STRAY SHEEP


 夜風が冷たく感じたのか、少し体が冷えた気がする。そのせいで目を覚ましてしまったサスケは
隣で眠っている恋人が風邪でもひいたら大変だと思い、そっとベットから降りて窓を閉めた。

(日中の稽古でかなり体力を消耗しているから、フッチは熟睡してるはず・・・)
フッチの寝顔を確認しようとしたその時。

「サスケ・・・」
「!・・・起こしちまったか?」
「ううん・・・・さっきからずっと起きてた・・・」

 ずっと起きてた?フッチは結構繊細な所があるのをサスケは知っていた。特に三年前の
事件、自分の騎竜を失った時から。また、あの時の夢でもみてしまったのだろうか?サスケは
再びベットに潜り込み、フッチの体を優しく抱きしめた。

「早く寝ないと、明日つらくなるぞ・・・」
「うん・・・・・」

 フッチは安心したかのように安堵の溜息をもらす。サスケのぬくもりが伝わったのだろうか、
フッチもサスケの手を握り返し、すりよってくる。

「ヘンな夢をみて目が覚めちゃったんだよ。なんか眠れなくって羊を数えてたからかなあ・・。
自分が羊になってるの。でね、サスケも羊なんだよ。」
「羊ィ?」

(そんな深刻な夢でもなさそうだな・・・)サスケは少し安心する。しかし。

「・・・僕が小さい頃に読んだ絵本でね、恋仲の羊達の話があったんだけど。
その2匹はすごい思いあってるんだけど、常に離ればなれなの。
メスの方がいつもどこかに連れてかれたりしちゃってね、オスがずっと探しつづけるの。
 絵本なのにかなり残酷な描写が多くてね、その度にふるえちゃって。でもすごい印象に
残っちゃったんだ・・・。そんなにメスに会いたいのかなあって。あの時はよくわかんな
かったけど・・・・

 ・・で、今日僕がみた夢の内容ってのがそれなんだ。僕がメス羊、サスケがオス羊。
絵本の中ではオスがメインだったから、オスの描写ばかりだったけど。
いざ、自分がメスの方になってみるとねえ、メスもすごいせつなかった。とっても
オスに会いたくてたまんなかったよ。待ってるだけの自分がもどかしいくらい。でも
いつも何かに捕まってたりして障害があってね、何もできなくて・・・」

 そこでフッチの言葉が詰まった。サスケはまっすぐにフッチの瞳をみつめる。
フッチは泣いてはいなかったけど、瞳がうるんでいた。サスケもとてもせつなくなって
しまう。

 いずれは自分達も離ればなれになる。お互い口にはしていなかったけど、仲が深まる
度にその考えが心から離れなくなる。不安でたまらなくなる、この思い。

 (フッチもずっと苦しんでたのかな・・・・)
それほど自分を思ってくれている、フッチが愛しくてしょうがなかった。同時になんか
申し訳なくて。その苦しみを取り除けるのは自分だけだというのに。

「・・・・その話はハッピーエンドだったんだろ?」
「まだ完結してないみたい。続編モノだから・・・」

「ハッピーエンドになるよ、絶対。」

フッチがサスケの言葉に反応する。お互いまっすぐに見つめあう。

「オレもいつか迎えに行くから。必ず。」

 照れ屋のサスケにしては信じられないほどの告白。
自分をまっすぐにみつめてくれる、その瞳には迷いがなかった。
 そしてフッチを抱きしめるサスケの腕に力がこもる。

 フッチはなんともいいがたい気持ちでいっぱいになった。嬉しくて、せつなくて、
・・・とても安心してしまって。サスケのこの一言にとらわれて、もう離れられない。
それは、幸せな束縛だった。

今までの不安が少しずつとけはじめる。

「うん、待ってる・・・・・」

 フッチは微笑を浮かべ、サスケに包まれたまま目を閉じた。

「おやすみ・・」

そして二人は静かな安眠の世界におちていった。




うおう、暗め・・。そして二人の為に世界はあります。
ようするにプロポーズ編?・・・完・・・。(玉砕)


ちなみにこの小説タイトルは皆さん御存知の
ポウとメリーのお話からです。STRAY SHEEPは
みてるとほんとせつなくて・・・。