ほんの1センチ。 2


 僕は屋上にて左頬を腫らしてふてくされているサスケに声をかけることに
した。やはり多少は責任を感じていたから。

「・・・・サスケ・・・。その、今日は稽古もう終わったの?」
「・・・おう」
そっけない返事と共に一瞬こっちを振り向いたけれど、すぐにそっぽを向いてしまう。
こりゃあ相当キレてるな・・・。僕は単刀直入にきいてみることにした。
(殺されたらどうしよう)

「・・サスケ、頬どうしたの?」
「・・・・・・・・・・・。」
彼は黙して答えない。言いたくないのだろう。しょうがないな・・。

「・・それ、フッチにやられたんでしょ?」
「・・・!!・・・、なんで知ってるんだよ・・・。」
やっと僕の方に関心をむけたらしく、こちらへ振り向いてくれた。

 やっぱ、昨日の件はフッチにとって相当腹立たしかったようで。どのような
展開になったのかはよくわからないけれど(まあ想像はつく)、フッチの
右ストレートを見事左頬に決められたことは間違い無しなようだ。

「そりゃあ・・・、まあ。勘・・というか。その、フッチも不機嫌そう
だったし・・・・・やっぱケンカしたの?」
「・・ケンカしたつもりはねえ。」

何ぃ!?・・ということはフッチが一方的に怒っただけか。
悪いとは思いつつも野次馬心が段々湧いてきて、どんどんサスケに尋ねてしまう。

「なんでそうなったの?」
われながら白々しい質問だが。だがサスケはその質問には答えず、
あまりしゃべりたくなさそうだったが観念したかのように言葉をつなぎはじめた。

「・・・・・・フッチはどんな感じだった?」
ふてくされているものの、やはりフッチのことは気になるらしい。

「どんな・・・っていうか、今日はまだ会ってないんだけどさ。昨日・・・すごい
怒りのオーラをまとっているのをみちゃってね。」
さすがにサスケと女の子の密会がフッチをそうさせた、とは言わなかった。

「・・・・・・・・・なんでそうなったのか、オレも良くわからねえ。」

!?な・・・なんだってぇ!?
・・・・・ということは、サスケは昨日の現場をフッチにみられた
ことに気付いてないってこと!?・・フッチは何も言わずにサスケを殴ったのか?
でも日頃は温厚なフッチなのだから、いくら逆上してるとはいえ、
いきなり殴り倒すなんてことは・・・多分ないだろう。
どんなに怒っていたって、サスケを信じている部分もあったはずだ。

・・・ということは・・・

・・・・サスケ、フッチに何をいったんだ・・・・。

僕はサスケに疑いの眼差しを向ける。

「あの・・・・サスケ君・・・よろしければ、昨日フッチと何があったのか
教えてくれないか・・・?」
「・・・・・・昨日・・・」
サスケはあまり言いたくなさそうだったが、このまま黙っていても何も始まらないと
感じたのだろう。昨日のフッチとの会話を思い出そうとしている。

「昨日・・は、オレとフッチの稽古が別々だったんで、夕方までずっと会えなくて・・。
そんで、やっと会えたものの、フッチの様子がちょっとおかしくて・・」

 様子がおかしい・・・怒り、もしくは悲しみを抑えた表情だったのだと推測する。

「そんで、オレクッキーもってたからフッチに食べるように勧めた。俺もフッチも
結構甘いの好きだし。少しはフッチが落ち着くかなあ、と思って。」

(特に甘いの好きなのは君だろう。)
それを聞いて、僕はふと思ったのだが・・・。もしかして、クッキーって・・・。

「あのう、サスケ・・・そのクッキーてもしかして、手作り・・・?」
サスケが一瞬表情を変える。・・やはり!!

「そのクッキーって、どこから入手したのさ・・・」
「どこって、まあ、その・・・・テキトウに。」
サスケがしどろもどろに答える。

「・・まあ、いいよ。それでフッチはそのクッキー食べたの?」
「いいや。食わなかった。」
そりゃあそうだろうよ・・。かわいそうな、フッチ。

「んで、その後は?」
「たいした会話はしなかったけれど・・」
「左頬を腫らせるほどの決定打になった会話は何さ。」

「・・・。明日、久しぶりにちょっと予定があいたからさ、フッチとサウス
ウインドウに遊びにいくことにしてたんだけれど・・・。」
「・・・してたんだけど?」

「行けなくなった・・・てフッチに言った・・・・・。」

!!!?まさか、その理由は・・・女の子とデート!!という・・・!?

「サスケぇ、お前と言う奴は・・・・・・!!」
僕も流石に握りこぶしになってサスケに構える。

「な、何怒っているんだよ!!おまえまで!!!」
「黙れ、二股は流石に失礼だぞ!」
「は?何いってるんだよ!!しょうがないだろ、オレだって明日は楽しみに
してたのにさ!いったんロッカクの里に報告に戻れ!ってモンドさんがうるさい
んだよ!」

・・・・・・・・・・・・は?

僕の怒りはしゅうしゅうと音をたてるように静まった。
っていうかなんだって?ロッカクの里に一時帰郷?

「・・その理由、フッチに言ったの・・・?」
「言う前に殴られた。」
「・・・なんで早く言わなかったのさ・・・。」
僕は呆れ顔になって尋ねた。
僕までこんな誤解をしてしまったということは、怒り頂点だったフッチなんかは
特に・・・・。

 つまりフッチにしてみれば、

女の子からもらったあまーい手作りクッキーをサスケにすすめられて。
更に前から約束していたデートも、女の子と会うためにキャンセルされた。

という事になる。(これが誤解だったとしても、その時のフッチはこう解釈
したに違いない。)

「・・・なんだよテンプルトン。怒ってきたかと思えばいきなり考え込んじゃって。」
サスケが不満顔で尋ねてくる。

・・・・この鈍感野郎。

「はっきり言わせてもらおう、サスケ!!」
僕は漢前にビシっと発言した。
「な・・何を?」
サスケが一瞬たじろぐ。そんなことはおかまいなしに言葉をつなげてみた。

「君、昨日女の子に告白されてただろう!!」
サスケがかなり激しく反応する。びくっと肩を震わして。忍者がそんな感情あらわに
していいのだろうか。

「なんでお前が知ってるんだよ!!!!あん時は確かに他の気配がないことを
確認してだな・・・・!!」
「至る所に視線はあるんだよ!!!(それはそれで怖いが)
っていうか確認すれば告白でもなんでもオッケーなのか!?」
「そういうわけじゃねえけどよ!」

さすがに僕も声を荒げるのは・・・疲れたので。少し落ち着くと。

「まあ・・・そん時はたまたま展望台の望遠鏡から偶然みえちゃったんだけれど、さ。

・・・・仮に、だけれど。フッチがもしもその告白の事、知ってたらどうする・・?」

サスケの顔が青ざめてくる。

「そりゃあ、非常にやばいな・・・・・。」

「そうそう、ちなみに君はその告白、オッケーしたの?」
「するはずねえだろ!!」
「それにしちゃあ、あん時大分嬉しそうだったけどなあ・・・。」
「覗きグセなんてやらしすぎるぞ!!」
「偶然みえちゃったんだもん。」
まあ、そこらへんは確かに僕も悪かったと反省してるけれど。

「・・・もちろん断りはしたものの、告白されて悪い気はしねえだろ・・・。」
サスケがぼそりと答える。まあ正論だ。サスケだって男の子だしね。
でも今回は悪条件が色々と重なってしまった。

「なんにせよ、フッチにとっとと明日キャンセルの理由、話して来た方が
いいと思うよ。フッチ、最大に勘違いしちゃってるからさ」
「・・・なんで?」
「君だってとっととデートキャンセルの理由いっちゃえばいいのに
妙な場をもたすからこういうことになったんだ。どうしてその場でいわなかったわけ?」

「・・ちょっと待て。話しがみえないぞ。確かに明日の約束をいきなりキャンセル
したのは悪かったけどよ。それとオレの帰郷になんの関係があるわけだ?」

ほんと鈍ちん。いや、最悪の事態をあえて考えないようにしてるのかも
しれないな・・・・・もうはっきり言うしかない・・。

僕はサスケをまっすぐみつめて。

「・・・フッチはねえ、君が明日他の子とお出かけするって思っているの。
それこそ、昨日告白してきた女の子、とかね。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
サスケが間抜け顔になって答える。

「つまりね、フッチも昨日、いたんだ。・・・僕の隣に。」

 僕の爆弾発言にサスケが真っ白になる。そしてどうやら時が止まって
しまったようだ。

「・・サスケ?お〜い、しっかしろ〜」
僕がサスケの顔の前で手の平をパタパタさせると。

「な・・・・。」
サスケのが地の底からしぼりだしたような声をあげて。

「な〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んでそのことを先にいわなかった〜!!!!」

 サスケが僕の胸倉をつかむ。まあ、こういう反応が返ってくるだろうとは思って
いたけれど、ちょっと怖いな・・・。

「自分だって気付かなかった癖に〜。この鈍感バカ!!そもそも君が
女の子にもらったクッキーとか明日のキャンセルの理由とかもっと
要領よくやれば良かったんだよ!!」
「うるせえな!告白は断ったけども、クッキーだけはどうしてももらってくれって
言われたし、もらった以上は捨てるなんてもったいないし。帰郷するんだって
説教されに戻るようなもんなんだからフッチに言うのもなんだかハズカシかった
んだよ!!」

 まあ、きけばどれももっともなことなんだが。特に説教されることがフッチにばれたら
恥ずかしいなんて、なんとかわいい理由だろう!そしてお互い怒鳴りあった後、なんとか
落ち着きを取り戻し・・・。

「・・・・まあいいから。フッチ探してきな・・・・。」
僕は行って来いの合図として片手をひらひらさせた。
「おうよ!!!」

 そういってサスケはこの高さ、屋上からそのまま飛び降りようとした。その時・・・。
(忍者だから身軽なのは分かるけれどこっちが怖い・・・。入口から出入りしてくれよ・・・)

「まあ・・・確かにこっちの方が悪いんだけれどさ。
・・・・・・・・もうちょっとオレのこと信じてほしかったなあ。」

 ちょっとさびしげな微笑を浮かべながらそんなことをいう。(笑う余裕が
でてくるってことは、今の怒鳴り合いにて大分気持ちをスッキリさせたということか)
思わずそんな彼の言動と表情に一瞬・・・かわいいと思ってしまった。
フッチの気持ちがちょっとわかるような・・・。男らしいかわいさっていうか。
しかしここは心を鬼にして。

「そんなことを言ったってダメ!!調子良すぎだぞ!
あのねえ、・・逆に考えると、日頃温厚なフッチがそこまで逆上して嫉妬
してくれたんだから、ね?」

「・・そうだな!!」

 サスケはにっと笑って、(どうやら僕のこの一言でかなり納得できたらしい)
そのまま飛び降りてしまい、僕が下を覗いた時にはもうすでに姿がみえなかった。

 ったく、騒々しいカップルだ・・・。今回はさすがに僕も悪いと思って
たから、ちょっとは協力(?)したけれど。とりあえず一仕事終えた僕は
今日の実務にかかるべく、図書館の方にむかったのだった・・・。





 そして更に次の日。昼頃になってようやくサスケのみが食堂へやってきた。
・・・あれ?仲直りしたんじゃなかったのか?

「よ!サスケ!今までどうしてたんだよ!」
先に食堂に来ていたシーナがサスケの肩を叩いた。
「あ?寝てたんだよ。」
サスケはやや不機嫌気味に答える。
「何不機嫌になってるんだよ?一昨日はいい思いしただろ?
・・・ところで今、奥さん(フッチのことらしい)いないよな?
実は、またオマエと話したいって娘がいるんだけど。」


・・なるほど。サスケに色々と話をすすめてきてたのはシーナの仕業だったのか・・。
こりゃあ,フッチにバレたら、またえらいことになるかも・・・。

 僕が少し後ずさった時、肩に何かがぶつかった。それが人だとわかり、
「あ、すいませ・・・・・!!!!!!」

謝ろうとした僕が思わず振り返った、その人は!!!

 朝ご飯(&昼ご飯も兼ねている)のトレイを二つ分かかえたフッチだったのだ。
また恐ろしいオーラを身にまとっている・・!!
 やはり、昨日の内に仲直りしていたらしく、この時間まで寝てたってことは
まあ、二人でそれなりのことをしてたからという推測がつくのだが。

・・・・それにしてもシーナ、タイミング悪すぎ・・・。

 あわててサスケがシーナの口をふさぐが、もう手遅れだったらしい。
一瞬険悪なムードがあたり一面に流れた。(シーナはもちろんのこと、一般客も
不穏な空気を感じ取ったらしい。まわりが静かになったような・・)

 フッチは微笑を浮かべ、僕の方に振り返る。僕はあわてて声をかけてみた。
「お・・・・おはよう、フッチ・・」
「おはよう、テンプルトン。悪いけど、これ食べちゃってくれる?」

 そういって、ご飯二人分がのったトレイを僕に預けてきた。重いっての!!
この2人分を食べろってのか!!?

 そうしてフッチは後ろを向き、駆け出して食堂からでていってしまったのだ・・。
「あ・・フッチ!!ちょっ・・・!!」
 僕は一応止めようとしたけれど、当然間に合わない。

サスケは一瞬時が止まっていたが、突然シーナを殴り倒し。
「この、ばかったれ〜〜〜〜〜〜〜〜!!
・・・・・・・・・・・フッチ、ちょっと待てよ!!」
 サスケの姿がふっと消えてしまった。さすが忍者、このスピードならすぐフッチに
追いつくだろう。
 
 シーナは殴られた頭をさすりながら、
「あ〜。また修羅場になっちまったか〜。」
「わかってやってるクセに・・・・・。」
僕はあきれながら頭をおさえてシーナに文句をいった。

「浮気は男の甲斐性だっていうだろ?」
笑顔でそんなことをいうシーナに、
「あの二人にそんな理屈おしつけんなよ・・・。」
思わず溜息をついてしまった。

 この男は絶対おもしろがっている!!何故か二人が険悪になるたびに僕は
まきこまれるんだから、余計なことはしないでくれよ・・・。

「はい、シーナ。ちゃんと、一人分は食べてね。」
「げっ!!オレ今食べたばかりなんだけど!!」
「問答無用!!とっとと食え!」

僕は、仕返しとばかりにフッチから預かったトレイをシーナに
押し付けたのだった。ちゃんと食えよ、全く!!




・・続く。


うわあ、見事につまらない作品になってしまいました!!
フッチのこんな性格いやだってクレームがきそうな気が・・!!
サスケもいまいちはっきりしない奴だし。フッチ嫉妬大魔王!

途中までは書いてて楽しかったのですが。オチがうまく
いかんのでシーナを登場させてしまったし。

そしてこれはまだ続くのです。
次回、フッチ編。乞うご期待・・・・。

っていうか、この話、段々タイトルと関係なく
なってきてるような・・・。(言わなきゃばれないのに)