あるミステリー・ドラマで・・・


 僕はTBS系、夜八時から放送のUSOを見ているのだが、その中のコーナーに「名探偵は君だ」という物がある。これは不可能犯罪のトリックを読者が発くと言う物なのだが、相当、高度であり、映像ならではの「さりげなく」ヒントを出しており、中々の魅力である。
 さて、十一月三十日放映の「時を操る殺人者」のトリックだがこれは可能なのだろうか。結論を言う前に、まずざっと、事件概要とトリック説明から入ろうと思う。
 一九五〇年代のある晩、八時五分頃、シカゴ警察に助けを求める一本の電話が舞い込んできた。被害に遭ったのはジョージ・ベイカーだった。彼の家に急行した直後、部下が受け取った一通の電話は彼の妹、アニー・ベイカーからの物で、殺されると言った助けを求める内容だった。同時刻に起こった殺人事件は同一人物によるものだと解ったのだがどんなに急いでも車で三十分は掛る距離だった。
 さて、事件概要の説明も終えた所でトリックの説明に移ろう。犯人、フィリップ・ベイカーは大量の氷を持ち込み、椅子に凭れ掛らせ、氷の上にナイフが来るようにした。そして、氷の橋を作った(図参照)
(図)
 結論から言うとこのトリックは不可能である。その理由として以下の物が考えられる。
1.そんなに大量の氷をどこから、どのようにして犯人は持ち込んだのか?
 このトリックを使おうとすれば、大量の氷が必要となる。VTR中でもかなり大きい氷を積み上げていた。ではこの氷をどこから持ち込んだのだろうか。気付かれずに持ち込む事は不可能だ。
2.果たして氷の解ける時間は予測できたのだろうか?また、ジョージが警察に電話する事は予測できたのだろうか?
 そして、この同時刻殺人を可能にするもう一つの鍵は氷が解けてジョージがナイフに刺さる時刻に、アニーの家でもう一つの殺人を行わなくてはならない。しかし、計算して八時五分に刺さるようにする事は不可能であるし、仮に出来たとしてもジョージが警察に電話する事は予測出来ない。VTR中では「死亡推定時刻を元にすれば八時五分に殺害されたと言う事が解る」とあったが、死亡推定時刻はこの場合、六時から九時の間という大雑把な物で何時、何分きっかりに殺されたというような物ではない。

以上から僕はこのトリックは不可能だと考える。 参考文献

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