‘08 08月号
 #39 真の力(パワー) B 

 ジャイロが道に落ちている馬糞を舌で調べて、ペッと吐き出す。
「ヤツの馬のだ。通過したのは5〜6分前…」
「どうもこのフィラデルフィアの街を出ようとはしてねーみてーだ」
「だがどこに向かっているのかな?――第8ステージのルートからも大きくはずれて来てるぜ」
 舞台は依然としてフィラデフィア・シティー。
「まさかあの野郎…これから大統領と取り引きして『目玉』を渡すって事はねーだろうな!」
 J&Jにとってはそれが最悪のシナリオか?
「いや!それはありえない」「Dioは誰とも組まない…そういう性格だ」
「ミシシッピーでサンドマンと組んだのも単なる利用するためのあいつのみせかけだ…」
「しかもDioが今所持している『左眼球』はヤツにとっても最後の『切り札』!取り引きなんかで簡単に渡すわけがない」
「きっとDioの最終目的も『遺体』の総取りだ!あいつ…そのためなら、そして追いつめられたなら大統領だって暗殺しに向かうに違いない」
「ジャイロ、そっちじゃあない」「逆だよ、『風下』から追跡しないと。『恐竜』だからな…臭いで感づかれる」
「しかも何か…さっきから何か…妙なんだ」
 地面に何かを見つけるジョニィ。
「石畳だからいまいち足跡がはっきりしないが……『もうひとり』」
「誰かが…今Dioを追跡しているヤツがいると思う」
「……そこにある知らねえ足跡の事を言ってるのなら…無関係だろ」
「気のせいかも知れないがさっきも同じのをひとつ見た」
「……なるほど、じゃあきっと気のせいじゃあねーな」
「大統領側もDioへの追跡者を送り込むのはありうる。ヤツらもDioをいつまでも放っとくわけにはいかねーんだからな」
「だが大統領がDioを始末するのは『頭部』の部位を見つけてからの事と思ってた!」
 ジョニィに不吉な考えが走る。
「まさか…すでに見つけたのかも」
「急ぐか…ところでオレらの敵はそいつを入れて全部で何人だ……?」

午後3時59分――
フィラデルフィア独立宣言広場南 400m

 のどかな日常の一コマ。遊ぶ子供たち、赤子を抱く母親、写生をする老人。その景色をぬうように疾駆するDioをJ&Jは見つける。
「今!公園反対側の露地を入っていった!」
「ヤツに勘づかれている感じは?」
「まだない…」
「あの先は独立宣言庁舎だな…よし…」「オレが公園の右側から周り込む、オマエは路地を追え…Dioの鼻っ先でヤツをハサミ撃ちだ」
 前後での挟撃を提案するジャイロ。
「待て、ジャイロ!!」「待てッ!」
 ジョニィの双眼鏡にある人物が飛びこむ。
「あれは『ウェカピポ』だッ!ウェカピポがいるぞ!ウェカピポがDioを追っている!」
 何回「ウェカピポ」って言うんだジョニィ(笑)。
「どういう事だ?…ウェカピポは…ルーシー・スティールの居場所を調べているはず…。なぜ…Dioを?さっきの『馬の足跡』はウェカピポのか?」
 ジャイロも双眼鏡を覗いて確認する。ウェカピポはすぐに街角へと消えた。
「いや、ウェカピポの馬は知っている…さっきの『足跡』とは無関係だ」
「見当もつかねえ…だがオレたちはまず誰より早くDioだ…とにかくDioをハサミ撃ちにしてブチのめすッ!!」
「…わかった…ところでジャイロ、この場所でひとつだけ…ひとつだけハッキリと確認しておきたい事がある」
「これからぼくらはDioのヤツを追いつめてヤツから『左眼球部』を奪う」
「しかし当然…ヤツは『スタンド』で反撃してくるだろう。手加減したらこっちがやられる。…その時はどうするつもりか確かめておきたい」
 あの時の光景がジャイロの頭には浮かんだろう…。
「ぼくはヤツを『撃つ』つもりでいるが」
「絶対に殺すな………いいな!」
 瞬間、二人の間の空気が張り詰める。そしてジョニィの瞳には炎が宿る。星飛雄馬のそれとは違い、ジョニィのものは『黒い炎』である。
「おいッ!!」
 ジャイロがジョニィの襟を掴む!
「勘違いしてんじゃあねーぞ、ジョニィッ!ハッキリと言うのはおれじゃあねぇッ!おめーの方だ!」
「目的は『『遺体』』だけだ!…オレらはテロリストじゃあねぇ!ブチのめして『左眼球』を奪うッ!『聖なる』もののために!」
「それだけだ!」「他に何をするっつんだ!?」
 ……………………。
「わかった…奪うだけ…『眼球』を…」
 一応納得するジョニィだが、心の中では…
『人の『怒り』は増幅する…そんな事が簡単にすめばいいがな……』

 そしてミッションは開始される!!

 ジャイロがヴァルキリーから降り、徒歩で街角を進む。
ジャイロの様子を双眼鏡で見ていたジョニィがあることに気づく。
「馬だ。反対側の建物の陰に馬がつないであるぞ…まさかあの馬は?」
 些細なことだが気になるジョニィ。しかし不穏な空気が一気に湧き上がる。

コツ! コツ! コツ! コツ! コツ!
 石畳に足音を響かせて一人の男がジャイロにせまる。
ジャイロも気づき振り返る。しかし男と対峙したジャイロの背後…コーナーの死角からまた男が近づく。
「なにィィィィー―――――ッ」
 ジョニィ驚愕ッ!!!
「バカなッ!!まさかッ!あれはッ!!あいつはッ!!」
「ジャイロ!!うしろだッ、うしろにいるぞォォォー――ッ」
『あれは大統領だ!どういう事だ!!単独で!!大統領が外に出て来ているッ!!』
 立派なロングホーンを持つスタンドを出して戦闘態勢の大統領。
大統領のスタンドは仮に『ジェネシス』とでも呼びましょう。
「ジャイロ!?何してるッ!?うしろだッ!!うしろからも近づいてくるぞォォォォー――ッ」
 しかしジャイロは気付かずに後方のヘアバンドの男と向き合う。
ジャイロォォォォオオオオオオオオオオオオオオ」
 一般人の注目を集めるのもかまわず絶叫してタスクを放とうとするが、そのジョニィの背後にも男の影が…。

ダン

 銃声一発ッ!弾丸が左の頬に命中する。即死コース??
……おまえ………
 そして地面に倒れ伏してしまうジョニィ……。以下、次号!

今月のめい言

「全部で何人だ…?」

○とりあえず時系列を整理しましょう。

12月28日
午後2時45分  ウェカピポ、スティール氏と接触
午後3時51分  J&Jが7th.STAGEゴール
午後3時59分  J&JがDioを追跡開始

○8th.STAGEと9th.STAGEが連続であるため、『遺体』争奪の最終決戦地はここフィラデルフィアのようです。ルーシーが『遺体頭部』を宿したために、ウェカピポの目的であるルーシーの脱出がそのまま『遺体』収集と直結します。ジャイロ、ジョニィ、Dio、ヴァレンタイン大統領に加えてDioを追うウェカピポ(実際には大統領は夫人がルーシーであることをすでに知っているが、Dioから情報量を漏れるのを防ぐためにウェカピポはDioを追っている)、さらにジャイロに迫る男、ジョニィを狙撃した男(または女)、未確認の蹄鉄の持ち主…まだまだ既知や未知の人物が登場する可能性はあります。個人的には繁雑になってくるので、少し勘弁してほしいですけど(笑)。

○ジョニィの双眸に宿る黒い炎…『漆黒の殺意』を心に蔵するジョニィ。ジャイロは直観としてジョニィが人を殺した時、雪崩をうつように「黒の側」に墜ちることを知っているのでしょう。もしかして…または友情や人情に篤いジョニィは己の中の暗黒を凝視した時に、ジョニィは自らの命を閉ざす可能性もあるかもしれません。どちらにしても、ジョニィは危うい状態にあると言えるでしょう。

○「志村うしろォ〜〜」と叫んでいたら自分の後ろに幽霊が立っていた…年齢丸出しの例えが何人にわかるかと疑問に思いつつも、そんな感じのジョニィです。弾痕を操れるジョニィだから、うまく弾丸をスルーしているのでは…と考えつつも血がイッパイ出ているしなぁ。それにしても街中、しかも一般人がたくさん居る公園の近くで目撃されるのを厭わず発砲するとは、7th.STAGEゴール直後の3人組もそうですけどナリフリかまわないのも程があります。

○先程はもう登場人物が出るのは勘弁とは書きましたけど、ここはホット・パンツに登場してもらうのがベストではないでしょうか。怪我の治療もできますし、ジョニィとホット・パンツの仲も深まるかもしれないですし、その結果『漆黒の殺意』を抑えられるかもしれないですし、ジョニィが殺害行為を行った時に相手を救う―イコールとしてジョニィを救うこともできます。一石三鳥も四鳥もあると考えられます。

○実は巻頭にあった各キャラの紹介ですが、ここで私の意見もいれて顕示しようかと思います。

ディエゴ・ブランドー (20) 通称 Dio

『恐竜』の能力を持つスタンド使いで、左眼球部(遺体)を体内に所持している。SBRレースでの優勝と名誉が目的の天才ジョッキーであるがその野望ゆえ、レースの裏の意味を
知った時、彼の真に欲する物はこの世への権力と復讐である。

(筆者註:たった一人の身内である母親が亡くなったのを、世間が彼女を殺したとDioは受け止めた。堕天使とは、その天使が気高ければ気高い程に深く堕ちるのである。素直な良い子だったDioだが、母親の死により性格は反転して憎悪と破壊が彼の心を満たしている。)
ルーシー・スティール (14)

スタンド使いではないが『夫』の無事を願ったため、大統領の陰謀に巻き込まれてしまった。もう抜け出さない。

(筆者註:逆に言えば…清らかなる乙女が居ることがジーザス降臨の必要事項だったのだろうか?それとも純潔を奪われようとしたルーシーを哀れに思い、ルーシーに入り込んだのだろうか?)
ヴァレンタイン合衆国大統領 (48)

スタンド使い―左目眼球以外の遺体を所有。自分をスタンド使いにしてくれた『謎の遺体』を手に入れるため、SBRレースを利用していた。そして集まりそろった『聖なる遺体』は『永遠の国家』を作るために必要な力と信じる。

(筆者註:権力、部下、スティール氏…あらゆる物を利用していたつもりが、逆に降臨のためキリストに利用されていた雰囲気が出てきたのは私の気のせいでしょうか?ちなみにスタンド名は「ジェネシス」と予想。)
スティーブン・スティール (53)

SBRレースの企画プロモーター。ルーシーの法的な夫。レースの成功とルーシーの幸せだけを願っている。

(筆者註:ルーシーのことを深く想っていながら、いろいろなものに縛られて心を表にだせない。同情を禁じ得ないが、是非に殻を破ってほしいものです。)
ウェカピポ (31)

元ネアポリス王国の鉄球使い―護衛官。『遺体』へは距離をおいているが見捨てられた祖国へと帰りたいと願っている。

(筆者註:「あまり故郷へ帰る帰ると言う者は死ぬ」という法則があったりなかったりするので、ウェカピポの身が心配です。)
ホット・パンツ (23)

スタンド使い―ローマ法王庁の修道女。弟を見殺しにした自分を『許し』てくれるのは『聖なるもの』であると信じ、法王庁のため遺体を手に入れようとしている。

(筆者註:ホット・パンツを見ているとニーチェのキリスト教批判を何となく思い出してしまう。人の悔恨につけこむというのは、何もキリスト教に限ってはいないだろうが。)
ジャイロ・ツェペリ (24)

ネアポリス王国の死刑執行官助手。冤罪で処刑される少年を恩赦で救うため、SBRレースに参加。世襲制による仕事に『誇り』を持っていたが逆に『納得』も必要だ。そのために『遺体』を大統領側には渡せない。

(筆者註:ジャイロの「真の相手(てき)」とは父親を代表とする先祖…つまり『伝統』である。誇りとしながらも納得できないところもある。普通はそんな矛盾に目をつむって日々を過ごすところだが、ジャイロは行動を起こしてしまった。口で言うのは簡単ですけど、やはりジャイロは規格外の器の持ち主だと思います。)
ジョニィ・ジョースター  (19)

スタンド使い―。自分の呪われた宿命にもがきSBRレースに参加したが謎の『遺体』の力が自分を救ってくれると信じ、大統領には『遺体』を絶対に渡せない。

(筆者註:こうしてジョニィの紹介をみていると、ジョニィって根拠のない思い込みと勘違いでここまできたような印象をうけます(笑)。『遺体』は本当にジョニィを救うのか?う〜〜〜〜ん…素直に肯定はできないかなぁ…)


ではまた次号ッ!!

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