ザイクのLove Maze  〜敗れざる者達 4 〜

 

二週間後・・・。
ほぼ重なり合っている月を見上げ、溜め息を付くとお茶を差し出した。
「ありがとう、ルーク。」
ダミアンは嬉しそうに受け取った。
「君の入れるお茶は最高だね。・・・誰も想像できないだろうね、見掛けは温厚で誰にでも優しい君がいざというときには泣く子も黙る、冷酷無比な軍事局の参謀とは。」
「・・・誉め言葉として受け取っておきますよ。それにしても・・・二週間ですか・・・。デーモン達、相当苦戦を強いられているようですね。」
ルークもダミアンの目の前にカップを持って座る。
「ん・・・そうだね。毎回、情報局の者が戦場に行って報告書を渡すんだけど・・・私の所に入ってくる報告はあまり芳しいものではない。」
二名は顔を見合わせ溜め息一つ。
半分中身の残ったカップをとりあえず置いて、ダミアンは腕を組んだ。
「もしかしたら君にも出向いてもらうことになるかもしれない、その時はよろしく頼んだよ。」
「分かっております。ところで・・・。情報局の者と申しますと、その・・・長官はまだ・・・・行っておられないので?」
ルークの問いにダミアンも苦笑気味に呟く。
「そう、まだ行ってないよ。エースは。なんだかんだと忙しいとぬかしやがる。あのバカ・・・。」
ふと洩らしたダミアンの言葉に、水晶の瞳が少し笑う。
「・・・殿下は・・・知っておられましたか。」
「知らないワケないだろう?双か・・・ルークも・・・。ま、大丈夫だろう。」
ダミアンはニヤリと笑う。・・・が、またすぐに真剣な顔に戻った。
「もうすぐ【逢月日】か。・・・魔界のエネルギーバランスが崩れる唯一の日、天界では吉兆の一夜と呼ばれてるらしい・・・大変なことが起こらなければよいが・・・な。」
そう言ったのを最後に、二名は何も言わなかった。紅茶の中に二つの月がこちら側を嘲笑うように光り続けていた。




 情報局は本当に多忙だった。【皇太子殿下の御命令】とあれば仕方ないのかも知れない。
「エース長官!・・・情報を届けに行きますが・・・今回はどうします?」
机の角に足を掛けているエースは振り向いた。そこにはノート型コンピュータを持って立っている若い局員がいた。
「・・・そうだな・・・。」
チラチラと周りを見渡す。全員情報収集のために忙しそうに見える。
溜め息を付いた。
「しょうがない、俺が行く。」
そう言うと、コンピュータを受け取った。
「今回の情報は重要なモノが入っているからな。これさえあれば蒼の惑星は完全に取り戻せる。」
エースは机から降りて情報局を出た。




 ものすごい砂煙が舞う。
エースは思わず咳き込んだ。
ここは蒼の惑星、戦闘A級地区135ポイント付近である。この辺にデーモン達の本拠地があるのは分かっていた。が、あまりにも戦闘が激しく、容易に近づけない。もし見つかって持ってきた情報が盗まれでもしたら・・・さすがのエースの身震いを隠せなかった。
そもそも、なぜ今回手作業で情報を届けるのかという理由は、情報漏れを気にしてのことだった。
思念波や、電波を使用しての送信は簡単であるし、本悪魔達の危険も少ない。それは分かっていた。
しかし、それは外部から探知されてしまう可能性があるのだ。今回の戦闘は力ずくより、情報収集の多さがモノを言うことは誰もが知っていた。
が、この情報配達は本来、情報局の長官という役職に就いているエースの役目ではない。
「・・・別に・・・俺はここの戦闘状態が気になるだけだ。」
誰もいないのに呟く。
ふと、煙が切れた。
「今だ・・・!」
エースは本拠地へと急いだ。




「閣下!B地区より連絡。敵は壊滅したそうです。後はD、そしてここだけです。」
「ご苦労、では、吾輩も出よう。」
デーモンは椅子から立ち上がった。第二隊長が慌てて制止しようとする。
「いけません!傷が・・・。」
「なに、大丈夫だよ。」
「ダミアン様からキツク言い付けられているのです、閣下に無理をさせないようにと・・・!」
デーモンは余裕の笑顔を向けた。
「もう蒼の惑星は落ちたも同然。吾輩は後ろで立ってるだけだ。・・・全員戦っているのに吾輩だけのうのうと安全な場所にいるわけにはいかんだろう?・・・そう言えば・・・今日は情報局から届くはずだが・・・まだか?」
不安げな顔をした隊長に尋ねる。
「まだのようです。」
「では・・・吾輩が直に受け取ろう。・・・行くぞ。」
黄金の剣を腰に、白い戦闘服の長い裾を引き上げ、デーモンは薄布を開けた。




エースは岩陰に身を潜めた。
味方を捜すが、どう見ても敵としか思えない者達に囲まれている。まだ彼の存在に気付いてないことが唯一の救いだった。
「さすがに・・・危ないかな?」
呟いて舌打ちをした瞬間、自分を囲んでいた者達の気配が一斉にある一カ所に向かっていった。
その勢いに驚き、エースもその方を見ると、見覚えのある黄金髪を認めた。
「デーモン・・・!」
砂嵐の中で一際目を引く黄金のオーラ。天使達もそれには一瞬、気を引かれている。
瞬間、奇妙な音がエースの耳に届いた。
周りを見渡すと、先程までいた天使達が影一つとしていない。
「・・・?」
気になって、奴等がいたであろう場所まで近付く。・・・と、そこには消し炭のようなカスが残っていた。ふと、デーモンの方を見る。
真っ直ぐこちらを見られていた。
どうやら奴等の気配に早々に気付き、一瞬のうちに消滅させてしまったらしい。
「・・・怪我はしてても相変わらず・・・馬鹿力め。」
ぽつりと呟くと、エースはデーモンの元へ歩いていった。近付くにつれて彼の表情に見分けがついてきた。
「エース・・・。」
何とも複雑そうな表情で彼を迎える。
「情報です。デーモン閣下。・・・今回は特に重要ですので私が持って参りました。・・・では。」
それだけ言うと、エースは踵を返した。デーモンは受け取ったコンピュータを隊長に預け、分析を要請するとエースの後を追った。
「待て!エース!」
デーモンの声が聞こえる。エースはこれ以上、彼の前に居たくなかった。また彼を傷つけてしまうことがイヤだった。脇目も振らずに帰ろうと、足も速まる。
「エース!」
デーモンの声がまた聞こえる。振り向かないようにしてただ、足を一段と速めた。
「エース!」
意志に反して、身体は勝手に後ろを振り向いてしまった。・・・と、何かが光ったような気がした。
よく見ると、銀色の銃口が水色の光線を放ち、意志を持った生き物のようにエースとデーモンを襲う。
「危ない!」
水色の光が二名の近くにある岩を次々と破壊する。間一髪で転がり、避けた。岩陰に隠れ、素早く目はデーモンを捜す。と、すぐ近くの岩に隠れているのを発見し、安堵する。
「デーモン!本拠地へ戻れ!」
すれすれのところで光を避けながらエースが叫ぶ。デーモンは大きく首を横に振った。
「駄目だ!お前を置いては行けん!」
「いいから戻るんだ!今ここでお前が死んだら魔界大変なことになる。ダミアン殿下が悲しむ姿は見たくないだろうが!」
絶対敬愛の対象を例にとる・・・が、あまり効果はなかったようだ。デーモンはますます大きく首を振った。
「イヤだ!吾輩はお前ごと本拠地へ戻る!」
・・・一体この性格は誰に似たのだろう・・・。
一度言い出したら絶対に聞かない。
・・・そう言えば前デーモン公も相当、大魔王陛下を困らせてたっけ・・・?
ほんの少し、前デーモン公を恨みつつ、最終通告用の言葉を出した。
「早く行け!俺は大丈夫だから。今のお前は足手まといだ!お前と居ると俺まで死んじまう!とっとと帰れ!」
・・・どうせここまで嫌われたんだ。とことん嫌われてやると、エースは腹を括った。
案の定、デーモンは傷ついた表情で瞳をクルクルさせていた。
そうだ、今のうちに・・・。
エースはわざと立ち上がった。一斉に砲撃の的がエースに絞られる。敵を引き付けるため、彼は走った。
「畜生・・・この光は何だ?今での力と全然違うぞ・・・。」
エースは破壊された岩を見る。ただ、破壊されている様子ではない。光と同じ色の粒が破壊された箇所に付いている。そろり・・・と手を伸ばした。
バチリ!!!高圧電流に触れたときのような痛みがエースに伝わる。
「うわぁっ!」
指先を見ると、微かに焦げたような跡があった。
エースは眉を顰める。
「これは・・・・!」
キッと振り向く。すぐ側に天使達は迫ってた。
エースの手の中に紅蓮の炎が湧き上がった。
大きく腕を振るうとその炎は帯状に変わった。
「失せろ!」
一喝すると、炎が波のように天使達に襲いかかる。一気にその場にいた敵が燃え上がった。苦悶の表情を浮かべ、手を天に掲げて崩れ落ちてゆく。
「・・・簡単すぎるな・・・。」
呟いて考え込んだ瞬間・・・。頬を何かが掠める。
少しだけ痛みが走り、振り向く。
「・・・!」
銀の銃口が至近距離でこちらを向いていた。
「罠か!」
既に逃げ道を固められてしまって、完全な袋小路である。
・・・駄目だ・・・!
エースは覚悟を決めて目を閉じた。
・・・と、突然自分を覆う影が出来たことに気付いた。
「何?」
目を開けると・・・。
そこには信じられない光景が展開されていた。
さらり・・・と流れる黄金の髪。
静かな蒼い瞳がエースを一心に見つめていた。
動きはエースを庇って大きく体を広げた状態で静止していた。
一カ所・・・奇妙な色がじわじわと左胸を染めていく。その色の中央にはポカリ・・・と小さな穴があき、向こう側を見ることが出来た。
まるでスローモーションのようにその状況は進められていく。
そのままエースの方へ倒れ込んできた。
ドサリ・・・と確かな重量感。エースの手は思わず抱きしめていた。ヌルリと嫌な感触。
彼の背中には少なくとも三カ所の穴があいていた。彼は動かない・・・。
エースの手は血生臭く、真っ赤だった。
喉の奥から固まりのようなモノが上がってくる。それは悲鳴という形で戦場にこだました。
「デーモン!」
二つの月は今、完全に重なり合った。




 時間だけが無情に過ぎ、緊迫感だけが不気味に佇んでいた。
エースは、机の上に足を投げ出し、左手に持ったグラスの中身をグイグイ空けていく。
「飲み過ぎだよ、エース。」
今まで黙っていたルークがとうとうエースの側から酒瓶を取った。しかしそれを怒るような素振りも見せずただ、ある一点だけを見つめている。
「エース・・・。」
言いかけてルークはふと、彼の手を見て、止めた。
音も聞こえないくらいに小さく、彼の手は小刻みに震えていた。
「気付いたんだ。俺・・・。」
「え?」
「あの光線が、天界の奴等の念を集めて作ったモノなんだって。残った小さな粒が俺の手を焦がした時に、分かってたんだ。」
ルークは酒瓶を持ったまま、何も答えない。
「デーモンを退避させることばかり考えてて、俺が引きつけておいて、あいつのその後の行動なんて考えてもみなかった。・・・まさか、飛び出してくるなんて思わなかったんだよ。」
ガツッ!!イヤな音が響く。エースが机に拳を打ち付けた音だった。
「やめろ!お前はすぐにそうだ。何かあったらまず、自分を傷付ける。その癖はやめろ。」
ルークが彼の右手を両腕で羽交い締める。
「何が・・・歴戦の勇者の息子だ。大切なモノを何一つ守れないで、傷付けてばかりだ。醜い・・・醜いよ、俺・・・。自分のことしか考えない、ただの獣だ・・・。」
エースは赤茶色の濃い、液体を流し込んだ。
「・・・俺のせいだ・・・。」
その言葉を聞いてルークは溜息をついた。
「さっきからそればっかりだ、少しは落ち着けよ。」
「俺、どうすればいい?あいつが目を覚まさなかったら、俺・・・。」
ピシャリ・・・!乾いた音がする。その後にジワジワとした痛み。エースはルークを見た。
いつもは優しげなルークの柳眉は吊り上がり、目は怒りを表していた。
「縁起でもない!そんなこと考えるヒマがあったら、デーモンが目覚めたときに何を言うか考えてろ!」
ただの一度も聞いたことないような激しいルークの怒りに、珍しくエースの方がタジタジになってしまった。
「すまない・・・・・でも・・・!」
「『でも』じゃない!確かにデーモンの傷は心臓かすめてて、その上あの力の所為で周辺の細胞はグシャグシャ、お前が連れ帰ったときには、純粋な血統書付悪魔のデーモンの再生能力さえ追いつかないくらい、ものすごい勢いで身体は腐り始めていた。この三日間、意識を取り戻さない。でも、あいつは【デーモン】だ。あいつは俺に言ってた。ここで死んだらダミアン殿下に申し訳ない。それにデーモン一族の長の名に傷が付くって。そう簡単にくたばるはずがない!」
言うだけ言うと、愛想を尽かしたかのか、ルークは情報局の扉を力任せに閉め、出ていってしまった。
「・・・・・。」
立ち上がり、エースはソファーの方に寝転がった。
こんな思いをするくらいなら・・・。
あの時、あいつと一緒に本拠地へ帰れば良かった。
どうして?どうして?どうして?・・・
情報局長官ともあろうこの俺が、どうして状況判断を疎かにした?どうして周りをきちんと見なかった?どうしてあいつの位置をきちんと確認しなかった・・・?
どうして・・・あいつを守れなかった・・・?
そしてなによりも、今までの言動・・・。
優しくしてやれなかった自分の嫉妬めいた狂気じみた感情。後悔してみても始まらないのは分かっていた。
が、消せるものなら過去を全て消してしまいたかった。デーモンに初めて逢ったときからやり直したかった。それは、勿論出来るわけではない。
出来るわけないから・・・もしデーモンが気付いたら。
今度は本当のことを言おう。
本当の気持ちを。
それで本当に嫌われてしまうのなら・・・デーモンの前から永久に姿を消す。
情報局を辞め、どこか、遠くへ・・・。
ただ、彼を二度と傷付けないために。
エースはグラスにブランデーを注ぐと、もう一度一気に飲んだ。




 暗闇。
どこをどんな風に立ってるかなんて、全く分からなかった。
「ここは・・・?」
デーモンはあたりを見渡した。しかし、ここは暗闇。何も見えない。
「誰か!」
さすがのデーモンも不安になった。その時。
「・・・誰だ!」
背後から何者かの視線を感じる。振り向くと・・・。
紅い光。それが並んで二つ。見覚えがありすぎる。
「エース!」
デーモンは叫び、近付いた。しかしそれは無表情のまま遠ざかっていく。必死で追いかけた。
「お願い、待って!」
とにかく追った。しかし・・・。
【お前は奴隷・・・。】
ギクリとして立ち止まった。
【奴隷・・・お前は・・・お前は・・・奴隷だ・・・俺の・・・奴隷・・・。】
「やめろ!やめてくれ!エース・・・!」
思わずうずくまった。耳を押さえるがその声はますます大きくなる一方であった。
【邪魔だ・・・邪魔だ・・・足手まといだ・・・。】
「やめろぉ!」
デーモンの声に、それはあっけないほど消えた。
「・・・?」
瞬間・・・。銃声が響く。
「何・・・?」
自分の身体の異変に気付いて、デーモンは腹部を見てギョッとした。
「・・・・・!」
弾痕が身体を貪り、血が噴き出す。不思議と痛みはなかった。
「あ・・・あ・・・・・。」
銃声の方を見た。そこには・・・。
「・・・エース・・・お前が・・・。」
紅い目の持ち主はまだ無表情の眼差しで銀の銃を持ったままデーモンを見ている。しかし・・・。
「・・・何を・・・泣いているのだ?」
エースの目からは血のような涙が溢れていた。
「泣くな・・・。エース・・・泣くなよ・・・。」
涙を拭おうとデーモンは頬に手をやろうとした。
が、身体が動かない。みると、卵に似た形の結界が、自分を閉じ込めんとしていた。
「うあ・・・。」
為す術もなく、デーモンの身体は結界ごと浮き上がった・・・ような感触を覚えた。
「何するんだ!吾輩は・・・うわぁぁぁぁ!」
何処かへ飛ばされていく感覚が・・・。
「・・・?あ・・・!」
そして何かが消えていく気が・・・何かを置いてけぼりにしたような・・・。
先には淡い光が見えてきた。
このまま行ってはいけない・・・。「あれ」を置いたままでは・・・。
しかし、デーモンの身体は光の中へ突っ込んでいった・・・。




「エース!デーモンが・・・!」
突然のライデンの声にエースは立ち上がった。
ライデンの顔には喜びに溢れている。
エースは溜め息を付いた。ゆっくりと振り向く。
そしてグラスを置くと、デーモンの居る部屋へと急いだ。彼の表情に、もう迷いはなかった・・・。




部屋の前に立つ。ライデンはとっとと中へ入ってしまい、廊下には彼しか居ない。中から嬉しそうな声が聞こえてきて、ノブを回す手が一瞬止まった。
あれだけ決心したのに・・・。
自分の弱い心に少し苦笑する。
と、ルークが顔を出した。
「何やってんの?早く入って。」
背中を押されるままにエースは部屋に入ってしまった。
仲魔達の隙間から見える瞳は、元気そうに輝いている。黄金の髪が揺れた。
エースはバクバクと勝手に鼓動をする心臓を抑えつつ、デーモンの前に立つ。
デーモンはベッドの横に立つ今までと違う雰囲気を感じ、そちらを見上げた。
エースは口を開き、決心通り言葉を紡ごうと息を吸ったその時、デーモンの言葉の方が一瞬早かった。
「・・・お前は・・・誰だ?」
そこにいた全員の時間が硬直した。
「デ・・・デーモン・・・?」
ダミアンが動揺を抑えて呼びかける。
キョトンとしてデーモンはエースを指さし、再び言った。
「ダミアン殿下・・・こいつは・・・?」
「デーモン!俺は?俺は誰だ?」
ルークが青ざめて尋ねる。
「なに言ってんだよ。ルーク・・・そしてゼノン・・・ライデン、ダミアン殿下・・・。吾輩はデーモン。副大魔王だ。忘れるはず無い。」
再度エースの方へ視線を送る。その瞳は不安と不審をたたえていた。
「・・・すまない。吾輩はお前を知らない・・・。思い出せない・・・。」
デーモンの言葉をぶった切るように何かが壊れる音がした。一斉にその音の方を見ると、エースの手がベッドサイドにある机の上のグラスを落とし、ベージュのカーペットにシミが広がっていた。
「エース・・・。」
ルークがおろおろしながら言いかける。
が、エースはそれを手で制した。
ふう・・・と息を吐く。
そのまま片膝を付き、デーモンの手を取った。全員が固唾を呑んで見守る中、エースは手の甲に口付けし、ゆっくりと・・・そしてこの上なく優しくハッキリと囁いた。
「デーモン閣下・・・俺は・・・あなたの・・・恋悪魔です・・・。」

                                                        to be continude

                                                              Presented by 高倉 雅