時々日記2003年11月
11月23日日曜日(晴)

今月はいろんな事がたくさんありました。
まず、先月の終わり頃から、内蔵助の様子がおかしくなり始めていました。
内蔵助は大変咬む力の強い子で、かごに帰す時も、手袋が無くてはつかめません。
それで、内蔵助を捕まえるときは、以前から必ず手袋を使っていました。
それがどういうわけかわかりませんが、内蔵助のお気に入りになってしまい、手袋に吐き戻すようになってしまっていました。
主治医の先生に診ていただいても、別段病気での吐き戻しというのではなさそうで、内蔵助は母性のつよい子かもしれない。
と思っていました。ところが、10月の後半終わりにかけて、なんだか内蔵助の吐き戻しがひどくなってきていました。
さすがの私もなんだか状況が悪いみたい。続くようだったら、主治医の所に連れていかなければ、と思っていたやさきの、10月30日、なにげなくのぞいたかごの中で、内蔵助はうずくまっていました。
「くらのすけ!」なにしているの。
内蔵助は、よろよろと止まり木に止まろうとしますが、足に力が入りらない様子で、かごの隅にうずくまったまま、じっとしていました。
「たいへんだわ、行かなくては」と、主治医の先生に電話していました。もう夕方4時近くでした。今なら先生は午後の患者さんの診察中だわ。間に合う、時間外でもなんでもいいから、診ていだたかなくては。
「いいですよ、どうぞ、お待ちしています」と先生はいつもの穏やかな声でおっしゃってくださいました。
主治医の先生の所に着いたのは午後8時半頃でした。先生の前でも内蔵助は気持ち悪そうに、なにやら食べた物を吐きだしていました。先生はいろいろおっしゃってくださいました。
吐くと脱水になりがちだから、給水に充分気をつけてください。
脱水症状になると、目の回りにしわが寄ってね。

先生は一生懸命に説明してくださるのですが、私には今一歩わかりません。それより、次の日の仕事の事ばかりが気になっていました。
「入院させますか」
先生もお分かりだったのでしょうね。
そうさせていただけますか。と先生にお願いして、その日は帰宅しました。やれやれ、内蔵助もすぐによくなるわ。

この時点では内蔵助の入院が思いもかけず、長くなろうとは全く予想もしないことでしたし、その後、ケケ%ぽー夫妻にも、危機が忍び寄ってくることなど、全く考えていませんでした。
一週間もすれば、内蔵助も良くなって、お迎えに行けるわ、と内蔵助が入院してから五日目ほど経って電話をした時のことです。予想もしなかった言葉が電話を通して聞こえて来ました。
「抗生物質を飲ませているのですが、どうも効きが悪く、ばい菌の数が少なくならないのです。一度、抗生物質の感受性の検査をしてみましょうか。それには2〜3日かかります。どうされますか。」
「そうしてください。内蔵助は元気でしょうか。」
「元気ですが自分でご飯を食べられないので、強制給仕しています。」
「そうですか、よろしくお願い致します。」

なんだか大変な事になったと感じました。仕事で、抗生物質をたくさん使っている私には、抗生物質が効かない、細菌が出現したことに、かなりの危機感を持たずにはいられませんでした。とにかく、今は、感受性テストの結果を待つしかありません。それで、効く薬が無かったらどうなるのだろうか。そんな事も考えましたが、とりあえず内蔵助は無事だし、入院しているのだし、すぐにどうこうなる、ということも無いだろうし、色々な考えが頭の中をとおりすぎて行きました。

感受性のテストの結果、内蔵助には無事に効くお薬が見つかりました。それから一週間後、10グラムほど痩せてしまった内蔵助は無事退院となりました。今はお薬も無くなり、以前と同じとまではいきませんが、元気で暮らしています。おしゃべりもします。投薬中は、それはそれは辛そうでした。お薬の副作用だったのかもしれませんが、吐きそうにしていました。抗生物質は人間でも副作用がでます。私も薬剤によっては、吐き気と下痢が起こります。内蔵助も、たいへんだったのだろうとかわいそうに思いました。

これやれやれだわ、と思っていた矢先のことでした。ケケ&ぽー夫妻を連れて先生の所を訪れたときのことです。
「そのう炎ですから、お薬を飲みましょう。」と一週間お薬を飲ませたのにもかかわらず、内蔵助の時と同じように、薬が効いていない事が分かったのです。
「感受性のテストをしてみましょう。」と先生はおっしゃいました。この時点では、内蔵助の時と同じように、してもらうのが一番良いと感じていましたので、「よろしくお願いします。」と先生にお願いして、結果の電話を待つ事にしました。
数日後、先生から、意外な内容を告げる電話がかかりました。
「抗生物質17種、調べました。効く薬剤がありません。」
「えっ。」抗生物質に抵抗性の細菌って、それはどういうことか、私が一番分かっているつもりでした。先生は「注射の薬もありますから、それを調べてみましょうか。」とおっしゃいましたが、

どうやって注射するの。誰が。一日に何回。
それはこの子達にどんな負担をかけることになるの。
そもそも、どうして、薬剤が効かない細菌が、出現するの。抗生物質を飲み続けているわけでも無いのに。こんな早い時期に。どうして、どうして。

だったら、薬を飲まずに、なぜ10年以上も生きている子がいるの。
その子達はいままで、そのう炎になった事がないのかしら。
そのう炎になったら、自分で直す力が、鳥たちにはないの。
そんな事があるわけないわ。
病院に行くたびに、抗生物質を飲まされれば、体も弱るし、薬が効かなくなる。
感染症の一番怖い所。

ケケとぽーには、自分で直す力がまだ残っていると思いました。
今回、お薬を使えば、すぐに直るかもしれない。でもいずれまた同じ事が起きるでしょう。
その時、またお薬を飲む事になって、その時お薬が効くかどうかわかりません。
以前、読んだ本の中に、鳥に対して一番のお薬は保温する事、お薬はその次。と書かれていたことを思い出しました。薬が効かないのなら、ケケとぽーにがんばってもらうしかありません。
がんばれ、ケケ&ぽー。
友人に勧められて、林間にお住まいの先生の所に行った時の事です。
先生は、おだやかな声で、「そのう炎は。吐き戻すのが特徴ですよ。」
「この子達は、吐き戻す事がありますか。薬を頼るのもいいけれど、細菌はゼロにできません。薬を使って、細菌のバランスを極端に崩してしまうと。仕返しにあいますよ。もっとおおらかに飼いましょう。」

「体重の変化は、季節によって微妙に変化しますし、そのうだって、季節ごとに変化を受けます。換羽の時期には、特にです。」「そういう変化に対応した飼い方を心がけてください。」
「神経質に飼うのもいいかもしれませんが、たとえば、池の水や川の水が濁って見えても、魚たちが病気にもならず、また野生の鳥たちが飲んでも体をこわすことがないのは、細菌の微妙なバランスが保たれているからなのですよ。川の水や池の水には、良い細菌、たちの悪い細菌がバランスを保ち、共存しているのです。鳥達も、同じです。それを薬で簡単にこわしてしまうのはどうでしょうね。なたならおわかりでしょう。」先生はそうおっしゃってくださいました。
けけとぽーは、いま調子が悪いのだろうと思いますが、なんとなく光りが見えました。そのうのばい菌は憎いですが、共存できる環境を作って上げようかと思っています。