53歳になった自分の残り人生を、飲料水貯水槽清掃業の世界で賭けるなんて、それまで魚問屋に勤めていた私には考えもつかないものであった。
貯水槽清掃の講習会で、新潟市内の定期清掃を実施していない施設のあまりに多い(全体の35%の施設で
1.239ヶ所 平成12年『新潟市の保険と福祉より』)のに驚いたのが始まりであった。
この理由は、総ての貯水槽を持つ施設が、清掃を行うことを法律によって義務付られていない、現状があるからである。前のページに書いてあるが、簡易専用水道(有効容量 10dを越える)を有する施設では、定期的に清掃を行うことを水道法で義務付られている。
作業をやって行くと、毎年清掃している施設の中でも一部『地域の水質の違い』や『設備の老朽化』などにより、貯水槽内部の汚れがひどい所や、マンホールのフタに鍵がかかっていない施設など、(次ページの写真を見て下さい)使用者・住民の方の知らない世界のある事も知った。
(総てに汚れや錆があるわけではありませんが)
都会に住んでいる友人が、「水道水はまずくて飲めなく、ミネラルウォータを飲んでいる」を聞いたいた事や、水道の蛇口に着ける浄水機の売れ行きが伸びているのもその表れであろう。以前マンションに住んでいて感じなかったが、何気なく飲んでいる水道水の違いに驚いた。
貯水槽清掃・滅菌作業を行えば、総て安全と言う訳ではない。しかし、貯水槽清掃をやっていない施設の管理者の多くが、住民・使用者の健康・衛生・安全意識を最優先にすべきなのに、やっていない。その意識の薄さに問題がある。新潟市保健所でも再三にわたり清掃を行うように指導しているが、全体の67%を占めるその他の貯水槽施設(有効容量 10d以下)で、51%の清掃実施率である。来年度、厚生省はこの弊害を少なくするため全ての貯水槽に対し、清掃・検査の義務付ける法律改正案を提出する事となった。
それならこの未清掃施設(正式には、未清掃報告のない施設)だけに絞った営業を行い、その中の1件でも多く清掃・滅菌する事ならば、私にも出来るのではないか。
そして、ただ清掃を行うのではなく、清掃と共に施設点検の徹底を行えば、住民・使用者の健康・衛生・安全が今以上に良くなるのではないかと思い、独立となった。
まだ経験不足ではあるが、ひとつひとつ着実にやって行くのみである。
平成11年度『新潟市の保険と福祉』より |