DEEP RIVER

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「なぁ羽深ー、教科書貸してー」

ひょっこりと顔を出した穂村が、なんの遠慮もなく他クラスに堂々と入ってきた。

「嫌って言っても無理やり持ってくんだろ?なんの教科書だよ」
「別に嫌がる必要もないだろーに嫌がるからいけないんだよ。
 で、数学の教科書なんだけど」
「あ、ムリ。」
「なんで」
「僕も忘れたから。」
「・・・ふーん、じゃあ・・おーい城戸!」
「んあ?」

たまたま廊下を歩いていた清春を捕まえる穂村。
迷惑そうに清春が眉をよせる。

「なんだよ」
「数学の教科書貸して」
「またかよ・・・」
「またって・・オレはおまえに借りるの初めてなんだけど」
「さっき羽深にも貸したんだよ、ちょっと待ってろ」

律儀に教科書をとりに行く清春。

「ふーん、羽深・・借りたんだ」

穂村が羽深を横目て見やる。

「なに?なんか不都合でも?」
「べつに」

穂村のいぶかしげな発言にむっとする羽深。からかうのはスキだけど、
されるのはスキじゃないらしい。そうしてる間に清春がすぐに戻ってきた。

「ほい、穂村」
「サンキュー・・・ん?
・・・城戸・・・おまえこれすごいセンスだな」

パラパラと教科書をめくっていた穂村が一言。

「なんだよ、センスって・・・てぇなんだこりゃああ!!」

期末試験の範囲・最終ページに赤の油性ペンで大きくキスマークが
書かれてあるではないか。

「あ、それ僕が書いたんだ〜うちのクラスの方が一足先に試験範囲
発表になったからさ!印つけといてあげたんだけど」

羽深がなんの悪びれもない様子で、むしろ笑顔で返事をした。

「よかったな、城戸。」

穂村までもが笑顔で清春の肩をポンと叩く。

「よくねえよ馬鹿やろう!!消せ消せ消せッッ、なんとしてでも消せ!
そうだ、いっそオマエの教科書と交換しやがれ!」
「えー、愛の証なのになあ。それに僕の教科書、すでに名前書いて
あるけどそれでもいいの?」
「う・・・」

「まあいいじゃん。模様として堪能すれば」
「穂村・・他人事だと思ってやがるだろ」
「そんなことないよ。羽深、オレの教科書にも落書きする?」



「しない。別に穂村のこと愛してないし」



きっぱりと言い放つ羽深。


・・・一瞬沈黙がながれた?と清春は思った。


「・・・んじゃオレ行くわ。ありがとな、城戸」
「ん、ああ」

右手をスッとあげてお礼をしつつ、穂村は自分の教室へ戻っていった。

「キヨ〜、今度の日曜さあ」
「なあ羽深。」
「ん?なに?」
「今・・穂村さあ」
「・・・・・?」

なんか一瞬おかしくなかった?・・と言おうとして、清春は思いとどめた。
とりたてて言う必要もないか、と思ったからだ。

「・・・やっぱなんでもない」
「なんだよ?気になるじゃん」

穂村の目つきが笑ってるようで、なんだか笑ってなかったような・・・

実は、羽深もそのことは気づいていたのだけれども。




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「あれ?穂村が一番のり?」
「みたいだな。羽深一人か?珍しい」
「キヨ掃除当番なんだって」
「ふーん」

放課後、部室に入ると穂村1人だけ。
その穂村は、そのままの姿勢でこちらも見ずに着替えをすすめている。

「司、まだ来てないの?いつも早いのに」
「今日はアイツ休み」
「え、なんで」
「さあ・・なんだっけな。それより、羽深・・手を出せよ」
「なんで」
「いいから」

着替え終わった穂村がやっとこちらを向いたと思ったら、
いきなりそんなことを言う。

羽深は嫌そうに右手を差し出した。
穂村が手首をガシっと掴む。

「何すんの?」
「爪・・・・切ろうか」
「・・・・・・・・・」

穂村はバスケ部お手製救急箱(と名のついたもの)を引っ張り出して、
中から爪きりを取り出した。

「自分で切るから・・いい」
「いいじゃん、オレに切らせろよ」

返事を聞かないまま、羽深の右手を引っ張って位置を固定し、
爪を切り出してしまう。

「もったいないな、きれいな形の爪なのに・・先がガタガタになってる」
「・・・・・・・・・」

羽深には、爪をかんでしまう癖がある。

普段は大丈夫だけれども、気に食わないことや落ち込んだ時にその症状は
現れるようだ。めったにないことなので、あまり皆には知られていないけれど。

「今年の4月に入ってから、また噛む回数増えたよなあ」
「いちいちチェックしてんの?」
「まあね」

ケンカごしに応えても、穂村はいつも上手く流してしまう。

だからコイツ苦手なんだよ、と羽深は思う。

「城戸に・・・ふられまくってんだなあ。その証だよ、コレ」
「なんだよいきなり」
「城戸がかまってくれないんだろ?」
「・・・・・・・・」
「城戸はいっつも他のこと考えてるもんな、ほら、東野・・」
「うるさいな」

手をふりほどこうとした羽深だったが、
思ったよりも力の強い穂村の腕に押さえられてしまう。

パチン、と爪を切る音が響き渡る。
穂村は手馴れたもので、他人の手でも綺麗に爪を切り揃えていく。

「・・・羽深、オレのこと最近さけてない?」
「別にさけてないよ」
「うそだー。」

ハハハ、と穂村は笑いだしてしまう。

「そういうところが苦手なんだ」
「苦手?」
「穂村はなんだか苦手」
「本人を前にしてよくいうぜ」
「そんなこと言いながらも笑顔のまんまなんだよ、穂村」
「おまえだっていつも笑顔じゃん。
・・・・それに、これでも傷ついてるんだけど」

「うそ・・・」


羽深が黙ってしまったので、穂村もそれ以上は言わなかった。
沈黙が流れたまま、部屋には爪を切る音だけが響いている。


「ほら、切り終わったぞ。これでしばらくは爪噛めないな」
「・・・・・・・・ん」
「お礼は?」
「別に頼んでないし」
「可愛くないなあ」

「・・・離せよ」
「は?」
「手、離してってば」
「やだ」
「ッ、・・・ふざけんな、終わったんだからもういいだろ?離せよッ」

穂村は更に腕に力をいれてしまい、羽深の腕を離そうとしない。
それどころか自分の唇に羽深の腕を引き寄せて、手のひらに軽くキスをした。

「!?」

羽深が目を見開いている。一瞬どう反応すればいいか困ったようだが、
すぐに反抗の態度を見せた。

「離せよッ、いいかげんにしろ!」
「嫌ならオレを殴ってでも逃げればいいだろ?そしたらオレもやりかえすけど」
「僕に嫌がらせしたいなら、最初っから殴ればいいだろ!
こんなやり方、趣味悪すぎだ!」


「もう、限界なんだ」
「・・・限界?」


羽深の言葉にあわせて、穂村がフッと笑ったような・・、気がした。


「殴りたくは、ない・・・・・むしろ、強姦したいね」
「・・・は?」


流石に動きの止まった羽深。


・・・・今、なんと言った?


とんでもない台詞をはきながらも、穂村は笑顔のままだ。口元は笑っている。

なのに笑ってない。

・・・・笑っているのに笑ってない。


(本気・・・・?)


羽深は背中に悪寒が走った。



「い、嫌だーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」



羽深は力の限り穂村を突き飛ばして、後ずさる。
その後を追って、穂村がゆっくりと近づいた。


「優しくしたら、すぐ逃げる。

・・・・だったら、もう優しくしない。」

「・・・・・・・ッ」


優しくしない?

・・・確かに口は悪くとも、穂村は羽深に優しかった。
羽深をフォローしてくれるのはいつも穂村。

だから、それに甘えていたのも事実である。

清春に冷たくされた分だけ、穂村にやつあたりをしていたかも・・



でも、羽深は前から穂村が苦手だった。
どこが苦手?と聞かれると、なんとなく・・としか答えようがないけれども。

自分の全てを見透かされているようで。
笑顔の裏に、何を考えているのか。

自分だって相当裏はあるけれど・・・

穂村は違う。
穂村の裏は、果てしなく深い、熱い。

自分を見る穂村の目が、怖くてたまらない時がる。

怖くてたまらないけれど、


同時に、引き寄せられる・・・・・


「そんな怯えるなよ。もう皆来るだろ?
それとも・・・・・・皆が見てる前でしたい?」


羽深は金縛りにあったように動かないまま、穂村を見つめていた。

穂村は更に距離を縮める。


もう、穂村は笑わない。
だからもう、逃げられない・・・


羽深が思った、その時。

笑い声とともに、足音が聞こえる。


・・・・・バタンッ



「オーッス!」




石倉と斉藤が元気な挨拶と共に部室に入ってきたことによって、
一気に場の雰囲気が壊される。

「あれ?まだ2人だけかよ。おせーな、今日はみんな・・・・うわっ!!」

羽深がバックを握り締めて、一気に部室から飛び出した。
一瞬のすばやい動きに、石倉と斉藤は呆気にとられてしまい
反応が少々遅れる。

「お、おいっ、羽深?羽深!!」

部室から顔を出して、羽深の後姿を眺めるが、
あっというまに見えなくなってしまった。

「なんだよ全く・・穂村、何かあったのかあいつ?」

「まあ、あったんですけどね・・・」

「?」

穂村の含み笑いの意味がわからぬまま、石倉と斉藤は首を
かしげるしかなかった。







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これって削除対象ナンバーワンの作品ですよ?
実際穂村くんは普通に可愛い子だと思ってますんで。
受でも良し!とか思ってるくせにこんなん
書いちゃいました(´ー`).。o○(・・・)

原作で少しでも穂村たん愛しすぎ!という
箇所が出てきたら、ためらいなく削除いたします・・

ま、現在は穂村たん天下!羽深ヘタレ!
って感じですよね。(え、違う?)

えびはぶだと純愛になるのに、ほむはぶだと
どうしてこうなるんだろう・・・

さて、激しく駄文になってしまいましたが
続編もどきが裏にございます(^^;)




書いてる自分が >>モドル