バロックオペラ
L’ORFEO
オルフェーオ全5幕

台本:A.ストリッジョ 作曲:C.モンテヴェルディ
2006.12.9 石川県立音楽堂邦楽ホール

音楽監督・演出 オルフェーオ
           
牧野正人

企画・ムージカ・スペランツァ
              長澤幸乃
ソリスト  野上聡子 安藤明根
       佐生理恵 与儀 巧
       辻 康介 渡辺真太郎
       押見春喜

合唱        OEK合唱団
バレエ  エコール・ド・ハナヨ・バレエ
器楽演奏   OEKメンバー等
リコーダーアンサンブル
  石川県ジュニア・オーケストラ

OEK合唱団のオーディションが終わってしばらくしてから、事務局から一本の電話。
「12月にあるバロックオペラの‘オルフェーオ’に参加しませんか?」
・・・ヨハネは3月だし、森の歌は11月だし・・・ま、いいか、と返事したのが4月。

それから連絡が途絶え、一体企画が生きてるのか死んでるのか、と思っていたら
楽譜が届き、牧野氏のワークショップがあったのが8月。
だいたい聴いたことも無い曲で(唯一見たお友達は、「オペラで初めて寝てしまった
曲だと・・・・爆)、楽譜を見てもアルトはどこを歌うのかも不明。
とにかく不安だらけ、しかもヨハネに森の歌にグリーンウッドも抱えて、アップアップ。
なんだか面白そうだけど、軽く返事した自分を呪ったものでした。

が、練習の回を重ね、立ち稽古が入ってくると、とたんに楽しくなってきました。

何度もよりよい動きになるまで修正し(本番1時間前まで修正があった・・・)、
自分たちでも考え工夫し、させられるのでは無く「みんなで作り上げる舞台」を
体験する事が出来ました。
しかもなかなか上演出来ない演目への参加で、最後の最後に、本当に得した気分に
なれました。(が、苦手イタリア語での暗譜には最後まで泣かされた・・・・)


奈落に花道の分の座席を収納
危険防止のフェンスがパッと。


お仕事を終えたみんなが
一緒に上がってくる。
まるでバックステージ
ツアーのようで楽しかった。
1幕の舞台。この段差にビビる。
(段の上にいるのはバレエ団。)
1幕ではこの上に乗ったまま、
回り舞台でぐるりと180度回転。
器楽合奏は弦(Vn2,Vla,Vc,Cb)リコーダー2,
チェンバロ,オルガン,テオルボ(リュートの大型)
衣装もすっかり宮廷楽士(*^_^*)


♪作品メモ♪

400年前、まだオペラが生まれてまもなくの頃の作品です。
言わずと知れた悲劇的なギリシャ神話ですが、多くの作曲者が手がけているのだとか。
オペラはその頃は今のような劇場では無く、王侯貴族のお城で上演されていました。
結婚式など、めでたい事があってお客様がいっぱい集まったような時に、オペラが
上演されたそうです。
「結婚式にオルフェーオとエウリディーチェの話なんて・・・」と思ったら、牧野先生によると
原型のお話はご都合主義で変えられ、中には二人がめでたく冥界から帰ってくる作品
だってあるそうです。
モンテヴェルディのこの作品は、嘆き悲しむオルフェーオを父であるアポロが、「これこれ、
嘆くでない。今から何の悩みも無い天上に共に行こう」とか言って、子煩悩にも(をい)連れて
行っちゃうのです。
ホントはニンフや女神たちに八つ裂きにされ、チェトラ(竪琴)だけが天に昇ってこと座になる
はずなんですがね・・。

「オルフェーオ」は、現代において完璧に復元上演するのは不可能なのだとか。
劇場はともかく、現存しない楽器もあるのだそうです。
(だいたい、アルトは女声が歌っていたと思えないんですが)
だからこそ、いろんなアレンジがあっていい、自由な作品になれるのですね。
牧野正人先生は、日本におけるオルフェーオのスペシャリストであり、いろんなかたち
でオルフェーオの舞台を踏んできた方です。
今回の舞台は、石川県立音楽堂邦楽ホールの機能を十二分に使い、ソロ・器楽・合唱など、
他では出来ない金沢版「オルフェーオ」となりました。

また、それを可能にしたのが、石川・富山の現地スタッフの熱意です。
限られた予算で、小道具・衣装・メイクと県内外かけずり回って用意されました。
(ハナシを聞くに、もう涙ぐましいものが・・・)
その中心で動き、ソリストも務めた長澤幸乃さんは、私の古い知り合いでした。
(ン十年ぶりの再会!!)
ソリストとして頑張っている事は知っていましたが、ホントにすばらしい歌声でした。
こうやって同じ舞台に立つ事ができて、何ともうれしかったです。


長澤さん・ワタシ・山腰音楽堂館長サマ

第1幕:オルフェーオとエウリディーチェの結婚をみんなでお祝いする場面。
合唱団は牧人とニンフ・・・わたしらニンフかい。家族を構成するニンフ(!)もいましたよ。
狭い段の上をソリスト・合唱・バレエ団が演技しながら行き来するので、何度も何度も
練習しましたよ〜。(で、1箇所、歌の入りを出損なった・・・(^^;))
紗幕の向こうで歌うムジカ(長澤さん)の声を聴きながら、「よし!頑張るぞ!」と気合いを
入れたものです。

第2幕:結婚式の2次会(爆)。回り舞台の転回だけで一気に続けます。
オトコ達だけで野原で盛り上がっている所に、エウリディーチェの死の知らせが入ります。
エウリディーチェの死の様子を紗幕を隔てて、合唱団とソリストで演技します。
オルフェーオやシルヴィア(安藤明根)の歌をきっかけに演技するので、耳ダンボ状態。
合唱は指揮者ナシで1st.Vnの弓の上げ下げだけを頼りに歌っているのですが、幕の向こうで
あまりに遠すぎ、かなり合唱が重くなってしまったようです。
それどころか、死を悼む演技に夢中になり、出が・・・・(−_−)。

限られた予算をいかに大事に使うか、
苦労が忍ばれる小道具類。
プルトーネの王冠は涙を誘う(^^;)
エウリディーチェ(野上聡子)と牧人(渡辺真太郎ことしんちゃん)と。
しんちゃんは若干23歳ながらオペラ出演多数、アサヒビールの
ラジオCMで歌が使われていたそうです。追っかけも来てましたよ。


第3幕:スペランツァ(希望の女神)に連れられ、オルフェーオは冥界へ。
3・4幕はリハ,ゲネプロと、座席でたっぷり観ることが出来ました。
ソロのバレエ、そして牧野先生の超絶技巧のアリアのすばらしさときたら!
ここでは花道と、花道にあるスッポンを使ってオルフェーオとカロンテ(押見春喜)の対決が演じ
られます。
冥界の門に彫られている「ここに入る者、希望を捨てよ」の言葉は、プロジェクターで映される
のですが、後から面白いウラ話を聴きました。
牧野先生によるデザインで上の言葉はイタリア語で描かれていますが、その上にヒエログリフ
(エジプトの絵文字)で描かれた言葉は「カニを喰わせろ!」だったとか。
また、映像をオルフェーオの手の動きに合わせて消していったのですが、照明さんはレンズの前
に手を置いて、先生の動きに合わせてレンズを覆っていったそうです。
う〜ん、これはパワーポイント使えば出来るんじゃ・・とも思ったけど、微妙な加減は無理ですね。

第4幕:願い通りオルフェオはエウリディーチェを連れ帰ろうとするが、定めに反し後ろを
振り向いたため、エウリディーチェを永遠に失う。
プルトーネ(押見春喜)とプルセルピナ(安藤明根)は2役です。特にプルトーネはカロンテ役もこな
すため、忙しかったでしょう。
3人の霊は、合唱団員から。衣装はまるでダースベイダーだと(*^_^*)。

第5幕:嘆き悲しむオルフェーオのもとに父であるアポロが降臨、天上へと誘う。
一番変更があった場面です。「舞台は生きている」んです。(^^;)
舞台は1幕と同じ、段差のある舞台になる予定でしたが、合唱団とバレエ団の動きがスムーズに
いかないため、フラットな舞台になりました。
バレエに合わせて、合唱団のダンス振り付けまであったのですが、みんな一緒の動きはおかしい
と、揃った踊りはボツ。
で、本番1時間前にあった変更・・・。
オルフェーオがアポロ(辻 康介 牧人と2役)からもらったガウンを着る時に、チェトラがとっても
邪魔になるので、地上にチェトラを置いていく事になりました。そのチェトラを子役2人が取りに行き
オトナ達が喜んで持ち回り、最後は舞台中央にオペラの始まりと同じように戻す設定に。
・・・う〜ん、こと座はどーなるんだ?!
「オルフェーオのチェトラが、人びとの心に伝説として残る」、と言うのが金沢版オルフェーオ
の結末・・・なんて考えられなくもないか。(*^_^*)



公演終了後、記念撮影のために集合。
普段眼鏡の方は、この日のためにコンタクトレンズをあつらえました(^^;)
終わってなんだか寂しかった・・・・・。


辻さん・押見さん・与儀さん・渡辺さん

若手ソリストみんなは、‘のだめカンタービレ’青春群像のその後、
みたいな人たちでした。
ソリストとして生きるか、他の仕事を持ちながら頑張るか、
音大出てからが、大変なんですね〜。





終演後、牧野先生
とひとりひとり握手!