〜自転車でペンギンを見に行こう!編〜

探鳥日記 インドネシア (フローレス島)

(2002年8月7日〜8月15日 )


8月7日(水)(晴/サペ〜ラブアンバジョー Labuanbajo :自転車4km+フェリー)
 8時出航と聞いたフェリーは9時に動き出し、フローレス島へと向かい 始める。コモド島、リンチャ島を素通りして7時間の船旅。港に居合わせ た数人の旅行者とデッキの一角に陣取って、けだるい会話をしながら時間 をつぶす。
 ラブアンバジョーはダイビング客の町。小さな町だけれど、メインロー ドにはダイビングショップや洋食屋、旅行代理店が並んでいる。さてビザ が切れるまであと2週間あまりになったので、少し計画的に動き始めた方 がいいなと思い、宿をとったあとツーリストオフィスに入ってみた。チモ ール島のクパンからオーストラリアへ出国する便は、ガイドブックでは週 に二本となっていた。ところが聞いてみると今は1本とのこと。それもフ ライトは土曜日・・・あいにくビザ期限の最終日が金曜日なので、つまり 前の週の土曜日に飛ばなければならないということになる。僕の持ち時間 は、一気にあと10日に減ってしまった。しかも本数が減ったとなると、 満席の可能性も高くなるだろう。こりゃ一日でも早くクパンにたどり着い て、チケットをゲットしなきゃヤバい。最悪の場合はバリ島経由でオース トラリアのどこかへ飛ぶということも想定しておかないと。どう考えても 自転車に乗っている場合じゃないので、この先は「エンジン付き」に頼る しかないだろう。(写真;港町。)
8月8日(木)(晴/ラブアンバジョー〜ポタワンカ付近(往復):バス 、ヒッチハイク)
 7時前にバスに乗ってルテン Ruteng 方面へ向かい、ポタワンカ Potawangka へ続く横道との交差点で下車。そこから3キロほどポタワンカ方面へ歩 くと、道が森の中を通るようになり、鳥がいる・・・とガイドブックには 書いてあった。確かに谷向かいの山肌は原生林のようである。しかし歩い ている道沿いは最近伐採されたのか、5キロほど進んでやっと雑木が目立 ち始めたものの、その先3キロ行っても森が深くなるという感じには一向 にならなかった。まあ、それならそれで、開けた所にいる鳥を探せばいい や、とウォーレスメジロやらウォーレスサンショウクイ、ハナサトウチョ ウ、トサカハゲミツスイ、チャノドコバシタイヨウチョ ウハチクイなんかを見 た。ミカドバト背中は、かなりいい 色している。
 帰りは、ラブアンバジョーまで草サッカーの試合を見に行く、という男 の人のオートバイをヒッチハイクして戻った。海に面したきのうと同じ宿 に2泊目。(写真;水牛飼いの少年。)
8月9日(金)(晴、午後一時曇/ラブアンバジョー〜リンチャ島(往復 ):船+トレッキング)
 せっかくヌサテンガラ地域に来たんだから、コモドオオトカゲを見てお こうか、というわけで、リンチャ島トレッキングに参加することにしたの である。子供の頃の僕にとっては、世界最大のトカゲ、コモドオオトカゲ は爬虫類図鑑の中のヒーローだった。けれどそれがただのデカいミズオオ トカゲ類(Monitor Lizard)だと知り、今回の旅の中で中国雲南省、タイ、マレーシ ア、インドネシアと、時にはサイクリングしながらミズオオトカゲ類をし ばしば目にしてきたあとでは、もはやコモドオオトカゲからたいしたイン パクトは受けないことはわかりきっていた。実際見てみると、確かに大き いけれど、昼間は木陰で寝転がっているだけの怠惰な動物である。 ま、とはいえこれは御当地モンだし、見といて損はない。面構えなんかよく見 ると、こいつ、ヤルときゃヤルのかも、とうかがわせるものは確かにある 。島への到着時間が遅かったので、はじめから鳥を探す気はなかったもの の、オーストラリアツカツクリが地面を引っ掻いているのは何度か見た。 島からの帰りに無人島でのシュノーケリングつきで、値段は1400円。 同行のオーストリア人とオランダ人5人は、ちょうど話しやすい40代半 ばの人ばかり。安くて楽しかった。(写真;リンチャ島を歩く。)
8月10日(土)(晴/ラブアンバジョー〜バジャワ Bajawa :ハイヤー)
 なんと車をまるまる一台、それも4WDをチャーターしてしまった。フ ローレス島を東西に貫くトランス・フローレス・ハイウェイは名ばかりの ハイウェイで、実際は急峻な坂と曲がりくねった道、それに加えて路面が ガタガタだと聞いていた。はじめはバジャワまでの120キロを、バス7 00円でまる一日の「シェイク」に耐えていくつもりだった。ところが朝 、宿の前を散歩していると、客に逃げられたハイヤーの運転手に会った。 ゆうべから予約していた4人の観光客にドタキャンされ、他を探している という。値段交渉の末、1700円で買った。しばらく町を車で巡回した けれど他の客は見つからず、結局僕だけ。3人がけのバックシートを寝転 んで独占、相棒の自転車も車内の荷室に積んでもらい、らくらくドライブ 。
 午後、バジャワに着いた。標高1100メートルは心地よく涼しい。宿 を決めたあと、明日朝のエンデ Ende 行きのバスの時間と値段をチェック。何がどう悪く転んでも、ビザの期 限内には出国しなきゃならない。(写真;フローレス島はキリスト・カト リック教の島。お地蔵さんのように、マリア様が立っている。)
8月11日(日)(曇のち晴/バジャワ〜エンデ Ende :バス)
 首尾良く早朝のバスに乗り、昼前にはフローレス島最大の町エンデに着 いた。宿入りしてから町へ出て、まずはチモール島クパン行きの船便を調 べてみる。ラブアンバジョーで聞いた定期船のスケジュールは変わってい たものの、水曜にはクパンにも止まる長距離船に乗れることがわかった。 これなら土曜のオーストラリア、ダーウィン行きのフライトには間に合う 。念のためフライトスケジュールも変わっていないか調べておかないと。 日曜日のため航空会社の代理店は閉まっていったので、エンデ空港へ行っ てみた。そして係官に尋ねると、答えはこうだった。「クパン〜ダーウィ ン間のフライトは、1年前に廃止されています。」  思考が一時停止してしまった。
 1年前っていうと、去年の8月頃。中国の雲南省で初めて熱帯の鳥を見 て、ホオアカコバシタイヨウチョウのキラキラした羽色に大喜びしていた 頃だろうか。ダーウィン行きのフライトは、ひっそりと幕を引いていた( ・・・少なくとも僕にとっては)というわけ。ガイドブックは2年前発行 のだからもちろんそうとは書いていないし、おとといラブアンバジョーの 旅行代理店で「週1便、毎週土曜日に飛んでる」と聞いた話は、“ま、イ ンドネシア人のやる仕事だから・・・”と受け流さなきゃしょうがないな ぁ。・・・で、さて、次はどういう手を打つか、だ。(写真;バスで。)
8月12日(月)(晴時々曇/エンデ:5km)
 朝一で金曜日のバリ島行きエア・チケットを買った。買ってみた、とい う方がいいかもしれない。チケットの表書き通りにバリに着けば、ビザが 切れるまでの残りの一週間で、オーストラリアのどこかへ飛ぶフライトは 見つかるだろう。めでたく出国、とあいなるわけだ。ただし、である。そ のバリ行きが、乗客不足でキャンセルされれば元も子もない。インドネシ アの国内線は、しょっちゅうそんなことがあると聞く。そんときゃ次の火 曜日のフライトに全てを賭けるか、あるいはマウメレ Maumere までバスで半日移動して、そこから確実に出航する高速フェリーでバリ へ向かうか、ということになる。そうなるとバリでのタイムリミットは3 日・・・いったいどこ行きの飛行機に空席があるんだろう。とにかくチケ ットが手元にあるくらいじゃ、何かを確信することなんてできやしないけ れど、やれることのうちの最善策。
 今まで自転車と飛行機に乗る時は、自転車屋で梱包用のダンボールを譲 ってもらってきたのだけれど、エンデではそんなものみつかりっこない。 フローレス島で最大の町とはいえ、本当に小さな町なのだ。あり合わせの 小さいダンボールを組み合わせ、ビニールひも編みの袋で包んでなんとか 形にはした。輸送中に破損しないかかなり不安が残るけれど、これもやれ ることのうちの最善策。(写真;小学生の踊るバリ島の民族舞踊・・・を 、フローレス島で見る。)
8月13日(火)(晴/エンデ〜モニ Moni :バス)
 宿の前で拾ったミニバスでバスターミナルへ向かい、そこからバスに乗 り換えて山道を登ってゆく。標高650メートルの小さな村モニについた のは、昼前。蚊帳のある部屋へチェックインし、道向かいのレストランに 入った。何気なく貼り紙に目を通していると、マークという人がバードウ ォッチングツアーをやっていると書いてあるのを見つけた。昼食後、村外 れにあるマークの家を訪ねてみると、彼はもう6年もここに住んでいるオ ランダ人だった。このあたりの鳥の見所をいろいろと聞き、2日後の早朝 から半日、彼にガイドを頼んで鳥見に行くことにした。
 夜は涼しいを通り越して、寒くさえ感じる。毛布をかぶって眠った。( 写真;エンデのメインストリート。)
8月14日(水)(晴のち曇/モニ:バス+トレッキング)
 まだ暗い4時にミニバスに乗った。旅行者ばかりがつぎつぎに乗り込ん で来て、ケリムトゥ山の山頂へ向かう。そこから御来光を拝むのが、フロ ーレス島観光のお約束なのである。1時間半で山頂。赤道に近いとはいっ ても、宵の標高1700メートルは肌寒く、フリース地のジャケットをは おってしのぐ。夜明けとともに、山頂にある3つの湖がぼんやりと浮かび 上がってくると、ハゲノドモズヒタキのさえずりがあちこちから聞こえ始 める。ターコイズ色の湖面に日が差すまで、ゆっくりと朝を楽しんでから 、バックパックから双眼鏡を取り出した。
 山頂の小道沿いのやぶにはロンボクミツスイやキノドヤドリギハナドリ 、針葉樹林にはマユメジロやヤマメジロがいて、みんな朝ご飯のハチミツ をなめている。下山は、村までの10キロあまりを鳥を見ながら歩いてい く。カンムリメジロ、ウォーレスメジロ、ハイバラメジロと、これでメジ ロ類は5種。路上で小さなカブトムシ? を拾ったりしながら水田地帯まで下りると、「キンパラ類(Munia類 )のなる木」があった。ゴシキキンパラ、シマキンパ ラ、モルッカキンパラ、それにセレベスヘキチョウ が混群になってやってきては枝に並び、道行く村人が近づくと飛んでいく 、というのを繰り返す。午後、少し風が出てきた頃、雲の浮かぶ青空をモ ルッカチョウゲンボウが横切っていった。
 たっぷり6時間の鳥見をしてモニの村へ帰った。同じ宿に2泊目。(写 真;ケリムトゥ山々頂のカルデラ湖。なぁんて色をしているんだ。)
8月15日(木)(晴/モニ〜エンデ:バス)
 まだ薄暗い5時45分には、マークの家の前に着いた。鳥見の約束は6 時からなのでちょっと早すぎるかなと思いながら、門の外でぶらぶらして いると、トレッキングシューズを履いて双眼鏡を首からぶらさげた準備完 了のマークが出迎えてくれた。テラスでお茶を飲みながら、まずは鳴き声 の聞き分け方を教えてもらう。充分明るくなってから歩き始める。モニの 村の田んぼのあぜ道でナンヨウクイナやクロノビタキを見な がら、オカ、プモの村をたどっていく。まずツーリストが行くことのない 小川沿いの林は、マークの庭だ。どこに何がいるかすっかり知っていて、 彼の言う通りに鳥が出てきたり、鳴き声が聞こえたりする。地味で識別の やっかいなハシブトハナドリなんかも、彼のリアルタイム解説のおかげで 特徴をよく観察できる。一番良かったのは、実はカワセミ。日本のカワセ ミはくすんだ緑の薄汚い翼の鳥だけれど、フローレス島のカワセミは瑠璃 色とスカイブルーで鮮やかに彩られていて、とても同種とは思えなかった 。半日のガイド料は、たった700円で昼食つき。マーク、こりゃボラン ティアだよ。
 昼過ぎのバスに乗ってエンデへ帰った。パッキングした自転車を預けて あった宿へ入り、明日の朝のフライトに備えて荷物を整理。(写真;標高 を上げると、熱帯雨林のような景観もある。)

探鳥日記 インドネシア バリ島(その2)