてを引っ張り出す。ジャイロが気付く、これはオレの襟あてだ…と。
「この紋章は!!我々の襟あてだッ!きさまこれをどこで手に入れた!?きさまはもうただでは済まないッ!」
「我が国を侮辱しているなッ!!」

「は…」マルコが口を開いた。「針は…魚の骨で…作りました……」
「2日前、女の人にやぶられてそこの排水溝に落ちたから…ぼくの手なら狭い溝から拾えるし…」
「修理しておきました………きっと…大切なもの…なのでしょう」
「持ち主の方に渡してください。気に入っていただけると……いいのですが……」
「ぼくのおじいさんもそのまたおじいさんもずっとして来た仕事です」
「どんな縫い物でも出来ます。クツみがきなら誰にも負けません………」
「銀の食器もピカピカにしてみせます。料理の名前もワインの名前も全部覚えられます……」

「もういい!やめろッ!そこまでだ!それはただの魚の骨だッ!それ以外のなんでもないッ!」
「みんな引き上げてくれッ!これは不問だッ!」「少年を房に戻せッ!」
 ジャイロが間に入り事態の収拾を図る。

「あなたの襟あてですか?気に入らなかったら修理しなおします……もっと丁寧でいい仕事をしてみせます」
 さらに続いたマルコの言葉に、ニガヨモギをなめたような渋い顔をして声をしぼりだす。
「やめろ〜〜〜……おれに話しかけるな……二度とだ…いいな……」
二度と……

 ジャイロは引き裂かれている。尊敬する父の「感傷を持つな」という言葉と自らの内から湧き上がるマルコに対する感情……相反する2つのものにジャイロは引き裂かれている

少年の罪状が確定したと――ジャイロ・ツェペリが知ったのは――
その日の朝のことだった……

判決は――『国家反逆罪』
それは誰にもどうする事もできない罪状――

そして処刑責任者は――『ジャイロ・ツェペリ』
初めての任務とされた……


 時間と場所を現在にもどす……。
「『ゾンビ馬だと!?』」
 これはジョニィ。ジャイロと行動を共にしているジョニィが疑問を口に出す。
「一歩間違えばまっ逆さまの谷底!」「ジャイロ!そんなものがこのレッドキャニオンにいるのか!?」
 疲れと傷を癒すというゾンビ馬。はたしてイズコに??

いたぜ!
 ジャイロが立ち止まったのは……岩壁に描かれた龍(?…もしかして馬)の前である。
「『ゾンビ馬だ』。凶暴な顔したヘタクソな馬の壁画だぜ………」
 壁画のゾンビ馬の口のあたりに指をかける。すると絵が…ゾンビ馬の輪郭がペリペリと剥がれる。
絵の具などで描かれた物ではなく、糸かテープで貼り付けられたものだった。
「ジョニィ…針金持ってるか?ピンでもいいぜ、この糸につなぐ…」
 と言ったかと思うとバラバラになりかけた右足を縫いつけ始めた!しかも麻酔無しッ!!
苦痛に顔を歪ませるジャイロ。
うぐおおっ!!」ぐっ!!
「『ゾンビ馬』はキズを癒す」「これで『縫え』ってことさ……糸をおいてってくれた……」
「ある程度はこの『糸』で治療できる……吹っ飛ばされた肉片くっつけるくらいはな……」

「どういう原理なんだ!?そんなんで治るわけがない!ただのきたない糸なんかで縫ったくらいで…!!」
「だがもし治るとするなら……そういえば君のお父さんは、普段は『医術』を仕事にしてるって言ってたね……その技術なのか」
 あまりに原始的な方法にビックリだらけのジョニィ、しかしある可能性に至る。
「いや『技術』って感じじゃあない!『鉄球』もそうだがそれ以上の何かだ!」
「たとえば『スタンド能力』」
 ついに抜かれた伝家の宝刀っ!!

「いや……」
「これは……手紙の文面どおり……国王のからの贈り物だ……」
「おれのおやじは……手紙なんか書かないからな!」

 踵(きびす)を返すジャイロ。なかなか裏を読みたくなる言葉を残しレースに戻るジャイロ。

 

2nd.STAGE――
モニュメント・バレーまで ゴール目前


今週のめい言

「おれのおやじは…
 手紙なんか書かないからな」

○ゾンビ馬は壁画の馬でした。壁画とはいえ「馬」だったのが驚きましたけど(本当はですけどね)。しかし「ゾンビ馬」という言葉が出てから長かったです…確か去年の8月でしたから9ヶ月たってやっと解決でした。

○それで今週のめい言の「おれのおやじは手紙なんか書かない」ですが、かなり曖昧です。この言葉をそのまま信じていいのか、それとも本当は違うのか?ジャイロの父が実は贈った物でありジャイロは知らないのか?ジャイロは知っているが父親の信念を尊重してあえて知らぬふりをしているのか?このジャイロの科白…かなり裏読みしているので気になってしょうがありません。

○牢屋、魚の骨、針…といえば「死刑執行中脱獄進行中」を思い出します。一応、マルコも死刑囚でしたね。

○それにしても―5部からその傾向が出てきたのですが―これはマンガとしてはどうなのか?あまりにもネーム(つまり文章)が多すぎる。でも読ませる。それはしっかりと構築された設定と世界観を、圧倒的な技法で表現しているからでしょう。

○ジャイロの祖国の名は『ネアポリス王国』。5部でジョルノやブチャラティ達が住んでいた都市の名がネアポリスでした。でもネアポリスってナポリのことなんですよね(そう言われると名前も似ているかも?)。

○ジャイロの祖国のネアポリスなんですけど、最初、私はローマの辺りにあるかと思っていました。説明で「政治的には中立性を持つがキリスト教の総本山――ヴァチカンのある『教皇領』の軍事的警備を役割として建国されている1870年のイタリア統一でもその存続は認められた」とあるから、ヴァチカンの周辺…もっと言えばヴァチカンを取り込んだ形であるかと思い込んでいましたが、描いてあった地図を穴が開くほど見ていたらどうも5部のネアポリスと同じナポリの位置にあると判りました。それで、これをイタリア史に組み込んでみるとなかなか面白い…というか皮肉っぽいことになっています。何が皮肉っぽいかというと、1870年には教皇領さえもイタリア帝国に取り込まれたからです。つまり主であるヴァチカンが消滅したのに、その護衛をしていたネアポリスの方が生き残るというのはどういう因果なのでしょうか。結構、ジャイロの敵とはヴァチカンに敵対するものかも…なんて妄想も膨らんでしまいます。

○今月はここまで。来月の本格スタートを待ちましょう!ではでは…。

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