空 色 の 涙
act 4
結界の扉を開ける。
自分・・・ライデンが現れる時には誰かが居るのが当たり前の空間に、今は何の気配もない。
それも当然な時間帯ではあるのだが。
しかし、今日は都合が良い・・・というより、それを狙っての行動である。
明るい木漏れ陽の中を歩き進んでいく。
結界にしては広すぎる空間の最奥に位置する屋敷は外と相反し、魔気もなく冷たい淋しい。
何時もであれば、暖かく迎え入れらる筈の場所は、1名になるとこんなにも寒い場所であったのだろうか。
リビングの大きなソファは、別に場所を決めたわけではないのに、なぜか全員に定位置があった。
電気も点けず、自分の場所に身体を投げ出す。
張りつめていた気が抜けたのか、その途端、視界がボケて行く。
大粒の涙が1粒。
「くっ・・・。」
堪え切れず声が出る。
その声を隠すようにクッションに顔を埋めた。
ルークが言っている事は分かる。
ルークは正しい。
しかし、ただ仲間はずれにされているようで淋しかっただけ。
自分も、役に立ちたかっただけ。
「やっぱり此処か。」
エースは、結界の中の屋敷に居た。
ルークはライデンとのやり取りをエースに伝えた。
そして、部屋を飛び出して言ったことも。
エースは、仲介役を買って出た。
エースにしては珍しい事態である。
いつもならこういう役はゼノンの場合が多いのだが・・・。
ライデンの事である。
大して遠くには行かないだろうと思い、最初に探した場所がこの屋敷であった。
薄暗い部屋で眠っているライデンの頬には、涙の後があった。
パチッと、電気を点ける。
「ん・・・。」
ライデンがうっすらと目を開ける。
「エース?」
「あ、起きたか? 今日は此処に泊まるのか?」
ライデンの呼びかけにエースは言った。
「うん・・・。どうしようかな。」
珍しく歯切れの悪いライデンに微笑む。
「ルークと喧嘩したって? 捜してたぞ、ルークの奴。」
ルークの名前を聞いて泣きそうな顔になる。
「お前のことだ。ルークの真意を分かってての行動だと見たが?」
「だって・・・。」
エースは、この屋敷での自分の定位置に座る。
「魔界のゴタゴタに、お前まで巻き込むわけにはいかないだろう?」
「今更じゃないか! 今までだって、俺も沢山関わってきた。今頃そんなこと言われたって・・・。」
「今回は、天界が関わっている。魔界と天界の争いに雷神界が関わるわけにはいかない。お前個悪魔の問題ではないんだ。」
「分かってるって、そんな事。ただ・・・。」
「ただ?」
「ごめん。」
答えになっていない、ライデンの言葉。
しかし、その一言を伝えるのに、どれだけの葛藤があったことか。
エースは、ライデンの肩をポンと叩いた。
エースは立ち上がった。
「腹減らないか? 何か作ったら食うか?」
ライデンの瞳が輝いた。