噂の真相

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「なんだかバスケ部内で、ある噂が流れてるらしい・・・城戸、聞いたか?」
「はあ?なんのことだよ」

掃除当番の暁を1人残して、穂村と清春は部室に向かっていた。
バスケ部三年は3人しかいない上に同じクラスなので、新学年に
なってからはバスケ部3人組で行動することが多くなった。

いまいち掴み所のない穂村だったが、こうして毎日一緒に過ごす
ようになると、なんとなく彼の細かい表情がわかるようになる。

すなわち今の彼は、・・・どうやらおもしろがっている様子だった。

「なんの噂だよ。また誰か転校するってか?」
「それがおもしろい噂か?」
「もったいぶってないで言え」

穂村は少々考え込んでいるようだったが、清春の方を向いて一言。
「そうだな、そろそろ頃合いか・・・・・・」

フッと含み笑いをする。
清春は嫌な予感がした。







体育館入り口のドアをスパーンと勢いよく開けた者がいた。
・・・・・・・清春である。

彼は目には見えなくとも何やら感じ取れる怒りのオーラを発していた。
体育館内にいた部員全員が、その雰囲気に縮こまる。

「全員集合ーーーーーーーーーーーーーー!!!」

本日は暁を抜かして、ほぼ全員が集合しているようだった。

「城戸・・・・・・・・・おちつけ」
「うるせえッ!・・・・・・おまえら、素直に白状しろ!!」

白状?部員全員が隣の者と顔を見合わせ、なんのことやらわからないと
いった仕草を見せている。

その時、マネージャのひまわりが雰囲気をぶち壊す挙手をした。

「はーい、せんぱーい!」
「おう、そこ言ってみろ!」

清春の怒りのオーラをものともせず、ひまわりはアッサリと口を開いた。
こういう時、天然の者は便利である。


「東野センパイは城戸センパイの許婚って
ホントですか〜〜〜〜〜〜!?」

「そうだ、その噂だーーーーー!
誰が流したか素直に白状しろーーーーーーーー!!」



とうとう清春が暴れだして、逃げまとう一年に掴みかかる。

「城戸先輩、落ち着いてください〜」

長身の三上がなんとか押さえ付けても清春の勢いは止まらない。
成二も加担してむりやり動きを押さえようと必死だ。

「城戸せんぱいっ、それだけじゃありませんよ」
「牧野さん、これ以上は・・ッ」

そんな2人の苦労をはねのけて、ひまわりは更に話を続ける。
穂村と赤坂はすでに非難して、離れた所から見学していた。

「城戸せんぱいッ、別に誰も信じちゃあいねえから落ち着いてくれよッ」

島はそう叫んだものの、他の部員からの否定の声。

「「「え?」」」」(何十人分のハモリ声)

・・・・どうやら皆、信じていたようだった。

清春、更に大暴れ。

「どうやったらオレらが許婚になるってんだよッ!!」

「だからせんぱい!噂の続きなんですけど。
東野先輩は実は女性で、でも家庭の事情でどうしても男性として
生きなくてはならなくて。だけど16の誕生日を迎えた時に城戸先輩と
契ることで女性に戻れるという掟が・・・・!
ところで『契る』ってなんですか?」

遠いところから穂村の一声。
「牧野、辞書を引け」
「はーい」

清春はもはや脱力していた。
(こ、こいつらこんなアホな話をホントに信じて・・!?)

「え、違うの?」
「東野せんぱいってやっぱり男なの?」
「でもなんだか信じちゃってたんだよな」
「許婚は流石に大げさとは思ってたけど・・」
「いいなずけって何?」

(こんな漫画でもありえないような話をあっさり信じるものなのか?
そもそも「掟」ってなんだ「掟」って!!オレと暁の家なんて
せいぜい二流メーカーの社宅であって由緒正しきお家柄でもなんでも
ねえし!!)

「だって城戸せんぱいと東野せんぱいって一緒のところに住んでるんだろ?」
「小さいころから一緒だったって・・」
「東野せんぱい、可愛いし」

清春がピクリと反応した。
「そこーーーーーーーーーーーーーーーーッ」
「う、うわあ」

うっかり『かわいい』発言してしまった一年に掴みかかる清春。
「おまえかっ、犯人はおまえかッ!?」
「えーっ!?、違います、違いますーー!お、オレはマネージャーから」

清春がひまわりに向き直った。

「おい・・牧野」
「え!?私も成二から聞いたんですよ〜」

皆の視線が一斉に成二に集中する。

「え、ええええ?!お、オレですか?」
「成二・・てめえ・・」

清春がジリジリと近づいてくる。成二は心底恐怖を覚えた。

「お、オレ・・ッ、オレだって人から聞いたしッ
第一オレは冗談半分に人に言っただけで、別に信じちゃあいませんでしたよっ」
「どうでもいい・・・てめえが犯人だな?」

清春に胸倉を掴まれた成二。

「お、オレは・・真から聞いたんですーーーーーーー!!!」



周りが一瞬にして固まった。
正確にいうと、羽深真という人間を知っている上級生陣が・・である。

「なるほど・・羽深か」
「あの人なら、羽深(弟)をからかうためならなんでも言いそう・・」

遠いところから穂村と赤坂がそっと呟く。

「羽深ぁ?・・ッ、マジなのか?
この後におよんであいつのせいにしてるんじゃねえだろうな?」
「違いますよ〜〜〜っ!!」
「・・・あいつにしては低レベルな置き土産じゃねえか・・ッ」

犯人はもう、この場に・・この学校に、いないのだ。
清春はどこに怒りをぶつけたらいい?

・・・・・・とりあえず弟の成二を殴ることにした。

「う、うわわわ先輩すいませんーーーーーーーーーーっ」
「成二頑張れ!」
「余計なこと言うなひまわりっ」

その時。

スパー−ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

「みんなーーーーーーーーーーーーー遅れてゴメーン!!」



勢いよく体育館の扉が開き、いつも笑顔の暁が今日も変わらぬ超笑顔で
入ってきた。皆の視線が一気にそちらへ集中する。

「あれ?みんな何かあったの?話し合いの最中だった?」
「ひ、東野せんぱーい助けてくださいよー」
「あ、暁・・・」

成二の助けを呼ぶ声を聞き、てくてく近づいてきた暁が
そっと清春の腕にふれる。

「キヨちゃん、何があったのか知らないけれど・・仲間をぶっちゃダメだよ」

ニコッと笑顔が罪深い、暁。
逆らえない清春は、不機嫌ながらもゆっくりと手をおろしていく。

皆がホッと一息した頃・・・

穂村はそろそろいいだろう、と時計を確認した。

「さ、練習始めるぞ。島、まずは顧問を呼んでこい」
「えーーーッ、いてもいなくてもいいじゃねえか、あんなヤツ!」
「一応いないと困るんだ。」

暁の登場・そして穂村のかけ声により場は一転する。
清春も仕方なく、練習への態度に切り替わったようだ。

「ふー、危なかった・・」
「成二くん、大丈夫?」
「心配してくれたのは三上せんぱいだけです・・」
優しい声をかけてくれる三上に、成二はそっと涙を流した。


「火のない所に煙はたたない・・・」


赤坂がポソリと呟く。

「え、赤坂くん何か言った?」

三上が聞き返すより先に、ひまわりが乱入する。
「あ、その言葉きいたことあります!えーっと、えー・・」

「噂が立つということは、その根拠となる事実があるものだ・・って意味」

・・・・皆が「なるほど」、と頷いた。

「あんなに仲がいいから・・つい、なあ」
「特に違和感なかったから・・」

あれほど皆に仲の良いところを見せ付けてる2人なのだ。
自覚してないのは本人達だけだろう。

「ね、キヨちゃん。さっき掃除の時にね」
「おう、何があった?」

清春は先ほどの怒りはどこへいったのか、嬉しそうに暁の話を聞いていた。







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書いてる自分が一番恥かしいっス!
でも楽しいっス!
今どき許婚なる単語を知ってる中学生も
いないだろうと思ったのですが、
敢えて使ってみました。

まあ部員全員、許婚はネタだとわかっていても
2人がつきあってるだろうくらいのことは
黙認しあってると思うのですがな(゚д゚)=3

本当にアホウなもので申し訳なく・・(;´д`)






>>モドル