幸せさがし




 ブライトがまたどこかに一人(一匹)で遊びに行ってしまったため、
フッチは心配のあまり探しに飛び出したのだが。城の裏側まで来た時に、
ちょっとした原っぱにて何かが揺れるのを発見した。

「ブライト!こんなとこまできてたの!?」
「・・・フッチ君・・。私人間なんだけど・・。」
「・・あれ?」

 金の稲穂が一瞬揺れたかと思うと、それは錯覚でニナの金髪だということが分かり、
ここらへんじゃ珍しい学校の制服とやらを身に付けた勝気そうな少女が目の前に現れた。


「なーに?またあの白竜君が行方不明になっちゃったの?」
「・・そうなんですけど、・・・ニナさんこそこんな所でどうしたんですか?探し物なら手伝いましょうか?」
「うーんとね、何かを落としたってわけではないんだけど・・。四葉のクローバーを探してるの。」
「四葉のクローバー?」

 確かにここらへんならクローバーなんていっぱいあるだろうけど・・。
四葉って?フッチは不思議そうに首を傾げた。

「あら、知らないの?四葉のクローバーっていったら幸運のお守りじゃない。常識よぉ。」
「・・で、それを探してお守りにでもするんですか?」
「そう。正確にいうとね、私のじゃないの。フリックさんにあげるの。
・・・明日からまたあの人達戦場に行っちゃうでしょ?
フリックさんならあんなかっこよくて強いんだから死んじゃうなんて絶対ないけど、
ほら・・万が一ってこともあるでしょ?あの人運なさそうだし・・だから・・ね。」

なるほど。ニナはフリックに少しでも幸運を授けようとしているのだ。
フリックはそれほど運がない男だ。

「僕も一緒に探しますよ・・・・。」
「あら、別にいいのよ。自分で見つけることに意義があるんだから。
・・でも、確かにフッチ君も探した方がいいかもねえ。」
「え?」
「だって、明日からハンフリーさんも遠征に参加するんでしょう。心配じゃないの?」

 痛いところをつかれた。フッチは実はずっとそれを気にしていたのだ。
この3年間ずっと一緒にいたのに、この城に来てから、離れて行動することが結構多くなった。
それでも部屋が一緒だから、せめて朝晩は会う事ができたのに・・。
遠征ともなると、いつ帰ってくるかも分からなくなってくる。
ハンフリーほどの男ならそう簡単に倒れたりなんかしないだろうけど、それでもやっぱり心配なのだ。
いつもハンフリーに守られてばかりいる自分でも、やはりハンフリーを守りたいのだ。
・・それほど、大切な人。この3年間色々あったし、フッチの中でかなり自覚はあった。
自分はハンフリーを恋愛対象でみている、と。

「・・・やっぱ探します・・・。」
「そうよね。」
 




 そして二人で這いつくばってもくもくと探している時。

「・・おまえら何やってんの?」
「あ、サスケ!」
「サスケ君!」
「二人で這いつくばっちゃってさ。何?コンタクトでも落としたの?それとも・・まさか・・・」
サスケの顔が少々強張る。まさか、この二人が逢引など・・・・!?
「違うわよ。安心して。あなたの大事なフッチ君をとったりなんかしないわよ。」
「・・・・・っそんなんじゃねえよ!」
「今、四葉のクローバーを探してたんだ。幸運のお守りなんだって。」
「ふーん、四葉のクローバーねえ。確かに幸運を授けてくれるとかなんとか
誰かが言ってた気がするけどよ、フッチもかなりの少女趣味だよな。」
「なんだってえ!?」

フッチがムッとした表情になる。

「あら、いいじゃない、かわいくって。」
「オレも一緒に探してやるよ、実物みたことないし。」
「自分で見つけることに意義があるんだって。」
「ふーん、結構めんどくさいんだな。じゃ、いいよ。みつけ
たら自分の物にすっから。」

そうして今度は3人で這いつくばって探したのだが・・。




「なあ・・これってある意味すごいか・・?」
「え?・・・て、何ソレ!?」
「うわ〜結構貴重だわ!六葉のクローバー!ってもうこうなるとなんかの花みたいねえ。」
「幸せ・・・くれるかな?」
「・・・むずかしいところねえ・・。でも貴重だから、一応とっとけば?」
「う〜ん、どうしようかな・・」



 といった余談が続いた後。ついにフッチもニナも目的物を見つけることが出来た。


「わ〜!!やったわ!早速フリックさんに渡さなきゃ!!」
「なんだ、あの青い兄ちゃんに渡すやつだったのか。」
「そうよ、当然じゃない!」

別に当然じゃねえよ、といった悪態をつきたいサスケだったがそれを押しとどめて、
今度はフッチに話し掛ける。

「フッチは?それも誰かにあげるのか?」
「うん、ハンフリーさんに・・・。ねえ、ニナさん。このままじかに渡すんですか?」
「そうなのよねえ、そのまま渡しちゃったらこんなもろいもの風でもふけば
あっというまに飛ばされちゃうわ。だから私ねえ、お守り袋作ったの。こんなちっちゃいやつ。」

 そういいながらニナはポケットから手のひらに余裕でのるサイズの、
かわいらしい小さい手作り袋を取り出した。

「クローバー自体もね、押し花ならぬ押し葉にしておけば永い間もつだろうし。
そうやって固定した物をこの袋にいれればもう完璧でしょ?」
「完璧ですね!」
「マメだなあ。」

ニナはフッチの感嘆に満足そうに微笑みを浮かべ、サスケの突っ込みに舌をだし、

「さあ、これで準備オッケー!!フリックさん、待っててね〜!!」
喜び勇んでこの場を去ろうとした時、フッチに引き止められた。

「・・・ニナさん、その袋ってどうやって作るんですか?」
「!!・・そうよね、フッチ君だって渡すからには完璧にしたいわよね。
いいわ、教えてあげる!私も最初思いついたもののよくわからなくって、
ヨシノさんに習いにいったんだけどね・・よし、私の部屋に行こう!」


 ついでだからとサスケもついていったのだが、なんとなく二人の雰囲気に
入る事ができなくて、ただぼ〜っと二人の作業を眺めていた。そこで思ったことだが。
(フッチ・・・なんだかこういう女っぽいことしててもなんだか違和感ねえな・・)

必死な二人を後目にあくびなんかしてみたりして。












 その夜。フッチはその思いの丈をハンフリーにプレゼントした。

「・・・これは・・」
「その・・・手作りのお守りなんです・・」
「中身は・・みてもいいのか?」
「あ、はい!!かまいません!」

ハンフリーがそのかわいらしい袋の紐を解いて中を覗くと、
上手く固定された四葉のクローバーを発見した。

「四葉のクローバーか・・よくみつけたな。」
「その・・・幸運を授けてくれるっていうから・・・。」

なるほど、ハンフリーは納得した。この少年があれほど大事に育てている白竜が、
ハンフリーが部屋に戻ると一匹で寂しそうに鳴いていたのだ。
先ほどフッチが探しにでていたはずだが、どうやら自ら部屋に戻ってきたらしい。
それにしてもフッチはどこまで探しにいったのか・・などど考えていたのだが。
このクローバーを探すのに必死で時間のたつのも忘れていたようだ・・。

「ありがとう・・・大事にする。」
「!!・・はい!!」

フッチはハンフリーのその言葉に嬉そうに反応すると、更にその勢いでハンフリーに抱きついた。
いつも無表情なハンフリーも微笑を浮かべ、フッチの頭を撫でまわす。
子供扱いされているその仕草にフッチは一瞬ムッとするが、
腕に更に力をこめてハンフリーにしがみついた。

「ハンフリーさん、今日は一緒のベットで寝ていい?」
「・・かまわないぞ」

明日からしばらくハンフリーはいなくなってしまう。だから、せめて今夜だけでも、と
大胆に切り出したのだが、いって良かった。フッチは照れ笑いをする。

「ハンフリーさん、できるだけ早く戻ってきてね・・」
ハンフリーの一存で戻ってくる事などできないのはわかっているけれども。
「ああ・・・。必ず戻ってくる。」
布団の中で自分にすりよってきたフッチを抱きしめて自分の腕を枕にしてやると、
フッチは安心したように、ゆっくりと眠りについたのだった・・・。
 







後日、待機中。ハンフリーがフッチのくれたお守りを眺めている時、フリックが声をかけてきた。

「お?ハンフリー、そのお守り・・・」
「フッチがくれたものだ。」
「だよな、一瞬ニナからもらったものかと思っちまったぜ。」

そしてフリックもどこからか良く似ているお守り袋をとりだした。
「ホント、良く似てるな。中身も同じ四葉のクローバーだろ?
ニナは手作りだっていってたけど・・それもだろうなあ。」
「ああ・・・」

 フッチはどうやらニナという少女に教わってこれを作ったらしい。それにしても・・・。
思わずハンフリーの顔に微笑が浮かぶ。

「あ、今おまえの考えている事わかるぜ。
フッチが少女達とこういうの一緒に作ってても全然違和感ねえよなあ。むしろほほえましいぜ。」
「そうだな・・」

 フッチの一生懸命な表情が目に浮かぶ。そして昨夜の精一杯の告白も。
 
(ハンフリーさん、今日は一緒のベットで寝ていい?)
 
あのかわいらしい少年は自分の不在をとても不安に思っている。
そして誰よりも自分を心配してくれている。なんとしても自分は彼のもとに戻らなければならない。
彼をもう悲しませるようなことをしてはいけない。あの悲しい過去を繰り返さない為にも、
自分が守ってやらなくては。
 
ハンフリーは強く誓って、フッチのくれたお守りを強く握りしめたのだった。



【END】






かなりぬるいSSになってしまいました。
密かにサスフチはいってるし〜
なんだかニナがでばってるし〜。
(別にアタシはフリック×ニナでは
ありませんよ?話の成り行き上
こうなっただけです(゚д゚))


2000HITのすみ様からのキリリク物です。
満足・・していただけ・・
ないでしょうねえ・・。がっくし。