〜アジア横断編〜

探鳥日記 ネパール (カカルビッタ〜ポカラ) 

(2002年1月22日〜2月8日)


1月22日(火)(曇時々晴/カカルビッタ Kakarbitta :45km)

 8時半出発。国道34号線を南、コルカタ方面へ少し戻る。うおーっ、やっぱ西ベンガルのハイウェイはすげぇな。アスファルトはデコボコで路肩もないし、大型トラックとバスが肩をかすめて爆走していく。北東インドのテロリストの危険性なんて目じゃないよ! 西へ折れて国境の村ラニガンジュ Raniganj で出国印をもらう。荷物チェックは一切なし。橋を渡ってネパール入国、こちらもすんなりだ。
 ネパール側の国境の町カカルビッタにホテルをとる。いつも通り地図を買いに出かけようと思ったら、途中寄った政府のツーリストインフォメーションが、十分使えそうなやつをタダでくれた。その場で道中の宿のある町をぜんぶ教えてもらう。あっという間に用事が済んだ。宿のテラスで地図とガイドブックをながめて午後を過ごす。さてこの国の、どこ行こっかな。(写真;サイクルリキシャーの行き交うこの橋が、インドとネパールの国境。)
1月23日(水)(濃霧のち、晴時々曇/カカルビッタ〜イタハリ Itahari :95km)

 8時半出発。ネパールの時間は、インドの時間プラス15分という微妙な時差だった。僕の腕時計には、そんなタイムゾーンの設定は入っていない。この国だけなんだろうか。
 国道には番号がついているのではなく、名前が付いている。“マヘンドゥラ・ハイウェイ”を西へ。朝方は肌寒いけれど、一時間も走ったら暑くなってきて上着を脱ぐ。昼過ぎはTシャツ一枚でもいけるくらい暖かい。道には車は少ないし、路肩もあって走りやすい。村や田んぼにはところどころ林もあって、景色が穏やかだ。
 路面が良くて、予定よりずいぶん早くイタハリのホテルについた。町を歩いて物価リサーチをすると、インドより3、4割安い。こりゃ、自転車の旅をしやすい国に来たかも。(写真;暮れなずむ町。ネパールの町は、インドのにくらべてずっと整然としている。)
1月24日(木)(濃霧のち晴/イタハリ〜ラハーン Lahan :100km)

 9時出発。風の強い朝だった。しかも向かい風だ。国道マヘンドゥラ・ハイウェイを西へ進むとサプタコシ Sapta Koshi 川の堤防に沿って南西へ走る。河畔林がただ事じゃないくらいイイ感じで、ここがコシタプー Koshi Tappu 野生生物保護区。ちょっと寄ってみようとは思ったものの、管理事務所への入り口がわからず、まあいいやと素通り。どのみち保護区内の宿には、バカ高くて泊まれないしね。少し下流に堰があるためこのあたりは水が豊富で、道沿いに湿地や小さな池がある。まるで小鳥の群のようにぴーちくぱーちくと騒がしいのは、リュウキュウガモ数百羽の群。
 向かい風は夕方まで続いた。ラハーンのホテルに入るとすぐ、ばったりとベッドに仰向けに倒れ、ふうっとため息をつく。筋トレしたような一日だったなぁ。こんな日の夕食はちょっと贅沢にいこうと思い、小ぎれいなレストランを選んだ。そこでスコッチウイスキーのブローカー、キランに話しかけられる。ほろ酔いで上機嫌の彼は、カトマンドゥへ来たらネパール森林省の野生生物の担当者を紹介するよ、と言って名刺をくれた。(写真;サプタコシ川の水と砂は、まるで珊瑚礁のビーチのようにきれいに見えた。でも実際には、それよりずっときれいなはず。すぐそこのエベレスト山から流れてくる。)
1月25日(金)(濃霧のち晴/ラハーン〜ラルバンディ Lalbandi :100km)

 朝起きて外の様子を見る。風がなくてひと安心。きのうみたいな日は何日も続いたりはしないらしい。今度から向かい風の日は休もう。9時前出発、西へ。ダルケバー Dhalkebar の町を過ぎると、道沿いの樹がどんどん大きく、林が密になっていく。そしてまもなく両側とも原生林になった。ウシやヤギがたまに入っているので、林床は二次植生なのかもしれない。とはいえ、もしこれがインド・西ベンガルあたりにあれば、野生生物保護区になっているだろう。それが数十キロも続く。いい国だね、ここは。
 ラルバンディは小さな町だった。一軒しかないホテルに泊まるしかなかった。 (写真;道で会ったネパールの少年。表情も顔立ちも、ホッとさせる。)
1月26日(土)(濃霧のち晴/ラルバンディ〜シムラ Simra:55マイル…?、サイクルメーターの表示設定を間違えてた!)

 9時前出発。今日も国道マヘンドゥラ・ハイウェイを東へ。町から少し離れると、また森の中を通る一本道。こんなとこ大好き。全身白っぽくて長い毛に覆われ、顔だけ黒いテナガザル (Presbytis entellus) や、しっぽが中途半端な長さのサル (Macaca mulatta) が路肩で拾い食いしている。道は時々スロープで低くなっているところがあって、そういうところはコンクリートだ。たぶん雨季には川になるんだろう。
 国道トゥリブーヴァン・ハイウェイに突き当たって、右折北進。しばらく行くと、ガイドブックになんにも情報が載っていなかったパルサ Parsa 野生生物保護区の入り口があった。入って管理事務所の人、クルビーに話を聞く。テロリストがいるからあんまりジャングルの奥へは行けないけれど、よかったら明日の朝来てみたらどうかと言う。感じのいい人だったので、そうすることにした。
 保護区内に宿はないので、南へ5キロほど戻ってシムラのゲストハウスに泊まる。(写真;道で会ったネパールの少年、その2。マイケル・J・フォックスに似てないか !? 後の子もイイ味の笑顔。)
1月27日(日)(曇、朝方と午後に一時雨/シムラ〜ヘトウダ Hetauda :30km)

 霧ではなかった。どう見ても曇っていた。8時半に宿を出ると雨がパラつく。パルサ野生生物保護区に着く頃には、少しだけ晴れ間が見えた。クルビーに出迎えられて、そのままいっしょに遊歩道を歩き始める。とはいえ、管理事務所の隣にある軍の施設にことわりを入れても、わずか数百メートルほどしか森の奥へ行けないのだった。そりゃこんな危険なところ、ガイドブックに載ってなくて当然だわ。ネパール人の旅行者さえ来ないよと、クルビーは言った。「ここへビジターが来たのは、去年キャロル・インスキップが来て以来、君が初めて。」・・・だそうだ。キャロル・インスキップってだれかというと、今使ってる図鑑 Birds of Nepal の著者。つまりここは、世界的な鳥の権威か、のんきなバードウォッチング・チャリダーくらいしか訪れないような所なわけだ。
 ほんの管理事務所のまわりだけぶらぶらしたり、ベンチでぼーっとしたり。それでも、シロハラオウチュウやらコセイインコやらモズサンショウクイやら、30種ほど見られた。シカ Spotted deer (Axis axis) が森にも草地にもたくさんいた。
 昼にはパルサ保護区を出て北へ。すぐに山道になり、大きな尾根越え。下りたところの町がヘトウダだった。大きな菩提樹のそばにあるホテルに入る。(写真;これ、シカじゃなくって、アンテロープ(Boselaphus tragocamelus)。まつ毛と足元がおしゃれ。)
1月28日(月)(曇時々雨/ヘトウダ〜カトマンドゥ Kathmandu :バス)

 目が覚めたら雨だった。本降りだ。でも今日は平気。バスでカトマンズへ行く日だから。昼前のバスに乗ってトゥリブーヴァン・ハイウェイを北へ。百キロないし、3時間くらいだろうと思っていたら、とんでもない。6時間以上かかった。すごいワインディングとアップダウンが続く。四国の山の中そっくりの景色。 谷から切り立った尾根の斜面になんとか道をつけ、ちょっとした谷の入り口に集落がちょろっとある。
 カトマンドゥに着いたのはもう真っ暗になってから。ホテルの客引きに連れられて宿入り。テロによる治安悪化で観光客は例年の半分以下なので、向こうはいっしょうけんめい客を探している。値段もディスカウントされていて快適。それはそうと、標高1300メートルの街は、寒いっ。(写真;ヒンドゥー教は多神教のうえ、それぞれの神が生まれ変わりをして次々に姿を変えてゆく。面のモチーフはいっくらでもある。)
1月29日(火) (曇のち晴/カトマンドゥ:0km)

 カトマンドゥに来た目的のひとつは、ヒマラヤ山脈のトレッキングに必要な装備と情報を集めること。朝、まずは宿を100円安い所に変えた。そこで知りあった日本人リュウタが、タイミング良くトレッキングを終えてもうじき帰国する所だった。買おうと思っていたグローブなどを安く譲ってもらう。それから、ホテルに紹介してもらった旅行代理店で、アンナプルナ地域のことを尋ねる。さっきまでは、まあ、3500メートル、2週間までにしとこっか、と思っていたんだけれど、写真見て話を聞くと、欲が出てくる。5400メートル、3週間、行っちゃおっかなぁ。(写真;街角にある古い建物の“微細彫刻”。昆虫の体表の電子顕微鏡写真を見ているよう。)
1月30日(水) (晴/カトマンドゥ:0km)

 一週間ほど前にウイスキーのブローカー、キランと知りあった。カトマンドゥに来たらネパール森林省の鳥の研究者を紹介するよ、という約束通り、ニーレシュの電話番号を教えてもらう。かけてみるともう話は通っていて、昼前に会うことになった。これがこの街に来たふたつめの目的。ひと通り国内の鳥の話を聞いたあと、彼のオートバイでボランティア団体、ネパール鳥類保全 Bird Conservation Nepal の事務所などをまわる。
 午後は、せっかくカトマンドゥまで来たんだからと思い、寺の建ち並ぶ古い街を歩く。同じヒンドゥー寺院でも、インドのにくらべるとだいぶ落ち着いた感じ。うっすら京都を思う、というか仏教的な雰囲気を感じる。チベット仏教寺院だとガイドブックに書いてあれば、こういうのがチベット風なのか・・・と思うし かない。なにしろチベットに行ったことないんだから。
 同じホテルに連泊。(写真;ボドゥナース Bodhnath の仏舎利塔。大味なデザインだこと。)
1月31日(木) (晴/カトマンドゥ:0km)

 寒くてベッドから出られない朝が続く。ゆっくり朝食を食べ、午前中は銀行へ行ったり、買い物をしたり。少し前に妹からの電子メールで、実家へ転送された年賀状の差出人を知らせてきた。午後は日当たりのいい喫茶店で、その返事を絵はがきに書きながらのんびりと過ごした。
 夕方、リュータが入りびたっているアクセサリー屋に彼の仕事を見に行った。彼は銀細工職人の“雛鳥”。この数日、その店の道具を借りて指輪を作っているのだった。閉店後、店の人とリュータ、トレッキング帰りの日本人マキちゃんといっしょに飲みに行った。(写真;古都、カトマンドゥ。)
2月1日(金) (晴/カトマンドゥ〜ヘトウダ:バス)

 用事が済んだ街から抜け出す。バスに乗っている間は、感覚を閉ざした空虚な時間。午後にはヘトウダに到着。自転車を預けてあったホテルに戻る。ここの宿、安いくせに Star Television が部屋で見られるんだよな。ついつい映画を見て夜深ししてしまう。(写真;洗濯物とりこんで。)
2月2日(土) (晴/ヘトウダ〜サウラハ Sauraha :70km)

 9時出発。国道マヘンドラ・ハイウェイを西へ。緩い丘をいくつか越えて、標高を下げて行く。そのあとは平らな田園地帯。天気が良くて風もなく、あっという間の70キロだった。ロイヤルチトワン Royal Chitwan 国立公園のすぐわきの村、サウラハへ。今は乾季でハイシーズンのはずなのに、共産テロの影響で部屋はガラ空きのうえ、大幅ディスカウントしてくれる。リバーサイドビューの新築ホテルに入った。
 午後、ホテルの庭からラプティ Rapti 川の河原へ散歩に出かける。水たまりのまわりにセキレイ類がいくつかいて、 ハクセキレイ亜種alboides?はまだ冬羽。キガシラセキレイは夏羽になりかけで、もうちょっと変わってくれないと亜種が calcarata か citreola かわからない。オオハクセキレイもいる。見つけたトウネン類は全てオジロトウネンだった。草のある砂地にいるチョウセンタヒバリはけんかっぱやくて、ちよっと他のが近づいてくるとすぐに激しく追いかけまわしていた。
 川沿いのオープンカフェから見る夕日がきれいだ。ここ、居心地いい。(写真;学校帰りの女子高生。)
2月3日(日) (濃霧〜晴/サウラハ〜ビスハジャールタル Bis Hajaar Tal (往復):20km)

 霧の中、フィールドスコープを持って8時に出発。ビスハジャールタル、“二万の湖”を目指す。ここはつい数日前の新聞で、ラムサール条約の保護区にリストアップされることが発表された湿原。
 左右に時々小さな池の見える林の中の一本道をゆく。あっちからもこっちからもシラコバトの声が聞こえる。森にはムナフタケアオゲラ、草地にはチベットモズ。一番多いオウチュウ類はシロハラオウチュウ、騒がしい連中だ。水辺にはアジアヘビウインドアカガシラサギアジアレンカクリュウキュウガモの群などなど。どれもインドやネパールではよく見かけるやつばっかりだけれど、数が多い。コウノトリの仲間はオオハゲコウ、コハゲコウ、スキハシコウ、エンビコウが勢揃い。ちなみにワニ(クロコダイル)はでっかいのが水辺にごろんごろんと寝転がっている。よく確認して歩かないとマジで危険。
 午後はまたホテルの前の河川敷を散歩して、川沿いの店でお茶を飲むと日が暮れていく。(写真;川沿いの村、霧の朝。)
2月4日(月) (晴/サウラハ:0km)

 7時半、ガイドのボジュとラプティ川を渡る。ここからが国立公園の中だ。霧の中を歩き始めると、周りの環境は初めは背の高い草地、そのうち河畔林となる。ボジュは無口で、こっちから何か尋ねると知っていることは答えてくれて、知らないことには答えない。僕にとってはこういうガイドがベスト。ひとりでしゃべっているガイドなんて、ただの雑音だ。彼はアカガシラチメドリとかムナフジチメドリとか、藪にいる見にくいやつを見つけてくれるし、何よりありがたいのは、鳴き声を教えてくれること。図鑑の文章中の“swee ti-ti-hwee hwee hwee ti swee-u”とか読んでも、そんなもんリズムもイントネーションもわかりゃしないって。
 夕方、いつものオープンカフェでお茶を飲んでいると、ヨーロピアン数人のテーブルから“ Bengal Florican ”という声が聞こえる。マジかよ、ベンガルショウノガン見たの?、レアモノじゃん。すぐに、ミルクティーを持って行って話の輪に入れてもらい、ポイントへの行き方を聞いた。よっしゃ、明日から一泊二日で行ってみよう。(写真;夕暮れはハンナと話すのが日課になった。)
2月5日(火) (濃霧のち晴/サウラハ〜メグハウリ Meghauli :バス)

 午前中は洗濯をしたあと、小さな村を結ぶ小道を散歩。いつもぎゅわぎゅわと低い声で騒ぎながら、地面でタムロしているツチイロヤブチメドリ。近づくといっせいに樹の枝に上がって、じろじろとこちらを見る。川岸の低い草地に二十羽ほどの小鳥が群れていた。なんだろと思って双眼鏡で見ると、意外にもムシクイ類の顔をしている。けどその行動は、今まで見たことのあるムシクイ類のパターンとはぜんぜん違った。これがチフチャフか。昼前にはTシャツ一枚でも汗ばむ陽気。
 午後一番に、ボジュがホテルまで迎えに来た。今日から一泊二日で“ベンガルショウノガン・ミニツアー”を組んでもらったのだ。ローカルバスを乗り継いで、夕方にはメグハウリのコテージに入る。ロイヤルチトワン国立公園の、西地区の入り口の村だ。さてあした、ショウノガン見られるかな。(写真;お金持ちは、なんとセスナで飛んできて、ランドローバーで公園内を回る。)
2月6日(水) (濃霧のち曇、昼前から晴/メグハウリ〜サウラハ:バス)

 6時半、深い霧の中出発。少し歩いてボートで川を渡ると、国立公園内。しばらく行くと茂みの中にサイがいるようでがさごそと音がする。だんだん音が激しくなってきてヤバいかな・・・と思ったころに、ボジュが「こっちだ!」と言って走り出す。フィールドスコープをかついで時々うしろを降り返りながら全力疾走。すぐにすごい勢いでサイが道に飛び出してきた。サイはそのまま道を横切って背の高い草地に飛び込む。かなりエキサイトしていて、草地の中を走りまわっていることが音でわかる。3頭だ。走る音が止まると、今度は相手を威嚇する時に出す「ブォシュッッ! キヒーィ、ブォシュッッ! キヒーィ、ブォシュッッ! キヒーィ ・・・」という大きな息づかいと声。マジでケンカしている。
 ベンガルショウノガンを見たと聞いた草原には、まだ霧が深いうちに着いた。まわりに注意しながら入っていったけれど、サイが一頭水浴びをしているだけ。時間が早すぎるのかも、ということで道へ戻り、ぶらぶら歩きながらバードウォッチングをして昼前まで過ごす。そして再チャレンジ。・・・・・・・、いなかった。広大な国立公園内にいることはわかっていても、それが見られる場所に出てくるところに巡り合わせるのは、難しいもんだ。ま、そのうちどっかで会えるだろ、と一時間ほどであきらめた。ボジュとバスにゆられながら、サウラハへ戻る。(写真;無口なガイドとサイの糞)
2月7日(木) (濃霧のち晴/サウラハ:3km)

 あしたで一週間になるチトワン国立公園も今日が最後と決め、遠出はせずに一日過ごした。朝から盛大に洗濯したり、買いもしないのにみやげ物屋を見て回ったり。ビジターセンターの近くの川岸にはタイワンショウドウツバメの巣があって、巣立ち雛が落ちていた。この鳥、真冬に子育てするんだ。川岸の流木の影では、マユナガムシクイがうろうろ。虫を採っているみたいだった。
 同じホテルに6泊目。(写真;エレファント・ブリーディング・センターに行くと、去年生まれた小象と遊べる。)
2月8日(金) )(濃霧のち晴/サウラハ〜ダマウリ Damauli:85km)

 いつも通りの霧がすっかり晴れてから出発、自転車でサウラハを出る。マヘンドラ・ハイウェイを西へ。途中北へ折れてカトマンドゥ−ポカラ・ハイウェイへ向かう途中に、あれっと気づいた。この道、バスで通ったことあるぞ。以前ヘトウダからカトマンドゥへバスで移動した時、トリブーヴァン・ハイウェイをまっすぐ北上したものと思っていたんだけれど、実は大きく西へ大回りして、マヘンドラからカトマンドゥ−ポカラ・ハイウェイを通っていたのである。どーりで7時間もかかるはずだ。バスに乗っている時の僕は、方角の感覚も閉じているらしい。
 標高を上げていくと、山の木々の葉は小さくさらさらと風になびくようになり、松林さえ見え始めた。田んぼの広がる谷は日本の景色のようだ。丘程度のアップダウンをいくつか越えて、ダマウリへ。町の入り口に近いホテルに泊まる。(写真;小さなホテルの台所。ガスもあるけれど、マキが燃料。)
2月9日(土) (晴/ダマウリ〜ポカラ Pokhara:50km)

 8時半に宿を出る。これから行こうと思っているアンナプルナ地域のトレッキングでは、ポカラが拠点になる。ポカラは標高800メートルの街。だから登り坂タイヘンかも・・・と思っていたのだけれど、地形はそれほどハードではなく、気候がいいのも手伝って気持ちのいいサイクリング。おまけに、ちょうど山の斜面が温まって上昇気流が起こり始めるころに、いい感じの谷あいに出た。低いところをウロウロと飛ぶワシやタカが道のすぐ上にいる。とりあえず4、5種類なんか飛んでる。でっかいのはミミハゲワシ。ピンク色のハゲた頭と首、足が黒い体によく目立つ。少し切り立った尾根の先に座り込んでいるやつなんか、ボリュームたっぷりだ。エジプトハゲワシは小さいけれど、黒い風切り羽根と真っ白な体がきれいなコントラスト。上面も下面も白いワシなんて。飛翔形も独特だし、う〜ん、新しい! その他にはハイタカ属とかAquila属も飛んでるなあ。ここ、猛禽類見るのにものすごいいいかも。
 午後にはポカラのホテルに入って遅い昼食。それから街へ出てトレッキング用の地図を買い、アウトドアショップや旅行代理店を何軒か回って慎重にガイドを選んだ。山へはもちろんひとりで行くけれど、信用できる情報がいる。幸いこちらの山歩きの常識が通じるラジュと知り合えた。(写真;少し標高が上がると、 ちょっと前の日本のような景色になる。)

探鳥日記 ネパール(ポカラ〜アンナプルナ地域)