本格と新本格


 有栖川有栖氏、綾辻行人氏等が立ち上げた「新本格」というジャンルについてだが、鯨統一郎氏は「ミステリアス学園」で一緒だと言っている。しかし僕はこの説に疑問を感じる。
 例えば新本格の代表例として「動物園の暗号」を上げてみよう。あの作品はどこにどのような駅名があるのか、また、記号の意味を知らなければ解けない。これはフェアな勝負と言えるのだろうか。確かに、名古屋、高岡、福井等、知名度が高い駅名が使われていたならフェアだろう。しかし「動物園の暗号」に出てくるような駅名は知名度が低く、その地域の住民や地図帳ても調べない限り、不可能である。
 しかし、有栖川氏のデビュー作「月光ゲーム Yの悲劇'88」は読者への挑戦状付きでフェア度が高い。また、本格派の代表格とも言えるエラリイ・クイーンの「スペイン岬の秘密」は犯人が論理的に導き出せるようになっている。
 「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」にもあるように本格派は何事も隠し事をしてはいけない。これが「動物園の暗号」や「霧越邸殺人事件」に当てはまるだろうか?答えは否だ。
 以上の事柄から僕は新本格と本格は違うものだと考えている。新本格は「解決編で隠し事をした本格派に近い推理小説」だと考える。