名前に御用心


 僕はこの前、駅のコンビニエンス・ストアで早川書房のクリスティの本を発見した。200円と格安だったので即座に買ったが、その際少し気になる事があったので御紹介しようと思う。
 それはその二冊の本の横に「愛の旋律」という小説があったことである。著者名を見ると「アガサ・クリスティ」となっていたのでこれも買おうと思ったが、早川ミステリ文庫特有の赤表紙ではなく、グレイの表紙だったことや、HMと書いてない事もあり、買わなかった。と言うのもクリスティはミステリだけではなく、恋愛小説も書いているのだ。しかし、発表当時の名義はメアリ・ウェストマコットなのだが。我が国(世界的にそうかもしれないが)ではアガサ・クリスティ=推理作家というイメージがある。  このような例は他にもある。例えばシャーロック・ホームズで有名なコナン・ドイル卿が「白衣の騎士団」という歴史小説を書いていたり、ヴァン・ダインが純文学を書いていたりと意外な例も少なくない。
 僕が言いたいのは発表当時の名前を使って欲しいということだ。よほどのマニアでない限りアガサ・クリスティとメアリ・ウェストマコットが同一人物だとは思わないだろう。第一、作者だって悪戯に筆名を変えたりはしない。ネーム・バリューが付かなくなってしまい、売上低下に繋がってしまうからだ。筆名を変えるのは止むに止まれぬ事情があったからだ。
 同じ筆名にすることは・・・ネーム・バリューがつくかもしれないが・・・読者に誤解を与え、結果的に売上低下へと繋がってしまう。例えばミステリが欲しかったのに恋愛小説だったらどうだろう?読者は何も知らず、いつ事件が起きるかとわくわくして待っているに違いない。しかし最後まで事件が起こらなかった。この時、読者はどれだけ怒り、どれだけがっかりするか考えてみて欲しい。
 つまり作者の意向や読者の誤解を避けるためにも発表当時の筆名にすることが大事なのではないだろうか。
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