「唇のねじれた男」に出てくるジェイムズについて
下線の部分はリンクです
「唇のねじれた男」には次のような一文が出てくる。
>「・・・・・(前略)ジェイムズはもう寝かしつけるから大丈夫よ」
さて、ここで問題となるのはこのジェイムズなる人物が一体何者であるかだ。ワトソン夫人が夫の名前をジェイムズと間違えるであろうか。シャーロッキアンの間ではそう解釈する人も多くいるようである。また、エルスマンはアンソロジー「シャーロック・ホームズの新冒険」の中でジェームズ・モリアーティだと書いてある。
しかし、夫の名前をそう間違えるだろうか。夫婦間や、親子間では正典を見れば解るようにファースト・ネームで呼び合うのが普通だ。毎日、呼び合っているにも関わらず、間違えるとは考えにくい。
ペット・・・例えば犬など・・・の名前だとしたらどうだろう。妥当性はありそうに見えるのだが、ケート・ホイットニーがペットがいる程度で話しにくくなるとは考えにくい。故にこの可能性も否定される。
ここから先はみっちょん氏の表が非常によく纏まっているのでそちらをご参照願いたい。(別ウィンドウが開きます)
次にエルスマンの「ジェームズ・モリアーティだった」という説を検証してみる。「唇のねじれた男」が発生した年は一八八六年六月だが、モリアーティ教授が正典中に初めて登場する「恐怖の谷」は一九一四年の出来事である。(いづれもベアリング・グルード説)従ってこの説は否定される。フォルソム説、ホール説でも無理である。
では、子供という説はどうだろうか。ここでネックとなる時間的な問題を見てみよう
。ベアリング・グルード説によると、「四つの署名」は一八八九年と、時間的に無理がある。しかし、ホール説では一八八七年に「四つの署名」が発生しており、一八八九年に「唇のねじれた男」が発生している。ホール説を取れば、時間的な問題はクリアされるのだ。
僕は以上の事柄から子供説だと思う。
参考文献
- コナン・ドイル著「恐怖の谷」 借成社
- コナン・ドイル著「唇のねじれた男」 講談社
- コナン・ドイル著「四つの署名」 借成社
- 「ミステリ・ハンドブック シャーロック・ホームズ」ディック・ライリー、パム・マカリスター共著 原書房
- 「シャーロック・ホームズの新冒険(下)」グリーンバーグ&ウォー編 ハヤカワ・ミステリ
- ホームズの年代学(1886年〜1894年3月まで)