華麗なるレースの裏側で進行していた邪悪の所業。動機は賞金5000万ドル…しかし、本当にそれだけか?殺人者は待っていたのではなかろうか?「5000万ドルのため」という自分の中の悪魔を解放する十二分な理由が現われるのを…人から鬼になるその瞬間を。
‘04 30号 #13 2nd.STAGEスタート |
「『容疑者』は………参加者全員です。捜査のためレースのスタートを一時中断するお考えは?」
愕然とするスティール氏に保安官が声を掛ける。
「なんて事を……くそ……わたしのレースで………」
「レースは毎日つき進む……!!もはやこのレースはわたし個人の意志を越えた存在になっている……その点に関しては大統領とてどうすることも出来ないだろう……」
「中断なんて論外だ……」
止めるには大きすぎるイヴェント、苦悩のスティール氏に保安官が語りかける。
「そうおっしゃるだろうと思って………」
「『マウンテン・ティム』に犯人を追跡するよう依頼しました」
何故ここでマウンテン・ティムの名前が!?正直な話、私の中ではこの殺人事件の有力な容疑者なのですが(笑)。
さてその時に異変が…。その場に居合わせた全ての馬がスウ…と頭を降ろしたのだ。
「どうした?馬の様子がおかしいぞ」
「ですから『マウンテン・ティム』がきたからですよ。彼は不思議な男だ……馬は彼に敬意を払って頭をたれる」
そして、いつの間にか幼な妻の後方に立つ1人の男…マウンテン・ティムが姿を現す。ゼブラ柄のテンガロンハットを小粋にかぶりロープを左肩に担いでいる。それにしてもバタ臭い顔だ(笑)。
シュッとロープを投げて野の花を摘み、幼な妻に渡す。
「花」「本当に結婚してるの?残念だな」
「『マウンテン・ティム』!!」
「依頼したとはどういう事だ?彼は伝説のカウボーイで優勝候補」
「たしか今日のレースでは4位に入っていた」
保安官がスティール氏にティムについて語る。
「私が保証します」「彼はわたしの友人で誰からも信頼されている人格者」
「北はモンタナから南はテキサスまでこの大西部をよく彼の助けを借りて賞金首を追跡したものです」
ニコリと笑い、右手の人差し指と中指を立てて挨拶するティム。そして現場を見て回るティム。
「なんてことだ…怒りがわいて来た…」
「レースにこんなのがいたんじゃあ……安心して優勝も出来ません」
「このレースにはわたしの友人だってたくさん参加してるんだ」
「今までどこでも見たことのない殺害方法だ。だがこの死に方…ある伝説では聞いたことがある」
「インディアンの伝説でこのアリゾナの砂漠のどこかに大熊座の方角からの流れ星の落ちた土地があるという」
「そこは汚れた場所」
「その土地に入った者は心の中から『不思議な力』を引き出されて身につくが、同時に邪悪さと禍いを呼びよせ呪われてしまうという」
これはスタンドの起源なのでしょうか?この世界では「スタンドを引き出すウィルス」を乗せた隕石は、ケープヨークに落ちずにアリゾナに落ちたのでしょうか?
「ある時、エメラルド鉱山を探しに行った白人がその場所に入り戻って来た時」
「これと同じ方法で他人を殺したという…そのあと、そいつは罪の意識か…銃で自殺した」
「死んだんならそいつが犯人じゃあないな」
「で…君に捜査を依頼するとしてどうやって犯人を見つけるつもりだね?宇宙人でも探すつもりかね?」
何故かチョット辛辣なスティール氏。ティムが幼な妻にチョッカイをかけたのが気にくわないかも。
「とりあえず足跡を追跡するとするなら」
「こいつだな」「この中でもっとも狂暴な走り方だ」
「蹄鉄の真ん中部分に山形のカケがある」
スティール氏の「確証じゃない」という反論にも冷静に答える。
「いや…まちがいない。馬が興奮している。きっと人間の血を見たからだ」
「乗り手の性格は理論的に走る奴、砂漠育ちだ」
スゴイぞ!ティムッ!シャーロック・ホームズみたいだ!
「被害者のそばにビンが落ちてる。調べましたか?保安官」
ティムがロープを使い小さなビンのフタを開けた…かと思いきやいつの間にやら中にあった物を取り出していた。
「ボタンか……?あれは衣服のボタンか?」
「殺害方法と何が関係があるのか?」
「被害者のジーンズのボタンだ。なぜボタンがとれて…そしてどういう事でビンの中に入っている?」
「何かワケがわからないが、知らずに他人に近づかれるのは…決定的に危険というのだけは確かだな」
殺人者とティム、両方の謎を残しつつ光陰は1日すぎる……。
{2nd.STAGEは!}
人・人・人・馬・人・人……。選手と観客、1つの都市のような人数が熱狂している。
{あと5分でスタートしますッ!}
2nd.STAGE 『アリゾナ砂漠越え』 モニュメント・バレー
サンタ・マリア・ノヴェラ教会→モニュメント・バレー(1200q行程予想日数12〜18日間)
総参加選手数 3770名
日時 1890年9月26日午前10:00スタート
優勝賞金1万ドル タイムボーナス1時間 獲得順位ポイント1位100点 |
{各選手は!スターティング・グリッド内に入り位置についてください!}
ディオがいる。サングラスを首にかけている。
{フライングした選手は!のちに規定のペナルティを受ける事になりますのでご注意ください}
もう水を飲んでいるポコロコ。そういえば、オマエ前回スタートの時にグリットにいなかったけどペナルティはなしかい!
{2nd.STAGEは…ゴール『モニュメント・バレー』までの総距離約1200qの長距離レースとなります}
座禅を組んでメンタル調整にはげむサンドマン。脚の上には皮袋の水筒が用意してある。
{ルート選択、1日の走行距離は各選手の自由、宿泊も自由となります}
{すでに決められた1ヵ所のチェック・ポイント通過の『義務』をのぞけば}
{なお―――仮にレース中やむをえずリタイヤを表明する選手は各自のゼッケンを旗にしてかかげ、ルート上を動かない事}
{救助と審判の幌馬車隊がレース後方より向かっております}
{また}{走行はできても救助隊に水や食糧・薬などを要求する事だけでも『リタイヤ』とみなされますのでご注意ください}
結構、細かい背景(ディティール)を描いている…荒木先生の心意はわかりませんが、これで作品に厚みが出ています。
「ジャイロ……このステージの優勝候補は『サンドマン』だとさ」
「賭けが始まって彼が1番人気……どう思う」
さっそくゴーグルをしているジャイロ。ジョニィとジャイロは手を組むことにしている。
「オレじゃあないのか?」
「残念ながらね。ちなみにぼくは6番人気、君は9番に入ってるペナルティくらったにしちゃあいい人気だと思うぜ」
「見る目ないね、世間の一般ピーポーはよォ……どうでもいいけど〜〜〜」
「だけどもしサンドマンがまたここで優勝したら、彼のポイント数は合計200点になる。タイムボーナスも合わせて2時間」
「そうなると全ステージ通じて圧倒的に差をつけられることになる。それだけは絶対に封じたい」
「ヤツは1日100q走るかな?」
さすがに真面目にならざるをえないのか、真顔で尋ねる。
「おそらく……サンドマンはアリゾナが地元らしい……地理的に彼のホームグラウンドだ」
「あそこにいるマウンテン・ティムも同じくらいの人気でこのステージの優勝候補だ」
「変な帽子だよ……あいつ」
また話を混ぜっ返すジャイロ。
「踏みつけてやりたいね…まだ頭の上にのっかっているうちに踏みつけてやりたいね」
ブラック・ジョークを言う所が承太郎と似ている…「良い腕時計だけどもう時間は見れないよ、壊れるから…おまえの顔面がね」みたいな。
「マウンテン・ティムはカウボーイだから短距離がにがてとウワサされてたけれど昨日はしっかりと追いつかれていた…」
「馬のヒヅメの音が聞こえないんだ…気づかれないうちに追いつかれてゴール前で抜かれていたんだ」
馬名のゴースト・ライダーは伊達じゃないというわけですね。我々も気づかなかったくらいですし(笑)。
「あんな変な帽子なのにな、気づかなかったと?ガハハニョホ!」
「このステージは、ジャイロ…」
「『水場探し』の闘いになると思うんだ」
「いかに水をきらさず、この砂漠ルートを進むか…」
「1875年まだこの土地がやっとアメリカ合衆国になったばかりの頃、騎兵隊26名が全滅したことがある。それは戦闘のためでも事故でもなく、あるはずの水場がなぜかその年は涸れていたからだ」
「26名は次の水場を探してさまよったが砂漠の気温は日中で摂氏50度を越え、場所によっては60度近くなる」
「騎兵隊の死因は脱水症状だったが、その前に彼らの眼球にはヒビが入り陶器のようにわれて失明したそうだ」
「そして無限の砂漠に迷い込みゆっくりと焼き殺されたんだ」
ケースによって違うが、砂漠において1日に必要な水分は20リットル以上。殺される前に彼らの意識は間違いなく飛んでいたろう…それだけが救いである。
恐るべき大自然の驚異、その脅威に巻き込まれないためにジョニィは50q先の水場を目指すことを提言する。
{さああ〜〜いよいよ2nd.STAGEのスタート時刻ですッ!}
{さあスタートですッ!}
{ただいま10時ちょうどの花火が上がりましたッ!!}
ガ ン
何の音?ジャイロがスタート・ダッシュをする音ッ!!しかもジョニィを置いて。置いてかれたジョニィは唖然ッ!
{飛び出したああああああ―――――ッ}
{ジョイロだッ!ジャイロだッ!ジャイロだッ!ジャイロだッ!ジャイロだッ!}
{1st.STAGEと全く同じだッ!また単独で飛び出したああ―――ッ}
{他人の背中は絶対見ないとでもいうのか!それとも馬がまきあげるホコリまみれになるのがいやなのかッ}
{とにかくジャイロ・ツェペリはこの2nd.STAGEでもひとり旅を演ずるつもりだ――――ッ}
もうアナウンサーもジャイロ一色!目立ちたくて目立ちたくてたまらないのか、ジャイロ。
そして困って悩んで苦しむのは相棒のジョニィ。
「くっくう〜〜」「どうかしてるぞッ、1200qあるんだぞ」
「く…くそ、どういう性格なんだ…!!あの男」
「ああ〜〜!!尾いていくとも!!いくともよオオオ―――ッ」
ド ガ ンッ
何の音?ジャイロが砂漠に向かって方向転換する音ッ!
{砂漠だあ――ッ、ジャイロ・ツェペリッ!}
{ルートは砂漠のど真ん中を突っ切る方角だあああ!50q先の水場を無視するつもりですッ!150q先にも水場があるかどうかわからない方角だッ!}
「おまえ何やってるんだジャイロ・ツェペリ―――ッ!スピードはともかく理由を言え―――ッ」
ジョニィ激憤ッ!そりゃそうだ。
「お互いレースのライバル同士でもあるんだぜ。ついてくるか?ルートは最短をとるぜ…」
「当然だな……先を越される……サンドマンとかによォォ……」
{おっとここで砂漠中央に向かうのはジャイロだけじゃあありませんッ!}
{追尾者もいますッ!}
{このルートを選ぶのはマトモとは思えない!自殺志願者かッ!賞金に目がくらみすぎてるぞ!!}
{ゼッケンが見えるッ!!彼の名はミセスロビンソンだあ――――ッ}
いやぁ、たぶん皆言っていると思うんですが私も言います。ミセスなのに男かよッ!!(笑)
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