アイーダ日記
8月18日(月)
アイーダ初練習。合唱指導 香田裕泰氏。
結局、この日まで楽譜を綴じただけで、初めて歌うと言うのにほとんど練習しなかった。
口がまわらな〜い!‘V’を‘F’とドイツ語読みしてしまう〜!!‘R’をどこで舌をまいていいか混乱する〜!!
早退して夜行で東京出張。移動の時間やヒマな時間は、ほとんどアイーダをポータブルCDで聴いていた。
帰りまでに全曲歌詞カード見て聴く事ができた。
8月28日(木)
長野旅行から猛スピードでかえってきて2回目練習。
全体を漠然と覚えた状態で、暗譜はトンデモナイ状態。なんせ、同じメロディで歌詞が違うところが3カ所、と、
とっても覚え辛いのだ。
しかし、歌詞の意味を覚えると、結構アタマに入ってくるのがわかった。これで女声合唱部分がスッと覚えられた。
9月4日(木)
邦楽ホールにて立ち稽古。マルデブルグ側から振り付けUweさんと、バレエ団員で通訳のTomomiさん。
凱旋行進曲でのマスゲームのエキストラさんたちの演技指導がほとんど。
参加しているカルチャースクールでフラメンコをしている同業者によると、身長160cm以上の方を集めたらしい。
バレエやダンスをしている方の動きはとても美しいが、男子高校生の動きがとても拍の流れを意識しているとは
言えなくて、見ていてちょっとイライラ。
ずいぶん待たされてようやく合唱団の練習。
立っているだけかと思えば、女性コーラスのところから振り付けアリ?!
う、ウソでしょ?!
9月5日(金)
さすがに合唱団は今日は1時間遅れで集合となった。
女声合唱は「悲しみの気持ちをこめて」と言われた事に「おいおい」と思う。
メロディは優しく美しいんですが、まったく逆ですがね〜。
とにかく歌いながら跪き、腕を動かして、最後は神を賛美するポーズでございます。
その後の神官達の合唱で民衆男性が前に歩み出て、有名なアイーダトランペットの直前で、
旗手4人が女性戦士(アマゾネス)ひとりを持ち上げるまでが合唱団の目立つところ。
明日6日の練習は合唱団は免除。いいんだかわるいんだか。
ナゼか主役が写っていないチラシ
この凱旋の場面に出演しました。
アマゾネスの色っぽい衣装がわかるかな?
9月18日(木)
合唱指揮エドガー・ヒュケル氏との合唱練習。音楽堂に行ったら今日に
なって観光会館に会場変更って・・・・チャリをとばして息をきらせた。
練習後衣装合わせ。ま、民衆だし魔笛よりマシかも、程度。
私に与えられたのはノースリーブ。涼しいのはいいんだが、夏の終わりの
どかた焼け、ど〜したらいいの?
9月19日(金)
立ち稽古およびゲネプロ。衣装の他にメイクもしてもらう。
衣装さんメイクさんに腕の日焼けをどうしたらいいか聞くと、本番には
腕も塗ればいいとの事。う〜ん、そんなものもあるのね。
アマゾネスさんたちの衣装とメイクにびっくり。
↓我々下手組は立っている横からバレエが出入りするわ、ランフィスや
アモナズロが出て来るわ、実に油断できない場所であった。
(ボケっとしていると後ろからドツかれる・・・アモナズロはデカくてこわい。)
戦士達の立ち位置や後から出てくるバレエの関係から、立ち稽古をする度
に立ち位置が変わってくる。結構ふあん・・・。マスゲームの方は何度も何度も
繰り返し練習する間にずいぶん揃ってきた。臨時コレペティトゥールをする
天沼さんのピアノの腕まで味わってなんだか得した気分。
金沢公演が日本初演なので、最初から通してゲネプロが行われる。出番以外は客席で聴けた。
「清きアイーダ」はタッチの差で聴き逃したが、「勝ちて還れ」は聴けた。
声を抜いているので全貌はわからないが、アイーダ役のアニータ・バーダーさんはなかなか
柔らかくて聞きやすい声。
出番が終わった後も終わりまで客席で聴く。バレエがふんだんに散りばめられていて本当に美しい。
・・・フラッシュたいて舞台を写真撮影しちまった。(こんな事OEKのゲネで絶対コワくて出来ない!!)
9月20日(土)
実はこの日は運動会。降水確率がずいぶん高かったが
キセキ的に雨は落ちず、決行。出したくはないが大声出し
まくりの半日だった。・・・今日はもう歌はあきまへん。
2時、観光会館にかけこみ、あわてて着替えて立ち稽古へ。
ギリギリまで立ち稽古があり、6時会場,6時半開演。
45分後、舞台袖へ。
アイーダとアムネリスの息詰まる対決を横から見る。
暗転、「トイトイトイ・・」と互いに囁き合って舞台へ。
満席だった。・・うっ、出だしの声が喉にひっかかって裏返る。
(出だしのG音は私のチェンジボイスなので、無理するとこうなる)
えい、ヤケクソとばかり声を張る。
無事目立つ場面を歌い終えて、固定の位置に来る。
昨日から合唱団のその後の演技はどうするんだ?と色々議論
していたんだが(おおげさ)、ま、民衆として目だけで演技。
「ラダメス様素敵〜!」「アイーダパパ、こわそうだけどカワイソウ」
と、心の中でつぶやいていたのでありました。
あっと言う間の20分間を終え、ダッシュでメイク落とし着替え。4幕を2階の空いた席で見る。
ラダメスが捕まってからのアムネリスの演技、最高!!アムネリスあってのアイーダなのですから!
カーテンコール、一緒に見ていた仲間と、アムネリス役のヴォルフガング・ミルグラムに「きゃ〜!!」と
黄色い声あげてしまったのでありました。
9月21日(日)
9時音楽堂前よりバスで出発。
富山のオーバードホールは、出演するどころか見に
行った事もない。ワクワクして会場に入った。
楽屋が広くてきれい・・・が、エキストラは地下へ。
どんなとこに行かされるのかと思ったら、リハーサル室
だった。(一瞬、石川厚生年金会館の奈落の下を想像
した・・・アソコの穴蔵控え室だけはもう行きたくない!)
ここも広くてモニターもあって、しかも弁当があって!!
(昨日まで弁当ナシだよ!あんまりじゃないか!!)
オーバードホールは北陸では一番広いのかな?
舞台袖も広すぎて迷子になってしまった。
が、稼働率が悪く、採算面でかなり厳しいとか。
音響は・・・リハでラダメスの声が反射してきたのには
びっくりした。(こんなホールありか?)
指揮者がやたら遠くに見える。そのせいなのか凱旋の場
の神官の合唱がやたらにズレる。リハでやり直したのに、
本番もしっかりズレてしまったではないか。
一生懸命歌っていたつもりが、なんか手応えがない感じ。
地元富山のM氏が「歌い手泣かせのホール」と言っていたが、
なかなか完璧なホールって無いのですねぇ。
凱旋の場のバレエは、このホールだったらのびのび踊れ
るのか?と言ったら、残念ながら答えはノー。
決められた拍数でマスゲームの戦士が動ける広さは、どう
しても決められてくる。金沢よりテンポは落ちていたが、
戦士達の位置関係はそう変わらない。
おまけに、合唱の声がひっこまないよう、合唱団の固定位置
を戦士と並べたら、かえってバレエのためのスペースが狭く
なってしまった・・・。
おかげで本番は実にスリリング。男性舞踊手が私の目の前
こするように動き去る。足を出来うる限り縮めて、ターンして
いく・・・こわかったよぅ〜。
富山&新潟公演は金沢とキャストが違う。
アイーダ(アディーナ・ヴァレティン=ヴァイセンベルク)
ラダメス(ローレンス・バクスト)
アムネリス(ウンディーネ・ドライシッヒ)
ランフィス(ポール・スケトリス)・・・・・あとは同じ
声の点で金沢のキャストとどうなのか?というと、2幕だけで
どうのこうの言えませぬ。
が、演技の方はあきらかに雰囲気が違っていましたねぇ。
一言で、金沢公演はクール,富山新潟はホット。
ランフィス役は実に長身で神官らしく頭をツルツルにしていた
のですが、怒り方がもう頭から湯気が出そうな感じ。
ラダメスはアムネリスの手を取る時の、なんとも情けないオヤジ
顔が笑えてしまいました。(ごめんなさい)
アイーダ役はおふたりとも大柄で舞台映えがする方々ですが、
ラダメスとの身長差が、さらについてしまって・・・う〜ん。
開演時間(16時)。リハーサル室のモニターで見守る
マルデブルグの合唱団員が、記念撮影しようと
我々の控え室を訪ねてきた。世界中どこ行っても
合唱団はミーハー。
本番終わって即メイク落とし、着替え、すぐに撤収。
今日は腕をたっぷり塗られたので、落とすのに時間がかかる・・・。
(自分で塗った腕がまだ白かったようで、場当たり稽古終わった時に、
呼び出しがかかって腕をさらに塗られた)
今日はホールを覗く余裕もなく、バスにて金沢へ。
戦士(アマゾネス)の休息・・
アムネリス役ウンディーネ・ドライシッヒさん。
4幕の始めを歌い終わって出てきたところを
捕まえて撮影しちゃいました。
ごめんなさ〜い!&ありがとうございます!!
9月23日(火)
7時半金沢出発はキツイキツイ。新潟でバスで4時間なのだ。
昨日が運動会の代休だったのは本当にラッキーだったと思う。
さあ、泣いても笑ってもこれが最後の公演。思い切り楽しもう!・・・て何を?!
新潟県民会館は6・7年前に仕事で来たことがあるのだが、どんなところか記憶がいまいち。
建物自体ずいぶん古いのだが、控え室がいままでで1番狭く、なんだか悲しい。
(一番悲しかったのは登山弁当のような塩っからいお弁当だったかも・・・おばか)
が、このホールは金沢よりもいろんな興業が来る。オペラのポスターも3枚あった。
そうだ、ここは金沢よりずっと東京に近いんだった。
ホールは3会場で一番狭いのだが、ピットにオケが入りきらない。何より舞台袖が観光会館の1/3くらい。
金沢からのマスゲームのエキストラは半分くらいに減っているのだが、減った感じがしない。
場当たり稽古では、バレエがどうやっても踊りきれず、バレエの間だけ合唱団が少し下がる事になった。
が、指揮者が近いだけで、歌い手としては安心感がある。
歌っている自分としては、新潟が一番しっかり歌えた・・・ハズだったのに。
さて本番、なんとアモナズロを連行してきた兵士2人が、私の目の前に居座ったのだ。
(金沢や富山では、そのあとさっさとひっこんだのに・・・)
突然、目の前壁!があ〜〜〜ん!!いつ演出変わったのよぅ・・。
喉も調子よかったのに・・・後半は人間の壁に向かって歌っていたのでありました。
ううっ、舞台って、生ものなのね。
出番が終わると、またまた大急ぎで片づけてバスで出発。なんせ4時間かかるのだ。
米山,有磯海ふたつのサービスエリア5分の休憩も、根性でおみやげ買いにソフトクリームやら飲み食い
に駆け回る元気な一行でした。うん、いろいろあったけど楽しかった!
「トイトイトイ*」・・・う〜ん、クセになりそう。
*本番がうまく行くように声を掛け合うおまじない。ドイツのスタッフみんな言っていました。
(私は本で知りましたが、なんかTV「情熱大陸」でやってたそうですね。)
オペラの舞台裏
ここまで いろいろ記念撮影してきたのだが、新潟ではいままでお世話になった
舞台裏の様子をいっぱい撮りました。その雰囲気を伝えられたらな、と思います。
ドイツのスタッフの他に日本のスタッフが数名&通訳さんがいました。
←ソリスト専門のメイクさん。順番ついている時に彼女につかまった。
彼女に年配のスタッフが「もっと西洋人っぽく彫りを深く・・」と指示。
(by通訳さん)ナント、ソリストのお部屋でメイクしていただいた。
その間にアイーダ役アムネリス役が入って来る。紹介してもらったが、
メイク中にて写真も撮れない〜〜!
女性用かつら
侍女役とバレエ・ダンサー用
侍女&バレエ・ダンサーの衣装設定
メイクさんによって、やっぱり雰囲気が違います。
左 金沢公演 右 新潟公演
新潟リハーサル前にマルデブルグ歌劇場側
からエキストラにあいさつ。
話しているのは日本側の演出スタッフ渡部氏。
左端はダンサーのTomomiさん。本業のバレエ
の他に通訳として走り回る。
エキストラ・アマゾネス役がたくさん集まったが、
その分の衣装が足りず、急遽捕虜役になった。
そのおわびのお話だった。
北陸公演の最終日につき、
2幕の出番が終わったところで、
マルデブルグの団員たちが控え室に
あいさつに訪れてくださった。
一緒にパチパチ記念撮影。
1番ひっぱりだこだったのは、エキストラ
アマゾネス少女(6年生!)でした。
かわいかったもんね・・・ひがみっ。
メイク室
衣装
本当に衣装が素晴らしかった・・・。
古代エジプトの雰囲気、舞台効果を高める色彩の豊かさ!
(まるっきり古代エジプトだとつまらんだろう・・・王女の衣装とか)
何と言っても、アムネリスのつるつるアタマにはヤラレました!
衣装はもちろん、鬘や冠を場面場面で取り替え、実におみごと!
日本公演では、大阪や東京で別のエキストラがいるので、1着の
衣装を何人もで共有している事になる。私の衣装ハンガーには、
3人の名前が書かれていた。東京公演の後の新潟では、私の衣装のわき
が縫い縮められていて、かえって体にフィットして良かった。
(私よりずっとスマートな方だったのねん。)
こちらも歌劇場スタッフの他に日本スタッフが数名いらっしゃった。
実に職人気質な面々だった。ついでにコワかった。
合唱団女声は初日衣装合わせで勝手に持ち出してこっぴどく叱られた。
他のエキストラさんたちは着替えた後飲み食いしていて叱られ、ちょいと
床に置いて叱られ、期間中何度も叱られた人がいたと思われる。
私は「蝶々夫人」で、着替えた後はトイレ禁止飲み食い禁止を経験して
いるので当然だと思っていましたがね。(ストローで飲むものを用意する,
タオルなどを前掛けにする等、工夫します。)
さすがに富山新潟の頃は、みんな慣れて、それぞれ防衛策を練って
飲み食いしていた。
だって、お菓子食べるくらいしか待つ間の楽しみが無いのだ。
私たちの衣装に対し、最大限の気配りをしてくれたスタッフに、最後は
しっかりお礼の言葉を伝えました。
リハの舞台上で手直し
オーケストラ
マルデブルグ歌劇場管弦楽団には、日本人の団員が数名在籍
(コンサートマスターも日本人の山下洋一氏)している。
お話する機会もなかったので、ちょい残念。
管楽器の音色がヨカッタです。
凱旋行進曲の有名なトランペットは、ちゃんとアイーダトランペット
4本で、わざわざ衣装に着替えて舞台上で吹きます。カッコイイ!
新潟県民会館 リハ待ち
アイーダトランペット
なぜかちゃんとピストンがついている・・
アマゾネス(弓手)さんと
すべての衣装で青のアクセントが美しい
アマゾネス(槍)さんと
下手な人々・・