ツェペリ家は350年も昔から『国王からの命令』があるとき以外はその本来の身分と役職を知る者は父親とその妻、そして第一子(長男)のみにとどまり、日常普段は一般市民に対する医術の仕事で社会的な信用と収入を得ていた
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ツェペリ家の日常の顔が紹介されている。
ジャイロ・ツェペリもまたもの心つく頃からその教育を受けて来ていた
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ガバァ
「起きろ!あの『足音』は…」
女性とベッドに潜りこんでいたジャイロが飛び起きる!
「ヤバイ、父上だッ!ここに近づいてくるッ!何してる!?早く服を着ろよッ!父の病院内で患者の君とここにいるなんて知られたら殺されるッ!マジ、ヤバイッ」
バタバタと服を着始めるジャイロ。
「急げって!今見つかったら君は他の男と結婚、あっという間にさせられるぞッ!」
「えェー――ッ!そんなの間に合いっこないいィィィィィー――ッ」
「おいッ!今、そこの廊下を曲がったぞッ!」
ガチャリ…と父上がドアを開けると…
「何の問題もないですね…ハイ!単なる栄養不足でしょう…タマネギといっしょにレバー肉食べるといいですよ…関節痛の予防にもなりますからね。さ…そっちで服着てください」「あ…父上」
老婆に検診をしているジャイロ。その老婆の背中には―父上の死角になっている―鉄球がシルシルと回っている。
「ジャイロ、脚を骨折した患者が来ている…手伝ってくれ…」
「はい、すぐ行きます」
バタムと父上が扉をしめた後に…。
「なんて事するのよッ!早く元に戻しなさいよッ!この皮膚のたるみをッ!シワだらけにしてッ!戻してッ!今度こんな事したらあたしが殺してやるわッ」
「おい…あわてるなって…怒るなよ。この逆だってできるんだぜ…ジャイロ…『ありがとう』ってきっと言うぜ…」
ズギュンと鉄球効果!
「いろんな場所のお肉が重力に逆らって持ち上がるぜ。ま…一週間は持続するね」
バストアップ&ヒップアップ!
「しかもいらないってんならそーゆートコの脱毛とかもできるぜ」
鉄球で女性のスネのお手入れをするジャイロ。便利だ!!
「あれ…?このクスリ指…シワが消えたら日焼けのあとが出て来てる。ゴクリ…指輪の跡」
「オレたちマジ殺されていたな…指輪してんのか?普段…」「あんた人妻」
汝 姦淫するなかれ…という十戒の言葉を思い出しゾッとするジャイロ。
パカラ パカラ パカラ パカラ…
蹄の音で目を覚ますジャイロ…えっ、雪!?
見渡せば、ジョニィがウサギにむかって爪を撃っている。
「どうりで寒いと思ったぜ…寝てる間に雪が降ったのか?」
ウサギを捕らえたジョニィが戻ってくる。
「このウサギはあとで食べよう。パスタを作った」「ハーブティー飲む?」
「そこにミントがはえてたから摘んで来た。で、気がついたんだよ…」
「何でなのかは理由は知らないんだけど、ハーブを飲むと…失くなった爪の再生のスピードが速いんだ」
「ほら一分程度ではえてくる…試したらカモミールと混ぜると最も早く再生するみたいだ」
「この指でチーズを削って…スパゲッティ巻いて食べれるぜ。後で歯みがいたりして…」
「なるほど…スゲーうらやましいな」
さて、ハーブを飲むと爪の再生が早いというのはジョニィのバカ話ととるべきか、それとも何かの伏線ととるべきか……?
「ところで、今…地面を伝わって馬の足音が聞こえた…誰か一頭来る」
ジャイロがさっき得た情報を話す。周囲を見渡すジョニィの目には何も怪しいものは映らない。
「距離は?」
「10kmほど南方だけどな」
「今日も一日が始まるな…」
「緯度も北緯40度を越えたしな。現在、オレらより北にいるのは2〜3頭」
ここで5th.STAGEの順位表が挿入される。なんとJ&Jの現在地は、ミシシッピー川はもちろん、シカゴも越えて6th.STAGEに突入しているのだった。
「でもまさか、来てるのはDioのヤツかな」
「いや…」「5th.STAGEのゴール結果をみてもまだあいつはリタイヤはしてないが、自分の馬のダメージをかばっている」
「2〜3日遅れて来ている。だが…ミシシッピーでのサンドマン攻撃の背後にDioの能力があった事は忘れてはいけないがな…」
「じゃあ…『ホット・パンツ』」
サンドマンとの死闘の後に、突然の行動をとったホット・パンツ。
「君はHP(ホット・パンツ)の事を何も『知らない』と言ったが…それは信じる。だが…あいつは大統領とは別に『遺体』を集めている…。君の国の『紋章』のついた袋を持って……確かに君の紋章と同じだった。見間違いではない、あいつは持っていたんだ…」
「しかも…ぼくの持ってた『遺体』を全部盗ったわけではない。脊椎を一個…ぼくの背中に残していった…。スタンド能力と命を残していった。つまり…どういう事か?」
ジョニィの推測。
「つまり…あいつは『敵』ではないが君の『祖国』がこのレースによこした人間だ!…と…言うよりも、君が『祖国』に遺体の正体は誰なのか…?質問したとたん…ぼくらのそばに現れた…北米大陸に『聖人』なんていないと回答しておきながら」
「遺体を集めているのは君の『祖国』だ……!!」
「ジャイロ。君はこの『聖人』が誰なのか?すでにもうわかってるんじゃあないのか?この腐りもしない『遺体』が『何者』で誰なのか!?」
ジャイロはイメージを持っていた…掌を釘で貫通され、茨の冠をかぶらされたあの姿…。
「『遺体』が欲しいか?ジョニィ。命を掛けても…『全て』を手に入れたいと今でも思っているか?」
「ああ…もちろんだ。このレースに出て、死にかけていたほくの心は生き始めた…。『遺体』をあきらめたらきっとぼくの心は再び死ぬ」
「じゃあ、手に入れよう。遺体が『何者』かなんてオレらにはどうでもいい…。軽々しく口にするな…。わかるなら…いずれきっとわかる時が来るはずだ」
あえて名前を言わないジャイロ。
地面で鉄球を回し耳を大地につけたジャイロがジョニィに報告をする。
「ジョニィ…さっき南から来る足音が一頭と言ったが…何か変だ」「どうやらオレの間違いだった」
「この鉄球、線路の鉄削って作った新しいヤツだからよ」
「馬?それとも人数?」
「足音はひとつだ…だが『重なっている』。一頭の馬にいくつかの別の馬の足音が同時に重なっている…つまり歩幅もリズムも同時でひとつになっている」
「じゃ、何人来てる?確実なのは何人?2人?3人?」
「11人」
11人ッ!!
「本気で言ってんのか?でもそれどういう事?何のために…」
「ひとりだと思わせようとしている…11の足並みをたったひとつに隠している。こいつは『敵』だ…オレらをチームで襲うつもりだ」
「追いつかれたくねーな、とっととズラかろう」
「ぼくの『脊椎』が地図を雪の上や砂の上に作る…。次の『遺体』(耳部)の位置はもう間もなくだ。地図で探知してまず手に入れなくては!」
「こいつらはまだ10kmは離れている」
地図で場所を確認するジョニィ。
「十分だ」
その時、鉄球が何気なくそばの水の中に落ちる。
「ジョニィ、ここから先の地形は湿地帯みたいだな。深くはないが泉がわいている」
「『ミシガン湖畔』だ……『遺体』のある位置ももしかしたら水の下かも…」
泉の中を探るジャイロ。
「おかしいな……」『どこだ?『鉄球』…。そんなに深くはないのに…』
直後、ジャイロは一人の少女の姿を目にとめる。手に鉄球を持っている。
「ジョニィ…見ろ…何だありゃあ…。いつから、あいつあそこにいた?」
雪が積もる土地なのに、ノースリーブとキュロットスカート、豹柄のアームウォーマーにハイソックス。なかなかの上玉、子猫のような雰囲気の少女である。
その少女が鉄球を持ってダッシュする。
「おい!てめー何やってるッ!オレの鉄球を持ってかれた!!」馬に飛び乗るジャイロ。「追えッ!ジョニィ。クソッ!せっかく作ったヤツだぞ、追うぞ!あいつをつかまえろッ!!」
ジョニィはふと気付く。
『あっちは『遺体』のある方向…。方向は同じ、そっちに逃げていく』「どうする?撃つか?とどくけど」
「え?何言ってんだ?おまえさん天才ジョッキーだろ。追いついてとっつかまえろよ」
追いかけるJ&Jの眼前にとんでもないものが現れる。
巨木…!!屋久杉を彷彿させる木の(寒冷地だからやっぱり杉なのかな?)洞(うろ)に逃げ込む少女。
「何だ?この場所は?樹齢っつーのか?1000年以上たっていそうな大木だな。2000年!?」
「ジャイロ、鉄球も大切だが何か近いぞ…。こっちの方向なんだ。『遺体部位』が2体!近いッ!」
「こっちの方向のどこかに遺体がある。地面の下に埋まっているのか?」
「しかも『2つ』は近くにある。『両耳部』と『右腕部』!『2つ』がそんなに離れていない所にあるって事を地図が示していく!いっしょにあるのかもしれない」
「あるのがこの木の『中』だったらどうする?」
「ありうる」
その時、洞の中からボソボソ声がする。
「もうすぐ…パパたちに会えましゅからね。そこにはママもいっしょにいるのよ。それまでゴハンを作って待ちましょうね」
誰かと話しているのだろうか?
『ジョニィ…何人かいるぞ……。この木の周囲にも警戒しろ…オレは中に入る』
囁くジャイロ、頷くジョニィ。
中に入ったジャイロが見たものは……壁一面の落書き。三人家族や馬、牛、星など…。
「ママの言いつけを守ってね…」
「『髪をいじりながらゴハンを食べてはいけませんよ』『女の子は彼氏よりはいつも少なめに食べてキャラグッズやロリファッションはもう卒業!』」
「『ポテトチップは食事じゃありません』『爪を噛むのとクスクス笑いは下品ですよ』」
「『ニンニク料理とケンカの言いわけは控えめにね』『嘘泣きするのもやめなさい』『好きでもないのに男の子をアッシーに使うのもやめなさい』」
不細工な人形相手に話しかけている少女。
「もしもしー、あのなあ〜〜〜オレの方から勝手に入って来て言うのもなんだが…おまえ何者だ?誰とここに住んでる?」
「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
ギクリ、ビックリ顔のジャイロ。
「そこは夫婦の寝室ですッ!足ッ!失礼な人!!ちゃんと玄関からお入り願いますッ!!」
床をよく見ると、部屋が線で区切られており、「しんしつ」とか「しょさい」等書かれてある。
ジャイロは「しんしつ」と区切られたエリアに立っていたのだ。
「オホン…悪い」
「いらっしゃいませ。わたくし『シュガー・マウンテン』と申しまする。この人形は『キャンディ』。初めまして…ひとつよろしくお願い申し上げます」
三つ指をついてジャイロを迎える少女―シュガー・マウンテン。
「ごゆっくりお食事でも召し上がっていってください…」「あたしとキャンディでお客様をおもてなしさせていただきます」
葉っぱや木の小枝で造った食事を出すシュガー。
「ジャイロ、外には誰もいる気配はない……雪の上の足跡もその子のひとつしかこの周囲にはない…」「でもその子、『視力』が殆ど無いみたいだ。『杖』で障害物を探って外を歩いている…その『跡』がある」
ヒョッコリと顔を出すジョニィ。
「でも、こいつ走っておれのを奪って逃げれてるぜ。けっこう速いしな」
「あ、もしかしてお客様、泉の中に落とし物されましたか?落とされたのはこちらですか?それとも『左』のやつですか?」
どこからか取り出したのは…何か岩の固まりとカット装飾されている石。
「おいおいおいおいおい」「何なんだ?このお嬢ちゃんは……?視力というよりおツムがたりねーみてーだな!オレらはおめーのママごとなんかに付き合ってる暇はねえ!」
「おれの『鉄球』を拾ったろッつゥー――か盗んだなッ!!どこへやったッ!」
「『鉄球』?……あら、『鉄球』ってこれですか?もしかしてこっちの事?正直な方ですね…」膝くらいまでの高さの木箱をゴソゴソ探る少女。「正直な方には3つとも全部さしあげましょう。3個全部あなたの物よ。どーぞ」
どーぞの後ろにはハートがついている(微笑)。
「おいジョニィ…。これ持ってみろ…まさか…おい…この『重さ』。『鉄球』の事じゃあねえ…『鉄球』は重さも形もオレの作ったものだ…それは間違いねえ。こっちの2つの方だ」「この輝き…」
「何なんだよ、おまえ…?これをどこで手に入れた!?わかってんのか?この重さッ!何でオメーみたなのが本物の金塊を持ってるッ!?こっちの方もガラス玉なんかじゃあねえッ!おまえの両親はどこにいるッ!」
「そちらのもうひとりの方も泉に『落し物』されたでしょう?それはこちらのキノコですか?それともこっちのキノコ?」
今度はジョニィに向かって品物を差し出すシュガー。右手と左手に種類の違うキノコを持っている。
「そういえば右のキノコを手で払って泉に落とした……でもなぜそれを知っている?その時、君は外じゃなくこの中にいたはず」
「正直でしゅね〜〜〜」「正直な方には……ハイッ」「こっちの『松茸』をたくさんあげましょう。カナダ産だけどね。ちなみに右のは毒だからね」
非常に奇妙…!疑問と謎がポロポロ出てくる。
『ジャイロ…外に出よう。この女の子何か妙だ…』
『ああ…だが『遺体』はこの大木の周りのどこかにあるとさっき言ったな…。ますますこの『中』のような気がして来た…』
「おい!違法かもしれんがその箱とかの『中』を調べさせてもらうぞッ!」シュガーの例の箱を引っ掻き回すジャイロ。「こんな場所にてめーひとりなわけねーだろッ!オレら時間もねーし」
「キャーッ!やめてッ!やめてッ!」
「あたしの名前は『シュガー・マウンテン』。パパとママはずっとずっと遠くにいる。たまに食べ物を持ってやって来るの。だからあたしはそれまでひとりで待っている」
「ウソつけバーカ!」「おめーは何の答えもオレらにしてねえ」
「そこはあたしのベッドルームぅ!!」「足ッ!」「信じられないッ!」
「あたしの下着にさわらないでッ!変態ッ!変態ッ!」
杖でバシバシ叩かれながらも箱を探るジャイロ。
「何だこりゃ?ママごとの道具しか入ってねーぞ。木片とか葉っぱだ」
箱の中身をぶちまけるジャイロ。
「探せ!!溝とかスキ間とかどこかに埋まっているのかもしれない…」
「『背中』で探知しながら探す範囲をせばめていこう」
「あなた方が今『泉』に落とした食べ物は…」ズラァァァと豪華な料理―パンにパスタにローストチキン、ワインにシャンパン、コーフィー―と先ほどのママゴトの料理が並ぶ。「こちらの右側の『料理』ですか?それとも左の葉っぱと泥のフルコース?」
『この料理はどこから現れた?…こ…こいつ、…ス…『スタンド使い』だッ!』
『待て、待て待て待て、ジョニィあわてるな』『『敵』か?いや待て…大統領側の『敵』としたなら……それは不可能だ。オレらより『敵』がこの場所に先に来る事はありえない。今の敵は10km南にいる…謎の『11人』だ。こいつは…この女は……』
「どちらですか?答えてください」
答えを促すシュガー。
「ふざけるなッ!おまえ何者だッ!」
「だから待てって!ジョニィ。良く考えろッ!落ち着けッ!ひょっとしてだがオレにはわかりかけて来た」
激昂するジョニィをなだめるジャイロ。
「お嬢ちゃん…もしオレがさっき『答え』を間違えていたら…もしさっきオレが泉に落としたのを『金塊』とかワザとウソをついて答えたなら…どうなってた?」
「これがベロに突き刺さって、ノドのずっとずっと奥底から内臓ごと引っこ抜かれて死んだわ。もし『金』か『ダイヤ』って欲張って答えてたら」
え〜〜〜〜ッ!シュガーの言う「これ」とは、先っちょが矢のように尖がっている蔦である。蛇のように蠢(うごめ)いている。
「ニョホホホウホホ!」「またちょこっとわかりかけて来たぜ。オレの落としたのは『葉っぱと泥料理』の方だ」
「はぁ〜〜〜〜〜い」「正直者にはモーニングのサービスよッ。ゆっくり召し上がれ。コーヒー?紅茶?ミルクと砂糖は付けますか?」
『何なんだ?………?この女の子。人間なのか?…それとも…』
「ジョニィ、お前『紙』持ってるか?ケツ拭く紙だよ。新聞紙でもいい、全部よこせ」「いいからよこせって、この腕時計もよこせ!」
そしてそれを泉に落とす。すると…
「あなた方が落とした『紙』は」「こっちの『紙たば』?それとも『左』の紙。腕時計もブレゲ社製のヤツ?それともこのガラスの割れた方?」
今度は百ドル札の束と良い感じの腕時計を取り出す。
「オレらが泉に落としたのは…いいか…答えるぜ」「新聞紙だ!それとうすらキッタねえ腕時計一個」
そして品物を手に入れるジャイロ。
「ニョホホやったぜ!かなりイッちゃってるお嬢ちゃんだがマジわかりかけて来た」
「ジョニィ!馬の所だッ!今朝獲ったウサギを出せッ。ウサギがいるぜ」「ほれブレゲやるよ」
「だからジャイロッ!?何をやってるって聞いてるんだッ!」
場面は替わり、再び洞の外へ。
先ほどタスクで獲ったウサギの耳をナイフで切り取り、泉に落とす。
「あなた方が泉に落としたのはこっちの『ウサギの耳』ですか?それとも…」
!!
「こっちの人間の『耳』?」
出た……。
「ま……まさかッ!それはッ!その手に持っているものはッ!どこから出したッ!?ま…まさかッ!」
「こんなの……あたしも初めてよ…」
「この女…『守っている』んだ……。そういうスタンドの役割って言うのか……」ジャイロが推測を語り出す。「本人も気づいていないのかもしれないが……きっと、『守り神』みたいなものだ。遺体が『役割を与えた』守護精霊ってとこか…あんたいつからこの場所に住んでる?」
「パパとママが『鉄の斧』を泉に落としてしまった時から……ずっとずっとあたしが小さい頃から…そして『待つように』言いつけられていた」
「答えて…」「『どっち』?泉に落としたのは『どっち』?」
「ほ…本物なのか…それは…」「まさか!本当にそれはッ!その『耳』は」
「ジョニィ答えろッ!ただし…わかってるな?どう答えればいいのか……!」
しばし沈考して…
「ああ…ボクらが泉に落としたのは………」「『ウサギの耳』の方だ」
ギャン
『遺体の耳』がシュガーの手から飛んでジョニィの顔面につきささる!
「うおおおおおおおー――ッ!!」「ぼ…ぼくの顔の中に!!」
「遺体が引っ張り合ってる……『本物』って事だな」
「両方さしあげます。正直な方々には…」
「よし!受け取れ!ジョニィッ!そしてこんな所、とっととズラかるぞッ!」「次は『右腕』だッ!10kmの所にいた『11人』の敵が5km地点にせまって来ている」
得るものは得た!ジャイロは早速に愛馬に跨ろうとしている。
「出て行くのは自由。でもパパとママに『正直に言え』と言いつけられてるからキチッと断っておきますが…今この泉で手に入れたものは『全て』……日暮れ時刻まで…いいですか?ハッキリと言っておきます」シュガーが何事かを言っている。「全部使い切らなくてはいけません。いいですね?日が沈むまでですからね」
「ああ…ありがたくな…わかった…本当にこれらももらってくぜ!返せっていうなら今のうちだぞ」
「さよなら」「今説明しましたからね……確かに…ホッとしました」
「ジャイロまだ行くな。もう少し話を聞こう。今言った事…」「?」
「…どういう意味?『使い切る』?って」
シュガーの言葉が気になったジョニィが振り帰る。
「わたしはあなた方に会えて嬉しい。その『金』とか『札たば』とか『ダイヤモンド』を好きな事をして使い切るんです」
「松茸も。全部失くせばいいんです」
「ただし今日一日だけ、太陽が西に沈むまでです。それがキマリなの…いつ誰が決めたのかは知らないけれど、そうパパとママに『言いつけられた』。だからお願い使い切ってください」
すでに出発しようとするジャイロを制止してシュガーとの話を続けるジョニィ。
「君がぼくらの『敵』でない事はわかった…けど何言ってるのかはさっぱりわからない。でも君もよかったらいっしょに行くかい?どこか町までなら君を連れてってあげられるけど」
「あたしなら心配は必要ない…あたしはもう日暮れになったらここを出て行けるから……やっと『順番』が終わったから」
「『順番』」「その…えーと、今言った『金』や『ダイヤ』とか『札たば』、ジャイロはもらうって言ってるけど当然もらうわけにはいかない…。『耳』の遺体は別だけど、君の両親のものなんだろ?返すよ。ぼくらは別に必要ない」
「だからもう返品なんか出来ないのよ。使い切るしかない!もし使い切らなければ、あなたたち2人も今夜から『順番待ち』になる」
と言って巨木の上のほうを指し示す。その先には、人の形…何人もの人の形ををしたコブがある!!
「前の2人があたしのパパとママよ……もう何年になるのかしら…いったい何年前?」
「パパが『鉄の斧』を泉に落として夕暮れになるまでにあたしたち家族はその『金の斧』を使い切れなかった…だから泉に『木の実』にされた…」
「どこに逃げても『木の実』にされる。死にはしないけど、木の実は年をとらない……パパのうしろに並んでいるのはずっと順番を待っている人たち」
「みんなみんな…狩人とか探険家とかここに来た人たち。この泉に来て何かを落として正直者だけど使い切れなかった人たち…ひとり『木の実』になればやっとひとりこの場所から出て行ける…『守り神』は順番なのよ…もし今夜あなたたち『2人』が木の実になれば」
「パパとママの順番がやっと来て、あの木の実からようやく外へ出て来れる!!」
恐るべきルールが明らかになる。
「ジャイロだから待てッ!この女の話を良く聞けェェェェー――ッ」
そして迫る11人。銃に弾丸を込めている。危険度数は双曲線なみに上昇しているッ!!
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