合体パロパロ第2弾!!    ガラスのKISS

                 
                          〜プロローグ〜

真澄は心臓が爆発するかと思った。
だが、次の瞬間、右の頭と肩とに衝撃が走った・・・。




「紅天女」の東京本公演の千秋楽の早朝、真澄は聖から衝撃的な連絡を受けた。

「紫織様が何か仕掛けられるやもしれません。」
「・・どういう事だ!」
「実は、紫織様との結婚式が延期されて以来、ずっと紫織様を監視させておきました。」

マヤに‘紫のバラの人’からの絶縁状を送ったのが紫織だと判明して以来、
聖は、真澄の美しい婚約者が深い闇をかかえている事に危機感を持ち、
鷹宮家に彼女を監視させるお手伝いを送り込んでいたのだ。

「差し出がましい事を致しまして申し訳ありません。
ご自分の健康問題のせいであったにもかかわらず、紫織様は大変不満を抱かれ、精神的に不安定になっておいでです。」
「ああ、それは感じている。」
「が、ここ数日鷹宮家に不審な来客があり、どうも紫織さまとかかわっているようです。」
「・・・それで何か彼女がするとは・・・」
携帯の聖の声は低く、緊張感が伴っている。
「それが、この舞台関係者に入っているようなのです。」
「・・・!!」




千秋楽には、紫織も真澄の婚約者として劇場に訪れた。
「真澄様、おひさしぶりですわ。私をお忘れでない?」
皮肉な言葉なのに、口調は軽やかだった。
「紫織さん、お待ちしておりましたよ。どうぞこちらに。」
「真澄様とまた紅天女が観られるなんて、とても嬉しゅうございます。
・・・早いものですわ、もう千秋楽なのですね。私たちの結婚式もすぐですわね。」
ここしばらく、彼女の神経質な電話の声に悩まされていた真澄には、
紫織がやけに高揚した気分でいる事がはっきりわかった。

舞台にまっすぐ向き合う形の席に、ふたりで並んで座る。
しばらくは地方公演となるため、いや、この後紫織との結婚式を控えているため、
真澄としては万感の思いで迎え、マヤの所作のすべてをみつめていたい舞台であったのに。
・・・今頃聖は劇場のすみずみを調査しているハズだ。
いつもは電源を切る携帯だが、マナーモードに切り替え、胸にしまった。






滞りなく舞台は進む。
紫織はやけに冷静に観ている。そればかりか、時折、真澄の方を見て微笑んだりもしている。
真澄は汗を握りしめていた。
・・・いよいよ‘一真’は禁足地に踏み込んでいく。
『・・・何も起きなければいい・・・無事に終わってくれ・・』

終幕の一真のモノローグが入る・・・終演。
カーテンコールだ。
出演者が、次々と舞台に出てくる。
一真が中央に進んだ時、突然、携帯が振動し始めた。
「真澄様!上、センターの照明です!!ここからは間に合いません!」
拍手がさらに大きくなり、マヤがひとり、中央に進み出る。
はじかれたように立ち上がった真澄は、人の席の前をかきわけて進もうとした。
瞬間、紫織の手が腕にからまったような気がしたが、かまっていられない。
舞台のもっとも前の、一番大きな照明を支えるバーが動き出した。
『バカなっ!あの高さからあれが当たれば月影先生どころじゃない、即死だ!』
マヤの真上の照明がぐらついたー。




観客の悲鳴も、どよめきも、なにも聞こえなかった。
「速水さん!速水さん!・・・はやみ・・」と、泣きじゃくるマヤの声だけが頭に響く。
右肩、右側頭部が焼け付くように痛む。
(オレは死んではいないようだ・・・)
「ごめんなさい!あたしのためにっ!!・・ごめんなさい・・・
ごめんなさい・・」
とにかく、マヤも無事なようだ。
一気に体の力が抜けていった・・。

真澄は自分の体が担架らしきものに載せられ、運ばれていくのを感じた。
突然、引きつるような女の笑い声が聞こえた。
まわりはしんと静まりかえり、その笑い声だけが空しくホールに響いたが、それも遠ざかっていった。




・・・・・・・
「・・・
斗南大の救命センターは?・・・・手一杯ですか?・・・いえ、患者は受け答えは出来ます・・・・

(・・・患者って、オレか?・・・受け答えって、何かオレ、しゃべったっけか?・・・)

「弱ったな、斗南大が一番近いのに・・・・・・えっ、OKですか?じゃあ、3分以内だ、よろしく。」

(斗南大?本社の近くの?)

「おい、あの天才若造、入江とか言った・・・・・今晩当直だとよ。この患者もラッキーだな。」

サイレンの音に、救急隊員らしき会話がとぎれとぎれに聞こえる。

(・・・イリエ?・・・天才?・・・どんなヤツだ・・・)

やがてサイレンが止み、救急車が止まったー。








「カルメン」の舞台練習時に、天井の照明列を眺めながら思った。
・・・あれが頭の上に落ちてきたら、火傷なんかじゃなくて、確実に死ぬなあ・・・。
照明調節のためにおろされてきたバーに取り付けられている照明は、まともに当たったら、
完璧死にそうな程大きいのだ。(もっとも、絶対落ちる事の無いよう取り付けられてる・・普通・・・^_^;)
なんかドラマ版みたいですみませんです。

そんなワケで続きます・・・たぶん。