せんぱいと僕と。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++ 先ほどからどうも気になる物体がピョコピョコと跳ねている。 兎・・でもあんな何度も垂直に跳ねたりはしないだろう、と光男は思った。 立ち読みしていた雑誌を元の場所に戻し、気になる方向をじっと眺めてしまう。 ふと横を見ると、踏み台があるではないか。 ・・なんで利用しないんだろう。 小さき人は、どうやら本棚の高い所に収まっている本をとろうとしてるらしい。 一度着地に失敗してズルっとこけたのを見てしまい、思わず光男から 笑いがもれる。 こけた拍子に踏み台に足をひっかけ、やっとその存在に気づいた模様。 小さき人は照れるかのように頭をかく仕草をした。 ふと気づくと頭上に影ができている。小さき人が頭を上げると 後ろからぬっと手が伸びて、目当ての本が抜き取られた。 「あっ・・・!!」 「これ、とりたかったんだろ?」 「す、すいま・・・・・・・・・・・・・せっ!!??」 小さき人は大変驚いた。それもそのはず、本をとってくれた人物は 自分が前から憧れていた里見先輩だったから。 「あ、わわ・・ッ、あ・ありがとうございます」 「いーえ、どういたしまして」 光男はその本を小さき人に渡す前に、つい本のタイトルを見てしまった。 その瞬間、抑えていた笑いが一気に溢れだしてしまう。 「・・・『身長10cmアップガイド 〜もう誰にもチビだなんて言わせない〜』!?? こ、これ読みたかったの!?ぶ、ぶははははははははははッ」 「う、う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」 腹を抱えて笑い出してしまった光男に、小さき人はバレてしまった恥ずかしさと 自分の真剣な気持ちを馬鹿にされたのとで、顔を真っ赤にしてうなり声をあげる。 その様子に気づいた光男は、 「ご、ごめんごめん。えーと、山崎・・司、君だったよな?」 「え!?な、なんで僕のこと・・」 「そりゃあ知ってるさ。いずれ一緒にバスケする仲間かもしれないんだから」 いきなり名前を呼ばれたことに驚いた司は、先ほどの怒りはなんのその、 頬を赤らめて照れ笑いをする。 ・・・素直に反応を返す子だなあ、なんだか動物・・子犬?みたいだ、と光男は思った。 「ごめんね?真剣だったんだよな。 笑ちゃったお詫びになんかおごってあげるよ。おなかすいてない?」 「え、そっ、そんな・・!!おごってもらうなんて」 ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「え」 「あ」 司の腹から聞こえた音・・どうやら腹の虫が活発に活動してるらしい。 「ぷっ、・・ははははははははっ、ホント素直っていうか天然っていうか・・っ」 「わ、わ〜〜〜〜!!今日はたまたまなんですぅっ!」 憧れの先輩の前でここまでの失態・・!! 司は穴があったら間違いなく入りたい心境だった。 光男に引っ張られるまま、2人で近くのマクドナルドに入る。 「金のない男子中学生が腹いっぱい食べれる所っていったら、 やっぱりマックだよな」 「そ、そうですね」 「なんかぎこちないなあ・・・そんな緊張しなくてもいいよ?」 「でっでも・・その、友達とか先輩とかだけで こういう場所来ることってあんまりなかったから・・」 「そっか。つい最近まで小学生だったんだもんね」 「う・・・」 どうやら子供扱いされるのは嫌らしい。 「ほら山崎、なんのセット頼む?」 「えーと、・・はんばーがーせっと・・」 「すいませーん、ビックマックセット2つ、ポテトはLサイズで。 あ、ナゲットもつけてください」 「え」 「これくらい食べないと。・・・大きくなれないよ?」 「でも食べきれません〜」 「あまった分はオレが食べてあげるから大丈夫」 司はほんのり顔を赤らめた。 『あまった分はオレが・・』 なんだかいきなり親密な関係になったみたいで、ちょっと嬉しかったらしい。 禁煙席で空いてる場所を探しだし、向かい合って座ってみたりする。 それだけでも司にとっては幸せなのに、色々な世間話を持ち出して 自分を笑わせてくれる光男。 今日の日記はとっても長くなりそうだなあと夢心地に思っていた、その時。 「あ〜〜〜!!超珍しい組み合わせ!! ほらほら見てよキヨ!!」 「ああ?・・・・・・・おおホントだ」 司にとっては聞きなれた声。毎日部活で聞いているからだ。 「は、羽深せんぱいと・・城戸せんぱい!!」 司は思わずガタッとイスを鳴らして立ち上がった。 「里見先輩〜〜〜、どうしたんですか今日は?」 羽深が笑顔で走りよってくる。 「羽深・・そっか、城戸と仲いいんだ」 「それはもう。今日はデート中なんです」 「だれがでーとだっ!!!」 満面の笑顔で答えた羽深に対し、キヨの罵声と鉄拳が飛ぶ・・・ これももう見慣れた光景だった。 からかうことがとにかく大好きな羽深。司も当然ターゲットに入っているわけで、 司の肩をいきなり叩いてこんなことを言い出す始末。 「そっか〜、よかったね司。さ、キヨ!邪魔しちゃ悪いから僕らは2階行こっ!」 「へ、2階?」 「あれ、同席しないの?」 清春と光男が首をかしげた。 「だって、ねえ?」 羽深が横目で司を見やる。 「は、羽深せんぱいッ!変な気をまわさないでください!!」 「そう?でも、まあ・・・僕もキヨと2人っきりになりたいし」 「キショイこというな!!」 「じゃーねー、里見先輩と司〜」 「ああ」 「あ、せんぱいぃ〜」 羽深が清春の学ランの首元をつかんで、ずるずる引きずっていってしまう。 清春の怒鳴り声が遠くまで響いていた。 「あの2人はいつもあんな感じなのか?」 「はい・・・」 羽深が変な言葉を残して去っていってしまったので、 なんだか気まずいなあと司は下をむく。 よかったねなんてハッキリと言われてしまって。 そんな、自分の一方的な好意が光男にバレてしまったら・・ 「司、口が止まってるぞ。ほら、あ〜ん・・・」 ポテトを差し出されて、反射的に口を開けてしまった司。 口に入れてもらった瞬間、司の思考が動きだしてパニック状態となる。 (い、今ッ、里見先輩に、先輩にっ、ぽてと・・ッ・・・ っていうか、名前ッ、名前で呼ばれてなかった!?) 頭がぐるぐるしてしまう。こんなに一気にいろんなことが押しよせてくるなんて。 「ほら、よく食ってでかくなれよ」 微笑みながら、ポテトを差し出してくる光男。 光男的には犬に餌付けしてるような気分なのかもしれない。 しかし司にとってはここまで動揺した日はないと断言できるくらい、 緊張と至福の時を過ごすこととなったようだ。 「さとみせんぱいっ、・・・今日はありがとうございましたっ!!」 ぺこりとお辞儀をする司。 最初は緊張してロクに言葉が出なかった司も段々とマトモに会話できるようになり、 お互いの帰り道の分岐点に来るまで肩を並べて二人で歩いてきた。 「いーえ、どういたしまして。家まで送っていこうか?」 「そんなっ、とんでもない!僕は男だから大丈夫です!!」 大丈夫かなァ、と光男は一瞬思ったが、本人のプライドもあるだろう・・・ これ以上言うのはやめることにした。 「そうだ、これ・・・」 「?・・なんですか?」 光男がバックから紙袋をだす。形からして本と思われるが・・ 「これお土産。持って帰って」 「お土産って・・・そ、そんなおごってまでもらったのに」 「散々笑いまくっちゃったからね、楽しませてもらったからそのお礼」 楽しませたなんてそんな・・・と司は頬を赤らめながら、頭をかいた。 (ホントおもしろいなこの子・・) 光男はニコリと笑いかけた。司は遠慮しつつも、袋を受けとる。 「それでは失礼しま〜す、せんぱいさよーならー」 ぶんぶんと手を振る司の姿が見えなくなるまで、 光男はその場から見守っていた・・らしい。 さて、家に戻ってからドキドキしながら光男からもらった紙袋を開けた司だったが。 なんと中身は・・・ 『身長10cmアップガイド 〜もう誰にもチビだなんて言わせない〜』 ・・・・・その時の司の心境は想像にお任せ致します。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++ |
えー、これまた妄想が独り歩きしました。
(特技:独り遊び)
微妙に光男の性格ちがいますね・・
こんな爽やかじゃないですよね、あいつ。
さ、コレも原作の展開次第で速攻削除ですな。
書いてる自分が
>>モドル