〜アジア横断編〜

とりとめのない話(マレーシア)



タマンネガラ Taman Negara 国立公園の鳥
 半島マレーシアには2つの大きな国立公園があって、タマンネガラはそのひとつ。管理事務所のあるクアラタハン Kuala Tahan には、道で行くこともできるけれど、これがかなりハードで公共の交通機関は通ってない。だから旅行者はふつう下流の村、クアラテンベリン Kuala Tembeling からボートに乗る。2時間半の船旅は景色が綺麗だし、鳥も見られるので600円は高くない。川岸の枯れ木にはカザリオウチュウがにぎやかに群れていたり、コウライウグイスやアオショウビン、クロサイチョウが休んでる。空にはカンムリワシが何羽も浮いていて、キタカササギサイチョウが飛んでいく。
 船は川の真ん中にあるフローティングレストラン、浮島食堂と訳したらいいのかな、に着く。ここではトレッキングツアーもやっていて、数時間のものから何泊もかけてジャングルの奥地へ入っていくものもある。けど、他の人のペースに合わせて歩くと鳥を見にくいことはよくわかっているので、申し込まない。川の右岸が国立公園内で、管理事務所やオフィシャルのしゃれた宿泊施設、フルコースを食べられるレストラン、つまりリゾートがある。高い。だから左岸へ行く。こちらには村があって、民間の経営する安宿がある。ドミトリーで1泊300円くらいから。50メートルほどの“メインストリート”には食堂や売店、インターネットショップまであって不自由しない。ただ、ネイティブの食堂はかなりスパイシーなので、旅行者はみんな浮島食堂に通っていた。
 川を渡るのには渡し舟を使う。朝7時半からやっていて、1回15円。右岸の船つき場のすぐ上がリゾートで、林縁と呼べる環境は、近場ではここくらいしかない。ところどころベンチやテーブルもあるので、ぼーっと鳥を見るのにはちょうどいい。実のなる木にはヒヨドリ類がやってくる。見たのは6種類で、メジロチャイロヒヨ、カンムリオリーブヒヨドリ、アカメチャイロヒヨドリ、コアカメチャイロヒヨ、ハイガシラカンムリヒヨドリ、それとキガシラヒヨドリ。中国南西部のジャングルにはメジロヒヨドリとノドジロカンムリヒヨドリがいたけれど、ここではそれぞれ同属の“カンムリオリーブ”と“ハイガシラカンムリ”に入れ替わっていて、おんなじような動きをしているのが面白い。“キガシラ”は少ないようで、公園のスタッフにラッキーだったねと言われた。ルリコノハドリルリノドハチクイもレギュラーメンバーだ。林縁に居座っている鳥を見ていると、ときどき林の中を渡っていく鳥が見られる。オオバンケンやチャイロゴシキドリ、サンショウクイ、クロバンケンモドキなど。暑くなってきたのでちょっと森の中を歩こうと遊歩道に入ると、いきなり密林になる。なにしろ森の年齢は1億3千万歳、氷河期さえ乗り越えているんだから。見通しがきかない中、イカルのさえずりのイントネーションを変えたような鳴き声が、地面近くから聞こえる。これはハシブトムジチメドリ。アオメモリチメドリは図鑑に繁殖期が12‐8月とあるけれど、11月半ばに巣立ち雛をかかえていた。識別、合ってると思うけどな。キツツキ類は、黒と赤のアカハラコガネゲラ、緑と赤のモリアオゲラ。その他、シキチョウ、インドハッカ、ハシブトアオバト、ハシナガクモカリドリ、キミミクモカリドリ、サイチョウ、キホオゴシキドリ、クロアカヒロハシ、ムナフムシクイチメドリ、ハチクマ、クロエリヒタキ、チャバネアカメヒタキ、クロカケス、カンムリカケス、オウチュウカッコウ、スズメ、イソシギ、ササゴイ、コサギ、ツバメなど。クジャクを見た、という人もいた。
 この公園では、定期的に鳥類担当のグループが山に入って、調査をしているそうだ。だいたい1日で50〜60種くらい出ると聞いた。僕が見たのはその7、8割か。識別のめんどくさいアマツバメ類やベニサンショウクイ類、サボったしなぁ。今度から、もっとちゃんとやりまーす。(01.11.24、メルシン)

マレーシアの料理(その1:マレー料理)
 マレーシアに住んでいる人種はおもに、インド人、マレー人、中国人。 だから町を歩けばマレー料理、インド料理、中華料理の店が並んでいて、好きなのを選べる。とはいうものの、実は僕にはインド料理とマレー料理の境界線がはっきりわからなくて、インド系の人がやっていればインド料理なんだろう、マレー系の人ならマレー料理かな、とアバウトに感じていた程度。両方の人種が同じ物を売っている時もあったりしたので、ひょっとしたら実際に料理がボーダーレスになっているのかもしれない。
 インド料理屋の店先には鍋がいくつも並んでいる。中身はチキンカレーや、フィッシュカレー、野菜カレーなどで、赤かったり、黄色かったり、緑色だったりする。これをごはんにかけるか、小皿もらってナンにつけて食べる。鍋の横の大皿にはフライドチキン、魚の切り身や練物のフライなんかがあるので、カレーにトッピングできる。いつもだいたい欲張って、2、3種類のルーをごはんにかけてもらうのだけれど、ときどきものすごく辛いのがある。そいうのはやっぱり赤い。ルーは日本のみたいにドロッとしていないので、ごはんにかけるとさらりと染み込んでいく。とはいっても、何種類も入っているスパイスは荒挽きなので、味はしっかりごはんについておいしい。僕が日本でカレーライスを食べるのは年に数回しかないけれど、あのルーは「カレーシチュー」と言った方がいいような気がする。煮込み過ぎのせいなのか、スパイスの混ぜ具合のせいなのか、マレーシアのカレーと比べると、かなり単純な味だ。1食分の量は日本と同じで、値段は100円くらい。
 よく食べたマレー料理に、ムオタバ Muratabak というのがある。マレー風お好み焼き、という言い方がわかりやすいかもしれない。とはいっても、日本のお好み焼きとは生地から違って、たぶん卵やバターなんかを小麦粉と混ぜた、要するにパンの生地を使う。これが良く伸びる。ステンレス張りのテーブルの上で、生地をちょっと振り回すようにぺたりと台に貼り付けては、はがす。これを繰り返しながら、上手にうすーく伸ばす。その上に卵をひとつ落とし、指先でちょちょいとかき混ぜて黄身を崩す。そして真ん中に具を平たく盛ると八方から包み込み、時々アブラヤシ油をふりかけながら鉄板で焼く(写真)。具は野菜の千切りやターメリックで味付けした鶏肉のミンチなど。マーケットの屋台で買うと、カレーソースや赤タマネギの千切りの小袋をつけてくれる。この赤タマネギが酢っぱく漬けてあって、お好み焼きに欠かせない紅ショウガとおんなじ役割を果たす。おお、こういう味覚のセンスって、マレーシアの人たちも同じなんだと、なんかうれしくなる。具によって値段が違うけれど、ひとつ60〜100円くらい。おやつ程度の量で、1食分には足りない。
 マレー人はほとんどがイスラム教徒で、11月中頃から1ヵ月間のラマダン(断食)をする。断食とはいえ、日が暮れたら食べていいことになっ ている。この期間にはいつもと違う食べ物がマーケットに並ぶ。どんな宗教的意味があるのか知らないけれど、黄緑やピンクやオレンジといった色とりどりのケーキや団子だ。ココナッツやらチョコレートやらを材料に使っていて、やたら甘い。ひとつ10円くらいから。話が飛ぶけれど、僕はトライアスロンのレース直前には、“カーボローディング”という食事制限をしていた。これはレース当日にエネルギー切れにならないよう、できるだけ高いカロリーの燃料を蓄えるためのもの。やり方はこう。レース前の1週間のうち、初めの4日間は炭水化物をできるだけ食べずに、肉や魚ばかり、つまりタンパク質の食事で過ごす。すると体が炭水化物の断食状態になる。そこへ、残りの3日間かけて、ご飯やパン、パスタ、つまり炭水化物をつめこむ。するとダイエットのリバウンドのように細胞がこれを取り込んで、体がふだんよりたくさんエネルギーを取り込む・・・んだそうだ。ラマダンの1ヶ月間、朝から何も食べずに夕方いきなりこんな甘いものを食べるのは、ジンタイカガクテキにはどうなんだろ。毎日カーボローディングみたいなことしてるとしたら、太ると思うけどなぁ。(つづく) 

とりとめのない話(シンガポール)