ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

リッカルド・シャイー指揮
G・マーラー 交響曲第3番 ニ短調


女声合唱
オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団

児童合唱
オーケストラ・アンサンブル金沢エンジェルコーラス

合唱指揮
佐々木正利

アルト・ソロ

ナタリー・シュトゥッツマン


2002.11.12
石川県立音楽堂コンサートホール


演奏会チラシ 日本公演共通パンフ

2002年度の活動の締めはOEKとではなく、なんと天下のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と!

曲名‘マーラーの交響曲第3番’と聞いて、「?」。
マーラーと言えば、「巨人」「復活」「大地の歌」などの愛称がついているものくらいしか、
正直聴いた事がありませんでした。
あわててCDを買って聴いてみた次第。(ウラウディオ・アラウ指揮)

合唱団が入る5楽章までの長いこと長い事!(1楽章だけでCD一枚分だったのにはびっくり。)
そしてやっと来た5楽章。
一瞬「クリスマスソングか?!」と思った。
当たらずとも遠からじ、入りの児童合唱は、鐘の音(ビム!バム!)でした。

今年はシニアとエンジェルコーラスの共演が続き、これで3度目(またまた娘と一緒)。
歌詞の意味について、一緒に歌う娘に何度か話し、一緒に練習もしました。



  『3人の天使が美しい歌をうたい、
  その声は幸いにみちて天上にひびき、
  天使たちは楽しげに歓呼した。
  「ペテロの罪は晴れた」と。・・』         (子供の不思議な角笛  より)

そして、アルト・ソロの憂いに満ちた声。
   『心ひろき神よ、私は泣いてはいけないのでしょうか・・』

イエスを裏切ってしまったペテロの悲しみの歌です。
ペテロはイエスに『夜が明ける前に、お前は私の事を知らない、と3度言うだろう』と予告され、
実際にそうなってしまいました。
罪を犯したものに許しはあるのか。
 

  『ただひたすらに神を愛し、神に祈りなさい・・』と。


練習のおりに、自ら教徒である佐々木先生からお話をうかがいました。
「ユダの事もイエスは許している、と私は信じたい。」というお話が印象に残りました。
(遠藤周作の「沈黙」の世界ですわ。)

何より『神の許し』が至上の幸福につながるのでしょうか。


しかし疑問、マーラーはユダヤ人であり、ユダヤ教徒であるはずだが。
確かにそうではあったが、途中で改宗しているのですね。
そうしないと仕事がこない、という現実的な問題があったようです。
(なんだか生臭いが、素敵な曲を作ってくれているので良しとしよう・・爆)



5楽章は歌えばほんの数分。
たったそれだけの歌に、かつてこんなに時間をさいて練習した事があっただろうか。
(・・・無い!)
一体何をそんなに練習していたかと言いますと、ドイツ語の発音につきます。
音程自体は、9月の「三つのイメージ」に比べれば楽勝モノだったのですが・・・。
こおんなにドイツ語の発音、(特にウームラウト)注意された事はありません。
今まで歌ってきたドイツ語・・・一体何だったのでしょうね?(爆)
佐々木先生の昨年のモツレクの練習も大変だったのですが、
「ひょっとして先生、粘着質?」と思えるくらいしつこく、キビシい練習でした。

佐々木先生は児童合唱の練習の方も、今回最初から自ら進んで取り組まれました。
『もう絶対、コンセルトヘボウの演奏に見劣りがしない合唱を!』
という意気込みがビンビン伝わってくるし、我々も何としてもそれに応えたかったのですが・・。
何でOKが出ないんだ〜?!の連続・・・だってやっぱりヘタだった。
ドイツ語はあらゆる言語の中でも、唇をむちゃくちゃ動かさねばならないのですが、
あまり動かさないでも話せる日本語を使う我々には、かなりの訓練がいるのです。
(自分では完璧になったつもりが、本番一カ所突如口がまわらなくなった所が・・T_T)

・・・おかげで、娘はいまだに時々この歌を口ずさんでいます。
きっと死ぬまで覚えているんじゃないかしらん。



当日リハ、
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団はフルオケであるため、
コンサート・ホールの舞台は狭すぎて合唱団全員が同じ舞台に立てない。
で、児童合唱だけが舞台の一番後ろ、
女声合唱は何とパイプオルガン・バルコニーに段を作って!
すんごい段差があるのですよ。
おまけに柵の幅が広いし、「絶対よしかからないで下さい!」と注意されるし。



          オルガンバルコニーから見たオケ
          リハ開始前  バルコニーからオケを見ると・・


金管楽器や打楽器がフォルテで入ると、床がビリビリふるえます。
舞い上がってくる音を聴くのも結構いい!

高所恐怖の方はとても行けない所ですが、そうでない方は一度行ってみる価値があるかも。



アルトのソリストは、予定ではミシェル・デ・ヤングさんでしたが、急病で来日できず、
たまたま来日演奏していたナタリー・シュトゥッツマンさんが急遽代役に。
前日佐々木先生から、彼女が歌う様子を聞いて「大丈夫か?!」って感じだったのですが、
(楽譜を手に持って、目は音符を必死で追っている・・・でもウマイ!って)
代役の方が格上になる、って事もあるのですねえ。
恥ずかしながら私は存じ上げてなかったのですが、何枚もCDが出ているそうで、
もともとファンと言う方もお客さんにずいぶんいらっしゃったとか。

リハに現れた彼女はショートカットで黒いスーツで、スラっと背が高くて、ぱっと見は男性。
でも歌うと、何とも深くやわらかく、今まで聴いたことがない種類のすばらしいアルトでした。
(やっぱり楽譜を手に持って・・・だったけど)


               ナタリー・シュトゥッツマンさん/

               終演後、楽屋エレベーターで



さて、本番。

我々はオケとともに入場。
いよいよ長い長い交響曲第3番の始まりー。

1楽章,2楽章が終わったあとに、拍手が入る。
こんな曲は‘通’しか聴きにこないと思っていたが・・・?
純粋に、すばらしくて感動して拍手した方もいらっしゃった事でしょう。
が、つられて拍手した方もいたに違いない。
聴きに来てくれた叔母が一緒に拍手してしまって、隣の方から‘教育的指導’を受けたらしい。

合唱団は細いベンチに座ったまま、出番まで1時間あまりひたすら待つ。
この日、ちょっとお仕事でハードな事があったり、体調がいまいちだったりで、
(アリ○ミンVのドーピングが効かなかった・・涙)
待っている間、かなりつらかったです。
自分でもうちょっと体調管理&スケジュール調整が出来なかったものかと、反省。
が、3楽章のポストホルン(郵便屋さんが持つホルン・・・舞台裏で演奏)に聴き惚れているうちに、
だんだん気分が良くなっていきました。
同時にシャイー氏の指揮っぷりを楽しむ余裕も。
(かなり見られる事を意識していると思うなあ〜。)


4楽章の空間にしみこんでいくようなアルトが終わり、いよいよ5楽章。
直前の指示もなんとか守り、あっという間に歌いきる。
最後のソプラノの声から、6楽章の始まりまでを、目をつぶって聴きました。
すっとしみこんで来るよう。
何とも美しく力強い曲!
終わった後の爽快な気分の中で聴いているので、余計印象が良かったのだと思ったのですが、
後から聞くに、6楽章が絶品だった、とおっしゃる方が多かったので、本物だったのでしょう(爆)。


娘には全曲聴かせていなかったので、本番寝ないかちょっと心配していましたが、
立った場所が打楽器のすぐ近くで、銅鑼やらティンパニやらがウルサくて、
居眠りするどころではなかったらしい。
おかげで‘初めてマーラー’をハードにまじめに体験させてもらえて、何よりでした。
聴きに来てくれた老母と叔母も、長いなが〜い曲を本当に満足して聴いてくれたようです。

娘とはこれでしばらくは共演の機会は無いようですが、いい思い出になりました。
パンフにはちゃんと名前も出ており、びっくり&ウレシイ!
娘はここ2年で、すっかり合唱フリークになったようです。
OEK以外で一緒に歌う機会ももっとできるかも。



本番舞台写真・・もう舞台いっぱい
本番舞台写真です!