J.SBach マタイ受難曲 BWV244

2005.2.04(金)石川県立音楽堂コンサートホール
第175回OEK定期公演

 指揮・福音史家 :ペーター・シュライヤー


楽譜見開き シュライヤーのサインを貰った方に写させてもらった    ソプラノ :クリスティーナ・ランスハマー
   メゾソプラノ :ステファニー・イラニ
   テノール   :マルティン・ペツォルト
   バリトン :ヨッヘン・クプファー
   バスバリトン :エグベルト・ユングハンス
    オーケストラ・アンサンブル金沢
     オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団
     OEKエンジェルコーラス
   合唱指揮 :佐々木正利


・・「音楽の父」J.S.バッハから我々人類への最大の贈り物、『マタイ受難曲』。
・・無人島へ行くのに是非とも持っていきたい曲は『マタイ受難曲』、と言ったのは武満 徹。
・・合唱団が取り組む曲の中で、最も難曲は『マタイ受難曲』。

様々にコメントされるこの曲、OEKで何年か先には・・と言うウワサは聞いていましたが、
まさか2005になろうとは・・・、しかも指揮と福音史家を、かのペーター・シュライヤーだなんて!!
事務局の熱心なシュライヤーへのアプローチにより、私たちが思っていたよりずっと早くこの大曲に
巡り会う事となりました。
この来日に合わせて、日本各地でシュライヤーのリサイタルが開催されていますが、『マタイ受難曲』を
演奏するのは金沢のみ。(それ以前にシュライヤーは、日本の合唱団を指揮していない。)
そしてペーター・シュライヤーは2005年のシーズンをもって、歌手としての仕事を退く事を表明。
彼が指揮&福音史家を務める『マタイ受難曲』はこれが最後、と言う、なんともすごい事になって
しまいました。


     

・・・はい、すごい演奏でした。
もう、シュライヤーは人類のタカラのような方です。
すべて暗譜で指揮、オケや合唱への大胆かつ繊細な指示、そして何より見事な‘福音史家’・・・。
時に、最大の聴かせどころである〔ペテロの否認〕の場、もう全身を耳にして聴きました。

オーケストラ・合唱は客席から向かって左にオーケストラ1・合唱1,右にオーケストラ2・合唱2,
中央にソリストが並び、指揮者は扇の要のように舞台のど真ん中に立ちました。
リハーサルから本番に向けて、音楽を創り上げていく過程が、本当に楽しかったです。
音がだいぶ取れるようになってから、シュライヤーのCDをイヤと言うほど聴いていましたが、
結構印象が違いました。
初めてのオケ合わせで聴いた第1曲の出だし(キリストがゴルゴダの丘を辿る様子を表現していると
言われています)、シュライヤーの繊細な指示にみごとに応えていくオーケストラの音を、私は生涯
忘れないでしょう。
イエスが息を引き取った後の62番のコラールは何とアカペラ、終曲ではPで歌われる箇所をしっかりと
歌う指示などの掟破りもあって、ワクワクさせられました。
ただ、コラールへの指示を得る時間がもっともっと欲しかった・・と言うのが合唱団員の思いです。

自分が立った場所はソリストのすぐ横。
指揮者とソリストの気迫がストレートに伝わってくる場所であり、
・・・3時間以上の演奏時間、どんどん過ぎていくのが本当に惜しかった。
全曲歌いきった喜びと満足感は、何物にも代え難いものでした。

正直、3番のコラールで単語一つ間違えました・・・(爆)。
‘コラールはすべて暗譜’と言われ続けましたが、正直、完璧には無理でした(・・遠い目)。
おかげですっかり足が地に着き、‘いかに指揮者から目を逸らさずに、しかも間違えないように’と、
最後まで冷静に歌えましたけどね。


本番直前に合唱指揮の佐々木先生からを聞いたところによると、シュライヤーはOEKをいたく気に入り、
2007年にまたOEK(合唱付き)を指揮する事になったそうです。
『フォーレのレクイエム』以外なら何でも(・・嫌いらしい)、との事で、2年後が楽しみです。
・・・と言って自分が続けられる状況だろうか、とっても心配なんですけど〜。




ゲネプロ直前のシュライヤー様  フラッシュ無しで撮ったので、
 ボケております。すみません。
 ‘神様’とは言え、リハではちょっと
 だけ間違えたところも。
       (
合唱への指示間違いetc.) 
  男声ソリストの皆様
雪のために交通機関が乱れ
全員揃ったのは当日。
どのCDにも聴き劣りしない
最高のソリだった。
左からユングハウスさん・ペツォルトさん・クプファーさん



・・汗と涙の練習記・・・
マタイの練習は、前シーズンの「マニフィカート」の余韻に浸る間もなく、すぐに開始。
本番まで12ヶ月に及ぶ練習期間となりました。
OEK合唱団には発足から参加していますが、今回ほど大変な練習は無かった。(断言!!)

曲数が多い(68曲中40曲、実際にはTとUに分かれるので一人で30数曲)、
苦手なドイツ語、
コラールの繊細な表現に付いていく」ために‘暗譜’の指示。

約一年歌ってきて、さすがに暗譜できるだろう・・・なんて、衰えつつある脳みそにはツライ作業。
受難曲の歌は、だいたい3つに分けられます。
受難のお話の進行を歌う曲,登場人物となって歌う曲,物語に対する思いを歌う曲です。
合唱は、その他ものもろの登場人物(聖職者,弟子達,市民etc.)として歌うキャラクターコーラス
物語を聴く‘私たち’の気持ちを歌うコラールの2種類です。
キャラクターコーラスは変化に富み、難しくとも暗譜しやすい。
ところが、コラールの方はよく似たメロディ(特に‘受難のコラール’と呼ばれる同じメロディの曲は5回
出てくる),よく似た単語ばかりで、どうにも覚えられない。
練習の日に指揮を見て歌えた、と思っても次の練習日には忘れているありさま。
もう、‘賽の河原状態’でした。


ドイツ語の発音では、特にuのウームラウトに本当に悩みました。
先生にお手本を示されても、どうしてもうまくいかない。さすがに本番前は「こんなものか」と思えるよう
になってきましたが、今でも思い出すと胃が痛む思いです。
CHの発音のパターン、Rの発音も。
巻き舌は得意なんですが、すべてのRは巻くわけではない。
語尾にerで来る時、たとえばmancherだと、マンヒャと読むとか。
とにかく最後にerと来たら法則通りに発音しましたが、今まで自分たちが歌ってきた発音とずいぶん
変わった感じがして、なかなか慣れませんでしたね〜。
(で、本番。私の後ろは現在ドイツで勉強中の心強い助っ人でしたが、語尾のerで巻いていた時にゃ、
もう「どーすりゃいいのよ」状態でした。)
しかし、この事は毎年バッハのカンタータを歌う自分にとっては、とってもプラスになると思っています。
(ころんでもタダじゃ起きない、ってところでしょうかね・・・違)


本当は、決して一年で仕上げられる曲ではないのでした。
合唱指揮の佐々木正利先生は、「マタイ受難曲」のエヴァンゲリストを何度も務められ、合唱の指導
もそれと同じくらい努めていらっしゃるので、先生を信じてついていけばいいのですが・・・。
・・・あまりのスパルタぶりについていくのが本当に、ほんとうに、大変でした。
(いや、自分達がなさけなかっただけですから〜)



私は、04年度組合役員に就く事になっていたので、「無理なら途中で抜けよう」くらいの気持ちでエン
トリーしたのですが、アルトのパートリーダーを引き受ける事となり、逃げられなくなってしまいました。
子どもが小さくて予習をしていく事が出来なかった頃、まわりの上手な方達にささえられて(甘えて、
とも言う)歌ってこられたのだから、ここらで恩返しせねば、と思って引き受けたのですが・・・、その、
‘まわりの上手な方達’は気が付けば誰も残っていなかった・・・。
一日仕事をして、組合の執行業務をして、それから練習・・といった事もしばしば。
よくぞカラダを壊さなかったものだ、と、自分で自分を誉めてやりたい気分です。
(その分、家庭にすべてのしわ寄せが・・・)

出来る事は、練習のポイントを持ち回りでパートのMLにまとめて出す事、パート練習をする事、何より
自分がともかく歌えるようになる事、注意を受けるとついつい気分が落ち込みがちになる仲間を励まし
続ける事・・。
あまりに力不足な自分ではあったが、出来る事やるべき事はすべてやった、と今は思う。
いっぱい悩む事・落ち込む事はありましたが、サブ・パートリーダーを引き受けてくれたKさんが気の
合う仲間であり、たくさんサポートしてくださった事、なによりアルトの方達が頼りないリーダーを盛り
立て、努力して下さった事で(歌入り練習CDまで取り寄せて下さった方も!)、練習を乗り越えられま
した。

それでも、どうしても合格点には至らなかったために、佐々木先生が普段から指導していらっしゃる
盛岡カンタータ・フェラインのメンバーの助けを得ましたが、やっぱりすばらしい声で、自分の修行の
足り無さを自覚しました。(勉強になりました、ハイ!)
・・・さいごの最後までドタバタはありましたが、ゲネプロからは気分を変え(開き直って・・とも言う)、
シュライヤーとの時間を楽しむ事に頭を切り替えました。・・・本当に、至福の時間だった、と、思う。



ヨッヘン・クプファー(バリトン)のサイン イエス様(クプファーさん)のサイン
イエスの「主よ、どうして私をお見捨てになったの
ですか」のところにお願いしました。
(十字架まで書き込んである・・・爆)
「どうしてお見捨てになったのですか」は、決して
恨み言ではなく、祈りの定型句の一部だとか。
テナーのペツォルトさん,バスバリトンのユング
ハウスさんにも頂きましたが、裏表紙に書いて
頂いたら、はじいてにじんでしまいました・・。
     女声ソリ(27番のデュエット)の上におふた方にサインを
       おふたりともみごとな歌声!(しかも美人・スタイル良し!)




   1番の楽譜
   書き込み過ぎて何が何だか・・・・。
   もう無いんじゃないか、とも思いますが、
   もし、またもう一度マタイを歌うような事が
   あっても、この楽譜は使いません〜。
上がクリスティーナ・ランズハマー,下がステファニー・イラニ
第一曲26小節目     打ち上げでのシュライヤー様 ちょっとお疲れ 打ち上げでの
シュライヤー様


残念ながらサインはget
出来ず。
それでももらった猛者の
ものを写真に撮らせても
らったのが、上の写真・・
     (ちょっとみじめ)
でも握手はしてもらったぜ!

    演奏終了直後に、バスバリトンのユングハウスさんと
                               (写真提供 Iさん)
    今回、エンジェルコーラスの娘と同じ舞台に立ちました。
    家でも結構一緒に練習しましたよ〜。
    パッションも一緒に見に行き、CDで聴きどころを教えたり。
    児童合唱は第1曲と29曲に参加、第一部で舞台を降ります。
    その後は有志で客席で鑑賞しました。(丁度戻ってきた所でパチリ)
    〔ペテロの否認〕の場がやはり印象に残ったようです。
          



参考資料・・と申しますか(ホントに参考になったかはおいといて)
「マタイ」解説書 薄いカバーがかかっていてキレイ 東京書籍 磯山 雅 著
「マタイ受難曲」(初版1994)

のっけからすみません!
全部読めたわけではありません。
受難曲の歴史から始まり、曲の中に隠れ
ているバッハの修辞法なんかが解説されて
います。
後半には、2000年までに録音販売された
すべてのレコードやCDの私見入りまくりの
コメントがあります。

ミシェル・コルボ指揮
ローザンヌ室内管弦楽団(1982録音)
自分が唯一お金を出して買ったCD。
上の本では、「厚化粧の美女が宛然と微笑みを
向けているような・・」と書かれています。何もそこ
まで書かずとも・・嫌いじゃないですよ、私は。
コピーしていただいて聴いたものに、
P・シュライヤー(1984),J・E・ガーディナー(1988)
があります。
佐々木先生が合唱指揮したヴィンシャーマン指揮
の録音(2003)は、毎日車の中で聴きました。
(10ヶ月車の中はマタイ漬け〜)
指揮者によって、ホントに違いますよ。

コルボのCD
映画パンフ・・DVDはカタカナになっている  メル・ギブソン監督
 パッション

 これは既に別のページで書きました。
 合唱団員のほとんどが観たのでは?
 歌うたびにムチ打ちの場面とか怖いところが
 頭に浮かんでなぁ・・・
ううっ
 12月に発売されたDVDも購入しております。
 まだ部屋で一人で観る勇気がありません。