*伊那谷スケッチ(梅雨と生き物たち)

6/25 雨期に咲くのは白い花が多い。ドクダミ、ノイバラ、スイカズラ、
ハルジオン…。アジサイだって最初は白いままで花をつける。
あちこちにある栗の木がいっせいに花を付けるのも今の時期だ。薄淡い
クリームがかった白色の花が緑の葉をバックに花火状に噴き出している。
細長いヒモのような形の花がどうしてあんなイガイガいっぱいの栗の実に
結実するのか不思議でならない。

6/23 6月は蜂の営巣の季節である。軒下や板壁
の穴など、雨のあたらない空間を見つけては巣作りに励む。めんどう
なので、よほどのことがない限り放っておくが、スズメバチは要注意で
ある。これに刺されると死ぬこともあるし、襲われて大変な目にあった
こともある。今朝、玄関脇にあるプロパンボンベの鎖に徳利状のもの
がぶらさがっているのに気がついた。トックリバチの巣かとも思ったが、
巨大なスズメバチが出入りしている。女王蜂が単独で営巣を始めている
のだ。このままにしておけば、ボンベ交換に来る人が確実に襲われる。
キンチョールで蜂を追いやり、巣を取り外した。ペルシャの壷のような
美しい形だった。(y)

6/22 2,3日前からコスモスが咲き始めた。雨で滴る
深緑を背景にピンク色がなまめかしい。秋桜というのだから少し季節が早
いような気もするのだが、我が家のコスモスの開花日はいつも梅雨時であ
る。今年の春もコスモスの種は蒔かなかった。こぼれだねの自然発芽を待
ち、あとは適当に配置するだけである。この方法が結局一番手間いらずで
しかも丈夫な苗になる。ただ色の具合だけは咲いてみるまでわからない。
我が家の畑がどんな色で縁取られるかは、神様のご気分まかせである。
(y)

6/21 畑の草を雑草と呼び捨てて良しとするのは
どんなものだろうか?草といっても、例えばヨモギは、沖縄ではフーチバ
と呼ばれる立派な野菜である。本州だってヨモギの若芽は餅にいれたり
天麩羅にしたりとけっこう珍重される。若い時はチヤホヤとおだてあげ、
老いれば雑草と十ぱひとからげにする人間の身勝手さと悲しさを思い
ながら、雑草を抜く毎日が続いている。(y)

6/20 一言で草と言っても丈が伸びるものばかり
ではない。地上を這っていくものもある。その代表は、今の時期なら
スベリヒユだ。主根を中心点にして放射状にどこまでも広がっていく。
薄紅色のつややかな茎が音もなくするすると地を覆い尽くすありさま
はちょっと動物的な肉感性がある。食べてみたら美味いかもしれない、
と思っていたのだが、実際に救荒植物として利用されたことがあると
モノの本に書いてあった。どんな風に料理したのだろう?(y)

6/17 雨季に入ると雑草の勢いがすごくなる。
台所の窓から見える野菜畑の草丈が、毎日、音をたてんばかり
の勢いで高くなってくる。草の種類によっては一日に数センチは
伸びるのではなかろうか? ちょっと目を離しているとたちまちの
うちに丹精した野菜や花の苗を覆い尽くして窒息させてしまう。
草の方が成長が早いのは何故だろう、と考えているうちにもどん
どん地面を埋めつくしてくるから、無念無想の境地に入ってひた
すら草取りをする他になんにも手はないのである。(y)

6/6 小雨の中、傘をさして犬の散歩。川原の土手道に
は、何という名前なのだろう、コスモスに似たキク科の黄色い花がびっしりと
咲き乱れていて、緑を背景にして目に鮮やかだ。去年まではその脇に、ニセ
アカシヤの若木が何本も繁っていて、今頃そこを通るとその白い花から甘酸
っぱい強烈な香りが匂ってきたのだが、この冬に全部伐採されてしまった。
その分、川原の眺めはよくなったが、ちょっと物足りない…。

5/29 今年は大雪が続いたせいか、中アや南アの
山頂付近にはいつまでも真っ白な雪が残っていたが、この数日の真
夏のような暑さで、さすがに雪解けも進み、まだら模様になってきた。
家では、犬もネコも木陰でぐったりして元気がない。動物を見ていると
自分の体調もよくわかる。

5/24 一昨日から、待望のまとまった雨。
やれやれ、である。畑の土も作物も周囲の樹木も、久々の
雨にうたれてほっとひと息ついている様子が伝わってくる。
そういえば昨日、天竜川の岸辺で一羽の白鳥を見かけた。
ほととぎすも鳴き始めた。

5/22 周辺の農家はほとんど田植えも終わり、
辺り一面、水を張られた田んぼが陽の光を受けて輝いている。
畔を歩いていると、水田の表面に遠くの山や樹木がシルエット
になって逆さに映り、一瞬湖の淵を歩いているような錯覚に捉
われる。 それにしてもこの春は雨が少ない。家の畑は土が
乾いて、もうカサカサだ。

5/14 びっこを引きずって家の近所を徘徊していた狸は、
結局車にはねられて死んでしまった。隣家のおばさんが発見して、穴を掘って
埋めてやったという。実はこの狸、子狸ならぬ相当な古狸で、近所の農家の
空家を根城にして、この界隈で生き延びてきたらしい。家の畑のモロコシ泥棒
もこいつの仕業だったかもしれないが、事故死と聞くと哀れを催す。隣でも最
近おにぎりをやったというが、実は家でもこの前女房がミルクをやったのだ。
野生の獣が、怪我をして人にエサをねだるようになれば、どのみち長いこと
はなかっただろうが…。

5/9 午前中、畑に出て、里芋の植え付けやキュウリ
やトマトの苗の移植をする。この2〜3日、雨模様の蒸し暑い天気が続
いているが、近所の爺さんに聞くと「まだまだ遅霜の心配がある」との
ことなので、念の為、苗にはビニールで防護をする。適当な肥料用の
袋がなくなってしまったので、仕方なくスーパーの買い物袋やらブック
オフの黄色いビニール袋まで動員して、苗を囲った。ビニール袋にも
いろんな再利用の仕方があるものだ。

5/4 深夜、獣のギャッという叫びとドスンと何かにぶつ
かる物音で目が覚めた。どうやら、前回登場した怪我をした狸が、縁の下で
野良猫か何かと鉢合わせをしたらしい。畑の中の一軒家の我が家の縁の下
は、土も乾いていて、昨日のような雨の日などは周辺の獣たちの格好の隠れ
場所になっている。つまり自分が寝ているすぐ真下に、どこかの獣も休んでい
るという構図だ。だが上に寝ているヒトの方も、もともと余所から流れてきて、
ここに住み着いた人種である。ヒトも獣も野良が居着きやすい家なのだろう。
(ところで山の方は、昨日は時ならぬ大雪で大変だったらしい。 G・Wの大
雪なんて! やっぱりこの天気、どこかおかしい)。

5/1 畑の水やりを済ませて家に入ろうとすると、何か向こ
うを獣が歩いていくのに気が付いた。よく見ると、やや小高くなった隣の畑の
縁を、灰色の毛をした狸が後ろ足を引きずりながら歩いている。目が合うと
しばらく立ち止まってこっちを見ている。妙に動作の鈍い奴だなと思っている
うちに、ヨタヨタと近くの藪に隠れてしまった。 それからほんの十分ほど後、
裏庭に面した部屋でパソコンの画面に向かっていると、飼犬のポンタがやた
らとうるさく吠えるので外を見た。すると、開け放した窓のすぐ下を、くだんの
狸がとぼとぼ歩いているではないか。「あれ? おまえなんでこんなとこに…」
とサンダルを突っ掛けて外に出ると、狸は慌てて縁の下に潜り込んでしまっ
た。どうやら、怪我をした子狸のようだった。それにしても、なぜ吠えまくる犬
の方に寄っていこうとしていたのか不思議だ。ポンタもちょっとトロい犬だか
ら、子狸も自分の親戚か何かだと勘違いしたのかもしれない。

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