〜自転車でペンギンを見に行こう!編〜

探鳥日記 インドネシア (バリ島〜ロンボク島)

(2002年7月19日〜7月26日)


7月19日(金)(晴/ベコル〜ギリマヌック Gilimanuk :45km)
 朝方1時間ほど観察塔で動物を見てから、チェックアウト。自転車で国 道を南へ下ると、右手に海が見えはじめ、間近にバリ島。こんなに近いん だ。ケタパン Ketapang 港からフェリーに乗ってたった45分、バリ島ギリマヌック港に上陸。 値段は自転車込みで80円だった。
 この玄関口の小さな町が、バリバラット Bali Barat 国立公園へ通う拠点になるので、宿を探す。安宿には窓がなかったので 、仕方なく500円で手を打ってチェックイン。休憩しながらガイドブッ クを読んでいると、港に近いヌサンタラという安宿の裏にマミジロタヒバ リがいると書いてある。おお、この数日、気になってるやつじゃん。さっ そく歩いて見に行ったけれど、季節が悪いからか見つからなかった。マン グローブの根っこには、チャガシラハチクイ 。宿へ帰る途中にヌサンタラの従業員に声をかけられる。少し話をして、 部屋を見て、明日はこっちへ移ることにした。(写真;巨大で精巧な石彫 。上陸した町からいきなり「バリ」なのである。)
7月20日(土)(曇のち晴ギリマヌック〜ラブハンララン Labuhan Lalang (往復):バス)
 朝いちで宿をヌサンタラに変えて、バスでバリバラット国立公園へ向か う。園内にあるジャヤプラナ寺院前で下車。寺の裏から干上がった川に下 り、西へ歩く。狙いはオリーブミツリンヒタキとマレーウオミミズク。「 オリーブ」は初めて見たミツリンヒタキ類だったけれど、くちばしがユニ ークに長くてすぐにそのたぐいとわかる。「マレーウオ」は、それらしい のが水たまりのわきの地面に下りていたのだけれど、向こうの方が先にこ ちらを見つけ、飛び去るうしろ姿だけ。“なんかフクロウ系の鳥”程度に しかわからなかった。
 夕方からはまた宿の裏でマミジロタヒバリを探すけれど、やっぱりいな い。そのかわりに見つけたのは、ひとりのバードウォッチャー。海岸に座 り込んでフィールドスコープを立て、湾の対岸のマングローブ林を見てい る。良く見るときのうの朝、バルーラン国立公園の観察塔で挨拶だけした イギリス人のロブだった。僕らは並んで座り、スコープを覗きながら鳥屋 同士の会話をして、穏やかな夕暮れを過ごした。「何がいる?」「シギ類 とかコウノトリ類とか。」「あ、ハシブトオオイシチドリが飛んでる。」 「おぉ、ほんとだ。これ見るの初めてだよ。」「僕も。ところで Javan Kingfisher は見た?」「ゲデパングランゴ国立公園で。1日半もかかったよ。」「 ああ、あそこでね。実は行くのあきらめたんだ、車が多くて。」「たしか にすんごい人出だった! もう一回出直そうと思ってる。」・・・・。そして僕らは、バルーラン の草原にいたタヒバリ類がヒメマミジロタヒバリだったということで同意 したのだった。(写真;漁師とマングローブ林。)
7月21日(日)(晴/ギリマヌック〜ロヴィーナ Lovina :80km)
 バリバラット国立公園といえば、絶滅寸前のカンムリシロムクの最後の 生息地。きのうの夕方までは、できれば今日これを見に行くつもりだった 。けれど、調べてみるとものすごく高価なツアーに参加するしか見る方法 がないことがわかったので僕はやめた。7時半に出発する前に、同じ宿の ロブに挨拶をしようとしたけれど、彼はもうカンムリシロムク・ツアーに 出かけたあとだった。
 ギリマヌックからバリ島北岸へ抜けるまでは、理想的なサイクリングロ ード。国立公園内をゆく道は、まだ低い太陽がつくる木陰の中。なだらか に丘を登りながらただ自分の呼吸にだけ集中し、メディテーションの中へ 感覚が溶けていくのを待つ。丘を登りつめたあとは、乾いたサバンナとそ の向こうに広がる真っ青な海。風に髪をなびかせながら一気に下りてゆく 。
 昼前に北岸最大の観光地、ロビーナ海岸へ。宿をとってから海岸を歩く 。波が低くサーフィンに向かないせいか、観光客は家族連れが多い・・・ けど、なぜか一人も日本人がいない。ここ、あの名高き、日本人が夏休み に大挙押し寄せるバリのはずなんだけれどなぁ。木陰で本を読んでいると 、さすがバリのビーチ、やっぱり飲み物やマッサージや三つ編みや、よく わからないローカルのカレンダー売りが来るけれど、3回も断ればそれ以 上しつこくされたりはしない。絶対にウミガメを見せると言ったガイドの ブディーと、明日の朝シュノーケリングに出かける約束をした。
 夕方まで読書。たまには浜でごろごろするのもいいもんだ。(写真;木 陰で休む渚のウエイトレス。ダンボールの切れっぱしに書いたドリンクメ ニューを持って、ビーチで肌を焼く旅行者を回る。)
7月22日(月)(晴/ロヴィーナ〜イェーサニー Yeh Sanih :25km)
 朝9時にブディーとの待ち合わせ場所に行くが、彼は来なかった。浜を ウロウロしている物売りはみんな友達同士なので、どこにいるか聞いてみ た。ブディーはゆうべ飲み過ぎたから、昼前まで来ないだろうと教えてく れた。客がガイドを待つのもさえないので、ここはキャンセルだろう。イ ンターネットショップでニュースを読んでから、食堂で昼をしていると、 ブディーが君を探していたよと、通りがかりの人が教えてくれた。食後、 もう一度浜へ出てみたけれど、またすれ違いでブディーには会えなかった 。風が出て白波が立ち始めたので、どのみちもう今日はシュノーケリング には向かないだろう。10分で荷物をまとめ、宿をチェックアウトした。
 車の多いシンガラジャ Singgaraja 市内を抜け、これまた綺麗な海岸の村、イェーサニーに泊まる。(写真 ;バリ最高峰、アグン山。ふもとにはサボテン。)
7月23日(火)(晴/イェーサニー〜ティルタガンガ Tirta Gangga :70km)
 7時半に出発。良く晴ている。左手に海を見ながら、ヤシの木の立ち並 ぶ道を東へ。朝も早いうちから、日差しが暑くなってきた。30km地点 で最初に休んだあとは、20km、10kmと休憩までのインターバルが 短くなってゆく。風が強いので沖には白波がたち、岩礁で打ち寄せる波が 砕ける。チュリック Culik は、海岸線を東へ行く道と、峠越えで南岸へショートカットする道の交 差点の村。ここで南へ進路を変える。当然登りが始まり、立ちこぎで汗を 滴らせながら進む。いちばん急なところは、通りがかりのオートバイの男 の人が、腕を引っ張って手伝ってくれた。距離は短く、まもなくクリア。 少し下って「水の宮殿」がある村、ティルタガンガに宿をとる。(写真; 寺へお供え物を運ぶ満月の日のセレモニー。)
7月24日(水)(曇のち晴/ティルタガンガ:0km)
 8時に宿を出て、午前中はトレッキング、と言うほどじゃないな、散歩 して過ごした。ティルタガンガはバリ名物「棚田」に囲まれた静かな村。 たしかに綺麗な景観だけれど、これは麦を食う西洋人向けの観光地だ。何 が美しいかは個人の主観だとしても、米を食うわれらが日本には同じくら い綺麗な「ライス・テラス」が能登半島まで行かなくってもある。もちろ ん生産性しか考えない農水省が、着実につぶしていってはいるけれど。鳥 は庭モノばかりで、コシグロキンパラとシマキンパラは混じっていた。小 高い丘から見下ろすと、見渡す限り田んぼとヤシの植林で、いわゆる自然 というものがほとんどない。「水の宮殿」の裏にだけ、常緑広葉の原生“ 木”がほんの15本ほど残っていた。数十年前は、尾根のほとんどがそう いう樹に被われたジャングルだったんだろうな・・・なんて想像をしなが ら、午後はビール。
 向かいの部屋にいるカナダ人の中学教師エニーは話好きで、こっちのひ と言に3倍くらい返事をくれる。こういうネイティブ・スピーカーは、発 音を勉強するのにほんっとに貴重な存在。きのうも今日も夕食前に2時間 、引き止められてもう半時間の「授業」。(写真;ヤシをスギに取り替え たら、日本の景色になる。)
7月25日(木)(ティルタガンガ〜レムバル Lembar:自転車55km+フェリー)
 9時過ぎに宿をチェックアウト。幸い雲が多い天気で暑くない。2キロ ほど北へ戻ってアバビ Ababi から南西へ折れる。ここからシデマン Sideman を通り、セマラプラ Semarapura へ抜ける道は、バリ島で最もオススメのドライブコースと言われている 。はじめしばらくは登ったものの、シデマンの少し前からは延々と続くダ ウンヒル。尾根には良く育った二次林がたくさん残っていて、サイホウチ ョウ類のさえずりが響く。時には民家や寺の壁を飾る彫刻に目を奪われ、 時にはアグン山を借景に棚田の広がる谷を見下ろしながら、まるで飛んで いるような気分で下り坂を滑っていった。
 パダンバイ Padangbai からフェリーに乗ってロンボク島まで4時間の船旅。日なたはクラクラ するほど暑いのに、日陰で乾いた風を受け続けていると寒くさえ感じる。 桟橋の空き待ちで一時間ほど停船して待たされ、ロンボク島へ上陸したの は日没後。薄暗くなってきた中走るわけにもいかず、港を出てすぐの宿に 入った。(写真;バリ・ヒンドゥー教の世界。)
7月26日(金)(晴のち曇、夕方小雨/レムバル〜サピット Sapit :85km)
 8時に宿を出る。目的地サピットまで行くには、ロンボク島の中央を東 西につらぬくメインロードを走ることになる。けれど、車が多い道はなる べく避けたいので、ナルマダ Narmada までの30キロとアイクメル Aikmel からの15キロは地図にのっていない道を選んだ。小刻みなアップダウ ンはあるものの、細い道でも路面はそれほど悪くないので気持ちのいいサ イクリング・・・と思っていたら、後輪から「ビンッ!」と小さな音が。 すぐに止まってチェックすると、やっぱりスポークが折れている。街路樹 の木陰で交換。
 サピットには宿が2軒しかなく、どちらも値段が高い。ロンボク島の宿 は、バリの喧騒から逃れてくる観光客を狙って洒落た建物にリゾートプラ イスを乗せたところが多いようだ。・・・僕はただ静かに眠られればそれ でいいのに。(写真;田舎道をゆく。)

探鳥日記 インドネシア (スンバワ島)