探偵小説とは何か?〜分類とその実例〜

この文章は小説連合SAGITTARIUSに寄贈した物です。
 ぼくは探偵小説を愛して止まない。しかし、探偵小説の分類として雑誌<探偵小説>によると

本格推理小説(パズラー)
倒叙推理小説
社会派推理小説
法廷もの
ハードボイルド
警察小説
暗号小説
ピカレスク(悪漢小説)
スリラー、サスペンス
犯罪心理小説
スパイ小説(エスピオナージ)
捕物帳
SFミステリ
怪奇・幻想小説
犯罪実話
(参照<探偵小説>)

 こう羅列されてもピンとこない人がいると思うのでいくつかの「新たな分類」を加えながら補足していこうと試みている。

 本格推理小説とは、作者が読者に必要な手がかりを全て提示し、読者があてずっぽうではなく、論理的に犯人を推理できるようにしたものである。主な作者としてはエラリィ・クイーンやヴァン・ダイン、ジョン・D・カーがあげられるだろう。また「金田一少年の事件簿」、「名探偵コナン」がその典型である。さらに付け加えるとするなら高慢にもぼく自身の「有沢翔治シリーズ」がそうであろう。
 倒叙型は犯罪描写が最初にきて、犯人の犯したミスを推理するという形態の小説である。主な作品としては刑事コロンボ、古畑任三郎などだが、小説連合に掲載されている各務原警部ものもそうである。
 社会派推理小説とは時代を皮肉り、政治家の汚職などが原因で犯罪を犯す物が多い。少し考えさせられる推理小説である。作家は、やはり松本清張だろう。
 法廷ものとはその名の通り、法廷を舞台にした推理小説である。主な作家はガードナー、高木彬光の「泉一郎シリーズ」、赤かぶ検事などであろう。
 ハードボイルドとは、非情な探偵を登場させることで、人間関係を浮き彫りにした作品である。主な作家はハメット、チャンドラーなどをおいて他に誰がいよう?最近の作家で言えば大沢在昌の「新宿鮫」がそうである。
 警察小説とは警察内部の情勢を描いた小説の事である。安浦刑事シリーズやシムノンの「メグレ警視」が代表例である。
 暗号小説とは暗号を解く事に重点を置いた小説だが、最近は本格派に吸収されてしまっている。ポオの「黄金虫」、ドイルの「踊る人形」や「赤輪党」がその代表例である。
 ピカレスクとはぼくも最初、解らなくて、共同管理者の早川修氏に訊いたのだが、悪漢が主役の小説だそうである。その定義からするとアルセーヌ・ルパンがその代表格であろう。
 スリラーやサスペンスというのは犯罪事件により、主人公が無実の罪を着せられ、刑執行まで助けなければ死んでしまう、あるいは犯人に襲われるなどのハラハラ、ドキドキを求める小説である。作家と作品は、やはりウィリアム・アイリッシュの「幻の女」は外せないだろう。また、アガサ・クリスティー女史の「七つの時計」もその一例であろう。
 犯罪心理小説とは犯罪心理に重点を置いた小説である。例には推理小説とは言いがたいがドストエフスキーの「罪と罰」がそうだと思う。
 スパイ小説とはその名の通りスパイが活躍する小説である。例としてはジェームズ・ボンド、早川氏の「内閣情報室」などが挙げられる。
 捕物帳とは江戸時代が舞台の推理小説で、野村胡堂の銭形平次が有名だろう。
 SFミステリとはSFと推理小説の融合体。アイザック・アシモフの「SF九つの犯罪」が有名だと思う。
 怪奇・幻想小説。怪談話で、ポオの「黒猫」が有名だろうか?これを探偵小説に位置付けるのは疑問が残るが。
 犯罪実録。実際にあった犯罪事件を小説にしたものである。もうすぐ映画で公開の「あさま山荘事件」、以前テレビでやった「三億円事件の真実」がその代表例である
 ぼくはさらに二つのジャンルを付け加えたいと思う。それはサイコ・ホラーと、ユーモアミステリである。
 サイコ・ホラーは「ハンニバル」のような精神異常者(殺人淫楽者)が次々と異常な手口で人を殺していくというものである。
 一方、ユーモアミステリーは赤川次郎氏のような推理小説である。
 つまり、ぼくの「新分類」では

本格推理小説(パズラー)
倒叙推理小説
社会派推理小説
法廷もの
ハードボイルド
警察小説
ピカレスク(悪漢小説)
スリラー、サスペンス
犯罪心理小説
スパイ小説(エスピオナージ)
捕物帳
SFミステリ
犯罪実話 
ユーモア・ミステリ
サイコ・ホラー
 である。

Topへ 前へ