モザイクのLove Maze 〜Maze 1〜
部屋の中は湿っぽく、艶っぽい匂いに満ちていた。
粘膜と粘膜が擦れ合う淫らな会話。
後に聞こえてくるのは、ため息混じりの喘ぎ。
厚い雲に覆われた、紅満月の夜。光るのは見事なまでの黄金の髪と真珠のような汗だけ。
まるで絹糸のように細く、美しい躰の線を持ち、透けるような白い肌は、薄紅に染まっていた。
「まだ・・・まだだ・・・。」
張りつめた己がものをゆっくりと内部に押し当てていく。
「う・・・あ・・・。」
キリキリと喉を反り返らせ、きつく目を閉じる。何時になろうと、この圧倒的な嫌悪感には慣れない。
そんな気持ちとは裏腹に、相手は無我夢中で己の欲望を貪り続ける。グイグイと押し込められていく、明らかな異物感。
思わず全身の筋肉を強張らせる。それに気付いたのか、相手はペロリと自分の唇を舐め、口端に笑みを浮かべた。
「ほう・・・そんなにイイのか?これが・・・。」
そう言ってさらに激しく突き立ててくる。
いつの間にか、両手足をベッドの上で開かされ、霰もない格好をさせられていることに気付いて、妙な羞恥心を覚えていた。
何に例えようもない嫌悪感の中でも、躰が勝手に快感として反応しているのが悔しかった。
瞬間、ゾクリとするような感覚が全身を襲った。下を見ると、自分の少し膨らみかけていた雄を手中に収められ、そして、ゆっくりといたぶるよう
な刺激を彼に与え始めた。
「・・・ん!・・・や・・・やぁ・・・め・・・!」
これ以上にないほど躰を仰け反り、それでも自我を手放さないよう、必死である。
が、時々スパークしてしまいそうになるのを耐えるだけで精一杯であった。
「は!あ・・・・くぅ・・・あ・・あ・ああああああ!」
声にならない。躰が悲鳴を上げる。心臓の音に合わせるかのように内部にある楔が震えた。弾けるような感覚が吐き気を誘う。
「ふ・・・ふぅ・・・はぁ・・・。」
背中からの脱力。相手の全体重がかかってくる。スルリ・・・と黄金髪は脇をすり抜けた。白いシーツを取り、下半身を隠すかのように巻き付ける。
「お前・・・良かったぜ。上玉だ。・・・名前は?」
グレイの髪の男が聞く。ベッド脇の小さなテーブルに置いてあるワイングラスを取り、一口含む。
「尋いてどうする?」
「決まっている。毎晩、指名してやるよ。」
男はグラスを持たない右手で彼の顎をクイッと上げた。
「そうはいくかな?」
黄金の髪はフイ・・・と横を向いた。
少しムッとした様子で男は、今度は髪を乱暴に引き寄せた。
「どういうことだ?」
「・・・次はない、ということだ。」
そう言い放った瞬間、男の口、鼻、目・・・あらゆる所から血が噴き出した。
「ぐふっ・・・!」
まるで噴水のように深紅の血が周囲を薔薇の花弁のように染め上げてゆく。息も切れ切れに、男は最後の力を振り絞って彼の黄金髪を掴んだ。
「何・・・者・・・。」
彼は鼻で笑うと、今まで掛けてあったカーテンの側に近付いた。
「・・・もう、二度と会わないのだ。冥土の土産に教えてやる。」
シャッ・・・とカーテンを開いた。その瞬間、紅満月が漆黒の空に顔を出した。
紅色の月明かりに晒されて、黄金髪は怪しく光った。そこには、白く透ける肌、顔には紺碧の紋様。先程まで男に抱かれていた時の妖艶さは少し影を潜
め、代わりに見事なまでの威圧感を漂わせた、一名の悪魔が佇んでいた。
男は目を見開いた。
何故?・・・ここに・・・貴方が・・・?
そう、男が口に出そうと・・・。
「・・・お別れだ。」
もう、男には届かなかった。
宮廷の長い廊下を進み、突き当たりの大扉の前・・・を素通りして、そこから右に曲がっていったところで止まった。IDカードを通して、二段階に分け
てあるパスワードを抜けて、ノックもせずに勝手に入る。
「・・・俺は、ノックもしない奴は叩き出す主義だが?」
黒い軍服に身を包み、机の上に足を投げ出して、勤務中にも関わらず赤ワインを片手に書類を読む悪魔がいた。
彼が飲んでいるワインぐらいに深い紅の紋様が軍帽の陰からチラチラと見える。
「そうか・・・そうだったな、エース長官。」
台詞とは裏腹に全く反省の色を見せずに言い放つ。
「で?報告は?」
エースが書類から目を離さずに尋ねる。
「上々、また悪魔が一匹減ったな。優秀な部下だったのだろう?」
「いいさ、邪魔な奴がいなくなっただけのこと。虫ケラと一緒だ・・・どうだ?飲むか?デーモン。」
エースがワインの瓶をデーモンに向けた。
「いや、止めておこう。今日は疲れ気味でな。」
デーモンが向けられていた瓶を返す。ここで初めてエースはデーモンに視線を向けた。白い軍服に黄金の髪がよく映える。改めてその美しさに、
エースは溜息を漏らした。
「相変わらず美しいな。」
思いがけないエースの言葉にデーモンは少し膨れた。
「おまえ、その台詞、何回言ったことがあるんだ?少なくとも吾輩だけではなかろう?」
「お前だけだ。」
そう言うとエースは立ち上がり、デーモンを後ろから抱きしめた。デーモンは腕組みをしたままエースに顔だけ向ける。
「どうだか?」
エースの鼻腔に何やら怪しげな香りが漂ってきた。その者が生まれながらに持っている独特の香り。何人たりとも、この香りの誘惑に打ち勝つこ
となどできない。
するり・・・とエースの右手が軍服の隙間を縫ってデーモンの肌に触れる。
「お前だけだ・・・デーモン・・・。」
びくんっとデーモンの躯が反応する。
「お前の妖気に当てられない奴の方がおかしい。」
エースの指の侵入が始まる。
軽く胸の突起をまさぐられ、切ない快感が巡る。エースの左手は既にデーモンの下半身を刺激していた。一枚の布越しではあるが、それでも十分
である。
びくんっと大きく震え、デーモンは溜息を漏らす。
「・・・本トに敏感だな、お前・・・。」
まるで遊んでいるかのように左手は、ついにデーモンの内部を侵しだした。
「・・・はぁ・・・ん・・・。」
しどけない声が静まり返った部屋に響く。
いつの間にか右手も加わって、一番敏感なそこを弄ぶ。右手で背後の双丘をなぞり、ゆっくりと蕾の中へ続く。ぱくぱくと口を開け閉めする蕾は、少し
づつではあるが湿り気を帯びてきた。
「・・・あ・・・あん・・・エ・・・・ス・・・。」
端正な顔が淫らに歪む。膝をガクガクとさせて、デーモンは目の前の机に両手をついた。エースは両手を巧みに使い、既にそそり立つデーモンの欲
望を慰める。
「ん・・・!・・・あ・・・あ・・・くあ・・・。」
とろり・・・とした液体がエースの左手を汚した。一度手を引き出し、そのままデーモンの目の前に持ってくる。
「ほら・・・お前のだ。」
人差し指と中指を開く。粘り気を持った液は、指の間に細いアーチを作った。
「やめろ・・・。」
か細い声が聞こえる。
「・・・次期副大魔王候補も形無しだな。」
「やめ・・・。」
そんなデーモンの口を塞ぐように、エースはいつの間にか、きついくらいに張りつめた自身をデーモンの口に押し込んだ。
「ぐっ・・・!・・・ぐ・・・ぐ・・・!」
喉が苦しくなるほど、きつくくわえ込ませ、エースは腰を上下させる。ねっとりとした感覚がエースを絶頂へと誘う。
「は・・・あっ・・・!」
思わず上がる声。絡みつくようなデーモンの舌は、エース自身の一番感じる箇所を程良く刺激してくる。
エースの声に触発され興奮したのか、デーモンも己自身を慰めはじめた。
「ぐ・・・ぐ・ぐぅ!」
「はっ・・・!」
もう我慢できなくなったエースは、素早く引き抜くと、電光石火の如くデーモンを大股開きで机に座らせ、片足を自分の肩にかけると欲望を蕾に
突き立てた。
「あ、ああっ!」
突然のことにデーモンも構える暇はなく、エースを受け入れていた。が、痛みは最初だけ。
デーモンの中には全身を駆け抜ける快感だけがあった。
互いの息づかいが重なる。自分の欲望のままにエースはデーモンを貪る。それに答えようとデーモンも己を慰めつつ締め上げてくる。下から上
へと突き上げられる激情は、二名をみるみるうちに高みへと導いていった。
「はぁ・・・はぁ・・・エー・・・ス!」
「デーモン・・・!」
最後に力強く腰を打ちつけた。
瞬間、どろっ・・・とした液体がデーモンの内部へ、そして結合した部分に飛び散った。
「はぁ・・・・・・。」
「デーモン・・・。」
軽い目眩と陶酔感。全てを放ったエースが改めてデーモンの唇に自分の唇を重ねた。黙ってデーモンも受け止める。
「・・・今回の任務、完了だ。ご苦労。」
エースが言い放つ。が、デーモンは何も返さなかった。
to be continude・・・