コトバノモリ

ヒソヒソとした不協和音だったものが、何時の間にか大きくなって、心の中でざわついている。
「何かあったの?考え事?」
図書館で竜に関する本を読んでた僕に、コーネル君が声をかけた。
本のページがちっとも進んでなかったからかもしれない。
僕はふるふると頭を振って、なんでもないと答えた。
音職人のコーネル君は、音で大概の人の心が分かるらしい。
羨ましいような、怖い感じもする。

昨日から思い悩んでる事は、頭の中でまだ整理がつかなくて、僕は頭を抱え込むくらい悩んでた。
朝ご飯を取るための食堂にさえ、足を運べない。槍の稽古でさえさぼってしまって、そんな自分に自己嫌悪を覚えてしまう。

昨日。
サスケ君と、ケンカしてしまった。
きっかけは、ささいなことだったんだけど、加熱してしまった言い争いで僕が言ってしまった言葉は、凄くサスケ君を傷つけてしまったに違いない。

『サスケ君のことなんか、スキじゃない』

なんて、思ってもいないことまで言ってしまった。
売り言葉に買い言葉、だったんだ。
サスケ君は傷ついた顔で、泣きそうな顔になって、僕の前から姿を消してしまった。
あの時、泣いていたのは僕だったけど、サスケ君のほうが凄く痛そうに見えた。
嫌いだ、なんて言ってしまったのは悪かったと思う。
でも、どこを疑えば、僕がケントさんと付き合ってるなんて思ったりするんだろう。
あの人は英雄で、大人で、子供の僕なんか、弟くらいにしか思っていないのに。
「サスケ君のバカ」
目の淵がまだ痛iい。
すっごく泣いてしまったせいかもしれない。
サスケ君とは最近ケンカしてばかり。
でも逃げてばかりも居られないし、そろそろ仲直りしなきゃいけない。
でも、僕は悪くないんだけどなぁ・・・と、理不尽な気分になりながら、僕はサスケ君を探す為に図書館を出た。

サスケ君のいそうなところは大体見当がついていた。
道場とか、木の上とか、屋上とか。
でも今日に限って、見つからないのはどういう事なんだろう。
「フッチ、誰か探しているのかい?」
溜息を吐いてた僕に、この間から逗留しているケントさんが声をかけてきた。
「あ・・・ちょっと、サスケ君を」
「サスケ君なら、朝から遠征に出かけてるみたいだよ」
「あ、そうだったんですか・・・」
そんなの、聞いてない。いつもなら、遠征に出る前日にはちゃんと言ってくるのに。
ケンカしてる時だって、ちゃんと言いにきてた。それが仲直りのきっかけにもなっていたのに。

やっぱりまだすっごく怒っているのかな。

「ケンカでもしたの?」
そんな顔してるよ?とケントさんは小さく笑った。
「ちょっと、・・・いつものことなんですけど」
「付き合ってるの?」
「え!?」
「サスケ君と」
唐突に言われて驚いてる僕の顔を見て、
「アタリ?」
読めない顔でにっこりと笑う。
ふわふわとしたケントさんの笑顔は妙に心を和ませて、僕はコクリと頷いてしまった。


「ケントさんと二人で居ると、サスケ君が怒るんです」
僕の言葉にケントさんは目を瞬かせた。
「僕とケントさんは昔からの知り合いだからって。ハ、ハンフリーさんとの事も疑うし」
それこそ、有り得ない事なのだ。だって、ハンフリーさんは、ヨシュア様と、その、友人以上の関係だった事もある人なのに。

なのに。

なんですぐ、疑っちゃうんだろう。
なんで僕は疑われちゃうんだろう・・・。
僕も、サスケ君が好きなのに。

「彼女が自分以外の男と仲良くしてたらまぁ、普通は焼くんじゃないかな?」
ケントさんは僕の話に可笑しそうに笑って、そんな事を言う。
「ケントさんも?」
僕の問いかけに、ケントさんはちょっと考えて小首を傾げ、
「僕?そうだね、焼くかもしれないね」
と口を切り、
「でも僕は、感情が希薄だから・・・そういう意味では、サスケ君は羨ましいかな」
そう呟いて、口を閉じてしまった。


サスケ君の遠征中、僕はもやもやとした気分のまま、槍の稽古に没頭した。
何かに集中していないと、気がそぞろになってしまって、ぼんやりとしたまま一日を過ごしてしまいそうになっていたからだ。
誰かの事で、生活のバランスが崩れてしまう事なんてなかったのに。
これが『恋』ってものなのかな。
まだ良く分からないけど、遠征から帰って来たサスケ君に謝ると、サスケ君もバツが悪そうな顔をして、俺も悪かったって言ってくれた。
サスケ君が居なかったとき、とても寂しかったよ?と言うと、一瞬目を見開いて、赤くなった。
触れた手は熱くって、サスケ君の体温に僕は一瞬眩暈を起こしてしまって。
慌てて僕を抱きとめたサスケ君の口元から、甘い香りがした。

いい匂い。

キスはとても甘い味がした。
「サスケ君、チョコ食べた?」
突然の僕からのキスに、サスケ君はまた顔を赤くしてたけど、僕の言葉に頷くと、今度はサスケ君からキスしてくれた。
何度かキスを交わすたび、体温が上がっていくのがわかる。
僕は余韻の残る溜息を吐き、サスケ君に好きだというと、俺も、とサスケ君は言ってくれた。
凄く嬉しくて、泣きそうになってしまう。

こんなふうに、めそめそとしてしまうのは、きっと、僕がサスケ君に恋してるから。
そのこと、サスケ君はもうちょっと分かってもいいと僕は思うよ?
まぁ、オタガイサマなんだろうけどね。









tokko様からのイタダキモノ二発目!!すばらしくかわいいサスフチです!!
表のサスフチは年頃のいじっぱりサスケ君〜!!それにとまどうフッチも
とてもかわいらしい!!ああ、tokkoさん、またまたすばらしいモノを
ありがとうございました〜!!