七夕                                         (坊=ケイン)

 
とても蒸した日々は、じっとりとした汗を体中に噴出させてくれる。
 
稽古が終わったらおいで、と、ケインさんに言われてた僕は、ユズちゃんから眠っていたブライトを受け取って、途中で会ったハイ・ヨーさんに頼まれた籠を持ち(お弁当とお酒が入ってた)ケインさんの所へ向かった。
 
城の裏手にある川辺の、笹の木があるところで待ってるよ、とケインさんは言ってたなぁ、と僕は思いながら、その場所を探した。
笹の木なんて、ケインさんがくれた本の中でしか僕は見たことが無いけど、実際にはまだ見たことが無い。
すぐわかるよ、とケインさんは言ってたけど・・・、そう思いながら、夕暮れになるというのに、未だの暑さにうんざりとして歩いていると、ケインさんに肩車されているサスケ君の姿が見えた。
笹の葉の天辺に何かを括り付けると、サスケ君は嬉しそうに笑って、ケインさんの肩から降りると、僕に気がついて大きく手を振った。
 
 
「フッチは七夕って知ってるか?」

 ケインさんが頼んでたハイ・ヨーさんのお弁当を食べながら、サスケ君がそんなことを聞いてくる。
なんの事かわからなくて首を傾げると、サスケ君は『七夕』の話をしてくれた。
笹の葉に、お願い事を書いた紙(短冊というんだって)を吊るす行事らしい。

「フッチも何か書けよ」
と、サスケ君が僕に短冊とペンを渡してくれた。
散々悩んで、やっぱりこれかなぁ・・・と思って書いて、笹の葉に吊るそうとすると、そんな低いところじゃだめだ、とサスケ君が怒った。
「だって、高いところに吊るしたほうが、そのほうが神様が良くみれるだろ?」
サスケ君はそう言って、ケインさんに肩車して貰えよ、と僕の返事を待たずに、浅瀬でブライトを洗っていたケインさんを呼び寄せてお願いしてしまった。
ケインさんに肩車なんかしてもらうのははじめてて、なんか恥ずかしくって、ドキドキしながら短冊を笹の葉に括り付けると、サスケ君の願い事が見えた。
その隣に、ケインさんの短冊も見えたけど、そっぽを向いてて何が書いてあるのか分からない。
何が書いてあるのか気になって、手を伸ばして確かめようとしたら、まるで見透かされたみたいにケインさんが僕に声をかけた。
「フッチ、上手く括れたかい?」
「あ、はいっ」
慌てて返事をすると、ケインさんは僕を下ろして、重くなったね、とからかった。
 
 
とっぷりと日が暮れて、サスケ君はブライトを連れてお城に戻ってしまった。
二人きりになって、
「ねぇ、ケインさんは何を書いたの?」
と、浅瀬で冷やしておいたお酒を飲んでるケインさんに僕は尋ねた。
 
「フッチと同じ事だよ」
 
と、ケインさんは言って、
「フッチも飲むかい?」
からかうように僕に杯を向けた。
子供だと思って、と例に洩れず、僕はケインさんにムっとして、
「ちょっとだけ」
とお酒の入った杯を頂くと、ちょっと飲んだだけなのにくら〜っとして、一気に喉と体が焼けたみたいに熱くなった。
ふんにゃりとした僕の頭をケインさんが膝に乗せてくれると、浅瀬に僕の足を入れてくれた。
火照った体が川の水に冷やされて、ひんやりとして気持ち良い。
ケインさんが僕の頭を軽く撫でながら、『織姫と彦星』の話をしてくれた。
ぼ〜っとした頭でそんなことを聞きながら、年に一回しか会えないなんて可哀想、と言ったら、ケインさんはそうだね、と小さく頷いた。
 
「フッチ、あれが、天の川」
 
見上げた夜空には、見事なまでの星の川が出来あがってて、思わず見惚れてしまった。
ケインさんはそんな僕の顔を見て、綺麗だろう?とふんわり笑った。
短くキスした後で、また、ケインさんと見れるといいな、と思いながら、僕はケインさんの腰に腕を回した。
 






tokko様から頂きました、坊フチお酒話です〜。そして本日は
七夕。(忘れてました・・・)なんとかわいらしいお話でしょう〜(^-^)

ほんのり顔をあからめたフッチと坊の夜の情景はぜひとも
私もみたいというか(心から)。とても良い雰囲気ですよね〜。

tokkoさん、お忙しいでしょうにどうもありがとうございました〜。