PBFD | |||
PBFDを引き起こすウイルスは鳥の羽根、嘴の細胞に寄生して、正常な細胞を破壊します。また、鳥の免疫に関与している細胞も破壊しますので、鳥は外界の、普段なら病気になどならないような細菌やかびのような物に対してさえ、自分を守ることができなくなってしまいます。その結果、何でもないことから病気にかかり、悲しい結末を迎えてしまうことになるのです。 PBFDに感染すると、たいていの場合一定の潜伏期間を経て、発病します。この潜伏期間は、鳥の個体差に左右されいて、発病までの時間を正確に予想する事は難しいといわれています。多くの鳥の場合、感染時にはウイルスの量がそれほど多くなく発病までには至らなくても、ウイルスは時間をかけてゆっくり増殖し、多くの場合慢性の経過をだとると言われています。 PBFDに感染した鳥は、バクテリア、菌類、ウイルスから身を守ることができません。そのため、たいていの鳥は食べることができなくなり、痩せて死んでしまいます。 PBFDにかかった鳥の予後を予想するのは簡単ではありません。鳥の年齢や免疫力が一羽ごとに異なっているからです。PBFDの病気の進行は免疫力に左右されます。病気の診断には羽根の変化を時間的経過を追って調べる事が一般に行われていますが、PBFDに感染してからの潜伏期間はわかりません。
右の項目が含まれています
PBFDの歴史
治療(ワクチン)と予後
発症のメカニズム
どうして治療が困難なのか
PBFDの診断
PBFDの歴史
オウム類におそれられているPBFDは「Psittacine Beak and Feather Disease」と呼ばれる病気の略名です。(Psittacine=オウム類、Beak=くちばし、Feather=羽根、Disease=病気)
もともとオウム類の嘴と羽根に現れる病気という意味を持っているこの病気は、もともとオーストラリア大陸に固有の病気であったという学説もあり、オーストラリア大陸での研究がさかんになされています。
学問的には、シドニー大学の研究者たちが、1971年にPBFDの研究をスタートさせています。
研究の目的は、PBFDウイルスの生物的な性質を知ることと、ウイルスに対する抗体(ワクチン)を作ることでした。
1975年シドニーの獣医師ロスペリー氏によって初めて報告され今日に至っています。
この病気がウイルスによって引き起こされるということが分からなかった時代には、オーストラリアに特有の病気である、ひまわりを食べることが原因している、または繁殖によって引き起こされる等と、いろいろ原因がいわれてきました。
オーストラリア、アメリカ合衆国等での研究の結果、ジョージア大学で調べられていた新種のウイルスが、PBFDを引き起こすウイルスであることが分かっています。このウイルスはサーコウイルスと呼ばれ、それまで知られていたウイルスとは全く違ったウイルスであることが分かっています。
現在、シドニー大学の研究者達調べた結果で、オウム類のかなりの種に、この病気が広まっていることが分かっています。しかしまた、この病気がワクチンをうつことで、防げるということも分かっています。
ワクチンは、1991年ごろから作られています。初期の時代に作られたワクチンは現在でもPBFDの予防に効果があると言われています。残念ながら日本ではワクチンを入手することができません。日本でのワクチン接種が実現するようになればと思います。
発症のメカニズム
本来ウイルスという生き物は、自分で生活することができません。なにかに寄生して生きていくしかないのです、何かに寄生して、寄生した所の栄養分を横取りして生きていくのです。そのため、ウイルスが寄生した所は、だめになったり、破壊されたり、正常ではなくなってしまうのです。
オウム類に感染するこのウイルスは、サーコウイルスと呼ばれていますが、このウイルスは、
直径16ナノメーターぐらいの球形をしています。一本鎖のDNAを遺伝子として持っています。
サーコウイルスが持っているこの特徴が、病気を引き起こす原因となっているのです。
サーコウイルスは、オウム類にのみ感染しているようです。
いまのところでは、他の動物に感染したというはっきりとした報告はなされていません。
ただし、最近の研究で、はとにはPBFDによく似た症状をしめす病気があることが分かっていますが、
それはサーコウイルスとよく似ていても、違ったウイルスが原因といわれています。
PBFDの診断
PBFDははっきりとした特徴を持っています。たいての場合、獣医学的な検査のみで、診断を確定する事ができます。
一般的に、PBFDは若いオウム類に感染すると言われています。
鳥は大人になると身を守るための免疫機能が充実し、ウイルス感染を未然に防ぐことができる、ということなのだそうですが、PBFDは人のエイズと同じように、すぐに発症することはありません。そのため、大人になってPBFDを発症する鳥は、幼い時に感染を受けたと言われています。
慢性化したPBFDは、知らない間に鳥の体内でゆっくりと増殖しながら、病状を悪化させていきます。このためこの病気で命を落とす鳥は、若い鳥に限定されていません。この病気で命を落とすオウムの年齢の幅は、かなり広いのです。
雛のうちにPBFDに感染していると初めての換羽(雛換羽)の時、力のない弱々しい羽根が生えてくることが多いようです。
PBFDに感染した羽根はとても弱く、普通に生えてくることはないようです(ねじれたりゆがんだりしていることがおおいようです)。
大型のオウムの場合などは、脂粉の量も少なくなり、皮膚の表面付近から痩せた羽根が生えてくるようになります。そしてその羽根は汚く生気のないものになります。同時に脂粉が少なくなることで嘴に脂粉が付かなくなりますので、嘴はぴかぴかしてきます。
この羽根と嘴の異常は病気の進行を知る上で非常に重要です。
特に羽根の変化を調べることで、いつ頃PBFDに感染したのか、病気がどの程度のレベルまで進んでいる
かを推定することができます。
#病気にかかった鳥の羽根の病変
病変した羽根は長さが短く、次のような特徴を持っていることが多いようです。
羽根に深い溝が入る、羽根のさやが太くなって羽根が締め付けられたようになる、羽根の軸に血の固まりが付く
最近の学者の中には、何もしていないのに羽根が自然に抜けてしまうことがあればそれは病気の初期の
サインであるという人もいます。
羽根の色がいつもと違ってきたり、健康な状態では見られない色の羽根が見つかったりすることもあります。羽根の色が変化するのは、顕微鏡的な、ごく小さい変化が羽根の構造の中で起こっているためといわれています。
#急性PBFDの診断
急性の病気にかかった鳥はたいてい、ねばねばした緑色の下痢をします。これは、臨床的にはバクテリアやクラミジアにかかった場合にみられるものです。これに対してPBFDのウイルスに感染すると、急性の
場合血液が混じります、これは大型鳥にはよく見られています。鳥は、この血液混じりの下痢のため死亡する事もあります。その場合は、羽根の病変は全く見られません。
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