カルチャー・ショック



「お、フッチ風呂上りか?いい匂いさせてさ〜。」
この城一番のお調子男、シーナに声をかけられて、元竜騎士の少年はニコリと微笑んだ。
「いい湯加減だったよ、シーナもはいれば?」
「いい湯加減〜?あのあっついのが?でもおまえと一緒に入れるんだったらなあ・・。
お、もう寝るのか?夜はこれからだぜ。」
窓越しにみえる満月は妖しい光を放っている。そのせいで、シーナのいう「これから」の意味が
なんだか妖しい(やらしい)ものに感じるなあ、とフッチは思ってしまった。
「うん、もう疲れたし。明日も早いから。」
「じゃあさ、じゃあさ、お休みのキスしてくれよ、ほら!」
シーナは無邪気な子供を装うかのように頬をだした。日頃の行動からみて、
どうみても裏心ありそうだけれども。(実際有り)
「ん、おやすみ」
やわらかい唇を軽くシーナの頬に押し当てた時。

ガシャーーーーーーーーーーーン!!!

 驚いて何かが落ちた方向へ二人で振り返ると、そこには・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・・!!!(絶句)」
「「サスケ!!」」

 これからお風呂に入るつもりだったのだろう、洗面道具を地面に落とした
まま、少年忍者が呆然と立っていたのだった。

(しまった!!)
フッチは一瞬顔をしかめる。サスケにこのシーンをみられたのは非常に悪かった。
だってサスケは・・・・。

「・・・おまえら、不潔だーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

純粋な彼の事、お休みの挨拶であるキスにも免疫がなく、落ちた洗面道具をほったらかしに
したままどこぞへと消え去ってしまった。

「フッチはフロにはいったばかりだから不潔なんかじゃないぞ〜」
「シーナ、それつまんない・・・・」
「やっぱ?サスケってあいかわらず面白い奴だなあ。」
「まさか・・・シーナ、サスケがここ通るって分かってたの?」
「さあね!」
「シーナなんて嫌いだ・・・・・」
いくら自分だって体を鍛えているとはいえど、忍者の素早さについていけるはずがなく、
とりあえずサスケがどこにいったかを探すことからスタートせねばならなかった。

 シーナと別れて、宿舎を通って道場の方へいってみる。もう夜なのだから建物自体は
しまっていて、当然サスケがここにいるわけもなく。
(は〜・・・・・・やばいところみられちゃったかなあ・・・)
フッチは思わずため息をつく。

 自分とサスケがいわゆる恋仲というのになったのは結構前。出会ってすぐ・・だったと
思う。しかし、最近思うのは、果たしてこれって恋人っていえるの?ということだ。

(だって僕達キスだってしてないもん・・・・)

 文化の違いだってことはわかってる。自分の暮らしていた竜洞では、お休みのキスとか、
とにかく挨拶系のキスに関してはさほど抵抗がなかったと思う。
しかしロッカクの里はあまりにも教育が厳格なのか、このような文化は全くなかったらしいのだ。
常に純潔であれ、といったところだろうか・・・・。

(いや、サスケの性格があくまでもこうなのかな・・・)

 となると、当然シーナとの挨拶のキスといえど、サスケにみられるのは非常に
やばかったわけで。サスケに悪いと思って色々気を使っているつもりだったが、
どうしてこんなにタイミングが悪いのか。(今回はシーナのたくらみだったけど)

「他にサスケがいそうな所といえば・・・」
風呂上りの体もすっかり冷めてしまった。ホントならもう布団にはいっている時間だったのに。

 フッチは思う。それでもこうやって誤解(?)をとく為に彼を探し回る自分は、ホントに
サスケに惚れこんでいるのだと。
 
 しかしキスもまだの自分達にこれ以上先に進むなんてことは
まずありえない。自分が彼を押し倒してもいいけれど、サスケはあくまでも
自分は「男」であると主張するし、やはり女役は自分の方があってると思うのだ。

(サスケのその男らしさが僕が惚れた理由でもあるしな・・・)

 自分はあくまでもサスケの「男」の部分を尊重したい。だって今の年齢でさえも妙に
男の魅力とやらを感じることがあるのだから。彼は将来、絶対外見も中身もイイ男になる!

(っていうか、やっぱ自分は受身の方がいい・・・サスケにその・・いろんなこと・・・
されたいな・・・)

 ・・・と思う自分はやっぱりかなり早熟なのだろうか。フッチは考え込んでしまった。




「や〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと見つけた、サスケ!!」

 ここは城主の部屋より更に上、城のてっぺんすなわち屋根上だ。
二人のお気に入りの場所である。
 サスケは背を向けて座り込んだまま、こちらを振り向かない。
頬を膨らませたフッチは、思いっきり後ろから抱きついた。
「もう、なんとかいってよ!!いつも言ってるだろ、あーいうのは挨拶だって!!」
「こんなところで勢いつけてよっかかるなよ、危ないだろ!」
サスケは完全ヘソを曲げている。
「かわいくない・・・・・」
「おまえにかわいいって言われたって嬉しかねーよ!!」
「ああそう、じゃあもういい!!サスケなんてだ〜(溜めて)〜っいキライだ〜〜〜〜〜!」
フッチは夜であることもかまわず思いっきり叫ぶ。どうせこんな場所じゃ誰にも
聞こえないだろうし。そして自分は知っている、サスケはこの一言に弱い事を。
「・・・・!」
「ほんとキライなんだから・・・」
いってて今度は自分が悲しくなってきた。

 仲直りする為に探し回ったのに、なんでこんなこと
いってるんだろ・・・。

 お互い沈黙が続く。その沈黙を先にやぶったのはサスケだった。
「・・・おまえ・・・、城の中をそんな格好で歩くなよ・・」
フッチの格好はランニングと短パンというラフな格好に、夜風が少々寒いからと
薄手のパーカーをはおったものだった。
「・・?なんで?普通だろ?」
「普通じゃない!!そんなに肌さらしてどうすんだ!!他のやつらだってみてるんだぞ!」
「別にサスケには関係ないだろ!それに他の人がみたってなんとも思わないよ!」
「思う!!!!!!」
 サスケは断言した。さすがにフッチは少々驚いてしまう。フッチが知らないだけで、
やらしい目つきでみている輩だっていっぱいいるということをサスケは知っていた。


「おまえは無防備すぎるんだよ!もっと注意を払え!」
「なんだよ!さっきからどなってばっかりで!サスケこそ、もう僕わかんないよ!
僕達ってホントつきあってるの?」
たまりにたまったフッチの欲求不満がとうとう口から飛び出してしまった。
「厳格なんだかしんないけど、なんでサスケは僕にふれないわけ?サスケが
僕を好きっていってくれたのはあくまでもトモダチとしてなのかよ!?」
「なんだよ、それ・・・・!友達とかだったらあえて好きなんて言う必要ないだろ!」
「だってサスケは恋人のキスはおろか、挨拶のキスだってしてくれないじゃん!!
それで僕が他の誰かと挨拶程度のキスしてるぐらいでそんなヘソ曲げられたって
困るってもんだ!!」

 フッチは自分が何をいっているのかわからなくなってきた。
違う、自分がいいたいのは・・・・。サスケが挨拶のキスだって自分以外の
誰ともするな!!ってちゃんといってくれるのなら、自分は喜んで答えるだろう。
そしてサスケだけが、・・・してくれればいい、キスも、それ以上のことも。

 フッチは目に涙が溜まっていることに気づいた。
わ、泣けてまできちゃったんだ、なんか恥ずかしいなあ・・自分だけ盛り上がってさ。
とちょっぴり冷めてきた瞬間。

「・・・・・わかった」
「え?」

 あれほどケンカごしだったサスケが落ち着いた顔つきになっている。
何かを、決意したような。そしてそのままフッチの腕を掴んでひきよせると、
唇をあわせた。最初は軽めに、そして一瞬唇離れると、今度は深めに。

 フッチは、自分の身におきていることが最初はよく掴めなかった。しかし唇に伝わってくる
この感触。確かに、サスケとキスをしている。あれほど待ち望んだことだ。

 そして唇が離れると、サスケはフッチをまっすぐにみつめた。フッチも負けじとサスケを
見やる。しかし涙は限界にきていたようで。別に悲しくなんかないのに、今のショックで
調節がきかなくなったのか、限界を超えてしまったのか、涙が溢れ出してしまったのだった。

「サ・・・・サスケぇ・・・・・・・・ヒッ・・・ック・・う」
ぼろぼろと涙を流すフッチをサスケが優しく抱きしめた。
「やっぱ・・・オレのせいだよな・・。不安にさせちまって、ゴメン・・・・
オレ、オマエがすげえ、好きだから、嫌いだなんていわないでくれよ・・」

 フッチもぎゅっとサスケにしがみつく。こんなに密着したのは初めてだった。こんなに
優しいサスケも初めて。なにもかも初めてずくめ。
だって今まではサスケがなんにもしてくれなったから・・。


「僕もっ・・・僕も、ごめんなさいっ・・・・っキライなんかじゃないっ大好き・・!」
「ホントだな?いつも人を悩ませやがって。
もう、他の奴とはキスなんかすんなよ、挨拶ってのもダメだ!!絶対だぞ!!」
「うんっっ・・・・!!もうしない!!」
そうしてもう一度顔を合わせると、今度はフッチの方からキスをした。
不安が取り除かれたフッチの笑顔は、涙だらけだったけれどもとても愛しいものだった。

 そしてしばらく寄り添ったまま、二人は黙っていたのだが、
フッチはふと口を開く。
「ねえ、サスケ」
「あ?」
「更にこの先はいつしてくれるの?」
「・・・・は?」
「だからこの先。まさか知らないわけないよねえ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
サスケが思いっきり赤面した。
「・・・・・・・っオマエってもしかしてエッチすぎねか!?」
「何それえ!!サスケはしないつもりだったのか!?」
「・・・っ!そうじゃねえけどよ!!!」

 とっても男前だった今夜のサスケは見事にオクテに逆戻り。しかしこのサスケ
がここまでしてくれたのだから、フッチも今日の所はこのくらいで満足しておけば
いいものを。そしてまたしても言い争いがはじまったのだが・・、その時。

「も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!うるさいしじれったいし!このバカップル!!!」
なんと城主であるナオが梯子のほうから顔をだしたのだ。
「・・・!!ナオさん!!!」
「・・・・・・・!てめえきいてやがったな!!」
「聞くも何も全部まるぎこえだもん!!続きすんのかなあって寝る時間おしんで
盗み聞きしてれば、また言い争い始めちゃって!!せっかくいいところまでいってた
くせにバカだよ君達は!!」
「盗み聞きしてた奴がえらそうに説教たれてるんじゃねえ!!」
「僕だけじゃないよ、ほら、みなさ〜ん!!!」
そしてナオの後ろからぞろぞろと・・・。
「よ、バカップル!!!」
「せっかくいいところだったのによ!」
「サスケ、男ならフッチの要望を叶えてやれよ!!」

フッチはもう赤面しすぎて何もじゃべれない状態。
そしてサスケは。
「おまえら最低だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!とっとと退散しろ〜〜!!」
サスケの馬鹿でかい叫び声が真夜中の本拠地中を響き渡ったのだった。











またもやぬるい小説を・・・!!フッチまた泣いてます。
ちょっとケンカっぽい所書きたかったんですがね・・・・。玉砕!