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6月19日(水)(海上~シンガポール:客船+高速艇+バス)
イスラム教の人は朝4時からお祈りをするから、みんな早起き。つられ
て6時には起床。デッキに上がって、半分眠りながら漫然と鳥を探す。た
まにツバメ類とコグンカンドリが飛ぶ。注意深く双眼鏡を覗いて見るけれ
ど、そうやすやすとはシロハラグンカンドリは現れてはくれない。スマト
ラ島に近づいた時にはシロガシラトビが魚を探していた。
ほぼきっちり25時間で、インドネシアのバタム島に到着。歩いてとな
りの国際港へ行き、シンガポール行きの高速艇に乗りかえ。これが所用時
間たった45分で800円もする。インドネシア国内航路と比べたら、も
のすごい経済格差だ。そして3度目、約70日ぶりのシンガポール。港か
ら初めてマーライオンを、斜めうしろ右45度から、見た。ロン毛だった
。
お馴染みの安宿に行ってみたら、経営者がかわっていて知らない人ばか
り。階下のレストランのインド人だけが、Hello,
friend! How are you!?
と挨拶してくれた。(写真;そうそう、こんな国だったよな、シンガポ
ール。)
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6月20日(木)(晴時々曇/シンガポール)
朝、まずオーストラリア領事館まで出かけて、ビザを申請した。入国は
2ヵ月後だけれど、有効期間は1年間だからもう取っておいてもいい頃。
ちなみに「電子ビザシステム」なので、パスポートを係官に手渡すと、読
み取り機を通して完了。1分でできてもちろんタダ。それから本屋をまわ
ってオーストラリアのガイドブックを2冊、自転車旅行用とアニマルウォ
ッチング用を買う。ついでにオーストラリアの鳥の図鑑をチェック。いい
のがある。欲しい!インドネシアのウォーレセア地域との共通種も多いし
、ものすごく欲しい!!けど、重たいのであった。東南アジアの図鑑とダ
ブルで携行するのは、体に悪いわ。せめてにチモール島に入ってから買お
う。発行されていることは知っていたけれど、ジャカルタでは見つけられ
なかったスンダ地域(スマトラ、ジャワ、バリ、カリマンタン)の鳥の図
鑑があった。ペーパーバックのフィールドガイド・タイプなのに、700
0円以上もする。なんなんだこの本は。
帰りの地下鉄のなかで、「かっわいい子いるなぁ、さすがシンガポール
」と思って女の子の三人連れを見ていたら、いきなり日本語を話し始めた
。(写真;気持ちははやるが、オーストラリアはまだ遠い。)
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6月21日(金)(晴のち曇/シンガポール)
実は今回シンガポールに来たのは、彼女に会うためでもある。彼女とは
クアラルンプールで会ったあと、何度かメールのやりとりがあった。正直
なところこの2ヶ月間、僕は彼女とこの先もなんとかうまくやって行けそ
うな気持ちと、中途半端なことはせずきっぱりと別れるべきだという気持
ちの間を、時には半日変わりで行き来していた。通信事情の悪いスマトラ
島で、ひと月も前に交わした約束の日。それが今日。
空港へ。ここはどこへでも地下鉄で行けてしまう小さな国だ。案内ボー
ドで関西空港発の便の到着時刻を確認する。フライトは予定通りだった。
到着ロビーでお互いを見つけると、僕らはいつも通りゆっくりと歩きなが
ら近づいてゆき、向かいあって立ち止まり、「久しぶり」、と言葉を交わ
した。(写真;ホテルの中庭「には」、人間的な空間がある。)
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6月22日(土)(雨のち晴/シンガポール)
乾季には珍しく、朝から小雨。吹き抜け造りのガラス張りのカフェで朝
食を終える頃に、やっと陽が差し始めた。シンガポールの街を二人で歩く
のは、まるで日本でデートをしているみたいだった。電車に乗り、デパー
トで買い物をし、スターバックコーヒーでお茶をする。日差しはちょっと
強いけれど、外を歩くのに疲れたらホテルのカフェで冷たいビールを飲め
ばいい。
ゆうべイタリア料理を済ませてしまったので、今夜は彼女のガイドブッ
クご推薦のレストランで、中華料理を。そしてホテルの59階の部屋に帰
ってから、僕は彼女に、今も別れたいと思っている、と告白した。(写真
;涼しい木陰。)
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6月23日(日)(晴/シンガポール)
彼女は言う。「もし」。もし旅の中で僕が他の誰かを好きになったとし
ても、それは仕方のないこととして受けとめてくれると。もし一夜限りの
恋なら、自分にわからないようにしてくれればいい、と。とは言われても
、こっちとしてはそういうわけにもいかないだろう。もし僕のパーソナリ
ティがそんな風にできるほど器用ならば、こんなところまで自転車で鳥を
見に来るようなコシカタを今までしてはこなかっただろうし、だいいちあ
なたが僕に惹かれることはなかったと思う。僕は最近、彼女が自分に傾い
てくることの責任を感じて、メールを書くときにも会った時にも、優しい
気持ちを掛けることを避けつづけていた。けれど別れを受け入れてもらっ
たあとの今日一日は、心の向くまま彼女に優しくすることができた。
チャンギ空港、午前1時10分。轟音に顔を上げると、シンガポール・
エアラインのジェット機が滑走路を滑って行った。さよなら。(写真;夜
の展望ホールから。)
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6月24日(月)(晴/シンガポール)
離陸する機体を見送ったあとも、しばらくはぼんやりと滑走路を眺めて
いた。やがて睡魔がやってきて、僕はそのままバックパックをまくらに深
夜の展望ホールで眠った。目覚めたら5時半。レストランで軽い朝食をと
り、通勤時間を読書でやりすごしてから地下鉄に乗る。「そごう」の「紀
伊国屋書店」で和書をめくったり、商店街で自転車のスペアパーツを探し
たり。もはや行きつけになったホーカーズの屋台で昼を済ませてから、店
を変えてシナモン・クロワッサンでお茶を飲み、安宿のドミトリーにチェ
ックイン。(写真;灰色の国。)
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