羽根の色と遺伝(その1)遺伝と女の子 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
小桜インコに女の子が多いわけ
小桜インコって女の子が多いとはよく言われることです。確かにショップから迎える子には女の子が多いのが現実です。何か特別な方法で雌雄の鑑定をしているのかしら、と思うほどです。 なにか、遺伝的な法則で、女の子が多くなっているとしたら、どう考えればいいのでしょうか? 私たちが好む羽根の色が女の子と関係があるとしたら、それはどのような関係でしょうか。 ここでは、小桜インコの遺伝についておおまかな事を書きました、あわせて女の子に関する遺伝についても書いています。お役に立てれば幸いです。 1:普通の場合の遺伝(常染色体遺伝) 遺伝とは親から子へ伝わる沢山の情報です。髪の毛や、目の色なども遺伝の法則に則って、 親から子へと伝えられます。 遺伝は、対立する2つの性質があり、一方が優位で(優性といいます)もう一方が劣位(劣性)です。 この優性と劣性は、優れているとか劣っているというような意味ではありません。遺伝的に、その形質の方が強く表現され、実際に形となって現れる方を優性、性質があまり形となって現れない方を劣性と呼んでいるにすぎません。 普通の遺伝は優性遺伝と言い、優性の遺伝子が存在する時には、必ず優性の形質が表現されます。 劣性の形質は優性の遺伝子が無い時にしか、実際に形となって現れません。 小桜インコの羽根の遺伝は、この方法に則っています。 たとえば、「Y 」を緑の羽根の色の遺伝子とします次ぎにパステルの羽根の色の遺伝子とします。 「Y」と「y」は対立していて、ちょうど表と裏の関係としましょう。「Y」が優性で「y」が劣性の関係です。優性である「Y」は常に「y」に勝ちますから、「Y」を持っている小桜インコ必ず羽根が緑になります。 この遺伝子は常に2本で一組です。 2本のうち1本は父親から、もう1本は母親からもらったものです。 遺伝子の組み合わせは、 「YY」「 Yy」「 yy」 の3種類です。 このうち「YY」「Yy」は優性の遺伝子「Y」を持っているので小桜インコの羽根は緑色になります。 しかし「yy」の遺伝子を持つと、優性の「Y」がありませんから緑の羽根になりません。 それで「yy」の場合は、劣性の形質が表現され、羽根の色がパステルになります。 この方法による遺伝の場合には、女の子と男の子の産まれる割合は、基本的には半々です。 女の子の方が多いと言うことはありません。遺伝が男の子と女の子の性に関して干渉しないからです。 2:性染色体での遺伝(性染色体遺伝) 遺伝にはもう一つの遺伝の方法があります。 それが性染色体に関係のある遺伝です。 小桜インコのある種の羽根の色を作るための遺伝は、性染色体に関係する遺伝の場合があります。 この場合の遺伝を考えてみましょう。 鳥は性染色体(男女を決める染色体)の組み合わせが人間と逆です。つまり、 男の子がXX型、女の子がXY型です(厳密に言うとちょっと違うのですが、便利なので この表現を使います)。 小桜インコの羽根の色を決定する遺伝子は、「X」染色体に存在しています。 性染色体が関係する遺伝の場合には、優性遺伝の場合と違って、対立する遺伝子がありません。 優性と劣性の関係を持つ、遺伝子のペアがないのです。 それで、性染色体に関する遺伝の時には、鳥が持っている「X」染色体の全部に、 遺伝の情報が存在しなければその形質は発現されないという法則に則った遺伝をします。 たとえば、ルチノーの遺伝子を「R」としましょう。 染色体にルチノーの遺伝子があるとき「X*R」 染色体にルチノーの遺伝子が無いとき「X*-」 とします。 @ 男の子の場合 男の子は「X」染色体が2本あります。 従って、ルチノーの男の子になる時には「X*R X*R」となっているはずです。 「X*R X*-」の時は、ルチノーの遺伝子を持ってはいますが、1本分しかありませんので、 ルチノーを表現できません。ルチノーの遺伝子を隠し持っているということになります。 A 女の子の場合 女の子は「X」染色体が1本しかありませんから、ルチノーの遺伝子は1本で十分です。 女の子がルチノーの時は「X*R Y」の組み合わになります。 3:性染色体がからむ色と女の子 小桜インコの羽根の色のうち、黄色に関する遺伝は、性染色体に関係する遺伝です。 ルチノー、シナモン、イエローなどがそうです。 2、で述べましたように、男の子が黄色の羽根になるためには 「X*R X*R」の組み合わせでなければなりません。 男の子の場合は「X*R X*-」では羽根が黄色になりませんから、男の子で黄色の 羽根を持つ子は、少なくなります。 これに比べて女の子の場合は、「X*R Y」で羽根の色が黄色になります。 実際の例を見てみましょう。 例1)親がルチノー同士の場合 父親(X*R X*R)X 母親(X*R Y)
X*R X*R : ルチノーの男の子(50%) X*R T : ルチノーの女の子(50%) 男の子女の子共にルチノーで男女の比は1:1です 例2)父親がルチノーで母親がルチノー以外の場合 父親(X*R X*R)X 母親(X*- Y)
X*R X*R-: ルチノー以外の男の子(50%) X*R Y : ルチノーの女の子(50%) ルチノーはすべて女の子です。男の子はルチノーになりません(隠し持ちます) 例3)父親がルチノー以外(隠し持っている)で母親がルチノーの場合 父親(X*R X*-)X 母親(X*R Y)
X*R X*R: ルチノーの男の子(25%) X*R X*-: ルチノー以外の男の子(25%) X*R Y : ルチノーの女の子(25%) X*- Y : ルチノー以外の女の子(25%) ルチノーの男の子女の子、ルチノー以外の男の子女の子の産まれる比率が同じです。 例4)父がルチノー以外(隠し持っていない)で母がルチノーの場合 父親(X*- X*-)X 母親(X*R Y)
X*R X*-: ルチノー以外の男の子(50%) X*- Y : ルチノー以外の女の子(50%) この場合、ルチノーは産まれません。 以上の事により、ルチノーの遺伝では、女の子の方がルチノーになりやすいと言うことが分かります。 また、ペアにする場合、ルチノーの男の子は個体数が少ないので、例1のルチノー同士のペアは少なくなります。 そのためますます男の子のルチノーの産まれる確率は低くなります。 ここではルチノーを例にして考えてみましたが、小桜インコの羽根の色に関して性染色体が関係する遺伝では、女の子が産まれてくる確率のほうが高いことが分かります。同様に性染色体に関する遺伝をする、シナモン、イエローなども女の子が産まれる確率が高くなります。余談ですが、アルビノーは女の子がいません。これは、男の子が持っている[X]染色体にある種の異なった遺伝子がそれぞれ1本ずつ存在しなければならいためです。 性染色体に関する遺伝から考えると、 |
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