「『鉄』を操る能力」
「なるほど…犯人は『ブンブーン一家』……気づかずあんたらに近づくと死ぬってわけか…」
バラバラにした身体を元に戻しているティム。ロープの距離だけ身体を分離させて移動させる能力「ヴァージン・キラー」である(私が勝手に命名)。
「さらに離れよう」
ロープを伝いジャイロとジョニィから離れるティム。
「いったいなんなんだ!?おまえの方も……!!『ブンブーン一家』もだが……人間なのかよ!?どういう事なんだ!?」
あふれる疑問をティムにぶつけるジャイロ。
「あんたの方はどうなんだ!?その『鉄球』はなんだ?」
「オレのは『技術(ワザ)』だ。人間には未知の部分がある」
………。
「なるほど、人間には未知の部分がある」「簡単に話そう」
「15年前のことだ。1875年…オレは当時16歳………」
「軍に入隊していてこのアリゾナの砂漠でまだ地図に載っていない場所の探査のための任務についた。だがオレのいた小隊16名は遭難し水場を求めて何日もこの砂漠をさまよったんだ」
ジョニィがボソリと呟く。
「遭難…あの隊にいたのか…」
ティムの昔話は続く…。
「そこは地元のインディアンが『悪魔の手のひら』と呼び恐れる場所だった…そこにオレたちの小隊はふみ込んだんだ」
「方位磁石がまったくきかない場所だった」
「しかも流砂のために地面が動くだから隊はまよったんだ」
「あるはずの山が消えたり谷があらわれたり、地形が変化するんだ」
「『悪魔の手のひら』は1日に何qも『移動』するらしい」
「先月あった場所に今月はもうなく…インディアンの伝承によると大昔、流れ星が落下し全てを破壊し呪われているのだという」
「どんな広さなのか誰も知らず、どこにあるのかも出会わないとわからない………何万年もここのどこかを移動しているんだ」
楽しい…なんか小学生の時に夢中で読んでいた民話伝説神話を思い出す。
ティムが思い出す『悪魔の手のひら』…何個もの奇岩が円を描くようにそそり立ち、その中心はクレーターのように凹んでいる。流星が落ちた痕であろうか?太陽に骸骨の影が見える…沈黙と静寂が支配する死の土地であることは想像するに難くない。
「ついに水場は見つからなかった」「馬が死に……小隊の仲間も次々と倒れていった……」
「そしてオレもな……文字どおり焼け死んで行ったんだ」
「だがそこは運命を選ぶ土地でもあった」
「なぜかオレは目を醒ました」「夜中だった」「夜…」
「ごくわずかな夜露が…ロープにつく……それをおれの体は吸いとっていた…無意識のうちに…」
「ロープとオレの体が一体化してな………」
「生き残ったのはオレだけだった……」
「なにかの『引力』のせいなのか…『悪魔の手のひら』はその人間の眠ってる未知の才能を引き出すんだ」
「インディアンは『呪われた能力』と呼ぶ…そうなのかもしれない。オレは隊の他のみんなとともに死ぬべき人間だったんだからな……」
「この能力を『立ち向かうもの(スタンド)』とオレは個人的に呼んでいる…まちがいない!ブンブーン一家も『悪魔の手のひら』にふみ入ったやつらなんだ」
ついに…ついにあの言葉が出たッ!
「『磁力』がだいぶ弱くなったぞ……いいぞ、そのままそのロープでどんどん離れろ!」
「どこかにいるヤツらを探し出して倒すしか旅を続ける方法はなさそうか?」
「いや……その必要はないと思うよ」
ジャイロの後ろにいつの間にか現われた人影。宇宙人?蛸人間?指で地面に絵を書いている……L.Aだッ!
続いてベンジャミン親父も登場。胸の重複円のデザインがボールの的みたい!おそらく最期はジャイロにド真ん中を鉄球で打(ぶ)ち抜かれるのでしょう。
「探すこともないし離れる必要もないよ。君たちが行けるのは……近づく方へだけだ…ね?父さん…?父さんがそう言った」
「手伝うか?L.A。ひとりでロープを切れるか?マウンテン・ティムの野郎のロープをよォ〜〜」
「え〜〜〜!?出来るような…自信ないような」
自信のない奴、迷っている奴から叩き潰せッ!それが勝負の鉄則!!ジャイロの鉄球が唸りをあげてL.Aに迫る!
ズ ド オ オ オ オオ オオ
黒い人間の形をした塊がジャイロを転がし、同時に黒い波がジョニィとティムに襲い掛かる!!!
「砂鉄…!!」
「これは!!『砂鉄』かッ!地面の中の『鉄』を集めて形にしているッ!!」
「吸いついてくるッ!お…重いッ!」
黒い人影がジャイロを捕まえてジョニィにぶつける。磁石同士ということに加えて砂鉄が2人を拘束する。
「マウンテン・ティムの方へもつっ走って行くぞオオ――――ッ」
ティムに掴みかかる黒い人ッ!しかしティムは銃が吸い付いていた右腕を分離させ、L.Aに向かって連射する。
不意をつかれたL.Aだったが今度はベン親父の黒い人がその銃弾を阻止するッ!
「やっぱり1人じゃあ危っかしいなあL.A!」
「ヤツらの両手も砂鉄でふさぐんだよ!ヤツらの両手も砂鉄でふさぐんだよ!ヤツらに何もさせるな」
「幸せか?幸せだよなあ、ワシたちはよオ」「さっさとマウンテン・ティムのロープを切れ」
「ああ〜〜父さん…ぼくとっても幸せだよォオ」
ブチィッ L.Aの黒い人がティムのロープを切断する!
「オメェらはもうこの磁界の中じゃあなにやっても無駄なんだよォオオオオオ」
「ジョニィ!おまえの手が空いているッ!」「やれっッ!」
「おまえがやるんだッ!」「『回転』だッ、ジョニィ」
「おまえが『回転』をつかってやつらを殺るんだ!そこに『1発』落ちているッ!拾えッ!」
ロープを切られたティムが空を滑ってくる絶命寸前にジャイロが叫ぶ。
「弾丸だッ!」「マウンテン・ティムが今、撃ってよこしたヤツだ!!」
「『鉛』ならこの磁界の中でも影響なく飛ばせるッ!おまえがその弾丸を回転させろッ!」
「だめだ!来るッ!マウンテン・ティムの体が浮いたッ!」
ガ シ ィイ ィ ン
超電磁合体を行うジャイロ、ジョニィ、ティムッ!!!
「うおおおお、裂けるっ!!」
血が噴水のように吹き出す!
「ジョニィ!やるしかねえッ!!『LESSON3』だッ!」
「おまえ、キャンプの時 回転させたって言ってたろうッ!弾丸も同じ事だッ!飛ばせッ!」
躊躇(ちゅうちょ)するジョニィにさらに叫ぶジャイロ!
「回転を信じろッ!回転は無限の力だ!それを信じろッ」
「ジョニィやれェェェ―――やるしかねえ――――」
『ぼ…ぼくにで…出来るのか!?』
『でも…ぼくはこのために…このレースに来た…』
『この『回転』の秘密を知るために』『『回転』を自分のものとするために…』
「やるんだッ!やらなきゃあここで終わる!」
親指で弾丸を弾くジョニィ。旋風の中で踊る木の葉のイメージ!
「ま…回った!回った!回ったぞッ!ジャイロッ!」
グシャア コロコロコロコロ
ベンジャミン親父に左腕を踏まれアッサリと止められる、虚しく地面に転がる鉛の弾丸。
「もっと後ろに下がってろL.A!最後まで気ィ抜いてんなよ。死にぎわの悪あがきは気ぃつけろだ」
万事休すッ!
「い…いや」「と…父さん」「な…なんだ!?そりゃあ……」
「違うよ父さん…『気ぃつけろ』じゃあない……戻って父さんッ!なんだあいつの手はッ!」
「早くそこから戻って!!」
L.A大慌て!アッチョンプリケまで披露している。いったい何があったというのか?
見てみると、地面に押し付けられたジョニィの左手の甲を中心に奇妙な模様が現われている。
まるで蝶が羽根を広げているようである。
シュルシュルシュルシュルシュル………
手を引っくり返したジョニィ自信がビックリ。
「ぼ…ぼくの手……爪が…なんだこれ!?ジャイロ!?…爪の方が回転している!!」
左手はおろか右手の爪もシュルシュル回っている。指の上で皿回しの皿のように回っている爪。いったい何の意味があのだろうか?この現象には。
「これは…まさか…スタ…ンド!!」
驚くティム。
「どういう事だ…これは!?なんの影響だ…」「鉄球の回転にそんなのはねえッ!」
驚くジャイロ。
「戻ってって言ってるんだッ!父さんッ!早く戻ってッ―――あ…足ッ!」
足がどうした…と下を見るベンジャミン親父……アレッ、バッサリだ。右足がバッサリ…まてよ、メタリカのリゾットもこんな場面があったぞ、ハハ〜ン、ということは磁力でくっつくんだな……と思いきや、次の瞬間!
ズ ド ドド ドドド
ジョニィの回転から導き出されたのだろう…大きな波がベンジャミン親父を襲う!!
そして地面もろとも真っ二つに切り裂いてしまう!!
これでブンブーン一家も崩壊か?ジョニィが手にした能力とは?次号を刮目ッ!!
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