ローマ法王ヨハネ・パウロU世

  1. ローマ法王ヨハネ・パウロU世は,1979年法王就任以来これまで世界の123ヶ国を訪問している。現在、国連に加盟している国の数が189カ国である事を考えると極めて異例であり,この背景にヨハネ・パウロU世の信仰と平和を追求する強い意志が見うけられる。
  2. 今回のギリシャ正教会の本拠地であるギリシャの訪問は,新聞の見いだしにもある通り1,000年にわたるカトリックとギリシャ正教との争いに謝罪と和解を求めたいとするヨハネ・パウロU世の永年の懸案であった。ローマ・カトリック首脳の反対やギリシャ側の頑固な抵抗を押しての訪問実現に対して心から敬意を表したい。ギリシャ正教の信者が多い東欧諸国では,1999年にルーマニアとグルジアを訪問しているだけであり,確かロシアはロシア正教の反対があり未だ実現の見とおしはないと理解している。今年6月にはウクライナ訪問が予定されている。着実にギリシャ正教との対話が進んでいるように思える。
  3. ヨハネ・パウロU世の意志は1979年法王に就任した年の訪問先での活動を見ることにより推測できるのではないか。
  4. 最初の訪問地メキシコでは,キリスト者の政治への参加を呼びかけている。次の訪問地である法王の出身地ポーランドでは,共産主義からの自由と開放を呼びかけている。次いでカトリック・プロテスタントとの激しい抗争が続いているアイルランドを訪問,帰途米国に立ち寄りアメリカの資本主義の海外諸国での弊害に対し警鐘を鳴らしている。そしてその年の最後の訪問先はトルコで東方教会との和解にふれている。ヨハネ・パウロU世は法王に就任当初よりユダヤ・イスラム教との融和を働きかけてきた。

    1985年にはモロッコを訪問しイスラム指導者との会談をしている.1986年にはローマにあるシナゴーグを訪問、1993年イスラエルを承認、2000年3月にはエルサレムを訪問しイスラエル、アラブ首脳と会談した。

  5. 他のキリスト教との関係改善について言えば、1995ネンカンタベリー訪問(英国国教),ドイツ,スエーデンのルーテル教会を訪問,また,ジュネーブにあるプロテスタントのエキュメニカル運動の一つであるWCC世界教会協議会本部を訪問した。
  6. ヨハネ・パウロU世は,2000年間にわたるカトリック教会の他宗教に対する暴力や残虐行為,民族差別,偏見等の非を詫び新しいミレニアム(Millennium)の出発としたいとする強い願望があるといわれる。
  7. これら一連のヨハネ・パウロU世の思想の背景には法王がポーランドのナチのホロコーストの中心近くで生まれ育ったという個人体験が基盤になっているとのことである。法王は1633年のガリレオ審問の間違いを認めた。環境問題に対しても関心が高い。

戻る