御弓師 柴田勘十郎


 
うちの矢場に故障した古い弓が一縛りあって
囲炉裏の上につるしてあります。
その中のどうにかなりそうな一張の弓を
仲間の畳屋 http://www.norimoto-tatami.com/index.html 
のノリさんが自宅に持ち帰ったことから始まりました。

 判読しがたい銘を調べたら、どうも柴田勘十郎らしいという事から、
彼はボクの古い柴田勘十郎(成りも弦道も良い弓で愛用していた塗り弓)と一緒に持って、
京都の柴田さんを訪ねました。

 分ったことはボクのは18代目柴田勘十郎で江戸時代の弓だという事と、
故障した弓は19代目のもので修理すれば十分使えるとのことで修理を依頼しました。

 そうこうしている内に同じ銘の古い柴田さんの弓が二張出てきて、
一張はボクの師匠の先代の弓で、もう一張は同じ三河日置流雪荷派の師範のものです。

 何の因縁か柴田勘十郎さんの古い弓が四張も集まったことから、
その古い弓を持って畳屋さんと一緒に柴田さんを再び訪ねると、
今は21代目で、ボクのような弓具にあまり明るくない者にも親切で丁寧な方でした。

 かねがね自分で依頼した柴田勘十郎を引いてみたいと思っていたのでお願いしたら、
丁度ボクの思うような弓がなくて、
「月が明けたら弓を打つから、出来たら持って行きましょうか。」という柴田さんの言葉に甘えて頼んできました。

 話には聞いたことがあるけど、柴田さんは自分で打った弓を本当に自身で届けるんですね。
驚きました。

それからほぼ一年が経ち、「出来たので、お持ちします。」と連絡があり、
仲間のみんなにも紹介したくて、
この日になりました。

 ここ東三河の弓引きは柴田勘十郎の弓に対して、深い尊敬と憧れといった特別な感情を抱いてきて、
柴田さんには失礼だけど昔から親しみを込めて「カンジュー」と呼んできました。
こんな経緯から、一時期途絶えた東三河と柴田さんとの交流が再び始まりました。

 弦を張り立てかけた姿は、凛とした気高さを湛えています。
細身に出来ているので一見華奢に見えるけど、
肩入れしてみるとその見かけに比して、驚くほど手強いことが分ります。

 まるで、射手に「なめるなよ。」とでも言っているようです。
しかも、この弓で冴えのある弦音を出すには、射手に一定レベルの技術水準を要求します。



右端:打ったのは18代目柴田勘十郎で塗りは三河
右から二番目:打ったのも塗りも18代目柴田勘十郎
右から三番目:打ったのは18代目で塗りは19代目
右から4番目:21代目が今回修理した19代目の弓
右から5番目:ボクの依頼した弓
右から6番目:今回うちの師匠が頼んだ弓
古い弓もすべて実用可能です


すり減った籐を巻き直してもらったり
話を伺いながらの楽しいひと時でした
一緒に来られた柴田さんの奥様に撮っていただきました
平成20年5月21日撮影



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