5) 動詞(4)

vii. 接続法

a) 接続法現在

第一群 : -ø, -s, -t (-e で終わる語幹のあとでは -ø), -ons, -ez (-iez), -ent.

  demander amer torner entrer changier
一人称単数 demant aim tor entre change
二人称単数 demanz ainz torz entres changes
三人称単数 demant aint tort entre change
一人称複数 demandons amons tornons entrons chanjons
二人称複数 demandez amez tornez entrez changiez
三人称複数 demandent aiment tornent entrent changent

一人称複数では語尾 -ons が一般化したが、方言形、特に東部・北部方言および中部方言では語尾 -iens も中期フランス語まで存在する。この二つの語尾が混交して中期フランス語時代に語尾 -ions が生まれ、現代フランス語で一般化した。

-er et -ier 型動詞の一人称単数では、早い時期から類比的語尾 -e が発展し、接続法と直説法がよく似た活用形をとるようになる。

第二群 (接尾辞 -iss- を伴う -ir 型) : -e, -es, -e, -ons, -ez (-iez), -ent.

  fenir 
一人称単数 fenisse 
二人称単数 fenisses 
三人称単数 fenisse 
一人称複数 fenissons 
二人称複数 fenissiez, fenissez
三人称複数 fenissent 

他の動詞での語尾は: -e, -es, -e, -ons (-iens), -ez (-iez), -ent.

  quere ovrir manoir veoir oïr voloir
一人称単数 quiere uevre maigne voie oie vueille
二人称単数 quieres uevres maignes voies oies vueilles
三人称単数 quiere uevre maigne voie oie vueille
一人称複数 querons ovrons maigniens, maignons voiens, voions oiiens, oions voillons, voilliens
二人称複数 querez ovrez maigniez voiiez, voïez oiiez voilliez
三人称複数 quierent uevrent maignent voient oient vueillent

注意すべき動詞:

  estre  avoir 
一人称単数 soie aie 
二人称単数 soies  aies 
三人称単数 soit  ait 
一人称複数 soiiens / soions aiiens / aions
二人称複数 soiiez aiiez, aiez
三人称複数 soient aient

動詞 aller は三つの接続法現在活用を持つ。

  タイプ1 タイプ2 タイプ3
一人称単数 aille  alge  vois 
二人称単数 ailles  alges  voises 
三人称単数 aille, alt, aut alge  voise, voist
一人称複数 all(i)ons alg(i)ons  vois(i)ons
二人称複数 all(i)ez alg(i)ez vois(i)ez
三人称複数 aillent algent voisent

タイプ1は特に東部、南東、南西方言にみられる。
タイプ2はとくに西部で用いられたが、中世末期に消滅した。
タイプ3は北部、中部でみられるもので、直説法 je vois から作られた。16世紀にいたるまで使用されたが、17世紀に消滅した。

b) 接続法半過去

古フランス語には3タイプの接続法半過去があり、すべて弱変化で語幹(アクセントのない弱形)の変化はない。
(接続法半過去形は単純過去形——強変化動詞ではその弱形——から容易に類推することができる。
例:tu chantas > tu chantasse, tu eüs > tu eüsses.)

a) -asse 型 (ester, rester, arester 以外の -er, -ier 型動詞) :

  chanter 
一人称単数 chantasse
二人称単数 chantasses
三人称単数 chantast
一人称複数 chantissons
二人称複数 chantisseiz, chantissez
三人称複数 chantassent

一人称複数形において語尾は -ons となるが、方言形では -iens, -iemes (ピカルディ方言) がある。
語尾 -ions は古フランス語期以降、14世紀よりみられるようになる。

二人称複数での音韻進化上の語尾は -eiz ( -oiz とも) で、これはしばしば -ez に置き換えられた。-iez は後代の綴り。

パラダイム全体について、東部方言では一般に母音に -ai-をとる。おそらくは単純過去の一人称単数形より類比されたこの -ai- は、ときに -e- とも綴られる。

b) -isse 型 (弱変化 -i 型の単純過去で三人称単数が -i, -ié となる2タイプ、および強変化 -i 型 (veïsse, venisse, desisse, deïsse,...) に共通。

  fenir metre (1) metre (2)
一人称単数 fenisse mesisse meïsse
二人称単数 fenisses mesisses meïsses
三人称単数 fenist  mesist  meïst 
一人称複数 fenissons mesissons meïssons
二人称複数 fenisseiz, fenissez mesisseiz, mesissez meïsseiz, meïssez
三人称複数 fenissent mesissent meïssent

mesisse型では、母音間の s は無音化し、結果としてmeïsse, veïsse などがひとつの型を成すようになる。Veïsse, meïsse, eüsse はその後対応する単純過去をモデルとして14世紀より visse..., misse..., eusse... (eu は [u] /y/ の綴り)となる。
同様に venisse は14世紀に、単純過去が vins, venis... から vins, vins... へと移行するのに伴って vinsse へと移行していく。

c) -usse 型 (弱変化の単純過去 -ui, -us 型と、弱形が -u- を伴う強変化型の単純過去をとる動詞に共通。)

このパラダイムは estre の接続法半過去から類比されている。

  paroir estre
一人称単数 parusse  fusse 
二人称単数 parusses  fusses 
三人称単数 parust  fust 
一人称複数 parussons fussons
二人称複数 parusseiz, parussez fusseiz, fussez
三人称複数 parussent fussent

北部、東部方言には estre に fuisse, fuisses... という活用があり、結果として paruisse, moruisse,...などの活用形がある。

北部、東部では強変化の単純過去をもつ動詞で [wi] がフランシアン方言のように [ü] に移行せず、auisse, euisse, powisse (とくにピカルディ、シャンパーニュ方言で poïsse) という活用形が用いられた。

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