いつもと違うところ。


 いつもと変わらない朝。大広間の石版の前で毎度変わらぬ仏頂面で立っている少年がいる。
見た目はとても美形な顔立ちなのに、彼のその冷めた雰囲気は人をよせつけようとしない。
・・・・鈍感者、もしくは大物を除いては。

「ルックおはよ〜!!今日はいい天気だからかなりの散歩日和だよ!!ついでにばんばんモンスター
たおして金稼ぎといこうね〜。ということで今日はルックメンバー入りね。」

明るい雰囲気と温和な表情ではあるが、有無を言わさぬ強い口調で同盟のリーダーである
ナオはまくしたてた。

「ほんといい天気〜!!よし!!今日はお姉ちゃんがお弁当つくってあげる!」
「えっっっ・・・!そ・・それは遠慮します」

「え〜なんでえ?兄弟の間に遠慮はいらないのに〜。」

ナオとナナミの兄弟漫才を横目でみながらルックはため息をついた。

「・・・・今日はいつ頃出発するの?」

「僕の朝ご飯が済み次第!!!」

「・・・・そう。」

それはいつもと変わらぬ会話だった。ルックの冷めた口調はいつものことだし、
それに全然こたえないナオの反応も当然のことだった。


 しかし、いつもと違うところは・・。


「あれ?ルック!!」
階段から一人の少年がおりてきた。どこか心配気味な声音を含んで話しかけてくる。

「・・・フッチ。」

ルックの表情がめずらしく動く。


「あーフッチ!おはよう!今日は君も一緒に散歩行こうね!」

「フッチ君にもお弁当作ってあげるね!」

「ナオさん、ナナミさんおはようございます。」

フッチは二人に簡単な挨拶をかわすとすぐにルックに向き直り、

「ルック、どうしたの?今日は顔色悪いよ?熱でもあるんじゃない?」

「・・・・・・・」


「「・・・・・・・え?」」(ナオとナナミの二重音声)

「いつも限界まで我慢するんだから。ほら、やっぱり熱がある。あんまり無理しないでよ・・」

ルックの額に手をあて、フッチは心の底から心配しているかのようなため息をつく。

「・・・・たいしたことないから。」

「うそつき・・・」



ルックとフッチのやりとり(二人の世界という)をずっとみていたナオとナナミは、

(ナナミ!!ルックが具合悪いの気づいてた?)

(全然!!!いつもと変わらない感じだったもん!!)

・・と目線で会話した。(さすが兄弟)


「ナオさん、今日は重要でないのなら、ルックお休みさせて下さい。・・・ついでに僕も。

・・・ダメでしょうか?」

ナオは少し考えた後、

「二人でやらしいことしないならいいよ。」

・・・・・ナオもたいした大物である。

「しません!!」


フッチは赤くなりながらも本気で怒鳴った。



ルックとフッチの去った後。

「なんかびっくりしたね〜。ルック君が具合悪いなんて全然気づかなかった。」

「ホント、ホント!!」


その時背後から聞きなれた声が。

「それよりも驚くべきところがあるよ。」

少年でありながら大人びた雰囲気をもつ、ヤヒロが立っていた。

「あ!ヤヒロさん!!」

「驚くべきところって?」

ナオとナナミが同時に首をかしげた。

「ルックの表情の変化。フッチの前だとああも変わるもんなんだね〜。
今度これをネタにからかってやろうっと!!」



(ナナミ、気づいた!?)

(全然!!)

二人の目線の会話はたいしたものである。


フッチのルックに対する読み取り能力は愛の力として納得するが、一瞬みていただけなのに
それをネタにあのルックをからかうおうとしているヤヒロを、
二人は心の底から大物だと思ったのだった。


後日談:ヤヒロがルックをからかうと、そのとばっちりが全部こっちにくるからやめてくれと
       みんな涙ながらにヤヒロに訴えたという・・。







・・・・・あれ?なんかルクフチじゃない感じ・・・。
ナオとナナミとヤヒロのギャグおち?
じ・・・次回こそは!!